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消化器系疾患 疾病

便秘とは? 原因は何か? 症状は?検査・診断と治療法は?予防策は?

はじめに

大腸でウンチを作ることは、私たちの健康にとって非常に重要なプロセスである。大腸は、消化された食物の残りや体内の不要な物質を排出する重要なプロセスを担っていて、これによって私たちの体内のバランスが保たれ、健康が維持されている。

大腸には莫大な数(約100兆個)の腸内細菌がすんでいて、私たちの健康(免疫機能)に大いに関わっているとされる。大腸内の腸内細菌のエサとなる食物繊維は大腸内で消化され、最終的にウンチとなる。

排便は、消化された食物の残りや体内の不要な物質を排出する重要なプロセスである。排便がないまま放置すると、食べ物や消化液などの内容物が肛門へ移動障害される腸閉塞になり、腹部の張り、腹痛、吐き気、嘔吐が起こり、時間と共に腸の壊死などで、生命にかかわることもある。だから、排便は私たちの健康にとって非常に重要なプロセスであることが理解できる。

この重要なプロセスである「排便」が困難な状態が「便秘」と呼ばれるものである。


    <目次>
    はじめに
    便秘とは
    原因
    症状
    検査・診断
    治療
    予防
    あとがき

    便秘とは

    便秘(constipation)は、排便が困難、排便回数が少ない、便が硬い、残便感があるなどの状態が続くことあるであるが、明確な定義があるわけではない。

    一般的には、本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態を便秘としている(慢性便秘症診療ガイドライン2017)。

    すなわち、毎日出ないことは問題ではなく、例えば、3日に1回だとしてもスムーズに排便でき、スッキリ感があれば便秘ではない。逆に毎日出ていても、残便感があってスッキリしない、お腹が張って違和感があるといった不快な自覚症状があるなら便秘と考えられる。つまりは、便秘かどうかは、スッキリ感があるかどうかが基準といえる。

    正常な排便回数は、1~3回/日から2~3回/週とバラツキがあり、これよりも回数が少ない場合を便秘と呼ぶことがあるが、排便ほど変化に富み,外部の影響を受けやすい身体機能はない。排便習慣は人によって大幅に異なり、年齢、生理機能、食事、社会的および文化的影響を受ける。

    多くの人が、毎日排便がなければならないと誤解し、排便回数がそれよりも少なければ便秘を訴える。便の外観(大きさ,形状,色)または硬さを気にする人もいる。ときに、主訴は排便行為に対する不満または排便後の残便感である。

    便秘は、多くの愁訴(腹痛、悪心、疲労、食欲不振)の原因とされているが、これらは実際には基礎疾患(例えば、過敏性腸症候群、うつ病)の症状である。患者は、毎日排便することによって全ての症状が緩和するものと期待してはならず、排便習慣を補助する対策を慎重な判断の下に実施すべきである。

    便秘は高齢者でよくみられる。これには、低繊維食、運動不足、併存する医学的状態、および便秘をもたらす薬物の使用などが起因している。多くの高齢者は正常の排便習慣について誤解しており、定期的に緩下薬を使用している。高齢者に便秘の素因となる他の変化としては、直腸コンプライアンスの増加および直腸の感覚障害がある(このため便意を誘発するためにより大きな直腸容量が必要となる)。 年齢とともに直腸が太くなり、直腸内に蓄えられる便の量が増加することは、高齢者が便意を感じるためには、しばしば直腸内により多くの量の便が必要であることを意味する。また、直腸の容積が大きくなると、硬い便が宿便になる。

    以前の排便パターンから大きな変化がないかぎり、排便回数が少なくても問題があるとは限らない。便の色、量、硬さについても同じことが当てはまる。患者が便秘を多くの症状(腹部不快感、吐き気、疲労、食欲不振など)の原因であると考え、それらが実際には別の病気(過敏性腸症候群[IBS]やうつ病など)の結果であることがよくある。

    毎日排便があればこれらの症状がすべて緩和されると期待するべきではなく、下剤や浣腸などの排便習慣を助ける手段を過剰に使用してはいけない。しかしながら、果物、野菜、食物繊維、穀物を多く摂取することで、害を生じることなく症状の緩和を助けることができる。


    合併症

    便秘の合併症として、以下のものがある。

    • 痔核
    • 直腸脱
    • 裂肛
    • 憩室性疾患
    • 宿便

    排便時に過度に力むと、肛門周囲の静脈にかかる圧力が上昇してになることがある。また、硬い便が出ると肛門の皮膚が割れることがあります(裂肛)。これらの合併症はいずれも排便を不快なものにし、患者は排便したくなくなることがある。排便を遅らせると、便秘の悪化と合併症の悪循環に陥る可能性がある。

    小さく硬い便を移動させるのに必要な圧力が高まり、大腸の腸壁が損傷すると、憩室生疾患が発生することがある。大腸の腸壁が損傷すると、風船のような袋または突出(憩室)を形成し、それが詰まって炎症(憩室炎)を起こすことがある。憩室はときに出血し、まれに破裂する(腹膜炎を引き起こす)。

    宿便とは、便が直腸と大腸の最後の部分で硬くなり、他の便の排泄を完全に妨げる状態で、便秘の人に発生することがある。宿便によって、けいれんや直腸の痛みが生じ、排便しようとして力んでも便が出なくなる。ときに水っぽい粘液や液状の便が閉塞部の周囲からにじみ出て、誤って下痢と感じることがある(逆説的下痢)。宿便は高齢者(特に寝たきりの人、身体活動が低下している人)、妊婦、ある種のX線検査でバリウムを飲んだり浣腸したりした人で特に多くみられる。

    定期的な排便にこだわりすぎると、多くの人が下剤、坐薬、浣腸を用いて腸を痛めつけてしまう。そうした治療法を過剰に行うと、実際には腸の正常な収縮を阻害し、便秘を悪化させることがある。

    強迫症(OCD)の患者はしばしば「清潔でない」排泄物または「毒素」を毎日体から取り除く必要があると感じる。そのような人はしばしばトイレで過度の時間を費やしたり、下剤の常用者になったりする。


    原因

    急性便秘は、器質的原因を示唆する一方、慢性便秘は器質性と機能性の両方がありうる。

    多くの患者では、便秘は大腸の便通過の遅延と関連する。この遅延は、薬剤、器質的病態、排便機能の障害(すなわち,骨盤底機能不全)、または食事によってもたらされる疾患に起因することがある。排便障害のある患者は、直腸で十分な蠕動力を生み出せないか、排便時に恥骨直腸筋および外肛門括約筋を弛緩できないか、またはその両方である。過敏性腸症候群(IBS)では、患者は症状(例,腹部不快感および排便習慣の変化)を有するが、一般に結腸通過および直腸肛門機能は正常である。しかしながら、IBSと排便障害が併存することもある。

    骨盤底機能不全に続発する排便時の過度のいきみは、直腸肛門病変(例えば、痔核、裂肛、および直腸脱)に寄与していると考えられ、さらには失神まで引き起こす可能性がある。宿便は、便秘を惹起または便秘によって生じることがあり、高齢患者でよくみられ、特に長期臥床または身体活動低下を呈する患者で多い。バリウムの経口投与後または注腸後にもよくみられる。

    便秘の最も一般的な原因には以下のものがある。

    • 食事の変化(水分摂取量の減少、低繊維食、便秘を起こす食べものなど)
    • 排便を遅くする薬
    • 排便困難
    • 下剤乱用

    食事の原因が非常に多くみられる。脱水になると、体は便からより多くの水分を吸収して血液中に水分を蓄えようとするため、便秘になる。水分が少ない便は出にくくなる。果物、野菜、シリアル、その他の食物繊維を含む食品は、天然の消化管の下剤である。これらの食品を十分に摂取しないと、便秘になる可能性がある。食物繊維(食品の消化されにくい部分)は便中に水分を蓄えるのに役立ち、便量を増加させて排便を容易にするため、食事に食物繊維が不足していると、便秘が起こることがある。

    排便を遅らせる最も一般的な薬は、オピオイド、鉄塩、抗コリン作用のある薬(例えば多くの抗ヒスタミン薬や三環系抗うつ薬)である。その他に、水酸化アルミニウム(市販薬の制酸薬に含まれることが多い)、次サリチル酸ビスマス、一部の降圧薬、多くの鎮静薬などがある。

    排便困難とは、腸が直腸から便を押し出す十分な力を出すのが困難なこと、または排便中に直腸周辺の筋繊維と外肛門括約筋を弛緩させるのが困難なことを指す。排便困難がある人は排便が必要であることを感じるが、排便できない。便が硬くなくても排便が難しいことがある。過敏性腸症候群(IBS)の患者では、IBSによる排便困難がみられることがある。

    下剤や浣腸を頻繁に使用している場合、その助けなしでは排便できなくなることがよくある。便秘のために下剤の使用が増え、そのため便秘が増えて、悪循環に陥ることがある。

    便秘のあまり一般的でない原因には、腸閉塞などの特定の病気と、特定の代謝性疾患および神経疾患がある。大きな病気で長期の臥床を必要とする場合(身体活動が腸の排便機能を助けるため)、食べる量が少ない場合、便秘を引き起こす薬を使用している場合、頭部損傷や脊髄損傷の後にも便秘になることがある。しかし、原因が不明なことも少なくない。

    便秘はときに大腸の閉塞によって起こることがある。閉塞は便の動きを妨げる大きながんによって起こることがあり、特に大腸の最後の部分にできるがんでよくみられる。以前に腹部の手術を受けた人に閉塞(通常は小腸)が生じることがあるが、これは腸の周りに線維組織の帯ができて(癒着)、便の流れを妨げるためである。

    便秘を引き起こすことが多い病気や異常には、甲状腺機能低下症、高カルシウム血症、パーキンソン病症候群などがある。糖尿病の患者にはしばしば神経損傷(神経障害)が生じる。神経障害により消化管への神経が侵された場合に、腸の動きが遅くなり便秘になることがある。脊髄損傷でも、腸への神経が遮断されて便秘になることがある。


    症状

    便秘があっても、必ずしも直ちに医師による評価が必要なわけではない。以下では、医師の診察を受ける必要があるか、また受けた場合に何が行われるかについて説明する。


    警戒すべき徴候

    便秘がみられる場合は、特定の症状や特徴に注意が必要であり、具体的には以下のものがある。

    • 腹部膨隆
    • 嘔吐
    • 血便
    • 体重減少
    • 高齢者で重度の便秘が新たに生じるか悪化する

    警戒すべき事項(Red Flag)

    特定の所見を認める場合には,慢性便秘の病因としてより重篤な病態の疑いが高まる。

    • 腹部膨隆、鼓音
    • 嘔吐
    • 血便
    • 体重減少
    • 高齢患者に新たに発生/悪化した重度の便秘

    受診のタイミング

    警戒すべき徴候がみられる人は、直ちに医師の診察を受ける必要があるが、警戒すべき徴候が体重減少や高齢者における新たな便秘だけの場合は例外である。そのような場合、数日から1週間の遅れは問題にならない。

    便秘でも警戒すべき徴候がみられない場合は、医師に電話するべきで、医師はいつまでに診察を受ける必要があるか判断するのを助けてくれる。他の症状とすでに確認されている病気に応じて、医師は数日以内に診察を行おうとする場合もあれば、単に食事の変更や強くない下剤を試みるように勧める場合もある。


    検査・診断

    検査が必要かどうかは、病歴聴取と身体診察の結果によって決まるが、警戒すべき徴候の有無が特に重要になる。便秘の原因(薬、損傷、臥床など)が明らかな場合、医師はしばしば症状に対する治療を行い、検査を行わない。

    検査項目は臨床像および患者の食事歴によって決まる。

    病因(薬物、外傷、臥床)が明らかな便秘については、詳細な検討を行わずに対症療法を行ってもよい。腸閉塞の症状がみられる患者では、臥位および立位の腹部X線のほか、ときに大腸閉塞を評価するための水溶性造影剤による下部消化管造影、さらに場合によっては小腸のCTまたはバリウムによるX線撮影を施行する必要がある。明らかな病因のない患者の大部分では、大腸内視鏡検査および血液検査(血算、甲状腺刺激ホルモン、空腹時血糖、電解質、カルシウム)を行うべきである。 血液検査で甲状腺機能低下症や高カルシウム血症(血中カルシウム濃度の上昇)の有無を調べる。

    通常、さらなる検査は、上述の検査で異常所見が認められる患者または対症療法に反応しない患者にのみ行う。食物繊維および/または市販緩下薬による試験的治療が提案されている。この試みが不成功に終わった場合は、骨盤底疾患を同定するために直腸肛門内圧測定とバルーン排出試験を行うべきである。内圧測定が陰性で、主訴が排便回数の減少である場合は、X線不透過マーカー法(Sitzマーカー)、シンチグラフィー、または無線カプセル法を用いて大腸通過時間を測定すべきである。慢性便秘の患者では、通過遅延型便秘(Sitzマーカーによる検査で異常)と骨盤底筋機能不全(マーカーが遠位大腸にのみ滞留する)を鑑別することが重要である。

    最初の検査結果が正常でも治療により症状が軽減しない場合、通常はさらなる検査が必要である。主な症状が排便回数が少ないことであれば、便が排出されるまでの時間を測定するために、スキャナーで追跡できるわずかに放射性の小さな物体を飲ませるなど、特定の検査が行われる。主な症状が排便困難であれば、肛門内と直腸内の圧力が測定される。


    治療

    便秘に対する治療には、以下の3つの方法がある。

    • 食事と行動
    • 下剤
    • 浣腸

    食事および行動

    十分な便の量を確保するため、食事は適切量の食物繊維を含むべきである。植物繊維は、一般に消化吸収されないので、便の量が増加する。食物繊維の特定成分は、水分も吸収し、便を軟化して排便を容易にする。ブランを含むシリアルと同様に、果物および野菜も供給源として推奨される。食物繊維の補給は、通過正常型便秘の治療には特に効果的であるが、通過遅延型便秘または排便障害に対してはあまり効果的ではない。

    行動の変更が有用なことがある。食物の摂取は大腸の運動を刺激するため、患者は毎日同じ時刻、できれば朝食から15~45分後に、排便を試みるべきである。規則正しい急がない排便のために最初はグリセリン坐剤が役立つことがある。

    強迫症(強迫性障害)の患者は、この障害に対する治療を必要とする。さらに、毎日排便する必要はないこと、腸に機能する機会を与える必要があること、緩下薬または浣腸を頻繁に使用すると(3日に1回を超える使用)腸が機能する機会がなくなることを、説明しなければならない。

    十分な量の便を確保するためには、食事で十分な食物繊維を摂取する必要がある。食物繊維の摂取源としては、野菜や果物が非常に優れているとされる。これらをうまく機能させるためには、食物繊維を十分な水分とともに摂取する必要がある。

    行動を変えるように試みる必要もある。例えば、毎日同じ時間に排便を試みるようにしてみる。規則正しい急がない排便を行うために、グリセリン坐薬も役立つ可能性がある。


    緩下薬

    下剤、坐薬、浣腸は、下痢、脱水、腹部けいれんを起こし、下剤に依存する原因になるため、医師はこれらを慎重に使用する。原因不明の突然の腹痛、炎症性腸疾患、腸閉塞、消化管出血、宿便が認められる場合は、下剤や浣腸を使用してはいけない。

    膨張性緩下薬
    例えば、オオバコ(多くの野菜の食物繊維からも摂取可能) 、カルシウムポリカルボフィル、メチルセルロースなどの緩下剤。便の量を増加させ、水分を吸収する。便量が増えると腸の自然な収縮が促され、水分を多く含む便の量が多いほど、便が軟らかくなり排便されやすくなる。 膨張性下剤は ゆっくりと穏やかに作用し、排便を促進する上で最も安全な緩下薬である。適正な使用法としては,便が軟化膨張するまで徐々に用量を増量し,理想的には,詰まりを予防するため,十分な水分(例えば、500mL/日の水分を追加)とともに1日3回または1日4回服用させる。腹部膨満は,食物繊維の用量を推奨用量まで徐々に漸増すること、またはメチルセルロースなどの合成繊維の製剤に切り替えることで緩和する。膨張性下剤を使用する人は常に十分な水分を摂取するべきである。膨張性下剤は腸内ガスの増加(鼓腸)や腹部膨満の問題を引き起こすことがある。
    浸透圧性緩下薬
    吸収されにくい多価イオン(例えば、マグネシウム、リン酸塩、硫酸塩)、ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)、または炭水化物(例えば、ラクツロース、ソルビトール)を含有し、これが腸内にとどまるため、腸内の浸透圧が上昇し、水分が腸内に引き込まれる。 大腸内に大量の水分を引きこむことで、便を軟らかくゆるくします。過剰な水分はまた、大腸の腸壁を拡張させ、収縮を促す。 容量の増加によって蠕動が刺激される。これらの薬剤は通常3時間以内に作用する。
    一般に、浸透圧性下剤は定期的に使用した場合にも妥当な安全性を示す。しかしながら、リン酸ナトリウムは腸管の前処置を目的とした単回使用の後でもまれに急性腎不全を引き起こすことがあるため、腸洗浄には使用すべきではない。これらのイベントは、主に高齢患者、すでに腎疾患に罹患している患者、腎血流または腎機能に影響する薬剤(例えば、利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬)を服用している患者で起きている。また、マグネシウムおよびリン酸塩は一部吸収されるため、一部の疾患(例えば、腎機能不全)では有害な場合がある。ナトリウム(一部の製剤に含まれる)は心不全を悪化させることがある。これらの薬剤を大量または頻回に投与すると、水・電解質バランスが乱れる可能性がある。診断検査または外科手術のために腸を洗浄する別のアプローチとして、またはときに慢性便秘に対して、平衡浸透圧性薬剤(例えば、ポリエチレングリコール電解質溶液)を経口または経鼻胃管にて大量投与する。
    分泌性または刺激性下剤
    例えば、フェノールフタレイン、ビサコジル、アントラキノン系、ヒマシ油などの下剤。これらの薬剤には、センナやカスカラなどの刺激性物質が含まれており、腸粘膜を刺激することによって、または粘膜下神経叢および筋層間神経叢を直接刺激することによって 収縮を起こして便の移動を促す。フェノールフタレインは、動物試験で発がん性が示唆された後に米国市場から撤去されたが、ヒトにおける疫学的エビデンスはない。ビサコジルは慢性便秘に対する効果的なレスキュー薬である。センナ、カスカラサグラダ、アロエ、およびダイオウに含まれるアントラキノン類は、ハーブおよび一般用医薬品としての緩下薬の一般的な成分である。これらは結腸まで無変化で通過し、ここで細菌代謝により活性型に変換される。 ルビプロストンは、大腸の腸液分泌を促進し、排便を容易にする。他の刺激性下剤と異なり、ルビプロストンは長期間使用しても安全である。刺激性下剤は、経口投与すると通常は6~8時間後に半固体の排便を起こすが、腹部けいれんを起こすこともよくある。刺激性下剤を坐薬として用いると、多くの場合15~60分で効果が現れる。 有害作用としては,アレルギー反応、電解質減少、大腸メラノーシス、cathartic colonなどがある。大腸メラノーシスは、大腸にみられる黒褐色の組成不明の色素沈着である。Cathartic colonとは、刺激性下剤を長期使用している患者の下部消化管造影で観察される結腸の解剖学的変化を指す。cathartic colonは、便秘を引き起こして緩下薬の使用量を増加させ、それにより便秘が増加するという悪循環を形成する。この病態はアントラキノン系薬剤による筋層間神経叢のニューロン破壊によるものとされているが、現在入手可能な薬剤や入手不能となっている神経毒性のある他の薬剤(例えば、podophyllin)によってcathartic colonが生じるか否かは不明である。アントラキノン系薬剤の長期使用によって結腸癌の発生リスクが増加することはないようである。
    浣腸剤
    具体的には水道水および市販の高張液などがある。浣腸は、直腸と大腸下部から便を機械的に流し出す。合成樹脂製のチューブに入った少量の浣腸液が薬局で入手できる。また、再使用可能なゴムボール状の器具で注入することもできる。しかし、少量の浣腸では不十分なことが多く、特に高齢者では年齢とともに直腸の容積が増加し、直腸が拡張しやすくなっているため不足する。大量の浣腸にはエネマバッグで注入する。 浣腸として用いる液体は、多くの場合は真水が最適である。水の温度は室温からそれよりやや高めにし、熱くしたり冷たくするべきではない。150~300 mLをやさしく直腸に注入する。力を加えると危険である。その後水を排泄し、それとともに便が洗い流される。ときに様々な成分が浣腸に追加される。パック入りの浣腸製剤は少量の塩類、しばしばリン酸塩を含んでいることがよくある。他に刺激性下剤の作用を有する少量の石けん水(石けん水浣腸)または鉱油を含む浣腸がある。しかし、これらの浣腸が真水より優れている点はほとんどない。結腸浣腸と呼ばれる非常に大量の浣腸は、医療行為としてはめったに用いられない。便秘が非常に重度で持続性の場合に結腸浣腸が用いられる。代替医療を行っている一部の医療従事者は、大腸洗浄が有益だと考え、結腸浣腸を行う。茶やコーヒーなどの物質がしばしば結腸浣腸に加えられるが、それが健康に良いという根拠はなく、危険な可能性もある。
    便軟化剤
    例えば、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、鉱物油など。緩やかに作用し、便を軟化して排便を容易にする。便軟化剤は、便の量もいくぶん増加させるため、大腸の自然な収縮を促し、この点でも排便を容易にする。しかしながら、強力な排便促進剤ではない。ジオクチルソジウムスルホサクシネートはサーファクタントの一種であり、水分が便塊に入るのを可能にし、便を軟化膨張させる。 軟化した便の状態を不快に感じる人もいる。便軟化剤は、痔のある人や最近腹部手術を受けた人など、排便時の力みを避けなければならない人に対してのみ用いるのが最適である。
    末梢性μオピオイド受容体拮抗薬
    例えば、メチルナルトレキソン、ナロキセゴール(naloxegol)、ナルデメジンなど。他の方法では消失しないオピオイド誘発性便秘の治療に使用できる。アルビモパン(alvimopan)は、術後イレウスの治療を目的とする手術患者への病院での短期使用に利用可能である。

    宿便の治療

    宿便には食事の変更や下剤の服用による治療はできない。 宿便の治療には、浣腸剤としてまず水道水を使用し、その後、市販の高張液を少量(100mL)使用する。これらが奏効しなければ、指で便塊を崩して便塞栓を解除しなければならない場合もある。この処置は痛みを伴うため、直腸周囲および直腸内への局所麻酔薬(例えば、5%リドカイン軟膏または1%ジブカイン軟膏)の塗布が推奨される。鎮静薬を必要とする患者もいる。


    予防

    便秘の予防策としては、下記のような対策が有効であることが知られており、推奨されている。便秘の進行を抑制し、健康を維持するために役立つとされている。

    • 食物繊維や水分を十分にとる
      • 食物繊維は腸のぜん動運動を高め、便の排出を容易にする
      • 食物繊維を多く含む食品を十分に摂る
        • 穀物、いも類、豆類、ひじき、寒天、果物など
      • 水分を十分に摂る
        • 朝、一杯の冷たい水か牛乳を飲む習慣を推奨
    • 食事のリズムを整える
      • 朝昼晩の3食をしっかりとる
      • 特に、朝食は絶対に抜かない
    • 適度な運動
      • 運動不足は、便秘の大きな原因になる
      • 腹筋などの運動は効果がある
      • おなかのマッサージも毎日の習慣にする
    • 排尿習慣
      • 尿意を感じたら、我慢せずに早めにトイレに行く
    • 排便習慣
      • トイレでいきまない
    • ストレスをためない
      • 消化管(胃・小腸・大腸)は自律神経で制御されているため、強いストレスを受けると、運動が弱くなり、胃酸や腸液の分泌も悪くなって、便秘になりやすい

    あとがき

    便秘は、生活習慣病に似た病態と言えなくもない。何故なら便秘は食事や運動、水分摂取、ストレスなどの生活習慣に大きく影響されるからである。

    また、便秘は腸内細菌のバランスを崩し、脂質や糖の分解や吸収に影響を及ぼし、高脂血症や動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病も発症しやすくなるとされているからである。

    便秘は、日常生活の中での食事や運動、水分摂取、ストレス管理などの生活習慣の改善によって予防や改善ができるようになると思う。


    【参考資料】
    MSDマニュアル 家庭版・プロフェッショナル版
    便秘 もっと詳しく:[国立がん研究センター がん情報サービス]