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悪性腫瘍(がん) 疾病

頭頸部がんとは?原因と症状は?治療法と予防策は?

はじめに

恥ずかしい話であるが、私はかつて頭頸部がんと脳腫瘍を混同していた時期がある。これらの疾患は、頸部や頭部に発生するが、全く異なる病気である。

脳腫瘍は、脳内に発生する腫瘍で、良性(非悪性)のものもあるが、悪性のものは脳の機能に悪影響を及ぼす。脳腫瘍は脳の様々な部分に発生し、その種類や位置によって症状や治療法が異なるので厄介である。

一方、頭頸部がんは、頭皮、耳、鼻、喉、口腔、咽喉、喉頭などの頭頸部に発生する悪性腫瘍である。主に皮膚癌、鼻咽腔癌、口腔癌、喉頭癌などが含まれる。

どちらも重要な病気であり、早期発見と適切な治療が重要であることには違いはない。

目次
はじめに
頭頸部がんとは
原因
症状
検査・診断
治療
予防
あとがき

頭頸部がんとは

頭頸部がん(Head and neck cancer)は、 頭頸部 (顔から首までの範囲)にできるがんの総称で、発生した部位によって、多くの種類がある。頭頸部には、様々な器官が集まっているため、ここにできるがんの種類も多い。

頭頸部がんに含まれる主ながん

  • 口腔がん
  • 喉頭がん
  • 中咽頭がん
  • 上咽頭がん
  • 下咽頭がん
  • 鼻腔副鼻腔がん
  • 唾液腺がん
  • 甲状腺がん

頭頸部がんの割合は、がん全体の5%程度と多くはないが、種類が多く、発生場所によって、性質や治療法が異なるといった特徴がある。

頭頸部がんの最も頻度が高い部位は以下の通りである:

  • 喉頭(声門上、声門、および声門下を含む)
  • 口腔(舌、口底、硬口蓋、頬粘膜および歯槽堤)
  • 中咽頭(咽頭側壁、咽頭後壁、舌根、扁桃および軟口蓋)

比較的頻度が低い部位には、上咽頭、鼻腔および副鼻腔、下咽頭、唾液腺などがある。

喉頭にできるがんを喉頭がんといい、がんができる場所によって、声門がん声門上部がん声門下部がんの3つに分類される。この中で最も多いのは声門がんで、喉頭がんの半数以上を占める。

皮膚悪性腫瘍と甲状腺がんを除けば、頭頸部がんの90%以上扁平上皮癌(類表皮癌)であり、残りの大部分は腺癌肉腫、およびリンパ腫である。

頭頸部がんの発生率は年齢とともに増加する。大半の患者は50~70歳であるが、より若年の患者における発生率が増加しており、ヒトパピローマウイルス(HPV)に起因するがん(主に中咽頭がん)と関連する。頭頸部がんは、女性より男性に多くみられ、少なくとも理由の一部として、男性喫煙者が女性喫煙者より多い状況が続いており、男性の方がHPVの経口感染の頻度が高いことが挙げられる。


原因

図1 頭頸部の構造図
図1 頭頸部の構造
上咽頭がん 全ページ:[国立がん研究センター 
がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)

あごのどなどからなる部位を頭頸部という。咽頭は、鼻の奥から食道までの飲食物と空気が通る部位で、筋肉と粘膜でできた、約13cmの長さのである。咽頭は上から上咽頭中咽頭下咽頭の3つの部位に分かれている。喉頭は、のどぼとけのところにある器官で、気管と咽頭をつないでいる。(図1参照)

咽頭がんの発症要因は過度の飲酒喫煙である。 大部分(85%以上)の頭頸部がん患者は、飲酒歴喫煙歴、またはその両方を有する。長期に及ぶ多量の喫煙と飲酒がある人は、扁平上皮癌の発生リスクがほぼ40倍高い。 また、飲酒についてはフラッシャー(飲酒により顔が赤くなる人)が継続的に飲酒することで発癌する可能性が高いことが分かっている。

ヒトパピローマウイルスHPV)は、頭頸部扁平上皮癌(特に中咽頭癌)と関連する。HPV関連がんの増加により中咽頭癌の発生率は全体として増加している。ウイルスを介した腫瘍発生の機序は、タバコ関連の経路とは異なると考えられる。

エプスタイン-バーウイルスは、上咽頭癌の発生機序で役割を果たしており,特定の血清エプスタイン-バーウイルスタンパク質測定が再発のバイオマーカーになりうる。

他の疑われる原因には、嗅ぎタバコまたは噛みタバコの使用、日光への曝露、過去の頭頸部へのX線、特定のウイルス感染症、不適合な歯科装置、慢性カンジダ症、および不良な口腔衛生などがある。日光への長期曝露およびタバコ製品の使用は、下唇の扁平上皮癌の主要な原因である。

喉頭がんの90%が扁平上皮癌である。 95%を超える患者が喫煙者であり、年間300本の喫煙でリスクは30倍増加する。喉頭がんの発生は減少しつつあり(特に男性で)、その理由は喫煙習慣の変化による可能性が最も高いと言われている。

ざ瘡、顔面の多毛、胸腺腫大、または扁桃肥大およびアデノイドに対する放射線治療を過去に受けた患者は、甲状腺癌および唾液腺癌ならびに良性唾液腺腫瘍を発症しやすい。


症状

頭頸部がんの症状は、腫瘍の部位および範囲に大きく依存する。頭頸部がんの一般的な初期症状としては以下のものが挙げられる:

  • 無症状の頸部腫瘤
  • 疼痛を伴う粘膜潰瘍
  • 視認可能な粘膜病変(白板症,紅板症)
  • 嗄声
  • 嚥下困難

頭頸部がん が進行した場合に起こる症状は腫瘍の部位と範囲に依存し、以下のものが挙げられる:

  • 疼痛
  • 錯感覚
  • 神経麻痺
  • 開口障害
  • 口臭

耳痛はしばしば見逃される症状であり、通常は原発腫瘍の関連痛である。障害された摂食および嚥下痛による体重減少もよくみられる。

上咽頭がん
初期のうちは自覚症状がみられないことがある。上咽頭がんの発見時に最も多くみられる症状は、頸部リンパ節に転移したことによる首のしこりである。その他には、鼻の症状(鼻閉、鼻血、鼻水に血が混ざるなど)、耳の症状(耳閉感、聞こえにくい、 難治性の中耳炎など)、脳神経の症状(視力低下、複視、 顔面の感覚障害・痛みなど)がある。
中咽頭がん下咽頭がん
初期のうちは自覚症状がみられないことがある。症状としては、飲み込むときの違和感、おさまらない咽頭痛、吐血(消化管からの出血)、口を大きく開けにくい、舌を動かしにくい、耳の痛み、口の奥・のど・首にできるしこり、声の変化などがある。
喉頭がん声門がん
がんができる場所によって最初にあらわれる症状が異なる。声門がんでは、声帯にがんができるため、早い時期から声の異常である嗄声(声がれ)という症状があらわる。嗄声には、低いがらがら声、雑音が入ったざらざらした声、かたい声、息がもれるような声などがある。がんが進行すると、嗄声もひどくなり、声門が狭くなると息苦しくなる。また、に血液が混じることもある。早い時期から症状が出るため、早く発見されやすいがんである。
喉頭がん声門上部がん
のどに、いがらっぽさ、異物感や飲食物を飲み込んだときの痛みがあらわれる。がんが声帯にまで広がると嗄声が起こり、さらに進行すると息苦しくなる。はじめのうちは、のどの違和感など風邪のような症状であり気付くことが遅れるため、発見が遅くなりがちである。
喉頭がん声門下部がん
がんが進行するまで症状がないことが多く、進行すると嗄声や息苦しさといった症状があらわれる。進行するまで受診しないことが多いため、発見が遅れることが多い。

検査・診断

2~3週間を超えて持続する頭頸部の症状(咽頭痛、嗄声、耳痛など)がある場合、軟性ファイバースコープによる喉頭鏡検査を行い,喉頭および咽頭を評価する。通常、確定診断には生検が必要である。頸部腫瘤に対しては穿刺吸引細胞診を用いる。口腔病変は、切開生検またはブラシ生検で評価する。上咽頭、中咽頭、または喉頭の病変は内視鏡下に生検する。

原発腫瘍の範囲、隣接構造への浸潤、および頸部リンパ節転移の評価に役立てるため、画像検査(CT検査、MRI検査、またはPET/CT検査)を行う。

上咽頭がん、 中咽頭がん下咽頭がん
視診、 内視鏡(咽喉頭ファイバー)を用いて腫瘍を確認する。確定診断には腫瘍を一部採取して、顕微鏡で組織・細胞を確認する病理検査が必要。また浸潤、転移の有無を確認するためにCT検査、MRI検査、 超音波(エコー)検査、PET検査 などの画像検査を行う。
喉頭がん
喉頭鏡検査内視鏡検査で喉頭を観察し、がんが疑われる場合は、組織を採取してしく調べる(生検)。また、がんの大きさやリンパ節、他の臓器への転移などを確認するために、CT検査やMRI検査、超音波(エコー)検査などを行う。

治療

治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討する。がんの進行の程度は、病期(ステージ)として分類する。

上咽頭がんの病期(ステージ)

上咽頭がんの病期は、がんの広がりT分類)、頸部リンパ節転移したがん大きさ個数N分類)、遠く臓器への転移の有無M分類)によるTNM分類(表1参照)に基づいて決まります(表2参照)。

表1 上咽頭がんのTNM分類の表
表1 上咽頭がんのTNM分類
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌取扱い規約 第6版(2018年)」(金原出版)より作成
上咽頭がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)

日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌取扱い規約 第6版(2018年)」(金原出版)より作成表2 上咽頭がんの病期分類

表2 上咽頭がんの病期分類の表
表2 上咽頭がんの病期分類
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌取扱い規約 第6版(2018年)」(金原出版)より作成
上咽頭がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)

上咽頭がんの治療の選択

治療法は、標準治療に基づいて、患者の体の状態や年齢、希望なども含めて検討し、決定する。 放射線治療の反応が良い腫瘍が多く、化学療法、放射線治療が治療の中心となる。

上咽頭がんの大部分を占める低分化・未分化のがん細胞は、放射線治療で消滅したり、小さくなったりしやすい傾向がある。手術が難しい部位のため、Ⅰ期からⅣA期を通して放射線治療が標準治療として推奨されている。また、放射線治療は薬物療法を併用する方が治療効果が高いことがわかっており、患者の全身状態などをみながら、放射線治療と薬物療法を併用する化学放射線療法を行う。 上咽頭がんの治療の選択のフローチャートを図2に示す。

図2 上咽頭がんの治療の選択
図2 上咽頭がんの治療の選択
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌診療ガイドライン2018年版」(金原出版)より作成
上咽頭がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)

中咽頭がんの病期(ステージ)

中咽頭がんの病期は、がんの広がりT分類)、頸部のリンパ節に転移したがんの大きさと個数N分類)、遠くの臓器への転移の有無M分類)によるTNM分類に基づいて決まる。

中咽頭がんのTNM分類および病期は、ヒトパピローマウイルスHPV)の感染に関連するp16というタンパク質の有無で異なる。p16がない場合陰性)は表3、表4を、p16がある場合陽性)は表5、表6を参照する。

表1 中咽頭がんのTNM分類(p16陰性/検査未実施)の表
表3 中咽頭がんのTNM分類(p16陰性/検査未実施)
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌取扱い規約 第6版(2018年)」(金原出版)より作成
中咽頭がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)

表2 中咽頭がんの病期分類(p16陰性/検査未実施)の表
表4 中咽頭がんの病期分類(p16陰性/検査未実施)
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌取扱い規約 第6版(2018年)」(金原出版)より作成
中咽頭がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)

表3 中咽頭がんのTNM分類(p16陽性)の表
表5 中咽頭がんのTNM分類(p16陽性)
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌取扱い規約 第6版(2018年)」(金原出版)より作成
中咽頭がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)

表4 中咽頭がんの病期分類(p16陽性)の表
表6 中咽頭がんの病期分類(p16陽性)
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌取扱い規約 第6版(2018年)」(金原出版)より作成
中咽頭がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)

中咽頭がんの治療の選択

早期であれば手術切除または放射線治療による根治が可能で、機能障害もほとんどない。一般的にHPV(ヒトパピローマウイルス)感染のある場合は、化学放射線治療の効果がより高いといわれている。腫瘍の進行やHPVの状態により手術、化学放射線治療を検討する。

中咽頭がんの治療では、がんの状態を改善することと同時に、飲み込むことや発声などの機能を残すことも重要視される。手術と手術以外の治療法(放射線治療、放射線治療と薬物療法を併用する化学放射線療法)を比較しても、いずれもメリットとデメリットがあり、どちらがよいかはまだわかっていない。そのため、治療の選択は、腫瘍の部位、広がり、転移の有無、機能温存の希望から決めていく。(図3参照)

図2 中咽頭がんの治療の選択の図
図3 中咽頭がんの治療の選択
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌診療ガイドライン2018年版」(金原出版)より作成
中咽頭がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)

下咽頭がんの病期(ステージ)

下咽頭がんの病期は、がんの広がりT分類)、頸部のリンパ節に転移したがんの大きさと個数N分類)、遠くの臓器への転移の有無M分類)によるTNM分類(表7参照)に基づいて決まる(表8参照)。

表1 下咽頭がんのTNM分類の表
表7 下咽頭がんのTNM分類
日本頭頸部癌学会編.「頭頸部癌取扱い規約 第6版(2018年)」(金原出版)より作成
下咽頭がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)

表2 下咽頭がんの病期分類の表
表8 下咽頭がんの病期分類
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌取扱い規約 第6版(2018年)」(金原出版)より作成
下咽頭がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)

下咽頭がんの治療の選択

早期であれば喉頭を温存した下咽頭部分切除術や、放射線治療、化学療法による根治を目指す(ただし、化学療法は状態によって適応不可となる場合がある)。しかし進行して見つかり、喉頭の切除が余儀なくされることが多く、その場合には下咽頭喉頭全摘術と、遊離空腸移植による再建術の適応となるのが一般的である。

下咽頭がんの治療では、Ⅰ期やⅡ期といった早期では、喉頭の温存を目指し、放射線療法による根治的な治療や、喉頭を温存する手術(喉頭温存手術)を行う。がんが進行している場合は手術による治療が主となり、部位によっては喉頭を摘出せざるをえないことがある。そこでQOLを保つために、喉頭温存手術や薬物療法を併用して放射線治療を行う化学放射線療法を行う場合もある。(図4参照)

図2 下咽頭がんの治療の選択の図
図4 下咽頭がんの治療の選択
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌診療ガイドライン2018年版」(金原出版)より作成
下咽頭がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)

喉頭がんの病期(ステージ)

喉頭がんの病期は、がんの広がりT分類)、頸部のリンパ節に転移したがんの大きさと個数N分類)、遠くの臓器への転移の有無M分類)によるTNM分類(表9参照)に基づいて決まる(表10参照)。

表1 喉頭がんのTNM分類の表
表9 喉頭がんのTNM分類
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌取扱い規約 第6版(2018年)」(金原出版)より作成

表2 喉頭がんの病期分類の表
表10 喉頭がんの病期分類
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌取扱い規約 第6版(2018年)」(金原出版)より作成

喉頭がんの治療の選択

喉頭がんの治療方法は、がんの進行度によって異なる。Ⅰ期やⅡ期といった早期の場合は、放射線治療や喉頭を残すことができる手術(喉頭温存手術)のみで治療することがあるが、患者の状況に合わせて治療法を組み合わせることも少なくない。進行している場合、従来は喉頭をすべて取り除く手術(喉頭全摘出術)を行ったが、最近では放射線治療と薬物療法を併用した治療で、声を残す方法も選ばれるようになってきた。図5〜9は、喉頭がんの広がりの程度ごとに根治を目指す治療方法を示したものである。

図2 喉頭がんの治療の選択の図(Tis、T1)
図5 喉頭がんの治療の選択(Tis、T1)
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌診療ガイドライン 2018年版」(金原出版)より作成
喉頭がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)

図3 喉頭がんの治療の選択の図(T2)
図6 喉頭がんの治療の選択(T2)
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌診療ガイドライン 2018年版」(金原出版)より作成
喉頭がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)

図4 喉頭がんの治療の選択の図(T3)
図7 喉頭がんの治療の選択(T3)
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌診療ガイドライン 2018年版」(金原出版)より作成
喉頭がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)

図5 喉頭がんの治療の選択の図(T4a)
図8 喉頭がんの治療の選択(T4a)
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌診療ガイドライン 2018年版」(金原出版)より作成
喉頭がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)

図6 喉頭がんの治療の選択の図(導入化学療法)
図9 喉頭がんの治療の選択(導入化学療法)
日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌診療ガイドライン 2018年版」(金原出版)より作成
喉頭がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)

薬物療法に用いる治療薬

化学放射線療法
シスプラチン
シスプラチンが投与できない場合は、カルボプラチンや分子標的薬のセツキシマブを放射線治療と併用する。
追加化学療法
シスプラチンとフルオロウラシル(5-FU)の併用(PF療法)
導入化学療法
シスプラチンとフルオロウラシル(5-FU)の併用(PF療法)、
シスプラチン、フルオロウラシル(5-FU)、ドセタキセルの3剤併用(TPF療法)
術後補助療法
シスプラチン
免疫チェックポイント阻害薬
喉頭がんではニボルマブが用いられている。

予防

頭頸部がんの予防策としては、下記のような対策が知られており、推奨されている。

  • 喫煙と飲酒の制限
    • 禁煙と節酒
      • 喫煙と飲酒は、頭頸部がんの主なリスク因子
  • 口腔衛生の維持
    • 口内を清潔に保つ
      • 歯磨きやうがいを習慣化
    • 慢性的な刺激も頭頸部がんの要因
      • 口内の清掃不良
      • ムシ歯の放置
      • 合わない入れ歯
      • 破れたかぶせ物など
  • ワクチン接種
    • 特定のヒトパピローマウイルス(HPV)は発症要因
    • HPVの予防接種を受ける
  • 健康的な食事
    • 栄養バランスの良い食事
  • 適度な運動
    • 全般的ながんの発症リスクを減せる

あとがき

頭頸部がんと生活習慣病との間には密接な関連性があることが知られている。

生活習慣の喫煙飲酒は、頭頸部がんの主なリスク因子であり、がんの発症に大きく関与している。特に、喫煙と飲酒は、口腔、咽頭・喉頭領域や食道および肺などの部位にがんが重複して多発する傾向がある。

口腔内の衛生状態(口腔衛生)も頭頸部がんの発症リスクと関連性があるらしい。口腔衛生の改善は、頭頸部がんだけでなく、全般的な健康状態の改善にも寄与している。

特定の型のヒトパピローマウイルス(HPV)やEBウィルスなどのウィルス感染も、頭頸部がんの一部と関連していると言われている。

このようにみてみると、確かに、頭頸部がんと生活習慣病との間には密接な関連性がありそうだ。むしろ頭頸部がんは、生活習慣病的な側面が強いかも知れない。何故なら頭頸部がんの主な原因が喫煙や過度の飲酒などの生活習慣に関連しているからである。そうであるなら、生活習慣の改善が頭頸部がんの予防に非常に重要なのは当然である。


【参考資料】
MSDマニュアル 家庭版・プロフェッショナル版
国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターHP