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悪性腫瘍(がん) 疾病

生活習慣病化した「乳がん」の原因・症状・検査・診断・治療・予防

はじめに

男性も乳がんを発症する事例が報告されている。米国のデータではあるが、生涯を通じて1000人に1人の男性が乳がんに罹患するらしい。そして、男性乳がんは女性に比べて5~10歳ぐらい高い年齢層で発症するとされ、65歳以降で発症する男性の割合が約7割を占めているので、シニア世代の男性は要注意である。

一方、女性が生涯を通じて、乳がんに罹患するのは8人に1人の割合であり、40歳代後半から50歳代前半の女性に発症することが多いと言われている。男性乳がんは、女性の乳がんの約1%程度とされるから、やはり乳がんは女性に頻発する疾患であると言える。

乳がんの発症には、遺伝的な要素やホルモンバランスなどの要素が関与していると言われているが、生活習慣の一部が乳がんの発症に影響を及ぼしていると指摘されている。

その生活習慣というのが、過度の飲酒、喫煙、閉経後の肥満、運動不足などを指している。これら要因が乳がんの発症リスクを高めると考えられていることから、今日では、乳がんを「生活習慣病」として数えないまでも、生活習慣一部が影響を及ぼす可能性が高い病気と言ってもよいのかも知れない。


<目次>
はじめに
乳がんとは
原因
症状
検査・診断
治療
予防
あとがき

乳がんとは

乳がん(breast cancer)は、乳腺の組織にできるがんで、多くは乳管から発生するが、一部は乳腺小葉から発生する。

男性にも発生することがある。乳がんは、乳房の周りのリンパ節や、遠くの臓器(骨、肺など)に転移することがある。

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乳がんは、非浸潤がん浸潤がんに大別される。非浸潤がんは、がん細胞が乳管や乳腺小葉にとどまっているがんであり、浸潤がんは、乳管や乳腺小葉の周囲まで広がっているがんである。浸潤がんの中で最も多いのは浸潤性乳管がんである。その他に特殊型がん粘液がん腺様嚢胞がんなど)や炎症性乳がんなどがある。

国内でも乳がんの患者数が急激に増加している。2014年には乳がんの患者数は、日本人女性のがんの中で大腸がんを抜いて第1位となり、7万6千人を越える人が乳がんにかかったと推定されている。


原因

乳がんは、はっきりとした原因は不明であるが、いくつかのことが危険因子といわれている。エストロゲンという女性ホルモンが、乳腺組織に作用する期間が長いほど、乳がんが発生しやすいとされている。


症状

乳がんの主な症状は、乳房のしこりである。ほかには、乳房にえくぼやただれができる、左右の乳房の形が非対照になる、乳頭から分泌物が出る、などがある。

乳がんは自分で見つけることのできるがんの1つであるので、日頃から入浴や着替えのときなどに、自分の乳房を見たり触ったりして、セルフチェックを心がけることが推奨される。ただし、セルフチェックでは見つけられないこともあるため、定期的に乳がん検診を受けることも重要である。

乳房のしこりは、乳腺症など、乳がん以外の原因によっても発生することがある。気になる症状がある場合は早めに乳腺専門医を受診し、早期発見につなげることが推奨される。

しこり
乳がんの代表的な症状は、乳房の硬いしこりである。痛みはほとんどない。しこりが触れても、その全てが乳がんの症状ではない。乳房の痛みが主体で、はっきりしたしこりを伴わない場合は、多くは乳腺症である。基本的には、乳がんでは痛みはみられない。
石灰化
石灰化は、乳房の一部に微細なカルシウムが付着したもので、乳がんでみられることがある。石灰化は、マンモグラフィーでは点状・粒状の白い影として映る。石灰化の原因は様々で、加齢による変化、乳腺症などでもみられるが、中にはがんによってできるものもある。マンモグラフィーによって、石灰化の形状や分布状態をみてがんが疑わしいかどうかを判定する(カテゴリー分類)
評価項目 良性のしこり悪性のしこり
硬さ消しゴムのよう石のよう
表面ツルツルした感じザラザラ、デコボコを伴う
境界がはっきりしていて、
くりくりした感じ
いびつで境界があいまい
可動性指で押すと逃げる指で押しても動きにくい
しこりの評価

検査・診断

乳がんの検査では、最初に、目で見て確認する視診と、触って確認する触診マンモグラフィ超音波(エコー)検査を行う。乳がんの可能性がある場合には、病変の細胞や組織を顕微鏡で調べて診断を確定する。がんの広がり方や転移を調べるためには、CT検査MRI検査骨シンチグラフィPET検査などの画像検査を行う。

視診・触診
視診では、えくぼやただれの有無、乳房の形の左右の差、乳頭からの分泌物の有無を、目で見て観察する。触診では、指で乳房からわきの下を触って、しこりの有無や大きさ、硬さ、動き方などを確認する。
マンモグラフィ
マンモグラフィは、病変の位置や広がりを調べるために行う乳房専用のX線検査。乳腺の重なりを少なくするために、2枚の板の間に乳房を挟んで圧迫し、薄く伸ばして撮影する。視診・触診で発見しにくい小さな病変や、超音波検査では発見しにくい微細な石灰化を見つけることができる。画像の性質上、高濃度乳房(乳腺の密度が高く、マンモグラフィで白く見える部分が多い状態)とされる場合では、病変が存在していても見つかりにくいことがある。
超音波(エコー)検査
乳房内の病変の有無、しこりの性状や大きさ、わきの下など周囲のリンパ節への転移の有無を調べる。超音波検査では、乳腺は白く、多くの乳がんは黒く写るため、マンモグラフィで高濃度乳房とされる場合では、超音波検査の方が乳がんの発見に役立つことがある。放射線による被ばくの心配がないため、妊娠中でも検査が可能である。
生検・病理検査
病変の一部を採取して顕微鏡で調べ、確定診断するための検査を病理検査という。
細胞診では、がん細胞の有無を調べる。主に、乳頭から出る分泌物の細胞を調べる細胞診と、超音波などの画像を見ながら病変に細い針を刺して注射器で吸い出した細胞を顕微鏡で調べる細胞診(穿刺吸引細胞診)がある。多くの場合、局所麻酔の必要もなく、手で触れながら、あるいは超音波で病変を確認しながら針を刺す。
組織診では、局所麻酔を行い、マンモグラフィや超音波検査で確認しながら病変の一部を採取し、顕微鏡で調べる。組織診には、注射針より少し太い針を使う「針生検」と、手術で組織を取る「外科的生検」がある。「針生検」には、ばねの力を利用して組織を採取する「コア針生検」と、吸引力も利用して組織を採取する「吸引式乳房組織生検」がある。がん細胞が含まれている場合には、がんの性質を調べ、最適な治療法の選択をしていく。
CT検査
X線を使って、主に遠隔転移(骨や肺などの別の臓器に転移すること)の有無を調べる。 手術や放射線治療などを検討するときに行う。
MRI検査
磁気を使って、乳がんの広がりを調べたり、乳がんかそうでないかを判断したりするために行う。 手術や放射線治療などを検討するときに行う。
骨シンチグラフィ
弱い放射線を放出する薬を注射して撮影することによって、がんが骨に転移しているかどうか (骨転移の有無)を調べるために行う。
PET検査
ほかの臓器への転移などについて確認するための検査。放射性フッ素を付加したブドウ糖(FDG)を注射し、がん細胞に取り込まれるブドウ糖の分布を画像にする。CT検査やMRI検査など他の検査では診断がはっきりしない場合に使用されることがある。
腫瘍マーカー検査
乳がんでは、現在、診断や病期の判定ができる腫瘍マーカーはない。ただし、再発や転移した場合に治療の効果をみるために、腫瘍マーカーのCEAやCA15-3 又はNCC-ST-439 を調べることがある。

治療

乳がんの治療法には、主に手術放射線治療薬物療法があるが、手術によってがんを取りきることが基本となる。手術後の病理検査によって、術後の治療計画を検討する。がんの状態によっては、術前薬物療法(手術の前に行う薬物療法)を行うこともある。乳がんの治療の大まかな流れが、図1に示されている。

図6 乳がんの治療の流れの図
図1 乳がんの治療の流れ
日本乳癌学会編「患者さんのための乳がん診療ガイドライン2019年版」(金原出版)より作成
乳がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)

病期(ステージ)

がんの進行の程度は、病期(ステージ)として分類する。乳がんの病期は、がんが乳房の中でどこまで広がっているか、リンパ節転移があるか、骨や肺など乳房から離れた臓器への転移があるかなどによって決まる(表1参照)。

表1 乳がんの病期の図
表1 乳がんの病期 (ステージ)
日本乳癌学会編「臨床・病理 乳癌取扱い規約 第18版(2018年)」(金原出版)より作成
乳がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)

乳がん治療の選択

治療方針は、がんの進行の程度に応じた標準治療を基本として、体の状態、年齢、患者本人の希望なども含めて検討し、決定される。乳がんの治療法は、 病期(ステージ)によって異なる。(図2参照)

図7 乳がんの治療の選択の図

図2 乳がんの治療の選択
日本乳癌学会編「科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン(1)治療編2013年版」(金原出版)、
日本乳癌学会編「患者さんのための乳がん診療ガイドライン2019年版」(金原出版)より作成
乳がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)
0期
乳房部分切除術乳房温存手術)または乳房全切除術を行う。がんの状態によってはセンチネルリンパ節生検が行われる。乳房部分切除術を行う場合は、手術後の放射線治療が必要になる。
Ⅰ~ⅢA期
乳房部分切除術または乳房全切除術を行う。乳房部分切除術後には放射線治療を行う。 放射線治療は、乳房全切除術後にも必要となることがある。がんが大きい場合は、術前薬物療法により手術の前に薬物療法でがんを小さくしてから手術を行うことがある。リンパ節への転移がある場合には、リンパ節郭清(リンパ節を切除する手術)が行われる。さらに、手術で切除した組織を使ってがんの広がりや性質なども調べ、必要に応じて薬物療法を行う。
ⅢB~Ⅳ期
主に薬物療法を行う。がんの状態によっては手術や放射線治療を追加する。
手術(外科治療)
乳がんの治療は、遠隔転移していることが明らかな場合を除き、がんを手術によって切除することが中心である。主な手術には、「乳房部分切除術(乳房温存手術)」と「乳房全切除術」とがある。
放射線治療
がんに高エネルギーのX線を照射することで、がん細胞を死滅させたり小さくしたりする治療法。乳房部分切除術の後には、原則として残った乳房の組織に対して照射する。乳房全切除術を行った場合は、手術した胸の範囲全体と、鎖骨の上の部分に対して照射することもある。1日1回、週5回で約4〜6週間かけて照射するのが一般的。
薬物療法
乳がんに対する薬物療法で用いられる薬には、ホルモン療法薬分子標的薬細胞障害性抗がん薬がある。薬物療法には、「再発の危険性を下げる(術前薬物療法・術後薬物療法)」、「手術前にがんを小さくする(術前薬物療法)」、「手術が困難な進行がんや再発に対して延命や症状を緩和する」などの目的があり、病期(ステージ)、リスクなどに応じて行われる。
緩和ケア/支持療法
緩和ケアとは、がんと診断されたときから、患者のQOLを維持するために、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげ、自分らしく過ごせるようにする治療法。がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われ、希望に応じて幅広い対応をする。支持療法とは、がんそのものによる症状やがん治療に伴う副作用・合併症・後遺症による症状を軽くするための予防、治療およびケアのことを指す。
リハビリテーション
一般的に、治療の途中や終了後は体を動かす機会が減り、身体機能が低下する。がんと診断されたことによって運動や身体活動を制限する必要はなく、むしろ日常的に運動を行うことが望ましいといわれている。

外科療法(手術)

房部分切除(乳房温存手術)
乳房の一部を切除し、乳房のふくらみや乳首を残す方法。温存した同じ側の乳房に目に見えないがんが残る可能性があるので、手術後に必ず放射線治療を行う。メリットは、乳房のふくらみや乳首が残る、傷が小さめで回復が早いなどがある。デメリットは、温存乳房に再発する可能性がある、放射線治療なども必要で治療が煩雑である、目に見えないがんが残ってしまい再手術を要することもある、など。
乳房切除(胸筋温存乳房切除術、非定型的乳房切除術)
病気のある側の乳房全体を切除する方法。通常は乳房の後ろ側の筋肉は残す(胸筋温存乳房切除)。乳首のない平らな胸となるが、筋肉が残るので胸が大きくえぐれることはない。部分切除に比べて局所再発率が少なく、安全確実な方法といえる。
腋窩リンパ節郭清
乳がんが進行すると、まず同じ側の腋の下(腋窩)のリンパ節にがんが広がり、リンパ節が腫れてくる。リンパ節の腫れがない場合でも、乳がんの手術では、ある程度は腋窩のリンパ節を切除するのが標準で、これをリンパ節郭清と呼んでいる。乳房切除または部分切除と組み合わせて行われ、術式名がそれぞれ異なる。
センチネル(見張り)リンパ節生検
がんのまわりに色素や放射性物質を注射して、それが流れついたリンパ節を、がんが最初に転移するリンパ節 (センチネル=見張りリンパ節)と考えて、そのリンパ節に転移があるかどうかを手術中に調べて、転移があった時だけ郭清する方法。メリットは、リンパ節郭清を省略できる可能性があり、その場合後遺症の心配がほとんどないことである。デメリットは、センチネルリンパ節を探すための薬を使うのでその副作用や費用、センチネルリンパ節をすり抜けて転移するがんの可能性が約5%あることなどである。乳房切除または部分切除と組み合わせて行う。
乳房再建
乳房切除で失った乳房の形を手術で作る方法で、形成外科で扱っている。腹部や背中の自分の筋肉を移植する方法と、人工的なバッグを入れる方法がある。また、手術治療と同時または近い時期に行う場合と、手術後半年から数年経ってから行う場合とあり、どちらも可能。ただし、再建を希望される患者は放射線治療を行わない方が望ましいため、乳房切除術(または皮下乳腺全摘術)が適応となる。

薬物療法

がんの中でも乳がんは、薬が比較的効きやすいがんである。また、一部の細胞には内分泌療法(ホルモン剤)が有効であることも特徴である。薬物療法のメリットは、血液を介して薬が全身に行き渡るため、病変が体のどの部位にあっても、また病変が複数あっても効果が期待できることである。デメリットは薬によって様々であるが副作用があることと、有効率が30~70%とまちまちで確実性が低く、また薬が効いても長く続けていると効き目がなくなってくることなどである。


乳がんの性質による治療薬の選択

ホルモン受容体陽性乳がん
ホルモン受容体陽性(女性ホルモンにより増殖する性質をもつこと)を「ルミナル」といい、ホルモン療法薬の効果が期待できる。がん細胞が増えるスピードが遅い(HER2陰性、Ki67が低値)という特徴をもつ場合には、ホルモン療法薬が治療の第一選択になる。がん細胞が増えるスピードが速い(Ki67が高値)という特徴をもつ場合には、ホルモン療法薬に加え細胞障害性抗がん薬も使う。ホルモン受容体が陽性でHER2が陰性の乳がんの場合、細胞障害性抗がん薬を使うかどうかを決めるために、多遺伝子アッセイという複数の遺伝子を調べる検査を行うことがある。
HER2陽性乳がん
HER2タンパクをもっている乳がんには、分子標的薬による治療を行う。原則として、細胞障害性抗がん薬と組み合わせて使う。
ホルモン受容体陰性・HER2陰性乳がん(トリプルネガティブ乳がん)
トリプルネガティブは、3つの陰性(エストロゲン受容体陰性、プロゲステロン受容体陰性、HER2陰性)を意味する。女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)によって増殖する性質をもたず、かつ、がん細胞の増殖に関わるHER2タンパクをもっていないという特徴がある。細胞障害性抗がん薬によって治療する。
図9 乳がんの性質による薬の選択の図
図3 乳がんの性質による薬の選択
乳がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)

乳がんの薬物療法で使われる治療薬

ホルモン療法薬
ホルモン療法薬は、ホルモンの分泌や働きを阻害し、ホルモンを利用して増殖するタイプのがんを攻撃する薬である。ホルモン受容体が陽性の乳がんであれば効果が期待できる。 種類としては、体内のエストロゲン(女性ホルモン)の量を減らすホルモン療法薬として、LH-RHアゴニスト製剤とアロマターゼ阻害薬、がん細胞がエストロゲンを取り込むのを妨げる抗エストロゲン薬がある。閉経前と閉経後では、体内でエストロゲンがつくられる経路が異なるので、それにあった薬を使う。閉経前では、抗エストロゲン薬に、場合によりLH-RHアゴニスト製剤を組み合わせて使う場合がある。閉経後では、アロマターゼ阻害薬もしくは抗エストロゲン薬を使う。
分子標的薬
がんの増殖に関わるタンパク質や、栄養を運ぶ血管、がんを攻撃する免疫に関わるタンパク質などを標的にしてがんを攻撃する薬剤である。一部の乳がんでは、HER2タンパクが乳がんの細胞の増殖に関連している。そのため、病理検査でHER2が陽性であれば、HER2を標的とする分子標的薬を使って治療する。多くの場合、他の細胞障害性抗がん薬と組み合わせて使う。乳がんの一部は遺伝性で、BRCA1BRCA2などの原因遺伝子が知られています。HER2が陰性で、BRCA1またはBRCA2遺伝子変異があり、手術ができない場合や再発したがんである場合には、分子標的薬のオラパリブを使うことがある。
細胞障害性抗がん薬
細胞の増殖の仕組みに着目して、その仕組みの一部を邪魔することでがん細胞を攻撃する薬剤である。がん以外の正常に増殖している細胞も影響を受ける。サブタイプ分類がトリプルネガティブ乳がんである場合に、細胞障害性抗がん薬を使う。その他の場合でも、がんの大きさや転移の状況、がんの増殖の要因などから判断して、他の薬や放射線治療とともに使うことがある。細胞障害性抗がん薬は、必要に応じて複数の薬を組み合わせて行う。複数の薬を組み合わせて使う例として、AC療法(ドキソルビシン、シクロホスファミドを組み合わせる治療)などがある。 抗がん剤には脱毛の他、白血球減少などの血液障害や、吐き気、食欲不振などの胃腸障害などの副作用があり、薬によって様々である。

ホルモン療法薬

抗エストロゲン薬
タモキシフェン(ノルバデックス®
トレミフェン (フェアストン®
ラロキシフェン(エビスタ®
LH-RHアゴニスト製剤
リュープロレリン(リュープリン®
ゴセレリン (ゾラデックス®
ブセレリン(スプレキュア®
アロマターゼ阻害薬
アナストロゾール(アリミデックス®
レトロゾール (フェマーラ®
エキセメスタン (アロマシン®

分子標的薬

抗HER2薬(HER2陽性の場合に使用)
トラスツズマブ(ハーセプチン®
ペルツズマブ (パージェタ®
HER2が陰性で、BRCA1またはBRCA2遺伝子変異がある場合
オラパリブ(リムパーザ®
チロシンキナーゼ阻害薬
ラパチニブ(タイケルブ®
ネラチニブ(NERLYNX®

化学療法(抗がん剤)

FEC療法
F(フルオロウラシル) E(エピルビシン) C(シクロフォスファミド)の3剤併用療法のこと。通常、3週間に1回点滴で薬剤を投与し、それを4~6回繰り返す。
アンスラサイクリン系薬剤
ドキソルビシン(アドリアシン®
エピルビシン(ファルモルビシン®
タキサン系薬剤
ドセタキセル(タキソテール®
パクリタキセル(タキソール®
内服抗がん剤
テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(TS1®
カペシタビン(ゼローダ®

予防

乳がんの予防策としては、下記のような対策が知られている。これらの予防策は、乳がんの発症を抑えたり、症状の軽減に繋がるとされ、その実践が推奨されている。

  • 飲酒を控える
    • 飲酒量が多いほど、乳がん発症リスクが増大
  • 禁煙
    • 喫煙は乳がんの発症リスクを高める
  • 適度な運動
    • 閉経後の女性では、定期的な運動が発症リスクを低減
  • 健康的な食事
    • 大豆食品を積極的に摂る
    • 大豆食品の摂取が発症リスクを低減
  • 体重管理
    • 閉経後の肥満を避ける
    • 適正体重を維持する
  • 乳がん検診
    • 40歳以上の女性は2年に1回は検診を受ける

あとがき

ストレスが乳がんの発症に影響を及ぼす可能性があるという話もある。不安や恐怖、怒りなどのストレスが生じると、交感神経の活動が高まり、がんの増大や転移に影響を及ぼすことが報告されており、ストレスを経験している女性と経験していない女性の間では、乳がんの発症率に2倍の差があったとの報告もある。

しかしながら、ストレスと乳がんの関連性については研究中であり、まだ最終結論が出ていない。そうは言っても、ストレスを受けて体調が良くなるわけではないので、ストレス管理は健康維持のためにも無視はできない。ストレスは貯めこまずに、早めに解消した方が良いに決まっている。


【参考資料】
国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターHP
乳がん 予防・検診:[国立がん研究センター がん情報サービス]
KOMPAS 慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト
MSDマニュアル 家庭版・プロフェッショナル版
乳がん | 生活習慣病 | 生活習慣病を予防する 特定非営利活動法人 日本成人病予防協会 (japa.org)
乳がんとストレスの関係は?乳がんの症状や種類、治療法についても解説 | メディガン (okuno-cl.net)