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アトピー性皮膚炎とは?原因は何?症状は?診断と治療法は?予防は?

はじめに

アトピー性皮膚炎は、幼児期や小児期にはポピュラーな疾病であるが、ストレスがアトピー性皮膚炎の発症や症状の悪化に影響を与えているらしい。つまりアトピー性皮膚炎とストレスは密接に関連しているというのである。

ストレスは、脳の自律神経や免疫系の働きを乱し、免疫細胞や炎症性サイトカインの過剰な産生を引き起こす。これにより、皮膚の炎症が増加し、アトピー性皮膚炎の症状が悪化する場合があるという。

また、アトピー体質の人がストレスを受けると、かゆみを感じやすくなるといわれている。これは、ストレスによって脳の自律神経や免疫系の働きが乱され、かゆみが増すためだと説明されている。かゆみを感じるとどうしても掻いてしまうが、それによって皮膚が傷つくだけでなく、細胞から炎症を起こす物質やかゆみを感じやすくする物質が出てくる。

まさかストレスがアトピー性皮膚炎にまで影響を及ぼしているとは正直、私は思っていなかったので、驚いている。

アトピー性皮膚炎を緩和させるためには、ストレス管理も必要であるということをもっと早くに知っていれば、育児のケアに工夫ができていたかも知れない。


<目次>
はじめに
アトピー性皮膚炎とは
原因
症状
検査・診断
治療
予防
あとがき

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis)は、 遺伝的感受性、免疫および表皮バリアの機能障害、並びに環境因子が複雑に関与して発生する皮膚の慢性炎症性疾患である。

小児ではその10%程度が罹患するとされるが、小児期のアトピー性皮膚炎は多くの場合、成人期までに消失するか有意に軽減する。 しかし、成人してから再発する患者も多く、社会的に注目されている疾病の一つである。


原因

アトピー性皮膚炎の患者の大半は5歳までに発症し、その多くは1歳未満で発症する。幼児期の感染因子への曝露が少なくなるとアトピー性疾患や自己タンパク質に対する自己免疫が発生しやすくなるという衛生仮説がある。

多くの患者やアトピー性皮膚炎を有するその家族には喘息やアレルギー性鼻炎もみられる。遺伝的な要因による皮膚の構造異常自体が結果的に免疫異常を誘導するというアトピー性皮膚炎発症機序の概念がある。

皮膚の最外層は角層といい、人の体を保護し、水分の侵入や侵入物に対する防御を行っている(バリア機能)。皮膚の細胞は細胞分裂し成熟しながら、上層へ移行していき、角層を形成(角化)し、最終的には剥がれ落ちる。

フィラグリンは、角層が形成される際に重要な役割を果たしているとされるタンパク質であり、分解されたアミノ酸は、保水作用を有し、天然保湿因子と称される。この発見によって、アトピー性皮膚炎は、遺伝子異常により、フィラグリンの機能障害がおこり、その結果、皮膚のバリア機能が障害され、外界からの様々な物質に慢性的にさらされ、免疫反応が持続的におこる結果、皮膚炎が生じ発症するという考え方が示された。

アトピー性皮膚炎との関連が報告されている遺伝子は、表皮および免疫系のタンパク質をコードする遺伝子である。 アトピー性皮膚炎の重要な素因の1つに、分化途中の角化細胞が産生する周辺帯の成分であるフィラグリンタンパク質の遺伝子変異があり、この変異は多くの患者でみられる。アトピー性皮膚炎による表皮バリアの障害としては、セラミドおよび抗菌ペプチドの減少と経表皮水分蒸散量の増加も知られており、それにより環境中の刺激性物質やアレルゲン、微生物の透過量が増加することで、炎症と感作が誘発される。

急性アトピー性皮膚炎の病変では、Th2細胞由来のサイトカイン(インターロイキン;IL-4、IL-5、IL-13)が優位となる。一方、慢性病変ではTh1細胞由来のサイトカイン(IFN-γ、IL-12)が認められる。他にも、胸腺間質性リンパ球新生因子(thymic stromal lymphopoietin)やCCL17、CCL22など、多数のサイトカインが アトピー性皮膚炎の炎症反応に関与している。特定のサイトカインを標的とする新しい治療法が、 アトピー性皮膚炎における特異的な免疫経路の同定に役立っている。

アトピー性皮膚炎は湿疹・皮膚炎群の一疾患に数えられるが、他の湿疹との大きな違いは、アトピー皮膚アトピックドライスキン)と呼ばれる乾燥した皮膚の存在である。アトピー皮膚の成因については、フィラグリンの変異ということから、角層細胞自身の異常が原因と考えられるようになった。

バリア機能障害があるところに様々な刺激、アレルギー反応を引き起こす因子が加わる。よくみられる環境性の誘因としては下記のようなものが知られているが、 他にも様々なものが悪化因子となり得る。そして個人差がある。

食物アレルゲン(牛乳、卵、大豆、小麦、ピーナッツ、魚など)
環境アレルゲン(チリダニ、ヒョウヒダニ、カビ、フケなど)
外用製品(化粧品、香料、刺激の強い石鹸など)
発汗、乾燥した空気、局所の刺激
粗い繊維(ウールの衣服など)
内因性抗菌ペプチドの欠乏による黄色ブドウ球菌の皮膚への定着
精神的ストレス

症状

アトピー性皮膚炎は通常は乳児期に、典型的には生後3カ月までに発症する。海外のデータでは50%が生後1年までに発症し、残りの30%は5歳までに発症している。 そう痒が主たる症状であり、皮膚病変は軽度の紅斑から重度の苔癬化まで様々である。

乳児では、顔、頭に発赤が生じ、かさかさ皮膚がむけてきたり、かさぶたのように付着物が生じる。さらに少し遅れて体、手足にも広範囲に乾燥、赤みが出てきる。いずれも痒いのが特徴である。耳切れといわれる、耳の付け根の部分に亀裂がしばしば生じてくる。

成長とともに体の皮膚では、毛穴に一致して軽く盛り上がり、ざらざらしたような感触を与える乾燥皮膚がはっきりしてくる。さらに肘の前、膝の後ろにはっきりとした湿疹の局面が出てくる。成人になると、顔や上半身の発疹が主になってくる。首には、しわに一致して色素沈着が目立ってくる。アトピー性皮膚炎以外の湿疹との区別は、一つは左右対称に出てくることが多く、広範囲である点である。もう一つはアトピー皮膚といわれる乾燥皮膚を全体的に持っていることである。


検査・診断

診断は病歴および診察による。 日本皮膚科学会で決めた診断基準では、痒みがあること、特徴のある発疹とその分布慢性的に繰り返す経過が三つの大きな基準になっている。

したがって、検査によって診断が決まるというのではなく、あくまでも症状経過によって診断される。繰り返す期間については、乳児では2ヶ月間、その他では6ヶ月間以上とされている。


検査

診断の参考、悪化因子の検索、治療の効果判定の補助のために検査を行う。

総IgE値
アトピー素因としてあげたIgEであるが、アトピー性皮膚炎の患者全体としてみると、7-8割で上昇している。状態が悪い患者ほど、IgEは高くなる傾向はあるが、2-3割は正常である。個々の患者でみると、必ずしも疾病の状態に比例しないことも多い。したがって、IgEの値が上がったからといってがっかりする必要もなく、また下がったからといって治ったとはいえない。あくまでも参考値として考えるべきである。
RASTスコア
アレルゲン(抗原)の検索で行われる検査で、各アレルゲン別のIgEスコアであり、0~6の7段階にスコア化されている。総IgEの高い患者では多くの抗原に対してRASTスコアが上昇することがある。その際にはすべてが疾病を悪化させているとは考えがたく、一般的にはスコアが4以上のものに注目する。
一般血液検査
白血球の一つの種類である好酸球の白血球全体の中での割合を測定する。これは皮疹の程度に比較的比例し、治療効果の目安となる。LDHあるいはLDと記載される乳酸脱水素酵素も上昇することが多く、発疹の状態と比較的よく比例する。
食物負荷試験、食物除去試験
ある食物がアトピー性皮膚炎の悪化因子となっているのかどうかを調べるための試験で、実際にその食物を食べてもらい、皮膚の状態を観察する。そして、実際に症状が変化するようであれば、逆にその食物を除去することで症状が改善するかどうかを調べる。

治療

治療としては保湿剤の使用とアレルギー性および刺激性の誘因を回避することのほか、しばしばコルチコステロイドまたは免疫調節薬の外用薬を使用する。

皮膚の乾燥、バリア障害、加わる刺激、アレルギー反応が疾病の原因として考えられるので、それぞれに対し、乾燥しないように保湿し、皮膚の保護をしていくスキンケアと、悪化させる因子を探し、それに対する対策を講じていく事が重要である。

薬物療法をうまく使うことも必要である。外用療法で効果がない場合は、光線療法 、デュピルマブ、免疫抑制薬を考慮する。

スキンケア
通常の石鹸を用い、手で泡立てるようにして洗い、清潔を保ち、長時間ではなく入浴し、直後にヘパリノイド製剤、ワセリンなど自分に合った保湿剤を全体に外用する。
悪化因子の検索および対策
ダニのアレルギーなどが血液検査で見つかった場合は、環境面でのダニ対策(たとえば、カーペット類を減らし、部屋の掃除、空気の入れ替え、布団の乾燥などに気をつけていくこと)により、さらに良い効果が生まれる。
薬物療法
湿疹病変などかゆいところには体ではステロイドの外用薬、顔ではタクロリムス軟膏などを主に使用する。抗アレルギー剤と呼ばれるかゆみ予防の薬剤を内服する場合も多い。皮膚が良い状態を継続していくことによって、悪化することが減っていき、外用薬も自然と手放せるようになっていく。
光線療法
紫外線A波(UVA)または紫外線B波(UVB)を用いた治療法。ナローバンドUVB療法は、従来のブロードバンドUVB療法より効果的であることが証明されつつあり、小児でも効果的である。ソラレンとUVAの併用療法(PUVA療法)は,病変が広範囲に及ぶ難治性アトピー性皮膚炎のみに用いられる。有害作用として日光障害がある(PUVA黒子、非黒色腫皮膚癌)があるので、小児または若年成人では光線療法(特にPUVA療法)は可能であれば避けたい。
デュピルマブ
アトピー性皮膚炎におけるIL-4およびIL-13のシグナル伝達を遮断する完全ヒトモノクローナルIgG4抗体である。デュピルマブは、12歳以上の患者における中等症から重症のアトピー性皮膚炎の治療に利用でき、他の処方薬および一般用医薬品や外用製剤で病勢を十分に制御できない患者に推奨される。
免疫抑制薬
外用薬のタクロリムスおよびピメクロリムスは、アトピー性皮膚炎に効果的なT細胞阻害薬である。軽度から中等度のアトピー性皮膚炎やコルチコステロイドの有害作用が懸念される場合に使用できる。

予防

アトピー性皮膚炎の予防策としては、下記のような方法が推奨されている。

  • 肌の乾燥に注意する
  • 肌への刺激を避ける
  • 肌の清潔を保つ
  • ストレスを溜め込まない
  • 適切な治療と環境整備

肌が乾燥すると、バリア機能が低下して外部からの刺激を受けやすくなる。それは、アトピー性皮膚炎を悪化させる可能性が高くなる。だから日常を通して、十分な保湿ケアで肌のうるおいを守ることが大切である。

洗顔するときに肌をゴシゴシこすったり、刺激の強い洗浄料を使ったりすると肌に刺激を与えることになる。その刺激によって肌のうるおいに必要な皮脂膜が失われ、アトピー性皮膚炎が発症しやすくなる。

汗や汚れもアトピー性皮膚炎発症の原因となる。汗をかいたら、早くシャワーなどで流し、肌の清潔を保つことが大切である。

ストレスはアトピー性皮膚炎の症状を悪化させる可能性がある。それはストレスを受けると自律神経系のバランスが崩れ、皮膚の乾燥や痒みを引き起こすからである。したがって、ストレスを溜め込まずに適切に解消させることが重要となる。

基本的にアトピー性皮膚炎には医師による適切な治療が不可欠である。しかしながら、悪化の原因を知り、その原因を生活の場から取り除くこと(環境整備)は有効な予防策となる。


あとがき

アトピー性皮膚炎はストレスと密接に関連しているらしい。小児期のアトピー性皮膚炎において、ストレスは悪化要因の一つとされている。例えば、受験のストレスや家庭内のトラブルなどが悪化要因になり得ると言われている。

大人になってから発症するアトピー性皮膚炎においても、精神的または肉体的なストレスが問題となることがあるという。

ストレスは体温を上昇させ、かゆみを引き起こす可能性がある。ストレスが続くと、かゆみも続くことになる。したがって、アトピー性皮膚炎においても適切なストレス管理と治療が重要であるということが理解できた。


【参考資料】
KOMPAS 慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト
MSDマニュアル 家庭版・プロフェッショナル版
アトピー性皮膚炎とはどんな病気? 原因、治療、付き合い方について | メディカルノート (medicalnote.jp)