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疾病 骨関節疾患

頸椎症とは?原因は何?症状は?検査・診断と治療法は?予防は?

はじめに

頸椎症は、加齢によって頸椎(首の骨)や椎間板(骨と骨との間のクッション)が変形し、神経が圧迫されることで痛みやしびれなどの症状を引き起こす病気である。つまり、頸椎症は、老化による椎間関節の傷みなどで症状が現れる状態のことを指す。

私も還暦を過ぎた頃から頸椎症を経験している。数年に1度は経験しているので、オリンピックの開催頻度よりも発症頻度の方が多いと言える。頸椎症になると、強い痛みで首を動かせないので、歩くのも、車の運転も苦痛になるから厄介である。また、首や肩の痛みだけでなく、手や腕のしびれなどの症状が現れる。

私の場合は、冬季の寒い時期が要注意時期となる。それは、寒さによって体が冷えると血行や血流が悪くなり、筋肉が硬くなるためである。血行や血流が悪くなると、筋肉の緊張や炎症反応が強くなり、頚椎症の症状が出たり、悪化したりする。運動量も極端に減少し、筋力が低下していることも原因の一つかも知れない。


<目次>
はじめに
頸椎症とは
原因
症状
検査・診断
治療
予防
あとがき

頸椎症とは

頸椎症(cervical spondylosis)は、頸椎変形性関節症である。頚椎の異常や障害は、しばしば重大な日常生活動作の障害をもたらす。

頚椎は、頭部と体幹の間に位置し、生命を維持する脳幹下部と手指や下肢の機能をつかさどる神経頚髄)をその中に保護している。頚椎は、第1頸椎(C1)から第7頸椎(C7)まで存在し、第1頸椎と第2頚椎は頸部の回旋運動を担い、第3頸椎から第7頸椎は前屈や後屈運動を主に担当する。

頚椎と頚椎の間には、椎間板と呼ばれる軟骨のクッションが存在する。中高年になると椎間板が傷んでくる変化は誰にでも生じる。さらにその程度が進行すると、骨棘や椎間板の突出、更には脊髄後方に存在する黄色靭帯の肥厚が生じ、脊髄が圧迫を受ける原因となる。頚部の神経組織は大きく分けて脊髄(頚髄)とそこから枝分かれする8本の神経根から構成される。神経根は腕神経叢と呼ばれる神経の束を形成し、腕や手指の運動と感覚をつかさどっている。

頚椎によって構成される神経の通り道のことを脊柱管と呼ぶ。脊柱管の前後径は男性で16mm、女性で15mm程度であるが、日本人は欧米人と比較して、脊柱管前後径が小さい人が多いことが知られている。脊柱管前後径が小さい場合、少しの頚椎の変形が神経障害につながるため、日本人は欧米人に比較して脊髄障害を発症する確率が高い。


原因

変形性関節症による頸椎症はありふれた疾患である。特に先天的に脊柱管が細い(10mm未満)場合には,変形性関節症により,脊柱管の狭窄と骨組織の脊髄への接触が生じることで,圧迫および脊髄症(脊髄の機能的障害)を来すことがある。黄色靱帯の肥厚はこの影響を増悪させる可能性がある。椎間孔の骨棘は,C5とC6の間またはC6とC7の間に最も多くみられ,神経根障害の原因となりうる。ときに脊髄および神経根に影響が及び,脊髄神経根障害を引き起こすことがある。


症状

神経に由来する症状は神経根症状脊髄症状に分けられる。神経根が障害された場合には、片側の腕や肩甲骨の裏側に放散する痛みやしびれ、さらに脱力や筋肉がやせるといった症状が生じる。

一方、脊髄が障害された場合には、手指の巧緻運動障害(指の細かな動きがしにくい、グーパーが素早くできない)・痙性歩行(つまずきやすい・歩行がぎこちない・ふらつく)・膀胱直腸障害(頻尿・開始遅延・失禁)が生じる。神経根障害は自然経過で軽快することもあるが、重度な脊髄障害は早期に外科的治療を要する。

神経根圧迫
早期には根性痛が生じ、その後は筋力低下、反射低下、および筋萎縮が生じることもある。 根性痛とは神経根から痛みの電気信号が脳に向かうが、脳はそれを神経根から来たとは判断できず、下腿などで発生した痛みだと誤認することをいう。
脊髄圧迫
手足に痙性不全麻痺、錯感覚、またはその両方が徐々に生じていき、反射亢進がみられることもある。

検査・診断

一般に単純X線検査、CT検査、MRI検査、脊髄造影検査などが施行される。最終的には自覚所見、他覚所見、画像診断を包括的に評価し、診断する。


治療

神経根障害のみの患者に対しては、非ステロイド系消炎鎮痛薬 (NSAID)および軟性頸椎カラーによる保存的治療を試みる。このアプローチが無効の場合には外科的減圧術が必要になることがある。

病変が脊髄に及んでいる患者又は難治性神経根障害に対しては、頸椎椎弓切除術が必要である。後方アプローチにより圧迫を緩和できるが、前方に圧迫性の骨棘が残り、そのために脊椎不安定性と脊柱後弯症が生じる場合もある。そのため、一般に前方アプローチによる脊椎固定術が好まれる。


予防

頸椎症の予防策としては、下記のような対策が知られている。これらの予防策を実践することで、頸椎症のリスクを軽減することができるとして、実践が推奨されている。

  • 姿勢に気をつける
    • 頚椎に負担をかけるような姿勢は避ける
      • 長時間の前かがみ姿勢での作業
      • 頭を前に出した状態での作業
      • スマートフォンの長時間使用など
    • 適切な姿勢を保ち、定期的に休憩を取る
  • 適度な運動
    • 適度な運動を行い、筋力の強化や柔軟性を維持する
    • 頚部の筋肉を鍛えるエクササイズやストレッチ
  • ストレスの管理
    • ストレスは筋肉の緊張を引き起こす
    • 頚椎症の症状を悪化させる可能性がある
  • 枕が合っているか見直す
    • 首の位置を適切に保つこと重要
    • 枕の高さや硬さを見直す
      • 就寝中も首が適切な位置を保てるようにするため

あとがき

幸い、ここ数年は頚椎症を再発していないのは、率直に嬉しい。頚椎症は再発する可能性が高く、頚椎症は一度症状が改善しても、神経圧迫が残っている場合が多く、再発を繰り返しやすいと言われている。特に、生活習慣や姿勢が改善されない場合は再発のリスクが高まるらしい。

頚椎症は、生活習慣病には数えられてはいないが、生活習慣が頚椎症の症状を引き起こしたり悪化させたりする可能性がある。つまり、長時間の同じ姿勢や不適切な姿勢は頚椎に負担をかけ、症状を悪化させる可能性があるということだ。

頚椎症の予防や管理は、適切な姿勢の維持、適度な運動、ストレスの管理などの生活習慣の改善が重要であることがよく理解できた。頚椎症の再発によって、整形外科や整骨院に通うことになるのはもう勘弁してほしい。そのためなら生活習慣の改善は苦にはならない。


【参考資料】
KOMPAS 慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト
MSDマニュアル 家庭版・プロフェッショナル版