カテゴリー
疾病 自己免疫性疾患

関節リウマチとは?原因は?症状?検査・診断と治療法は?予防策は?

はじめに

加齢に伴う老化のプロセスで発症するリスクが高い疾病の一つとして「関節リウマチ」がある。

関節リウマチは、免疫の異常により関節の一部である「滑膜」という軟らかい膜が必要以上に増殖することで炎症が起こり、近くにある骨を溶かしてしまう病気であるとされる。

主に手足の関節で発生し、30~50代の女性に多く、頻度は100人に1人程度、約1%というから結構な高率の発症率である。

病気が進行すると、関節がどんどん破壊されて紡錘形状(真ん中が太くなること)に腫れたり、指が変形したりする。また、手首の関節がずれて変形することもあるらしい。

関節リウマチは、「滑膜」が勝手に増殖する病気なので、滑膜があるところに症状が現れる。滑膜は関節以外に腱にも存在するので、腱が炎症を起こして手首が痛む「腱鞘炎」になることも少なくないという。関節リウマチが発症するとQOL(生活の質)は一気に低下する。

関節リウマチの治療は、病気の進行を遅らせ、痛みを軽減し、関節の機能を改善し、日常生活の活動を維持することを目標にしている。つまり、「根治療法」ではなく、「対症療法」または「疾患修飾療法」(病気の進行を遅らせる治療法)である。

医療の進歩のおかげで、今日では関節リウマチの治療法が進歩しており、適切な治療を受けることできる。そして多くの患者は活動的で充実した生活を送ることができるようになったのは喜ばしいことである。

だからと言って、自ら望んで関節リウマチを発症させてよいわけではない。できることなら関節リウマチの症状を体験しないままで天寿を全うしたいものである。


<目次>
はじめに
関節リウマチとは
原因
症状
検査・診断
治療
予防
あとがき

関節リウマチとは

関節リウマチ(rheumatoid arthritis: RA)は、 主に関節を侵す慢性の全身性自己免疫疾患である。

外敵から体を守る免疫の異常によって関節に炎症が起こり、腫れや痛みが生じる。女性が男性の 2~3倍ほど多く、発症が最も多い年齢は35~50歳代である。また、国・地域によって頻度は異なるが、推定発症率はおよそ0.5~1%といわれており、国内推定患者数は60~100万人と考えられている。

関節とは骨と骨の連結部のことで、2つの骨と、骨の間のクッションの役割をする軟骨、それらを包む関節包と滑膜などから成る。滑膜は薄い膜で、潤滑油の働きをする関節液を分泌し、関節の中はこの関節液で満たされ、滑らかに動くことができる。関節リウマチでは、この滑膜に炎症が起こり、滑膜が増殖する。

ただ痛いだけではなく、無治療のままでは関節中の骨や軟骨、腱が破壊され、関節が変形していく。

かつては治らない難病とされていたが、現在は抗リウマチ薬の進歩によって、寛解という、関節の痛みや炎症がない状態へとコントロールすることが可能になった。また、関節破壊は発症2年以内に急速に進行することが分かり、早期診断・早期治療によって速やかに寛解へ導くことが重要と考えられている。


原因

RAでは自己免疫反応がみられるが、正確な原因は不明である。多くの因子が寄与している可能性がある。遺伝的素因が同定されており、白人の集団ではクラスII組織適合性抗原のHLA-DRβ1座のshared epitopeにあることが分かっている。未知または未確定の環境因子(ウイルス感染、喫煙)が関節の炎症の誘発および維持に寄与していると考えられている。

遺伝的な要因に、出産や喫煙、感染症などの環境の要因が重なって起こるという考えについて、最近の報告では、ある遺伝子の型を持っている人が喫煙をすると、発症リスクが20倍以上になることが分かっている。

家系調査では、RAの人の3親等以内は発症する率が高く、33.9 %の確率という報告がある。また、一卵性双生児の一方がRAであった場合には、15~30%の確率でもう一人もRAである。

一方、二卵性双生児では7%程度といわれている。疾病そのものが遺伝するわけではないが、遺伝的素因が関与することが示唆されている。ほかの人にうつる疾病ではない。


症状

主な症状は関節の痛み、腫れ、朝のこわばりなどである。左右対称性に複数の関節に起こることが多く、腫れている部分は軟らかいのが特徴である。

90%以上の人が手足の指の関節に症状がみられ、ほかに膝、肘、肩、足首などにも痛みが出る。特に上肢の関節に強い傾向があり、膝、足首では腫れや熱感なども多い症状である。手の指は、第1関節に症状が起こることはまれで、第2関節や指の付け根の関節に症状が出ることが多いのも特徴である。また、第1及び第2頸椎以外の背骨にはあまり影響が出ない。


検査・診断

2010年に欧米を中心に基準が改訂された(下図参照)。この基準は、腫れや痛みのある関炎の数、期間、リウマチ因子や抗CCP抗体の有無、炎症反応の有無によってスコア化して判断する。

しかしRAの人でも約10~20%はこの基準を満たさないこともあるので、診察所見、血液検査、X線検査に加え、MRIや超音波などの画像検査を組み合わせて判断する。

図2 関節リウマチの新分類基準(2010年 米国リウマチ学会・欧州リウマチ学会)
関節リウマチの新分類基準(2010年 米国リウマチ学会・欧州リウマチ学会)
血液検査
リウマチ因子と抗CCP抗体、CRPや赤沈などの炎症反応、軟骨破壊に関係している酵素であるMMP-3などを重点的にチェックする。抗CCP抗体は、リウマチ因子に比べてより早期に、より特異的に検出でき、さらに抗CCP抗体が非常に高い例では、関節破壊が急速で高度になる傾向があることが知られている。逆にリウマチ因子や抗CCP抗体も関節リウマチ患者の10~20%は陰性であるため、血液検査のみで関節リウマチを診断することはできない。関節の炎症を反映して、CRPや赤沈などの炎症反応やMMP-3が高値となることも重要な参考所見の一つである。
画像検査
関節周囲の骨粗鬆症、関節の隙間の狭小化、骨びらん、強直などがみられる。膝のX線では、変形性関節症と異なり、内側外側ともに均等に狭くなるのが特徴である。

治療

寛解という明確な治療目標を設定し、指標をもとに早期から抗リウマチ薬によって治療することが推奨されている。

病気の活動性の制御を意味する臨床的寛解、関節破壊が進行しない事を意味する構造的寛解、身体機能の維持を意味する機能的寛解の3つをいずれも満たすことを目標としている。

抗リウマチ薬には、大きく分けて免疫抑制薬、生物学的製剤および分子標的合成薬がある。また骨粗鬆症治療薬の1つとして使用されている抗RANKL製剤が骨びらんを伴うRAにも使用され始めており、骨破壊を防ぐ治療選択肢の1つとなっている。


抗リウマチ薬

免疫異常を抑えて関節の炎症や活動性を抑制する。効果が出るまでに平均2~3ヶ月程度かかる。また効果には個人差があり、有効例と無効例がある。

メトトレキサート
(リウマトレックス®、メトレート®、メソトレキセート®など)
免疫抑制作用を有する葉酸拮抗薬。RA 治療において最も基本となる重要な薬剤である。高い継続率、骨破壊進行抑制効果、他の抗リウマチ薬や生物学的製剤との併用で高い有効性を示すことが世界中から報告されている。
サラゾスルファピリジン(アザルフィジンEN®など)
比較的早期で軽症~中等症の患者に有用性がある。副作用や合併症などによりメトトレキサートが使用できない患者にも第一選択薬となる。
ブシラミン(リマチル®
サラゾスルファピリジン同様、早期で軽症~中等症の患者さんに有用性がある。
タクロリムス(プログラフ®
免疫抑制薬。2005年に関節リウマチへの適応も承認された。
ミゾリビン (ブレディニン®
免疫抑制薬。腎機能障害や間質性肺炎があり、メトトレキサートを使用できない患者においても使用できる。
イグラチモド(ケアラム®、コルベット®
メトトレキサート効果不十分な場合に追加併用効果がある。
レフルノミド(アラバ®
メトトレキサートとほぼ同等の抗リウマチ作用があり、海外ではメトトレキサートの次に多く使用されている抗リウマチ薬。

バイオ医薬品

リツキシマブ
B細胞を枯渇させる抗CD20抗体。難治例に用いることがある。
サリルマブ
IL-6阻害薬。 活動性が中等度から重度のRAの成人患者に使用。
トシリズマブ
IL-6阻害薬
バリシチニブ
ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬(経口)。 活動性が中等度から重度のRA患者に使用。
トファシチニブ
JAK阻害薬

予防

関節リウマチの予防策としては、下記のような対策が知られている。これらの予防策は、関節リウマチの発症を抑えたり、症状の軽減に繋がると考えられており、推奨されている。ただし、これらの予防策が全ての人に効果的であるわけではないため、これらを参考に自分自身に合った予防策を見出すことが大切である。

  • ストレスの管理
    • ストレスは貯めないで解消すること
    • 根を詰めずに適度に休息をとる
  • 適度な運動
    • 関節を定期的に動かすことが望ましい
  • 禁煙
    • 喫煙は発症リスクを高めるため、禁煙が推奨
  • 健康的な食事
    • バランスの良い食事を心がける
    • 免疫力を高める食事を摂ることが重要
  • 体重管理
    • 肥満は関節に過剰な負荷をかけるので減量する
    • 適正体重を維持することが推奨される

あとがき

関節リウマチは、生活習慣病ではないが、関節リウマチの発症や症状の悪化には、喫煙や感染症などの生活習慣が影響を及ぼす可能性があると言われている。特に、喫煙は関節リウマチの発症、増悪、合併症、治療反応性の全てに関与すると考えられている。

また、歯周病があると関節リウマチの活動性が高くなりやすいと考えられている。関節リウマチにまで歯周病が関与しているとは驚きである。歯周病は生活習慣病である。


【参考資料】
KOMPAS 慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト
MSDマニュアル 家庭版・プロフェッショナル版
関節リウマチと生活習慣 たばこや虫歯との関係 | 東広島記念病院