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前立腺肥大症とは?原因は?症状?検査・診断と治療法は?予防策は?

はじめに

幼子が年齢を重ねて成長していくのは楽しみである。加齢は自然なプロセスで、人間が時間とともに成長し、発展する一部であるからだ。

一方、シニア世代にとっての加齢は、避けられない現象であり、生きている証でもあるが、健康的なライフスタイルを維持することが徐々に困難になってくる、やっかいなものである。加齢による身体の変化を管理し、健康を維持することがシニア世代に課せられた課題と言えるかも知れない。

私のようなシニア世代の男性が注意しなければならない病気の一つに「前立腺肥大症」がある。前立腺肥大症は、加齢とともに発症率が増加することで知られる病の一つである。

50歳以上の男性では、約30%が前立腺肥大症を発症し、70歳以上では約70%以上が前立腺肥大症になると言われている。にもかかわらず、前立腺肥大症の具体的な原因はまだ完全には解明されていない状況である。

前立腺肥大症は男性特有の病気で、前立腺が大きくなることで尿の出方や勢いが悪くなるなどの排尿障害が起こるとされる。前立腺肥大症の治療法としては薬物治療や手術などがあるというが、できることなら罹患はしたくないものである。


<目次>
はじめに
前立腺肥大症とは
原因
症状
検査・診断
治療
予防
あとがき

前立腺肥大症とは

前立腺は男性のみが持っている臓器であり、膀胱の出口の尿道を取り囲む形で存在している。形態は、栗の実のような形と大きさをしている。精液の一部分を作っており、射精や排尿の調節に関わっている。この前立腺が大きくなり、尿の通り道が狭くなることで様々な症状をきたす病態を前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia:BPH)という。

BPHは、前立腺尿道周囲部が良性腺腫として増大した状態である。症状は下部尿路閉塞の症状である(尿勢低下、排尿遅延、頻尿、尿意切迫、夜間頻尿、残尿、終末時滴下、溢流性または切迫性尿失禁、完全尿閉など)。


原因

BPHの病因は不明であるが、おそらく加齢に関連したホルモン変化が関与していると考えられている。複数の線維腺腫性結節が前立腺の尿道周囲部で発生し、結節の進行性増大により辺縁に追いやられている。前立腺部尿道の内腔が狭窄化および延長するに伴い、尿流は進行的に阻害される。


症状

前立腺が肥大すると、前立腺の中央を通っている尿道を圧迫するようになり、尿が出にくくなる。また、肥大した前立腺が膀胱を圧迫することもある。症状は次のように、さまざまなものがある。

頻尿:排尿回数が平均に比べて多くなる
尿意切迫:耐えがたい尿意を覚える
夜間頻尿:頻尿の症状が夜間に生じ、眠りについたあとに何度も尿意のために起きる
排尿遅延:トイレに向かってから尿が出るまでに時間がかかる
排尿中断:まだ膀胱に尿が残っているにもかかわらず、排尿中に尿が出なくなる
尿の勢いが弱い
腹に力をいれないと排尿できない
残尿感:排尿した後も、尿が残っているような不快感が残る
尿閉: 膀胱に溜まっている尿を排尿したくても円滑に排泄できない

検査・診断

診断は主に直腸指診と症状に基づき、膀胱鏡検査、経直腸的超音波検査、尿流動態検査、その他の画像検査が必要になることもある。

問診
I-PSS(国際前立腺症状スコア)というアンケート用紙に点数をつけていただいて排尿状態、満足度を評価します。
直腸指診
前立腺の大きさや硬さを調べるために、肛門から指を入れて直腸の壁ごしに前立腺をさわります。診察時には仰向けに寝て、両膝を抱えるような格好をして頂きます。
尿流測定
コンピュータ装置とつながった小便器に実際に排尿して、おしっこの勢いや排尿にかかる時間を測定します。そして測定結果をグラフにして排尿状態を調べます。
残尿測定
排尿した後、膀胱に残っている尿の量を測るのが残尿測定です。検査には超音波装置を利用した機械で測ります。
前立腺超音波検査
肛門からプローブ(細い超音波装置)を入れ、直腸内から前立腺の形や大きさを調べます。腹部エコーよりも臓器の間近から発信させるために、くわしい状態を知ることが出来ます。直腸内にプローブを入れるために、若干の痛みを感じる方もいらっしゃいます。

治療

BPHの治療は、まず薬物療法からはじめて、自覚症状や検査で薬の効果を確認しながら、薬物療法が不十分な場合などに手術をするのが一般的である。 治療薬の選択肢としては、 α受容体遮断薬(テラゾシン、ドキサゾシン、タムスロシン、アルフゾシンなど)、 5α還元酵素阻害薬(フィナステリド、デュタステリドなど)、 ホスホジエステラーゼ5阻害薬 (タダラフィルなど;ただし、勃起障害を併発している場合 )が挙げられる。

薬物療法
主にα受容体遮断薬という薬剤を使う。前立腺や尿道の筋肉には、蓄尿をコントロールしている自律神経(交感神経)の命令を受け止めるα受容体という器官がたくさん存在している。α受容体遮断薬は、α受容体に作用する薬剤であり、α受容体と結びつき、自律神経(交感神経)の命令が前立腺や尿道の筋肉に伝わらないようにする。自律神経の過剰な命令によって緊張している前立腺や尿道の筋肉が、ゆるんでリラックスするので、排尿障害の各種症状が改善されるわけである。他の薬物療法としては、前立腺の局所の男性ホルモンの働きを抑える抗男性ホルモン剤ホスホジエステラーゼ阻害剤抗コリン剤などを使用することもある。
手術
内視鏡を用いた手術が広く行われるようになってきている。標準的な手術は経尿道的前立腺切除術(TUR-P)という。尿道から内視鏡を挿入して、先端についているループ状の電気メスで、肥大した前立腺の内側(内腺)をけずりとる手術である。通常は手術後1週間以内に退院できる。手術の合併症としては出血や発熱などがありえる。術後に勃起障害、逆行性射精(射精時に精液が膀胱へ逆流)や尿道狭窄などが起こる可能性がある。また狭心症や心筋梗塞、不整脈などの心臓病がある人は、手術を受けられないことがある。

予防

前立腺肥大症の予防策としては、下記のような対策が有効とされ、推奨されている。前立腺肥大症の発症の時期を少しでも遅らせ、進行を抑制し、健康維持のために役立てたいものである。

  • 適度な水分摂取
    • 1日に約2リットル(目安)の水分を摂取
    • 節酒または禁酒(アルコールは水分不足の原因となる)
  • 食事
    • イソフラボノイドの摂取(発症の抑制効果を期待)
      • 大豆、納豆、みそなどの食品に多く含まれる
    • 刺激物を食べ過ぎない
  • 適度な運動
    • 有酸素運動
      • 散歩、ジョギング、水泳など
  • 排尿習慣
    • 尿意を感じたら、我慢せずに早めにトイレに行く
  • 排便習慣
    • トイレでいきまない
    • 便秘をしない
  • 生活習慣
    • 長時間座ったままの体勢を避ける
    • 一定の時間でストレッチを心掛ける
    • 下半身を冷やさないようにする

あとがき

前立腺肥大症と前立腺がんとは別の病気であり、前立腺肥大症から前立腺がんに進展することはないのは安心である。

しかしながら、前立腺肥大症の症状である頻尿や残尿とった排尿トラブルは、症状だけをみると前立腺がんが進行して症状が顕在化した場合と非常によく似ている。

つまり前立腺がんには元々自覚症状がないから、排尿トラブルとなって顕在化した場合、前立腺がんがかなり進行している可能性が高い。症状が前立腺肥大症のものなのか、前立腺がんによるものかを病院で早急に確かめてもらう必要がある。

いずれにせよ、シニア世代の男性は、定期的に健康診断を受け、早期発見につなげることが大切となる。


【参考資料】
KOMPAS 慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト
MSDマニュアル 家庭版・プロフェッショナル版
前立腺肥大症を予防・治療する方法とは?前立腺がんと何が違うの? – 医療法人神楽岡泌尿器科 | 北海道旭川市 (kagu-uro.or.jp)