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尿路感染症とは?原因は?症状は?検査・診断と治療法は?予防策は?

はじめに

尿路感染症は、腎臓、膀胱、尿管における感染症の総称である。尿路感染症と加齢は関連があり、高齢者にとっては尿路感染症は決して珍しい疾患ではない。

高齢者が尿路感染症になりやすい理由は、免疫機能の低下や基礎疾患の存在、膀胱の筋力の低下などが挙げられている。また、加齢に伴い、尿の排出機能が低下することがあり、その結果として排尿する回数が増え、尿路感染症の発症リスクが高まる。これらの要因が相まって、加齢による尿路感染症の発症リスクが増大すると考えられている。

尿路感染症の症状には、頻尿、尿の切迫感、腹痛、腰痛、尿の異常、発熱などがあるが、高齢者ではこれらの症状が明確に現れない場合があるという。

尿路感染症の症状が顕在化しない無症候性の場合でも、感染は体内で進行している可能性がある。感染が進行すれば、腎臓などのより重要な臓器にダメージを与える可能あり、これは特に高齢者にとっては深刻な問題となる。自覚症状がないために診断が遅れて、そのため早期発見とはならず、適切な治療の開始が遅れる。そうすれば、当然ながら予後も悪くなってしまう。症状に痛みを伴わないということは、決して良いことばかりではない。


<目次>
はじめに
尿路感染症とは
原因
症状
検査・診断
治療
予防
あとがき

尿路感染症とは

尿路感染症(urinary tract infections;UTI)とは、腎臓、膀胱、尿道、前立腺、精巣、精巣上体などの尿の通り道に起きる感染症である。

炎症の起こっている場所によって膀胱炎尿道炎前立腺炎などに分かれる。UTI は小児、性的活動期、高齢者に多い疾患である。

腎臓から尿管までを上部尿路といい、ここに炎症がおこったものが上部尿路感染症(Upper urinary tract infection;Upper UTI)である。代表的疾患は尿の通り道を逆行して腎臓に炎症がおこる腎盂腎炎である。

また、膀胱から尿道までを下部尿路といい、ここに炎症を起こした場合は下部尿路感染症(Lower urinary tract infection;Lower UTI)という。

性的交渉で感染する感染症を性行為感染症(sexually transmitted disease;STD)という。


原因

腎臓から外尿道口までの尿路は、遠位尿道が大腸内の細菌によって頻繁に汚染されるにもかかわらず、正常では無菌であり、細菌の定着に対して抵抗力を有している。

UTIに対する主要な防御機構は、排尿時に膀胱が完全に空になることである。尿路を無菌に保つその他の機構としては、尿の酸性度、膀胱尿管弁、種々の免疫および粘膜バリアなどがある。

UTIの原因は、細菌が 尿道から膀胱内へ上行(逆行) することで 発症することが最も多い(約95%)。 残りのUTIは血行性である。

他の疾患の合併症や膀胱結石、膀胱ののび縮みする力が弱まっていたりという感染を引きおこしやすい背景のないものを単純性尿路感染症(Simple urinary tract infection;Simple UTI)といい、合併症や感染を起こしやすい背景をもつものを複雑性尿路感染症(Complex urinary tract infections;Complex UTI)という。

一般に Simple UTI は急性であることが多く、 Complex UTI は慢性の経過をたどる。 原因菌としては大腸菌(Escherichia coli; E. coli)が最も多く(全症例の75~95%を占める)、 Complex UTI では E. coli の他、肺炎桿菌(Bacillus pneumoniae)やブドウ球菌(Staphylococcus)などの割合が多くなっていく。 グラム陽性細菌の中では,腐性ブドウ球菌(Staphylococcus saprophyticus)が細菌性UTIの5~10%で分離される。

STDの病原菌としてはクラミジアトラコマチス(Chlamydia trachomatis)や淋菌(gonococcus)が一般的であるが、若年者では梅毒(Syphilis)の場合も増加傾向にある。


症状

Upper UTI は、一般的に症状の出現が急激であり、発熱炎症が起こっている側の背部痛血尿寒気嘔気嘔吐が特徴的である。 約3分の1の Upper UTI 患者に おいては、同時に Lower UTI の症状がみられる。

Lower UTI には、トイレが近い、常に尿意をもよおす、尿をする前後の痛み等の症状がある。下腹部の痛みと、しばしば腰の下部の痛みを伴うことがある。前立腺炎、精巣上体炎などは発熱を伴う事が多くみられる。

尿道炎
尿道の細菌による感染。排尿困難と主に男性における尿道分泌物である。分泌物は膿性、白色調、または粘液性の場合がある。
膀胱炎
膀胱の感染症である。通常突然発生し,典型的には頻尿、尿意切迫、灼熱感または疼痛を伴う少量の排尿がみられる。夜間頻尿がよくみられ、恥骨上部痛やときに腰痛を伴う。尿はしばしば混濁し、顕微鏡的(またはまれに肉眼的)血尿が発生する可能性がある。軽度の発熱が認められることもある。膀胱炎は女性でよくみられ,単純性膀胱炎は通常,性交がそれに先行する(ハネムーン膀胱炎)。
急性腎盂腎炎
腎実質の細菌感染症である。症状は、膀胱炎と同様の場合がある。3分の1の患者で頻尿および排尿困難がみられる。しかしながら,腎盂腎炎では,症状は典型的には悪寒、発熱、側腹部痛、腹部仙痛、悪心、嘔吐などである。

検査・診断

尿検査
白血球反応や潜血反応が陽性になることが多い
尿沈渣
白血球や細菌がみられることもある
血液検査
膀胱炎・尿道炎では血液検査上はほとんど異常はない。一方、腎盂腎炎・前立腺炎・精巣上体炎では白血球、CRPという炎症反応が上昇することが多い。
細菌検査
尿培養を行い、原因菌をみつけ、その原因菌 を殺すのにどの抗生物質・抗菌剤が有効かを判定する
クラミジア、淋菌の検査
STD の場合に実施
画像検査(必要に応じて、超音波、レントゲン、排泄性尿路造影、CTスキャンなど )
Complex UTI (結石を伴った腎盂腎炎など)では、早急な処置が必要になる

治療

原因によって適切な治療を行うが、一般的には抗菌剤抗生物質を使用する。膀胱炎や尿道炎の場合、薬物療法だけで治癒することが多い。

しかしながら、高熱を伴う腎盂腎炎や前立腺炎などの場合には入院治療が必要となる場合もある。

また、結石による腎盂腎炎の場合は緊急で尿管ステントという尿の通り道を確保するための管を内視鏡的に挿入する場合がある。

尿道炎
性的に活動的で症状がみられる患者は、通常は検査結果が判明するまでSTDと推定して治療する。典型的なレジメンは、セフトリアキソン(筋注)に加えて、アジスロマイシン(経口)、またはドキシサイクリン(経口)のいずれかを投与するものである。全てのセックスパートナーの評価を60日以内に済ませるべきである。
膀胱炎
単純性膀胱炎の第1選択の治療は、ニトロフラントイン(経口)、トリメトプリム/スルファメトキサゾール(経口)、またはホスホマイシン(経口)である。次善の選択肢としては、フルオロキノロン系薬剤β-ラクタム系抗菌薬などがある。膀胱炎が1~2週間以内に再発した場合は、より広いスペクトルを有する抗菌薬(フルオロキノロン系薬剤)を使用することができ、尿培養を行うべきである。複雑性膀胱炎の治療では、現地の病原体および耐性パターンに基づいて選択した広域抗菌薬の経験的投与を開始し、培養結果に基づいて修正するべきである。尿路異常も管理されなければならない。 フルオロキノロン系薬剤には、シプロフロキサシン(経口)およびレボフロキサシン(経口)がある。
急性腎盂腎炎
第1選択の抗菌薬は、シプロフロキサシン(経口)およびレボフロキサシン(経口)である。第2選択の治療は、通常、トリメトプリム/スルファメトキサゾール(経口)である。

予防

尿路感染症の予防策については、下記のような対策が知られている。これらの対策を実践すれば、尿路感染症の発症リスクを低減させることができると言われている。

  • 水分をたくさん飲む
    • 日頃からこまめに水分を摂る
    • 尿と一緒に菌を外に出す
  • 尿意を我慢しない
    • 日頃から尿意を我慢しない
    • 膀胱や尿管に菌が住み着かないようにする
  • 陰部の清潔さを保つ
    • 陰部洗浄で陰部を清潔に保つ
    • 排便時の清拭は前から後ろに拭くこと
  • 尿もれパットの定期的な交換
    • 尿もれパットなどは定期的に交換する
  • 適切な食事
    • 予防の効果が期待できる食品を摂る
      • クランベリージュースなど
  • トイレの注意点
    • 温水洗浄便座は肛門を清潔に保つのに有効
    • しかし、女性が使用する時には注意が必要
    • 過剰な洗浄は予防という観点から注意が必要

あとがき

尿路感染症の発症にストレスの関与が指摘されている。それは、ストレスが直接的に尿路感染症を引き起こすわけではない。ストレスが免疫力を低下させることで、間接的に尿路感染症のリスクを高めると考えられている。

過度のストレスを抱えると、ホルモンのバランスが崩れ、免疫力や抵抗力が低下し、その結果として、体内に侵入した細菌が繁殖しやすくなり、尿路感染症を発症するリスクが高まるとされる。

ストレスが血尿の原因になるという医学的根拠はないらしいが、ストレスによって抵抗力が落ちると、膀胱炎などの尿路感染症にかかりやすくなったり、病状が悪化したりする可能性がある。

したがって、ストレスの管理は尿路感染症の予防にも役立つと考えることができる。


【参考資料】
KOMPAS 慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト
MSDマニュアル 家庭版・プロフェッショナル版
血尿とストレスの関係を解説!病気の可能性は?疲労や冷えも原因に|病気スコープ (fdoc.jp)