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骨粗鬆症とは?原因は何?症状は?検査・診断と治療法は?予防策は?

はじめに

必ずしも加齢が唯一の原因ではないが、加齢に伴い発症リスクが増大する疾病として「骨粗鬆症」が知られている。

骨粗鬆症は、骨がもろくなり、転倒などのちょっとした外力で骨折しやすくなる病気である。骨組織を形成するカルシウムなどが減少して、骨密度の低下するために骨がもろくなってしまっているのだという。

確かに歳をとると骨が弱くなっているから家のなかでも骨折すると聞いたことがある。私自身がシニア世代となり、自分自身が骨粗鬆症の発症リスクにおびえる時代を迎えることになるとは正直つい最近まで思ってもみなかったことである。


<目次>
はじめに
骨粗鬆症とは
原因
症状
検査・診断
治療
予防
あとがき

骨粗鬆症とは

骨粗鬆症(osteoporosis)は、 骨密度(単位体積当たりの骨量)が減少し、骨の構造が劣化する進行性の代謝性骨疾患である。 骨量の減少ならびに骨組織の微細な構造や骨質の劣化によって骨が脆弱になり、骨折を来しやすくなる。

低骨量を来す疾患には、原発性骨粗鬆症続発性骨粗鬆症などがあるが、骨強度は骨密度だけでなく、骨の質(微細構造、代謝回転、微小骨折、石灰化など)が重要である。

高齢社会の到来に伴い、骨粗鬆症の有病率は 50歳以上の女性の24%、50歳以上の男性の4%を占め、推定患者数は約1,280 万人といわれている。

脆弱になった骨が折れるのを予防するためには早期診断が重要で、X線検査による既存骨折の有無や、骨密度測定・性別・年齢・閉経や危険因子(ステロイド使用)の有無などをもとに診断され、薬物治療を始めとした様々な治療が行われる。

国内における大腿骨近位部骨折の発生数は、年間約19万件とされている。さらに頻度が高い骨粗鬆症性椎体骨折は、多発化したり、骨癒合しない例では強い疼痛や脊髄神経の麻痺をまれに来し、寝たきりを余儀なくされることも少なくない。


原因

原発性骨粗鬆症

女性の骨粗鬆症の95%以上および男性の骨粗鬆症の約80%が原発性である。ほとんどの症例は、閉経後女性および高齢男性で発生する。性腺機能不全が男女の両方において重要な因子である。

原発性骨粗鬆症の患者において骨量減少を加速させうる他の因子としては、カルシウム摂取量の減少、ビタミンDの低値、特定の薬剤、および副甲状腺機能亢進症などがある。一部の患者は、青年期の骨成長の時期にカルシウム摂取が不十分であり、そのため骨量がピークに達しない。

骨量減少の機序
骨吸収を促すサイトカインの増加など、
骨吸収性サイトカイン産生の局所的変化
骨リモデリング時の骨形成反応の障害
(加齢に伴う骨芽細胞の減少および活動性低下に起因)
その他の要因
(局所および全身の成長因子の低下など)

続発性骨粗鬆症

続発性骨粗鬆症は、女性における骨粗鬆症の5%未満を占め、男性では約20%を占める。

続発性骨粗鬆症の原因(多発性骨髄腫、COPD慢性腎臓病、内分泌疾患、高カルシウム尿症、ビタミンA過剰症など)がさらに骨量減少を加速させ、原発性骨粗鬆症患者の骨折リスクを増大させる可能性がある。

慢性腎臓病(CKD)の患者は、二次性副甲状腺機能亢進症、血清リン値上昇、カルシトリオール欠乏、カルシウムおよびビタミンDの血清中濃度の異常、骨軟化症、および低回転骨症(無形成骨症)など、骨量低下の理由をいくつか有していることがある


危険因子

骨成長には荷重負荷などのストレスが必要なため、不動状態または長時間の座位は骨量減少を招く。

BMIが低いと骨量が減少しやすい。白人およびアジア人など、特定の民族では骨粗鬆症のリスクがより高い。食事によるカルシウム、リン、マグネシウム、およびビタミンDの摂取が不十分であることは、内因性のアシドーシスと同様に、骨量減少の素因となる。

喫煙および飲酒も骨量に悪影響を及ぼす。骨粗鬆症の家族歴、特に親の股関節骨折の既往も危険因子である。


症状

骨粗鬆症が原因で生じた脊椎骨折では、急性期だけでなく、その後、徐々に背中が曲がり、上体の前傾によって腰背部の筋肉が緊張すると、しばしば起立や歩行時に強い腰背部痛が起こる。脊椎は1つ骨折を起こすと、さらに2つ以上の骨折が起こりやすくなるので、最初の骨折を予防することが重要となる。

椎体後方の骨片が正常に骨癒合せず、異常な動きを示し、脊柱管(脊髄神経の通り道)に突出すると、神経の圧迫により遅発性に下肢のしびれや痛み、筋力低下や排尿障害などの症状が現れることがある。

太ももの骨(大腿骨)が骨盤のすぐ近くの根元(近位部)で折れる大腿骨近位部骨折では、起立・歩行は不能となり、寝たきりの大きな原因の1つとなることから、高齢者に対しても手術的治療を行うケースが少なくない。


検査・診断

既往歴、生活習慣、家族歴、閉経時期などを聴取し、身長と体重・背骨の弯曲・疼痛部位などを診察し、4 cm以上の身長の短縮や円背などの身体所見を有する場合は、積極的にX線検査や骨密度検査を行う。

骨密度撮影は、主に脊椎と大腿骨で行われ、骨密度値が若年成人平均値の70%未満(あるいはT scoreで-2.5SD未満)、または、椎体あるいは大腿骨近位部に脆弱性の骨折がある場合は骨粗鬆症と診断される。

X線検査で骨折が確認され、疼痛や下肢のしびれが持続する場合は、MRIを撮影して脊髄神経への圧迫の有無や腰部脊柱管狭窄症の合併、骨癒合の状態とその後の予後予測について検討する。


治療

骨粗鬆症治療の目標は、骨量の温存、骨折の予防、痛みの軽減、および機能の維持である。 治療は、骨折の危険性を抑制するための、栄養・運動・薬物療法からなる。

栄養療法
一般的にカルシウムの摂取目標量は800 mg以上(望ましくは>1000 mg )が必要とされ、魚類やきくらげに含まれているビタミンD、納豆や緑黄野菜に多く含まれるビタミンKの摂取が推奨される。ビタミンDの補給は800~1000単位/日が推奨される。ビタミンD欠乏症の患者には,さらに高い用量が必要になることがある。
運動療法
運動の励行は骨量の低下を抑制し、骨折防止に対しても有効で、散歩や背筋を鍛えるような運動が望ましい。

薬物療法

ビスホスホネート(骨吸収抑制薬)
薬物療法の第1選択薬。 骨吸収を阻害することにより、ビスホスホネートは骨量を温存し、脊椎骨折および股関節骨折を最大で50%減少しうる。ビスホスホネート療法を3カ月行うと骨の代謝回転が低下し、治療開始から早ければ1年後には明らかに骨折リスクが低下する。 骨吸収が亢進した高代謝回転型の骨粗鬆症に対してだけでなく、ステロイド性骨粗鬆症のように骨形成の低下している例にも骨強度増強効果を示す。一部の基礎疾患による骨粗鬆症を除いて有効である。ビスホスホネート製剤としては、アレンドロン酸リセドロン酸ゾレドロン酸イバンドロン酸などがある。
選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)
ビスホスホネートを服用できない女性の骨粗鬆症の治療に適切な場合がある。 体内の特定の部位で卵胞ホルモンであるエストロゲンと同様の働きをして、骨吸収を抑制する。 ラロキシフェンは、選択的 エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)である。1日1回経口投与され,脊椎骨折を約50%減少させるが、股関節骨折を減少させることは証明されていない。ラロキシフェンは子宮を刺激せず、乳房における エストロゲンの効果と拮抗する。浸潤性乳癌のリスクを減少させることが示されている。ラロキシフェンは血栓塞栓症のリスク上昇と関連している。
デノスマブ Denosumab
Receptor activator of nuclear factor kappa B ligand (RANKL)を標的とするモノクローナル抗体であり、骨吸収抑制剤として使用できるようになった。破骨細胞による骨吸収を抑制する。デノスマブは、他の治療法に耐えられないもしくは反応しない患者、または腎機能障害のある患者で役に立つ可能性がある。
タンパク同化薬
テリパラチド(合成PTH[PTH1-34])およびアバロパラチド(PTH1受容体に結合するヒトPTHアナログ)を皮下注射により連日投与し、骨量を増加させ、新たな骨形成を刺激して骨折リスクを低下させる。ビスホスホネートの休薬期間中、タンパク同化薬の使用を考慮してもよい。 タンパク同化薬投与を受ける患者は、クレアチニンクリアランスが35mL/minを超えていなければならない。
活性型ビタミンD3製剤
特にカルシウムが不足となっている症例や、転倒頻度が高く骨折を起こしやすい高齢者に使用される。
ビタミンK2製剤
骨量を有意に増加させないものの、骨折予防効果が期待されています。
カルシトニン製剤
鎮痛作用を有し、疼痛を改善するが、骨折の防止効果は強くはない。
副甲状腺ホルモン(PTH)製剤
ビフォスフォネートやSERMといった骨吸収抑制剤に対し、骨形成の効果を上げることが期待される。 投薬期間に制限があるものの、骨折予防効果がある。
RANKL(receptor activator of nuclear factor κβ ligand )阻害薬(デノスマブ)
RANKL は 破骨細胞分化に必須のサイトカインである。

骨粗鬆症基礎疾患とした骨折では、脊椎の椎体骨、大腿骨近位部、手関節部や上腕骨近位部での骨折の頻度が高くなる。

骨粗鬆症を基礎疾患とした骨折に対する治療法
脊椎骨折
急性期には体幹ギプス固定、コルセット装用による保存的治療が行われ、多くの症例では炎症を抑える薬剤(湿布薬や塗り薬などの外用剤、消炎鎮痛剤や坐薬など)の併用によって疼痛が軽快する。しかし、一定期間の保存療法を行ったにも関わらず骨折部が骨癒合せず、同部での異常な動きによって神経症状がみられる場合には、手術的治療を行うことがある。
大腿骨近位部骨折
骨頭に近い近位部骨折では大腿骨頭置換術が、より遠位での骨折では骨接合術など、高齢者にも積極的な手術的治療が行われる。
手関節部や上腕骨近位部の骨折
ギプス固定などの保存的治療に加えて、創外固定や骨接合術による手術的治療も行われる。

予防

骨粗鬆症の予防策としては、下記のような対策が発症を抑え、症状の軽減に繋がると考えられている。ただし、これらの方法は一般的なものであるので、全ての人に効果的であるわけではない。そのため、これらの予防策を参考にして自分に合った予防策を見つけることが重要であるのは言うまでもない。

  • 健康的な食事
    • 新鮮な果物、野菜や全粒穀物を多く使った食事
    • カルシウムの摂取量を増やす
    • カルシウムが豊富な食品を多く食べる
      • 緑黄色野菜(小松菜など)
      • 海藻(ひじきなど)
      • 大豆製品(豆腐など)
  • ビタミンDの摂取
    • 日光浴でビタミンDを作る
  • 定期的で適度な運動
    • 骨に負担がかかる繰り返し運動
    • 筋力トレーニング
  • 禁煙
    • 喫煙を避ける
  • 飲酒の制限
    • 節酒
    • ついでにカフェイン摂取も制限
  • 体重管理
    • 必要以上に減量すると、骨が弱くなるリスクが高まる

あとがき

骨粗鬆症は、加齢による廊下のプロセスで発症する病気であることは理解できたが、その発症を座して待つ気は全くない。予防策がある以上、それを活用してトコトン抵抗してみたいと思う。

それにしても加齢による老化に伴い、このように発症する疾病が多いとシニア世代を生き、天寿を全うするのは容易ではない。


【参考資料】
KOMPAS 慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト
MSDマニュアル 家庭版・プロフェッショナル版
骨粗鬆症の予防のための食生活 | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)