カテゴリー
はたらく細胞

リンパ球の種類と役割・機能

概要

白血球は、からだの中に侵入してきたウィルスや細菌などから、常に命を守り続ける免疫細胞である。 白血球は、赤血球や血小板などの他の血液細胞とともに血液中を流れている。見た目も働きも異なるこれらの細胞は、すべて同じ造血幹細胞が分化して作られた細胞である。 

リンパ球(lymphocyte)は、 白血球の一種であり、さらにT細胞B細胞NK細胞に分類される。からだの中では多種多彩な免疫細胞群(白血球の仲間達)が、緻密な連携を組んで異物と戦っている。


T細胞

T細胞は、骨髄の造血幹細胞から造られるが、前駆細胞の状態で胸腺へと移動していく。胸腺は心臓の少し上にある臓器で、T細胞を作るためだけに存在している。胸腺で増殖・成熟したT細胞は、血液中に出ていき、脾臓やリンパ節といった免疫反応の現場でB細胞と出会い、協力体制をとるようになる。

T細胞は、 ウイルスなどに感染した細胞を見つけて排除する。T細胞には、 ヘルパーT細胞、 キラーT細胞、制御性T細胞 の3種類があり、それぞれ司令塔、殺し屋、クローザーの役割がある。

ヘルパーT細胞
ナイーブT細胞から変化したエフェクター(機動型)T細胞の一つで、 樹状細胞やマクロファージから異物の情報(抗原)を受け取り、サイトカインという免疫活性化物質を産生して、B細胞を活性化し、B細胞とともに異物が危険なものか判断したり、抗体産生を助けたりする働きがある。 攻撃の戦略を練る司令塔のような役割もする。
キラーT細胞
樹状細胞から抗原情報を受け取り、ウィルスに感染した細胞やがん細胞にとりつき排除する、という「殺し屋」の働きを持っている。 ヘルパーT細胞の指示でウイルスに感染した細胞やがん化した細胞など、生体にとって不要・危険な細胞を殺傷・除去する。
制御性T細胞
キラーT細胞が 正常細胞へ攻撃をしないよう、 キラーT細胞の働きを抑制したり、免疫反応を終了に導いたり、 野球でいうところの「クローザー」の役割を担っている。
すなわち、免疫が自己に対して働かないように抑制し、免疫異常を起こさないようにしている細胞で、ヘルパーT細胞の約5%を占めている。抗原の処理が終わると、免疫反応を停止するように命令を出す。
αβT細胞(アルファベータT細胞)
α鎖・β鎖と呼ばれる2つの糖タンパク質から構成されるT細胞受容体を持つT細胞の総称である。抗CD3抗体とIL-2を使用して選択的に増殖させることが可能である。αβT細胞療法は、活性化自己リンパ球療法(LAK療法)と呼ばれる免疫細胞療法の一種である。
γδT細胞(ガンマデルタT細胞)
γ 鎖・δ 鎖と呼ばれる2つの糖タンパク質から構成されるT細胞受容体を持つT細胞の総称である。γδT細胞は、αβT細胞と比べると少数であるが、末梢血中に存在するγδT細胞には、がん細胞を認識して攻撃する能力があることが明らかになっている。
ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)
T細胞とナチュラルキラー細胞(NK細胞)の両方の特徴を持つT細胞の亜種である。NKT細胞は末梢血中T細胞のわずか0.1%程度しか存在しない。活性化されたNKT細胞は、サイトカイン(IFN-γなど)を産生したり、Fasリガンドやパーフォリン・グランザイムによるがん細胞への障害活性を示す。

B細胞

B細胞は、骨髄にある造血幹細胞から作られる白血球の一種であり、リンパ球に分類される。 この細胞は、造血幹細胞の生まれる骨髄で作られ、成熟して血液中に出ていく。体内の全リンパ球のうち約20~40%ほどがこのB細胞であり、 抗体を産生する免疫細胞である。

異物であるウイルスや細菌(抗原)が侵入してきた際に、 樹状細胞の指令を受けると、 B細胞は、形質細胞に変化して抗体を作って攻撃したり、メモリーB細胞となって1度目の感染を記憶して、次回の感染に備えるといった働きをする。また、B細胞は、細胞ごとに作る抗体の種類が決まっており、B細胞が作り出せる抗体に見合った外敵が出現した場合にのみ、活性化し抗体を作り出す。

B細胞
病原体や異物などの抗原が侵入してきた際に、危険なものかどうか判断し、危険と判断した場合は対抗物質(抗体)を産生・分泌するようになる。免疫の働きによって抗原が排除されると、メモリーB細胞となって、次の侵入に備える。
メモリーB細胞
ヘルパーT細胞によって刺激されたB細胞の一部で、抗原の情報を記憶している。次に感染した時にはより迅速に、抗原に適した抗体を大量に産生することができる。
形質細胞
抗原の刺激によってB細胞から分化してできる細胞である。抗体を大量に産生する働きがあることから、抗体産生細胞とも呼ばれることがある。

ナチュラルキラー細胞(NK細胞)

いつもからだの中をパトロールしており、ウイルスに感染した細胞などを発見すると単独で攻撃をしかける。T細胞とは異なり、他からの指示を必要とせず、一人で外敵や異物を攻撃できるため、生まれつき(natural)の殺し屋(killer)という名前が付けられている。

ナチュラルキラー細胞(NK細胞)
独自に体内をパトロールし、ウイルスに感染した細胞やがん細胞だけでなく、これまで出会ったことがなくても異常と認識した細胞を傷害する性質を持っている。

生体防御免疫の仕組み

生体には、体外から侵入した異物を除去する生体防御の仕組みがある。 生体防御には,異物の侵入を防ぐ仕組みと,体内に侵入した異物を排除する免疫という仕組みがある。

異物の侵入を防ぐ方法には,物理的防御化学的防御がある。前者の例には,皮膚の最外層の角質層が異物の侵入を防ぐことなどがある。また,後者の例には,皮脂腺や汗腺からの分泌物が弱酸性(pH3~5)に保たれて細菌などの繁殖を防ぐこと,また,汗にはリゾチーム         という細菌の細胞壁を破壊する酵素が含まれていることなどがある。体表以外は,粘膜が外界と接しており,さまざまな防御のしくみがある。

免疫は,大きく自然免疫獲得免疫に分けられる(下図参照)。自然免疫は,病原体に共通する特徴を幅広く認識して即座に働く仕組みで, 好中球や単球, 樹状細胞やマクロファージなどによる貪食作用(異物を細胞内に取り込んで消化する作用)で異物を排除したり,炎症反応,NK 細胞による攻撃などがある。自然免疫で排除できなかった異物に対しては,次の防御機構として獲得免疫が働く。獲得免疫では,異物に対して,リンパ球が特異的に作用する。獲得免疫はリンパ球の働きから,B細胞などが抗体を作る体液性免疫と,キラーT細胞などががん細胞や感染細胞を直接攻撃する細胞性免疫に分けられる。

免疫療法コンシェルジュ > がんの治療・情報地図 > がんです > 免疫の仕組み

腸には全免疫細胞の約7割が存在していると言われている。腸は口とつながっているため、さまざまな病原菌やウイルス、異物などが入ってくる。そのため、異物を排除して健康を維持するために、多くの免疫細胞が必要となる。

人間の体の機能が正常に働くための理想の体温は36.5度とされている。しかし、現代人は生活の中で体を動かす機会が減っているためか、平熱が35度台という人が珍しくない。体温が1度下がるだけで、免疫の主役である白血球の働きは30%低下する。しかし、反対に1度上がれば免疫力は一時的に5~6倍にもなると言われている。

子供から大人、高齢者まで、ストレスを感じていない人はいないと言われるほど、現代は高ストレス社会となっている。ストレスは心身にさまざまな悪影響を与え、免疫力も例外ではなく、免疫が働くシステムも自律神経によってコントロールされている。例えば、活動時には交感神経が優位となり顆粒球が増加する、休息時には副交感神経が優位となることでリンパ球の比率が高くなるといった具合である。ストレスによってこのバランスが崩れると、免疫細胞の働きが低下し、病原菌や異物に対する抵抗力も弱くなる。

睡眠不足は健康の大敵である。ある調査では、睡眠時間が7時間以下の人は、8時間以上の人に比べて3倍も風邪を引きやすいという結果が出ている。また、T細胞が異物である抗原の情報を長期間記憶するには、適度な質のよい睡眠が不可欠とされている。


【参考資料】

国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センターHP
免疫療法コンシェルジュ HP