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アルツハイマー型認知症とは?原因は?症状・検査・診断・治療法・予防策は?

はじめに

アルツハイマー型認知症の発症には、加齢が大きく関与していると言われている。アルツハイマー型認知症を発症する最大の危険因子は加齢であり、アルツハイマー型認知症と診断された人の大半は65歳以上である。

認知症の有病率は高齢になるほど高くなる。特に女性は男性と比べ発症率が高く、80代では3人に1人、90歳以上では2人に1人が認知症を発症すると言われている。

しかしながら、患者数は非常に少ないものの、若年性発症型アルツハイマー病(早期発症型アルツハイマー病)は65歳未満でも発症することが知られている。


<目次>
はじめに
アルツハイマー型認知症とは
原因
症状
検査・診断
治療
予防
あとがき

アルツハイマー型認知症とは

アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多くを占める代表的な認知症疾患で、記憶障害を中心とした認知機能障害を主な症状とする。

アルツハイマー型認知症の多くは、老年期に発症して緩徐に進行する。アルツハイマー型認知症では脳における異常な変化を認めるようになり、慢性的かつ不可逆的な経過で記憶力や思考力の低下を来すようになる。

海馬をはじめとする大脳皮質の萎縮が認められる。早期から海馬を中心とする側頭葉内側部、側頭頭頂移行部の萎縮がみられる。記憶障害がほぼ必発である。前頭連合野は比較的保たれるため初期からの人格変化は稀で礼節は保たれる。

組織学的には細胞外の老人斑の出現、細胞内の神経原線維変化神経細胞脱落を特徴とする神経変性疾患である。


原因

老人斑の出現、神経原線維変化、神経細胞の脱落など脳における変化を原因としてアルツハイマー型認知症は発症する。

老人斑はアミロイドβ蛋白と呼ばれる物質で構成されており、アミロイドβ蛋白は神経に凝集することでアミロイド線維と呼ばれる物質を形成し、神経細胞に障害を与えることになる。

神経原線維変化は、微少管関連蛋白タウと呼ばれるものに由来しており、老人斑と神経原線維変化が相互作用することで神経細胞が障害され、神経細胞が脱落し、脳が萎縮する。

アルツハイマー型認知症には、年齢や遺伝的因子などいくつかの誘因となりうる因子が存在することも知られている。

遺伝的因子に関連して家系内でアルツハイマー型認知症が多発することもある。家族性アルツハイマー病は、プレセニリン1プレセニリン2と呼ばれる遺伝子に異常が発症に関与していると考えられている。

また、ダウン症の患者はアルツハイマー型認知症を発症しやすいことも知られている。

糖尿病などの生活習慣病や運動不足もリスク因子であると考えられている。生活習慣病の是正(食事・運動)がアルツハイマー型認知症の予防になるのではないかともいわれている。


症状

アルツハイマー型認知症型は、徐々に進行し、進行度に応じて症状も変化する。

初期の段階は軽度認知障害と呼ばれる段階であり、少し前の出来事を思い出せない、といった程度であり、日常生活に支障を来すことはない。

病状が進行すると、数分前のことでも思い出せなくなる。さらに時間に関する見当識の障害(日付を思い出せない)や、実行機能障害(段取りをつけて物事を実施できない)、判断力の障害などが出現する。ほかにも自発性減退うつ気分がみられ、物盗られ妄想が目立つ場合もある。この段階になると、徐々に日常生活に支障がみられるようになる。

その後、失語(ものの名前がうまく言えない、相手のいったことをおうむ返しするなど)、失行(服のボタンがうまく止めることができなくなるなど) 、失認(感覚器に異常がないにもかかわらず、目や鼻などの五感で周りの状況を把握することが低下すること)なども出現する。その他、人によっては、妄想徘徊が見られる場合もある。

進行すると、身内であっても認識できなくなり、最終的には全面的な介護が必要となり、寝たきりとなる。


検査・診断

アルツハイマー型認知症は、MRIやCT、PET、SPECTなどの画像検査によって診断する。

MRIやCTでは、脳の萎縮をみることができる。糖代謝PETや脳血流SPECTでは、アルツハイマー型認知症パターンの脳機能低下を検出することも可能である。それは、神経細胞が脱落する前にシナプスが脱落して脳の機能が低下するからである。

アルツハイマー型認知症は、アミロイドβ蛋白やリン酸化タウ蛋白が病気の発症に関連しており、脊髄液を採取してそれらを調べることもできる。脳内におけるこうした物質の変化を検出することを目的とした、アミロイドPET、タウPETなどと呼ばれる方法もある。


治療

アルツハイマー型認知症の治療では、本人のみならず家族を始めとした周囲の方のサポート体制が必要不可欠となる。疾病について理解することが重要であり、不用意に本人を傷つけないよう対応に留意する必要がある。病状の進行によりいらつきやうつ、意欲の低下はごく自然なことであると考え、本人の感情を受け止めることが大切である。

アルツハイマー型認知症の治療は、薬物療法とそれ以外に大きく分かれる。薬物療法に用いる薬剤としては、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンがある。

しかしながら、薬物療法の効果は現時点では限定的であり、そのため、認知症患者との接し方が重要となる。認知症患者とご家族が1日中一緒に過ごすのではなく、昼間はデイケアに通ったりしてお互いの時間をもちリフレッシュするということも大切である。早い段階から介護保険などの社会的資源を利用して、ケアマネージャーにケアの計画を相談することが肝要である。


予防

アルツハイマー型認知症の予防策としては、下記のような対策が知られている。これらの対策は、認知症の発症を完全に防ぐものではなく、発症リスクを減らすものとして推奨されている。

  • 適度な運動
    • 脳の神経結合を増やし、認知能力の向上に繋がる
    • 脳の血流を改善し、脳に酸素や栄養を十分に供給する
  • バランスの良い食事
    • 糖分や塩分の過剰摂取は生活習慣病を引き起こす
      • 高血圧
      • 糖尿病
    • 栄養バランスを欠くと認知症の発症リスクが増大
    • 塩分や糖分を控えた食生活を心がける
  • 社会的な活動に参加する
    • 他者とのコミュニケーションは予防に効果あり
    • 会話や交流を通じて脳は新しい情報を処理
    • 学習・記憶・問題解決などの認知機能を維持
  • 適切な睡眠
    • 睡眠時間をしっかりと確保
    • 眠りが深くなるように睡眠の質を改善
  • 知的な活動
    • 読書
    • 文章を書く(日記を書く)
    • 楽器を演奏する
    • 新しいことにチャレンジする
    • 知的活動は脳の健康を維持し、認知機能を刺激する

あとがき

アルツハイマー型認知症は、生活習慣病と直接的な関連性があると指摘されている。特に、中壮年期(45〜64歳)の生活習慣病は、アルツハイマー型認知症の発症に深く関わっているらしい。

生活習慣病に数えられている2型糖尿病で高血糖状態が続くと、アルツハイマー型認知症の原因とされるアミロイドβタンパク質の蓄積を促進すると言われている。

したがって、生活習慣病の予防と管理は、アルツハイマー型認知症の予防にもつながると考えられる。


【参考資料】
MSDマニュアル 家庭版・プロフェッショナル版
生活習慣病と認知症。糖尿病 – 一般社団法人認知症協会