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糖尿病とは?原因は?症状は?診断・治療・予防は?

はじめに

糖尿病は、血糖値(血液中に含まれるブドウ糖)が慢性的に高くなる病気として広く知られる病気である。

日本における糖尿病の患者数は非常に多く、全国で約1,000万人の「糖尿病が強く疑われる人」が存在すると言われている。そしてその大半が2型糖尿病と言われ、「生活習慣病」の一つに数えられている。

生活習慣病とは、食事や運動、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が深く関与し、それらが発症の要因となる疾患の総称である。つまりは、食生活の乱れや運動不足、ストレスなどが原因で発症する病である。

生活習慣病であるなら、生活習慣を改善すれば、糖尿病の予防にはなるはずである。


<目次>
はじめに
糖尿病とは
原因
症状
検査・診断
治療
予防
あとがき

糖尿病とは

糖尿病とは、血糖値と呼ばれる血液中に含まれるブドウ糖濃度が慢性的に高くなる疾病のことである。

食事をすると血糖値が上がり、その血糖値の上昇が感知されると膵臓からインスリン(ホルモンの一種)が分泌され、肝臓や筋肉ではブドウ糖をグリコーゲンと呼ばれるエネルギー源に換え、脂肪組織では脂肪として、蓄える仕組みが作動する。健常人ではこの仕組みが備わっているため、血糖値は飲食しても一定に保たれてている。

一方、糖尿病患者では、インスリンの分泌量が減少したり、インスリンのはたらきが弱くなったりするため、血糖値が高い状態が続くようになる。この状態が長期間に及ぶと全身の血管障害が起こるようになり、重症化すると失明腎不全足の切断などQOL(生活の質)を大きく低減させるような合併症、心筋梗塞や脳梗塞などの疾病を引き起こすことがある。

日本では1,000万人ほどが糖尿病に罹患していると推定されており、注意すべき疾病の一つである。


原因

糖尿病は、血糖値を降下させる作用のあるホルモンであるインスリンの分泌量が低下したり、働きが悪くなったりすることが原因の病である。したがって、糖尿病は、その原因別に2型糖尿病1型糖尿病の2種類に分けて、治療法や予防法が検討されている。


2型糖尿病

糖尿病の原因は、血糖値を降下させる作用のあるインスリンの分泌量が低下したり、はたらきが悪くなったりすることである。インスリンの分泌量やはたらきに異常が生じる原因として最も多いのは、高脂肪、高カロリー、食物繊維不足などの食生活や、運動不足、ストレス、睡眠不足、喫煙習慣などの生活習慣の乱れが挙げられる。

このような生活習慣の乱れによる糖尿病を2型糖尿病と呼び、全ての糖尿病患者の9割以上を占めるとされる。


1型糖尿病

一方、糖尿病の中には免疫のはたらきの異常により、インスリンを産生する膵臓の細胞が破壊されることで発症するタイプのものもある。

このようなタイプの糖尿病は1型糖尿病と呼ばれ、生活習慣の乱れなどは発症に関与しないものの、明確な発症メカニズムは解明されていない。


症状

糖尿病の根本的な病態は慢性的高血糖続くことである。そのため、中には糖尿病を発症すると、喉の渇き、尿量の増加、倦怠感、体重減少などが現れる場合もあるが、多くは自覚症状がないとされている。

一方、血糖値が高い状態が続くと、血液中に多量に存在するブドウ糖が血管を傷つけるので目や腎臓、神経などにも十分な血液が流れにくくなる。その結果、網膜症、腎不全、末梢神経障害などの合併症を引き起こすことも多い。

そして最終的には、失明人工透析足の切断など、日常生活に極めて大きな支障をきたす状態に陥る可能性も生じる。また、心筋梗塞や脳卒中などのより重篤な疾病の発症リスクも高くなる。

そのほかにも糖尿病を発症すると免疫力が低下していくため、風邪をはじめとした感染症にかかりやすくなり、高齢者では肺炎や尿路感染症などが重症化して命に関わる状態に陥る場合も少なくない。


検査・診断

糖尿病の検査・診断は、血液検査や経口ブドウ糖負荷試験によって行われる。

血液検査では、血糖値や過去1~2か月の血糖値の状態を反映するHbA1c値を調べるほか、インスリンの分泌能力などを評価することも可能である。血液検査で、血糖値HbA1c値が一定の数値以上であれば、糖尿病の診断の根拠となる。

また、1型糖尿病が疑われる場合は、GAD抗体などの抗体の有無を調べる抗体検査も行われる。

経口ブドウ糖負荷試験は、早朝の空腹時に一定量の糖分が含まれた飲料を摂取し、摂取前後の血糖値の変化を調べる検査である。糖尿病を発症すると空腹時の血糖値が高くなったり、摂取後の血糖値の下がりが悪くなったりするといった特徴的な結果が見られるため、糖尿病の確定診断に用いられる検査の一つとなっている。

糖尿病が疑われるときや糖尿病と診断された場合は、網膜の状態を調べる眼底検査腎機能検査腱反射動脈硬化の程度を調べる検査などが必要に応じて行われる。


治療

糖尿病の治療方法は、1型糖尿病と2型糖尿病で異なる。治療法は、主に生活指導(食事療法、運動療法)と薬物療法である。

糖尿病と診断された場合は、重篤度に応じて、生活指導、インスリン以外の薬物療法、インスリン治療の順に治療が行われる。

生活指導

生活習慣の乱れが発症に大きく関与している2型糖尿病では、早急な治療を要する重症な場合を除き、第一に原因となる食生活や運動習慣の乱れを正す生活指導が行われる。1~2か月ほど生活改善を行った上で、薬物療法など次のステップの治療に進むか否かを判断する。


インスリン以外の薬物療法

生活改善を行っても血糖値が十分に下がらない場合は、血糖値を下げる薬による薬物療法が行われる。血糖値を下げる薬にはいくつかの種類の経口剤や注射剤があり、個々の患者に合うタイプの薬剤や用量を決める。

薬物療法に使用される糖尿病治療薬には、下記のような数多くの薬剤が開発されている。

  1. スルホニル尿素(SU)薬
  2. 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
  3. DPP-4阻害薬
  4. GLP-1受容体作動薬
  5. ビグアナイド薬
  6. チアゾリジン薬
  7. α-グルコシダーゼ阻害薬
  8. SGLT2阻害薬
  9. イメグリミン

スルホニル尿素(SU)薬は、膵臓のβ細胞を刺激してインスリン分泌を促進し、血糖値を低下させる。

速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)は、食後の高血糖を抑えるための薬剤であり、食事の直前に服用する。

DPP-4阻害薬は、インクレチンの分解を抑制することにより、インスリン分泌を促進したり、血糖値を上昇させるグルカゴンの分泌を抑制して血糖値を低下させる。インクレチンとは、食事をしたときにインスリンが分泌するよう促すホルモンである。

GLP-1受容体作動薬は、膵臓のβ細胞からのインスリン分泌を促進し、血糖を上昇させるホルモンであるグルカゴンの分泌を抑制して血糖値を低下させるGLP-1というホルモンの働きを補完する薬で、食欲を抑える作用もあるとされている。

ビグアナイド薬は、肝臓での糖の新生や消化管からの糖の吸収を抑えるなど、膵臓以外に作用してインスリン分泌に関係なく血糖値を低下させる薬剤である。

チアゾリジン薬は、脂肪細胞へ作用してインスリン抵抗性を改善して血糖を下げる薬剤である。

α-グルコシダーゼ阻害薬は、食事から摂取した炭水化物の分解を抑えることにより、小腸からの糖の吸収を遅らせて、食後の高血糖を抑える薬剤である。食事の直前に服用するとよい。

SGLT2阻害薬は、腎臓で排出されるブドウ糖の再吸収を抑えて、尿に糖を多く出すことで血糖値を低下させる薬剤である。

イメグリミンは、糖尿病治療薬としては比較的新しい薬剤である。血糖値が高い時にミトコンドリアに作用して、ミトコンドリアの機能を改善して、血糖に応じてインスリン分泌を促進したり、インスリン抵抗性(筋肉での糖利用促進や肝臓での糖新生を抑制)を改善したりすることで血糖値を低下させるようだ。


インスリン治療

薬物療法の効果が十分ではない場合の2型糖尿病、インスリンの分泌量が大幅に低下している1型糖尿病では、インスリン治療が行われる。

インスリンの投与は自己注射によって行われ、治療のほかにも厳密な食事管理なども必要となる。


予防

免疫の異常による1型糖尿病を予防する方法はないが、生活習慣が関わる2型糖尿病は問題となる生活を改善することで発症や悪化をある程度予防することが可能である。

糖尿病の予防のためには、摂取エネルギー量を摂り過ぎない(つまり食べ過ぎない)こと、運動をすること、アルコールを控えること、禁煙、野菜や大豆製品、海藻、きのこなどを多く摂ることなどが推奨されている。

つまり、規則正しい食生活、運動を心がけ、ストレスや喫煙習慣など生活上の習慣に注意する必要がある。糖尿病が生活習慣病の一つに数えられる理由がここにある。


あとがき

通説で、「甘いものを食べていると糖尿病になる」というものがあるが、甘いものを食べることが必ずしも糖尿病を引き起こすわけではない。糖尿病の発症は、遺伝的な要素や運動不足、ストレスなど、さまざまな要素が複雑に絡み合って起こる。決して糖分の摂り過ぎが発症原因ではない。

但し、糖分はカロリーが高いから肥満には気をつける必要がある。肥満は糖尿病の重要なリスク因子に数えられ、肥満度が高くなると、糖尿病になる確率も上昇することが知られているからである。

糖尿病の原因は、食生活の乱れや運動不足、ストレスが多いなどの生活習慣の乱れとされているので、まずは生活習慣の改善から始めるのが予防対策としては正しい選択であるはずだ。

生活習慣の改善には、健康的な食事、適度な運動、十分な休養、禁煙、適度な飲酒(できれば禁酒)などが望ましいとされる。

生活習慣の改善は、当然ながら糖尿病以外の生活習慣病の予防にもなる。

生活習慣病に該当する主な疾病としては、下記のような疾病が知られている。

  • 高血圧
  • 脂質異常症
  • 2型糖尿病
  • 慢性腎臓病(CKD)
  • 高尿酸血症/痛風
  • 肥満症/メタボリックシンドローム
  • 脂肪肝/非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)/非アルコール性肝炎(NASH)
  • アルコール性肝炎
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫や慢性気管支炎
  • 肺がん
  • 大腸がん
  • 歯周病など

これほど多くの生活習慣病があるとは、率直に驚くことではあるが、発想を変えれば、生活習慣を改善すれば、2型糖尿病をはじめ多くの生活習慣病の罹患を予防できるということである。

私たちは、糖尿病をはじめとする生活習慣病について学び、理解を深めることで、健康的な生活を送ることができると確信する。


【参考資料】

糖尿病治療ガイド2020-2021(日本糖尿病学会)
糖尿病診療ガイドライン2019 (日本糖尿病学会)
MSDマニュアル 家庭版・プロフェッショナル版