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誤嚥性肺炎とは?原因は?症状は?検査・診断と治療法は?予防策は?

はじめに

加齢に伴う老化のプロセスのなかで、嚥下機能(食物を口から胃に送る機能)が低下し、食物や唾液が誤って気道に入ること(誤嚥)が増えることが知られている。

この「誤嚥」によって細菌が肺に入り込むと「誤嚥性肺炎」が発症する。だから加齢と誤嚥性肺炎の関係は深く、高齢者は誤嚥性肺炎にかかりやすいとされている。

また、加齢により口腔内の感覚が鈍化し、食物を咽頭へ送り込む能力が低下し、さらに喉頭を吊り上げる筋肉の減少によって、喉頭の位置が下がり、嚥下時の喉頭挙上が不十分となると、誤嚥のリスクが高まる。これが高齢者に誤嚥性肺炎の発症リスクが高い所以である。

いずれも加齢による老化が原因であるが、加齢による嚥下機能の低下は個人差があり、高齢になっても嚥下障害が見られないこともある。この事実は、日常生活のなかで口腔機能の維持や嚥下機能の訓練が如何に大切であることを示唆してくれているようだ。


<目次>
はじめに
誤嚥性肺炎とは
原因
症状
検査・診断
治療
予防
あとがき

誤嚥性肺炎とは

概要

誤嚥性肺炎とは、誤嚥(食べ物や唾液などが誤って気道内に入ってしまうこと)から発症する肺炎(肺内で炎症が引き起こされた状態)のことをいう。

近年、肺炎は日本人の死亡原因の高い割合(第3位)を占めると言われている。特に、入院を要した高齢患者の肺炎の種類を調べたデータによると、80歳代の約80%、90歳以上では95%以上が誤嚥性肺炎であったと報告されている。すなわち、後期高齢者の肺炎のほとんどは誤嚥性肺炎だと言える。


原因

誤嚥性肺炎発症の原因は、嚥下障害が背景にある。

嚥下障害とは、食べ物や水分を口の中に取り込んでから飲み込むまでの過程が、正常に機能しなくなった状態を指す。

嚥下障害を引き起こす原因の代表的なものは、寝たきりの患者に多くみられる廃用症候群脳血管障害である。

廃用症候群とは、病気やけがで安静にすることで体を動かす時間・強さが減り、体や精神にさまざまな不都合な変化が起こった状態をいう。一方、脳血管障害とは、脳に血液を供給する血管に障害が生じることで、脳の機能が影響を受ける状態を指す。

閉塞性肺疾患心不全などの呼吸状態が悪い場合も嚥下障害の原因になりえる。呼吸と嚥下は同じ空間を共有している関係から協調運動を正確に行うことが必要が、呼吸状態が悪いとこの協調運動も障害されるので嚥下障害が発生する。

これ以外にも認知症、胃食道逆流症、円背亀背、胃切除後、パーキンソン病などの神経変性疾患なども嚥下障害の原因となることがある。

嚥下障害が存在すると、唾液や食べ物と共に細菌が誤って気道内に入り、肺炎が誘発されることになる。口腔内に常在する細菌にも肺炎を起こす可能性があるということである。


症状

誤嚥性肺炎の代表的な症状は、気道を通して侵入した細菌やウイルスなどの病原体によって引き起こされる肺炎と同様の発熱などである。


検査・診断

誤嚥性肺炎の検査や診断は、胸部レントゲン写真や胸部CT写真といった画像検査が行われる。重力の関係から、誤嚥されたものは背中側に流れ込むことが多いので、特に寝たきりの患者においては、背中側に肺炎が確認される場合が多い。

また、血液検査では白血球の増加やCRPの上昇といった、炎症を示唆する検査所見が得られる。さらに、痰を顕微鏡や培養で検査すると、肺炎を引き起こしている細菌が確認されることもある。


治療

急性期においては抗生物質の投与が重要になる。ときに、ACE阻害薬と呼ばれる薬剤が使用されることもある。ACE阻害薬の副作用として空咳が生じることがあるが、咳を誘発することで誤嚥を起こしにくくなることが期待されている。

また、誤嚥のリスクを軽減させることを目的として、嚥下リハビリテーションが行われることもある。

誤嚥を引き起こしやすい食事の形態があるため、食事内容の指導を行うこともある。

さらに、口腔内の細菌が誤嚥性肺炎の原因であることから、口腔内ケアをしっかりと行うことも重要である。


予防

誤嚥性肺炎の予防策としては、下記のような対策が知られている。これらの対策は、誤嚥性肺炎の発症リスクを低減させ、症状の軽減にも繋がるとして、推奨されている。

  • 食事の内容や食べ方を工夫する
    • 飲み物にとろみをつける
    • 唐辛子に含まれるカプサイシンも予防に役立つ
    • 冷たい又は温かい食べ物も予防に役立つ
  • 食事の際に適切な姿勢をとる
    • 食事中は上体を少し後傾させて顎を引く
    • 食後はしばらく上半身を起こしておく
  • 口腔ケアで口腔内を清潔に保つ
    • 歯磨きやうがいをする
    • 入れ歯の手入れをする
  • 嚥下機能を改善するための訓練をする
    • 舌の運動を行い、嚥下に関わる筋力を回復させる
  • 禁煙
  • 予防接種

あとがき

誤嚥性肺炎は、歯周病とも密接な関係があるという。誤嚥性肺炎は、食べ物や唾液などが誤って気道に入り、肺に感染を引き起こす病気である。一方、歯周病が進行すると、歯茎が退縮し、歯と歯茎の間に深いポケットができ、このポケットに食べ物のかけらや細菌が溜まりやすくなり、これらが誤って気道に入ると、誤嚥性肺炎の発症リスクが高まると言われている。

また、誤嚥性肺炎の患者からは、歯周病の原因になる歯周病菌が多く検出されていることから、口腔内の衛生状態が悪いと、これらの細菌が増え、誤嚥性肺炎の発症リスクが高くなると考えられる。したがって、歯周病の予防と治療は、誤嚥性肺炎の予防にも繋がると考えられる。


【参考資料】
Medical Notes HP
誤嚥性肺炎を予防するために:座り方・食べ方と訓練方法 | メディカルノート (medicalnote.jp)