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膠原病とは? 原因は何? 症状は?検査・診断と治療法は?予防は?

はじめに

膠原病の発症には加齢が関与している可能性が指摘されている。特に、膠原病の一つである「関節リウマチ」の発症は、最近では高齢者の間で増加傾向にある。加齢に伴い免疫機能の低下が起こり、これが膠原病の発症にも影響を及ぼすと考えられている。

一方で、膠原病の一つである「強皮症」の発症は、特に30~50代の女性に多い傾向があり、発症率の男女比は約1:3~9と言われている。女性に多く発症することが明らかであるが、男性の場合は、数は少ないものの、発病すると重症になる傾向がみられるという。


<目次>
はじめに
膠原病とは
原因
症状
検査・診断
治療
予防
あとがき

膠原病とは

膠原病はいくつもの自己免疫性疾患総称で、主な疾病には関節リウマチ全身性エリテマトーデス強皮症多発性筋炎皮膚筋炎血管炎ベーチェット病などがある。

膠原病は、皮膚、筋肉、関節、血管、骨、内臓に広く存在するコラーゲンに対して慢性的に炎症が生じることから発症する疾病であり、コラーゲンの分布様式が全身各所に広がることから、全身各所において障害がみられるという特徴がある。


原因

発症の原因は、遺伝的な要因と紫外線・感染・ストレスなどの環境要因が複雑に絡み合って、自己に対する免疫機能が異常になるためと考えられている。

本来、免疫は微生物などの異物から自分の体を守るための防御機能として働いており、この免疫が正常に機能するためには、好中球、リンパ球、マクロファージ、抗体などの多くの細胞やタンパク質が適切にバランスを保つ必要がある。

しかし、膠原病では免疫のバランスがくずれており、本来は炎症反応が起きるべきではない自分の体に対する過剰反応(自己免疫応答)が起こり、これによってさまざまな障害をきたすようになる。


治療

自己免疫を基盤にして発症する疾病であるため、自己免疫の異常から生じる炎症反応を制御することを目的とした治療が行う。

具体的に使用される薬剤としては、ステロイド薬免疫抑制薬がある。ステロイド薬は第一選択薬として使用される薬であり、免疫抑制薬はステロイド薬の効果が不十分な場合や疾病が再発しないようにステロイド薬を減らす目的で使用される。


関節リウマチ

関節リウマチは、自分自身の体に免疫反応が起こることにより、関節の内面を覆っている滑膜に炎症が起こる自己免疫疾患である。

滑膜に炎症が起こると、滑膜が増殖して周囲の軟骨や骨を溶かし関節に長期間にわたって炎症が起こるため、結果として関節が破壊され関節の変形、脱臼、癒合など体の機能に障害が現れることがある。

関節が障害を受けるため、関節リウマチには次のような特徴的な症状がある。

  • 強直(関節が長時間(通常は1時間以上)硬くこわばる)
  • 拘縮(関節の曲げ伸ばしが難しくなる)
  • 関節の痛み・腫れ(手首や手指の関節に多く発現し、一か所の関節にとどまらない。)
  • 関節の変形(関節の炎症が長期間続くと関節の軟骨・骨が少しずつ破壊されることが原因)
  • 脱臼

関節リウマチは、日本では人口の0.5〜1%に発症する比較的頻度の高い疾患であり、男女比は1:3〜4であり女性の患者が多い疾患である。


全身性エリテマトーデス

全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus; SLE)は、自分の免疫システムが誤って自分の正常な細胞や組織を攻撃してしまう自己免疫性疾患の1つで、全身のさまざまな臓器に炎症や組織障害が生じる疾病である。

全身のさまざまな臓器に多様な症状が現れるが、その症状の出現パターンや重症度は患者によって異なる。下記のような特徴的な症状が現れることが知られている。

  • 悪化したときには発熱、全身の倦怠感など全身症状
  • 顔に蝶のような形の発疹が出現する蝶形紅斑などの特徴的な皮膚症状
  • 円板状に盛り上がった紅斑が発現する皮膚症状
  • 強い紫外線を浴びた直後に露光部に皮膚症状が出てしまう光線過敏症の症状
  • 脱毛
  • 痛みを伴わない口内炎
  • 関節痛・関節炎(関節リウマチのような関節の変形はない)
  • 腎臓に生じるループス腎炎
  • 胸膜に炎症が生じる胸膜炎
  • 心膜に炎症が生じる心膜炎
  • けいれん、精神症状、脳血管障害などの中枢神経障害

全身性エリテマトーデスは、指定難病の1つであり、国内推定患者数は約6~10万人とされている。男女比は1:9で、妊娠可能な女性に起こりやすく、女性ホルモンが発症に関与すると考えられている。


強皮症

強皮症とは、皮膚が厚くなる疾病の総称。強皮症には大きく分けて全身性強皮症(全身性硬化症)と限局性強皮症の2種類がある。

全身性強皮症は多臓器にわたり線維化・血管内皮障害が生じる原因不明の疾病で、皮膚だけでなく、内臓にも障害をきたす。一方、限局性強皮症は皮膚だけに障害がとどまることが特徴である。

また、全身性強皮症のなかにもびまん皮膚硬化型全身性強皮症限局皮膚硬化型全身性強皮症の2種類がある。前者は比較的急速に皮膚硬化が進行し、内臓病変を伴うことが多く、後者は皮膚硬化が手足の末梢に限局する。

日本国内の患者数は2万人ほどといわれており、圧倒的に女性に多くみられる。全身性強皮症は指定難病であり、全身性強皮症の患者では、皮膚硬化の程度や障害のでる臓器、重症度も一人ひとり異なる。

主な症状には次のようなものがあるが、一人ひとり出現する障害や程度は異なる。

  • レイノー現象(寒冷や緊張などにより手足の末梢の血管が発作的に収縮することにより血流不足となり、蒼白、紫、赤へと皮膚の色調が変化する)
  • 皮膚症状(皮膚硬化は手足末梢から始まり、顔、体幹など全身に広がる場合があるが、その程度は個々の患者で異なる)
  • 間質性肺炎(空咳や運動時の息切れが症状としてみられる)
  • 肺高血圧症(進行すると息切れや下腿のむくみが症状としてみられる)
  • 腎クリーゼ(突然高血圧になり、腎機能障害が進行。自覚症状は頭痛や視野不良など)
  • 心臓の障害(心筋の動きが悪くなり、進行すると動悸や息切れ、下腿のむくみ)
  • 消化管の障害(食道の動きが悪くなると飲み込みづらさ、逆流症状や胸焼けなどの異常)
  • 筋肉や関節の症状(筋肉の衰えから筋力が低下、関節の痛みや関節が曲がって動きづらい)

多発性筋炎皮膚筋炎

多発性筋炎・皮膚筋炎(polymyositis/dermatomyositis:PM/DM)は、筋肉や皮膚、肺などに炎症が起こる疾病である。指定難病であり、日本では1対3で女性に多いといわれている。

症状の現れ方はさまざまであり、筋肉の症状と皮膚の症状が両方でたり、片方のみの症状の発現であったり、肺の症状が先にでて後から他の症状が出てくる場合もある。

筋肉の症状

体の中心に近い場所の筋力低下が少しずつ起こる。腕や太ももの筋肉の痛みがでて、階段の上り下りや重いものを持ち上げることが難しくなる。場合によっては首を持ち上げづらい、ものを飲み込みにくいといった症状が現れることがあり、誤嚥のリスクが高まる。

皮膚の症状

まぶた、おでこ、耳などの顔や、胸元、背中などに赤く腫れぼったい皮疹がでることがある。また、指や肘、膝、下着がこすれるところなどにガサガサとした皮疹がでることもある。潰瘍になってしまうこともある。

その他の部位の症状

肺の症状では、乾いた咳と動いたときの息苦しさがでる。心臓の筋肉に影響がでて炎症を起こす場合や、関節の痛みがでる場合なども報告されている。


血管炎

血管炎とは、体の隅々まで分布する血管に対して炎症をきたす疾患である。血管に炎症が起こると、好中球をはじめとする炎症細胞が血管壁に浸潤し、血管壁の構造を破壊する。

血管は、各種の臓器に栄養を供給し、各臓器の機能を維持する役割がある。血管炎による血管の破綻や血管内腔の狭窄・閉塞は、栄養供給している臓器の虚血や壊死を引き起こす。そのため血管炎は発症すると全身にさまざまな症状が現れる。

血管炎には色々な種類があり、障害される血管の種類によって症状や予後が異なる。血管炎は、血管のサイズによる分類(大型、中型、小型)に加えて、傷害される臓器と血管炎の原因によって分類されている。現在、血管炎は、7つのカテゴリーに分けられ、26の疾患に規定されている。

腎臓に炎症が生じれば、蛋白尿や血尿がみられる。肺に障害が生じれば、咳や呼吸困難がみられることもある。症状は、臓器障害や神経障害などの全身症状以外に、次のような皮膚症状がある。

  • 紅斑:皮膚表面が赤くなる
  • 紫斑:紫紅色、暗紫褐色で皮膚内が出血している状態
  • 丘疹:小さな皮膚のもりあがり       
  • 結節:硬く触れるしこりのようなもの
  • 膨疹:蕁麻疹のようなもの
  • 水疱:水ぶくれのようなもの
  • 血疱:水ぶくれに血が混ざった血豆のようなもの
  • 色素沈着:皮膚に色素が残ってしまうこと
  • 潰瘍:皮膚が傷つき組織が欠損すること
  • 壊疽:皮膚が腐ってしまうこと

ベーチェット病

ベーチェット病は、全身のさまざまな部位に炎症が繰り返し生じることが特徴的な疾病である。

免疫のはたらきが過剰になって自身の体の組織を攻撃してしまう膠原病の一種と考えられているが、明確な発症メカニズムは解明されていない。症状の現れ方には大きな個人差があるが、主な症状には次の4つがある。

  • 口腔内のアフタ性潰瘍(粘膜症状)
  • 外陰部の潰瘍(粘膜症状)
  • 皮疹などの皮膚症状
  • ぶどう膜炎(目の炎症、かすみ目)

上記のような症状がよくなったり、悪くなったりしながら繰り返し現れるのがベーチェット病の特徴である。重症の場合には内臓や神経、血管などにも炎症をもたらし、ときには命に関わることも多々ある。


予防

膠原病の原因が解明されていないので、予防策として確立されたものは存在しない。しかしながら、膠原病の発症には、ストレスが引き金になっている場合が多いので、身体的にも精神的にもストレスを溜め込まないことが大切であると言われている。

したがって、ストレス管理の観点から推奨できる予防策は下記のようなものである。

  • ストレスを溜め込まない
  • ストレスを発散する
  • バランスの良い栄養を十分に摂る
  • 十分な睡眠時間を確保する
  • 冷えに対する工夫も心がける(冷えが大敵な膠原病もある)

あとがき

膠原病は、自己免疫疾患で、自分の体の成分を異物とまちがえて攻撃する「自己抗体」ができて起こる。このような自己抗体がつくられる理由は、まだ解明されているわけではないが、研究も進んでおり、分かっていることも増えてきている。例えば、下記のような仮説が出てきたのも一歩前進ではないだろうか。

  • 抗体をつくるリンパ球の遺伝子が突然変異を起こし、自己抗体ができた
  • リンパ球には自己抗体を作らない仕組みが働くが、この仕組みに異常が起き、自己抗体を作るようになった
  • 自己抗体を作らないリンパ球だけが体内を巡回するはずが、何らかの原因で自己抗体を作るリンパ球も循環するようになったため自己免疫反応が起きるようになった
  • 紫外線、ウイルス感染、化学物質などの刺激によって自己の成分が変化したため、それを異物として認識してしまい、自己免疫反応が起きるようになった
  • 薬物が体の成分と結合し、体の組織と反応して変化すると、それに対する抗体が作られ、自己免疫反応が起きた
  • 免疫系が破綻し、免疫調節ができずに自己抗体を造り続ける
  • ある種のウイルスに感染すると、抗体をつくるリンパ球の活動が活発化させる

【参考資料】
Medical Notes HP
革新的医薬品審査のポイント(成川衛編著、日経BP社)
強皮症とは? (collagen-disease.com)