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希少疾患 指定難病 疾病

希少疾患とは何か? 希少疾病との相違点は何か? 指定難病とは何?

はじめに

Unmet Medical Needs【アンメット・メディカル・ニーズ】は、まだ有効な治療法が見つかっていない疾患に対する医療ニーズのことを指す用語である。

具体的には、がん、認知症などの重篤な疾患のほか、不眠症や偏頭痛といった、生命に支障はないものの、QOL(生活の質)の改善のために患者から強く求められている疾患に対する医療ニーズを指す。

Unmet Medical Needsは、次の2つに大別できる。

  • 患者数が多く、治療薬を必要とする声が多い疾患
    • 生活習慣病
    • がん
  • 患者数は少ないものの、治療薬の必要性が高い疾患
    • 希少疾患(患者数が5万人未満)
    • 指定難病

希少疾患に効果がある治療薬は、「オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)」と呼ばれる。製薬企業にとって、オーファンドラッグの開発は、Unmet Medical Needsの一部を解消する企業活動でもある。しかしながら、その開発は採算性の問題から進みにくい状況にあった。

ところが、近年の薬事法の改正により、オーファンドラッグ指定を受けた医薬品には助成金が交付されるほか、開発費にかかる税金が控除されるようになった。そのため、希少疾病に対する治療薬の開発が活発化している。

このように希少疾病の治療薬の開発を推進する環境は整ったと言えるかも知れないが、その開発は始まったばかりであり、すべての希少疾病のための治療薬を開発するにはまだ道半ばとも言えない状況である。


<目次>
はじめに
希少疾患とは
希少疾患と希少疾病の違い
指定難病とは
希少疾病のリスト
あとがき

希少疾患とは

希少疾患【きしょうしっかん】(Rare Disease;RD)は、患者数が少ない疾患の総称である。希少難病、稀少疾患とも記される。希少疾患は、一般的には人口10万人に対して患者が何人という単位で罹患率を表す。

希少疾患の定義は、国によって異なる。例えば、日本では対象患者数が5万人未満、米国では20万人未満、欧州では患者数が1万人に5人未満と定めている。

希少疾患は、治療法がなく、寿命に影響を与える疾患が多い。そのため、希少疾患の患者やその家族にとっては、医療情報の入手や適切な治療法の確立が大きな課題となっている。

ヨーロッパの希少疾患の患者会の連合組織であるEuropean Organisation for Rare Diseases(EURORDIS)によると、希少疾患のおよそ80%が遺伝性であるとされている。


希少疾患と希少疾病の違い

希少疾患希少疾病は、いずれも患者数が少ない疾患を指す用語であるが、その定義は異なる。

希少疾患は、患者数が少ない疾患の総称で、日本では患者数が全国で5万人未満の疾患を指す。希少疾患の数は全体では約5,000~7,000疾患と言われている。個々の疾患の患者は少ないものの、多くの疾患は病態の解明や診断法の確立がされておらず、治療も十分でないため、生命を脅かし永続的な障害を負うものが多い。

一方、希少疾病は、日本の薬事法で「希少疾病用医薬品」の対象となる疾患の総称で、日本全土で患者数が5万人未満の疾患という基準により、欧米の希少疾患と同様に国の単位で一律の基準ではあるが、人口比でおよそ0.04%であるため、ヨーロッパの希少疾患の基準よりもさらに狭いと言われている。

したがって、希少疾患と希少疾病は、どちらも患者数が少ない疾患を指す用語であるが、その対象となる疾患の範囲や基準が異なる。


指定難病とは

難病(Intractable disease)とは、治療方法が確立しておらず、長期の療養を必要とする疾病のことである。難病に羅漢すると大きな経済的負担を患者に強いる。そこで、国が「難病の患者に対する医療等に関する法律」を定め、医療費を助成している。この法律に定められる基準に基づいて医療費助成制度の対象としている難病を「指定難病」と呼ぶ。

指定難病とは、厚生労働大臣が定める一定の基準を満たす疾患のことを指す。その基準とは、患者数が本邦において一定の人数(人口の約0.1%程度)に達しないことなどである。指定難病に該当する疾患は、医療費助成の対象となる。

指定難病制度は、難病の患者やその家族が適切な医療やケアを受けるための支援を行うために設けられている。指定難病と診断された方のうち、厚生労働大臣が定める重症度分類等を基準としたときに、「その方の症状がその基準以上を満たしている方」もしくは「その基準を満たしていないが、高額な医療費が継続的にかかっている方」が医療費助成の対象となる。

指定難病は、研究班及び関係学会が整理した情報に基づき、指定難病検討委員会などの審議結果を踏まえ、厚生労働省が指定する。2021年10月時点で333疾患が指定難病に認定されている。

難病に指定されている疾病には遺伝性の疾病が多いことから、研究開発が進む「核酸医薬」が下記のような希少疾患・指定難病のための治療薬開発プラットフォームの一つになることを期待したい。


希少疾病のリスト

希少疾患(Rare Disease)とは、患者数の少ない疾患の総称である。厳密にいうと、希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の対象となる疾患の総称「希少疾病」の定義とは異なる。

狭義では、希少疾患は「希少疾病」と区別されるべきかも知れない。しかしながら、広義にとらえれば同義であるとも考えられているので、このブログではその区別はしない。

大事なことは、根本的治療薬が存在せず、日々症状に苦しんでいる患者さんのために画期的な治療薬(新薬)が一日も早く開発されることである。

p36欠失症候群
国内推定発症率:10~20人/年
染色体の異常によって発症する生まれつきの疾病。1番染色体短腕の36の領域に微細な欠失がみられる。顔貌に特徴があり、運動や言葉の発達に遅れが生じる。男女の割合は3:7で女性のほうが多いとされる。
22q11.2欠失症候群(指定難病)
推定発症率:1人/4,000~5,000人
DiGeorge症候群、円錐動脈幹異常顔貌症候群やShprintzen症候群とも呼ばれる、22番染色体の一部が欠損していることを原因として発症する疾病。原因が染色体の一部欠損であることが判明して以降、22q11.2欠失症候群という病名に統一されつつある。
4p欠失症候群(難病指定並びに小児慢性特定疾病)
推定発症率:1人/出生5万人
ウォルフ・ヒルシュホーン症候群とも呼ばれる、4番染色体の一部が失われることを原因として発症する疾病。男児に多い(理由不明)。特徴的な顔立ちや精神運動発達遅滞、知的障害、けいれんなどの症状が出現するが、失われる染色体領域の部分に応じて、症状の出方には個人差がある。根本的治療法はなく、症状に対しての対症療法が中心となる。身体的な合併症に対しての治療介入と共に療育面の支援も必要。
5p欠失症候群
5番染色体の一部分が失われることを原因として発症する疾病。数多くみられる症状のうち、猫が鳴くような甲高い声で泣くことが特徴(猫鳴き症候群)の一つ。症状は人によって異なり、特徴的な泣き声以外にも成長発達の障害や筋緊張の低下などさまざまな症状が現れる。一つの診療科のみで対応することは難しく、多くの専門家がチーム体制で診療にあたることが必要な疾病。
アイカルディ症候群(指定難病)
罹患率:不明、推定発症率:1人/9万~17万人
脳梁欠損、網脈絡膜裂孔、点頭てんかん(スパズム発作)という3つの症状を特徴とする難病。患者のほとんどは女性。
IgA腎症
血尿やたんぱく尿などの症状が現れる慢性糸球体腎炎の一種で、日本では小児・成人共に慢性糸球体腎炎のなかでもっとも頻度の高い疾病。発症初期には自覚症状はほとんどないが、治療をしないまま放置すると20年程度で透析治療が必要な腎不全になることもある。
IgG4関連疾患(指定難病)
国内推定患者数:約1〜2万人
免疫異常や血中IgG4高値に加え、膵臓や唾液腺、涙腺などの全身各種臓器にリンパ球やIgG4陽性形質細胞の著しい浸潤と線維化により、臓器の腫大や結節・肥厚性行変などを認める原因不明の疾病。IgG4とは、白血球の一種類である形質細胞から産生分泌される抗体であり、IgG4関連疾患ではIgG4を作る形質細胞が全身各種臓器において浸潤しており、血液中のIgG4も異常に上昇している。症状は、眼の乾きや口腔内乾燥、喘息症状、糖尿病や腎機能障害など多岐に渡る。同時にこれらの症状以外に、時期をおいて別の症状が出現することもある。ステロイド投与による治療が基本であり、長期的な管理が必要とされる。
亜急性硬化性全脳炎
推定発症率:1人程度/麻疹の感染者数万人
麻疹ウイルスに感染してから数年から数十年経過してから発症する疾病。発症するまでの間は、何事もないかのように普通に生活を送ることができるが、発症すると日常生活に支障が生じるようになり、以後進行性に増悪する重篤な疾病。男児にやや多い。根本的治療法はなく、イノシンプラノベクスやインターフェロンなどを用いての対症療法。麻疹ウイルスに対するワクチンを接種し、麻疹の予防をすることが重要。
アジソン病
推定発症例数:約660例/年
副腎皮質で産生されるホルモンが不足することから引き起こされる病気。副腎皮質ホルモン(コルチゾール、アルドステロンやアンドロゲン)が低下する原因には、先天性と後天性があり、アジソン病は特に後天的な原因で発症したものを指す。発生率に男女差はない。ホルモン補充療法を適切に行うことが必要。適切な治療が行われなければ生命に危険が及ぶこともある疾病。
アッシャー症候群 Usher syndrome
推定国内患者数:6-7人/10万人
先天的な遺伝子異常を原因として発症する難聴と視力障害を主要症状とする症候群。難聴と視力障害の合併を特徴する疾患は他にもあるが、アッシャー症候群はそのなかでも最も頻度が高いものと考えられている。アッシャー症候群は原因遺伝子によってもいくつかに分類されるが、ユダヤ系人種に特異的なタイプも報告されている。
アペール症候群
推定発症頻度:100万人に6~15.5人、日本では8例/年と推定
FGFR2遺伝子の異常が原因であり、常染色体優性遺伝形式をとる遺伝性の疾患。そのほとんどがFGFR2遺伝子の突然変異による弧発例で、家族例の報告はそれほど多くはない。頭蓋骨や顔面骨の縫合が早期に癒合し、頭蓋や顔面の形成異常が引き起こされる疾患。頭蓋骨はいくつかの骨から構成されており、それらのつなぎ目が縫合線と呼ばれる。脳が成長するにしたがって縫合部分も広がることで、頭蓋骨が拡大していく。成人になるにつれて、縫合部分は自然に癒合していく。アペール症候群は、この縫合部分の癒合が早期に起こってしまう疾病の1つである。頭蓋や顔面が変形してしまうだけでなく、そのままでは脳の発達に影響を与えてしまう危険性もある。複数回にわたる外科的治療が必要であると考えられている。クルーゾン症候群やファイファー症候群などと共に症候群性頭蓋縫合早期癒合症に分類され、類似の症状を示す。アペール症候群の特徴は、左右対称性に手や足の癒合が認められる合指(趾)症をともなうことであるとされている。発症頻度に性差はない。
有馬症候群(指定難病)
国内患者数:7名(2012年全国調査)
脳の奇形(特に小脳中部と呼ばれる部位に関して)、発達の遅れ、重度の腎障害にて特徴付けられる先天性疾患。有馬症候群はCEP290遺伝子と呼ばれる遺伝子異常に関連して発症することが知られており、「常染色体劣性」の遺伝形式をとる。病気に対しての根本治療は確立されておらず、生命予後の既定となりうる腎障害に対しての治療が行われることになる。その他、運動精神発達の遅れを見ることも稀ではないため、リハビリテーションや療育が必要になる疾患。 類似の臨床症状を呈する疾患として、Joubert症候群、COACH症候群、家族性若年性ネフロン癆を挙げられる。
アルポート症候群 Alport syndrome
腎機能障害、音感性難聴、視力障害を主要症状とする遺伝性疾患(進行性腎炎)。原因は、COL4A5、COL4A3、COL4A4と呼ばれる遺伝子異常であると報告されている。アルポート症候群では進行性に腎機能が低下することが多く、20代半ばで透析や腎移植が必要になるほどの腎機能障害を呈することになる。聴力に対しての影響も強く、思春期や青年期までに難聴を発症することが多い。診断は家族歴や臨床症状、腎臓の組織を顕微鏡的に観察することからなされる。現在、根本的治療法はなく、治療は症状に応じた支援的なものになり、透析や補聴器などが導入されることになる。
アンジェルマン症候群(小児慢性特定疾患ならびに指定難病)
発症率:1人/1万5千人の出生、国内推定患者数:500〜3,000人
重度の精神発達の遅れ、てんかん、失調性の運動障害など、神経系に関係した症状を有する疾患。ちょっとしたきっかけで容易に笑ったりすることも特徴の一つ。治療は、てんかんのコントロール、療育を行うことが重要な疾患。
ウィーバー症候群(小児慢性特定疾病並びに指定難病)
推定患者数:全世界で100例未満、正確なデータなし
身体の成長が異常に早いことで特徴付けられる先天性遺伝性疾患。成長の早さは胎児期の頃から認め、出生後も持続。そのほかの症状として、強い筋緊張、関節拘縮を起こしたり、運動・精神・発達・成長で異常を示したりします。ウィーバー症候群の子どもは、泣き声が低いという特徴も呈す。生命予後自体は合併症の程度により、症状に合わせた治療や対症療法が行われる。
ウイリアムズ症候群(指定難病)
推定発症率:1人/1万〜2万人
常染色体の中の7番染色体長腕の微小欠失部分を原因とする隣接遺伝子症候群。臨床的には、特異顔貌、心奇形、成長障害、精神遅滞、新生児高カルシウム血症などを特徴とする。
ウィルソン病(指定難病)
推定発症率:1人/3 〜4 万⼈
全⾝の組織に過剰な銅がたまる先天性代謝疾患。特に、肝臓や脳、眼、腎臓に銅がたまりやすく、たまった銅がこれらの臓器に障害を起こす。遺伝性の疾患だが、⼤⼈になってから初めて発症するケースもあり、発症年齢は3歳から50 歳までと幅広くなっている。⽇本では欧⽶に比べて発症年齢がやや早いのも特徴で、要因として、銅を多く含む海産物(⾙など)の摂取などの⾷⽣活が関係している可能性が考えらる。
内服薬を適切に継続することで、症状の発症を抑えることが期待できる疾患。早期発⾒をすることに加えて、服薬をおこたらないようにすることがとても重要。
West症候群(別名:点頭てんかん)
3か月から8か月の乳児に生じることの多い難治性てんかん症候群を指す。脳の先天的な形成異常や染色体異常など発症の原因はさまざまである。群発する短い筋収縮からなるスパスムと、ヒプスアリスミアが特徴であり、放置すると発達や予後に多大なる影響を及ぼす可能性のある疾患である。
ウェルナー症候群
国内推定発症率:1人/5〜6万人、国内推定患者数:2,000〜3,000人
米国推定発症率:1人/20万人→日本の方が高い
老化現象が通常よりも早い時間軸のなかで出現する「早老症」のひとつ。思春期までは比較的正常に成長するが、20代前後を境にして白髪や脱毛、白内障などの加齢に関連した病気がみられるようになる。動脈硬化の進行スピードが早く、かつ若くして悪性疾患を発症することもまれではない。そのため加齢に関連した病気の進行抑制や早期治療が大切。ウェルナー症候群は、日本に多い早老症。
ウルリッヒ病(小児慢性特定疾病並びに指定難病)
国内推定患者数:300名程度
骨格筋に先天的な異常が存在するために生じる疾病。先天性筋ジストロフィーのひとつに分類される疾病。出生間もなくから筋力は低下しており、筋肉の萎縮、関節拘縮などの症状を来すようになる。先天性筋ジストロフィーとしては、福山型先天性筋ジストロフィーに次いで多い疾患であると報告されている。ウルリッヒ病に対しての根本治療は存在せず、筋力低下に関してのリハビリテーションや整形外科的な介入が重要になる。呼吸筋が低下することから、感染症を併発することもある。遺伝性疾患としての側面もあるため、遺伝カウンセリングも必要になることがある。
ANCA関連血管炎
血液検査でANCA(抗好中球細胞質抗体)と呼ばれる抗体が検出されることを特徴とする、ANCAと関連して発症する疾病。ANCAが存在すると、活性化された好中球(白血球の一種)が特定の血管に対して炎症を引き起こすようになる。本来、炎症は病原体やけがなどに際して引き起こされる生体の防御反応であるが、ANCA関連血管炎ではそうした事態がないにもかかわらず、不要な炎症反応が血管で引き起こされる。その結果として、全身の各部位において血管炎が生じるANCA関連血管炎の発症に至る。血管炎では、全身の血管に炎症が起きて血管が狭くなるために臓器への血液の流れが悪くなる。その結果、酸素や栄養分が不足して臓器の働きが悪くなり、進行すると臓器に障害が起こる。ANCA関連血管炎には、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、多発血管炎生肉芽腫症(GPA)、好酸球性多発血管炎生肉芽腫症(EGPA)の三つの疾病が含まれる。
HTLV-1関連脊髄症(指定難病)
国内推定患者数:約3000名
レトロウイルスとよばれるウイルスの一種でありTリンパ球に感染するヒトTリンパ向性ウイルス1型(HTLV-1)のキャリア(感染者)においてまれに発症する、中枢神経の慢性炎症性疾患。ウイルスは主に授乳や性交(多くの場合男性から女性への感染経路)などによって感染する。中年以降の成人に多く、また女性の発症が多い傾向にある。HTLV-1感染は成人T細胞性白血病という病気を発症する原因にもなる。
エーラス・ダンロス症候群(Ehlers-Danlos syndrome: EDS)(指定難病) 推定発症率:1人/5,000人程度
皮膚や骨、血管、さまざまな臓器などを支持する結合組織が脆弱になる遺伝性疾病。原因や臨床症状、遺伝形式の違いに基づき、13病型に分類される。
エマヌエル症候群(指定難病)
染色体を正常の46本よりも多く47本持つことが原因で発症する、染色体異常による先天性疾患。過剰なのは22番転座派生の染色体である。精神運動発達遅滞、特徴的な顔つき、小顎症、口蓋裂、先天性心疾患などがみられる。根本的治療法はなく、症状に合わせた支持療法が中心になる。症状は全身各種臓器に渡るため、包括的な医療が求められる。
黄色靭帯骨化症(指定難病)
国内推定患者数:3,000人以上)
脊髄の後ろ側に位置する、背骨を補強する靭帯の一つである黄色靭帯が骨になってしまう疾病。黄色靭帯が骨になると、近くに位置する脊髄が障害され、足のしびれや動きにくさなどの症状が生じる。40歳以上に多く発症。治療では、痛みやしびれを抑えるための薬物治療や、病変部を摘出する手術が行われる。
黄斑ジストロフィ(指定難病)
網膜のなかでも特に視力に重要な役割を果たす黄斑が徐々に障害を受けることによって視力低下をきたす遺伝性疾患。黄斑ジストロフィはいくつかの病気の総称で、
スタルガルト病や錐体杆体ジストロフィなどが含まれており、経過や予後もさまざまである。原因となる遺伝子異常が指摘されているものもあるが、全容が明らかになっていない。根本的治療法はなく、対症療法が中心となる。日常生活における支障も出てくる疾患であるため、補助具の使用で対処しつつ適切な支援を受けることが重要。
オクシピタル・ホーン症候群(指定難病)
国内推定発症率:1人/68万人
ATP7Aと呼ばれる遺伝子に異常が存在することで発症し、体内の銅の量が不足することから皮膚や血管などに異常を示す疾病で、ほとんどは男性に発生する。同じ遺伝子異常を伴う疾病にはメンケス病と呼ばれるものが知られているが、メンケス病に比べて症状が軽症である。オクシピタル・ホーン症候群に対しての根本的な治療方法は存在せず、症状に合わせた支持療法が中心となる。
オスラー病(指定難病)
国内推定発症率:1人/5,000~8,000人、国内推定患者:10,000人
遺伝性出血性末梢血管拡張症とも呼ばれる、全身各種臓器に異常血管が生じる結果、異常血管からの出血をみる遺伝性疾患。出血は鼻血程度のこともあるが、肺や脳、肝臓などの臓器から出血する場合もある。症状は軽微なものから非常に重いものまで幅広い。
潰瘍性大腸炎(指定難病)
国内推定発症率:約100人/10万人
大腸の粘膜に慢性的な炎症が生じ、“びらん”や“潰瘍”といった病変が形成される疾病。発症すると腹痛、下痢、血便などの症状が現れ、重症な場合は発熱、体重減少、貧血など全身にさまざまな症状を引き起こす。発症に男女差はなく、20歳代頃の比較的若い世代から高齢者まで幅広い年代で発症する可能性があるのも特徴の1つ。潰瘍性大腸炎の症状の現れ方はさまざまであり、よくなったり悪くなったりを繰り返すパターンもあれば、症状がずっと続くパターン、急激に重度な症状が現れるパターンなどもある。治療の主体は大腸の炎症を鎮めたり、過剰な免疫のはたらきを抑制したりする薬による薬物療法であるが、薬物療法で十分な効果が得られない場合などは大腸を全て摘出する手術を行うことも少なくない。また、潰瘍性大腸炎は、発症して7~8年ほど経過すると大腸がんを併発するケースもある。そのため、潰瘍性大腸炎と診断された場合は症状がよくなっても適切な治療と検査を続けていくことが大切である。
家族性高コレステロール血症(指定難病)
ホモ接合体を保持する国内推定患者数:1人/100万人
遺伝子異常を原因として発症する高コレステロール血症の一つを指す。LDLコレステロールが血液中に大量に存在することになり、若い年齢のうちから動脈硬化が進行し、心筋梗塞を代表とする冠動脈性疾患を引き起こす疾病。症状の出現の仕方は、原因となる異常遺伝子をどのように有しているかによって異なる。特に、「ホモ接合体」と呼ばれる遺伝子状態を保持している場合は、高コレステロール血症の程度が強く、小児期の間から心筋梗塞を発症することもある。
家族性地中海熱
国内推定患者数:約300人
40℃近い高熱を伴う腹膜炎や胸膜炎などを繰り返し発症する疾病。血液中の好中球に存在するパイリンと呼ばれるたんぱく質に異常が生じ、炎症を引き起こすシステムが乱れることによって過剰な炎症反応が引き起こされると考えられている。このパイリンの異常は遺伝子の変異によって引き起こされるケースが多く、遺伝が関与していることが分かっている。一方で、遺伝子の変異が見られない発症者も少なくないことから、遺伝以外の要因も関与していることが示唆されている。発作のように高熱や腹膜炎などの重篤な症状を引き起こすが、比較的速やかに回復し、再発を繰り返すのがこの病気の特徴でもある。発作が治まれば症状は消失するため、この病気で命を落とすケースはまれであるが、適切な治療を行わなければアミロイドと呼ばれる異常なたんぱく質が全身のさまざまな臓器に沈着してダメージを与える“アミロイドーシス”を合併することが報告されている。
家族性慢性膿皮症
首や脇の下などの皮膚と皮膚とがれる部位を中心として、痛みや瘢痕形成など伴う皮膚病変と関連した疾病の一つを指す。家族性慢性膿皮症は、ガンマセクレターゼと呼ばれる遺伝子に異常を生じることを原因として引き起こされる疾病。異常な遺伝子が子供に伝わることから、病気が遺伝する可能性がある。
家族性良性慢性天疱瘡(別名:ヘイリー・ヘイリー病)
成人以降になっての下・首・足の付け根・肛門の周りなど皮膚の摩擦が起こりやすい部位に水ぶくれや赤い発疹が生じる疾病。特定の遺伝子の変異によって引き起こされ、親から遺伝することが分かっている。発症すると水ぶくれや発疹などの症状が現れるが、いったんよくなっても再発を繰り返すのが特徴。またかゆみを伴うため、かくことによって細菌感染を引き起こし、が出て悪臭を放つようになることも少なくない。さらに、発症した部位は皮膚症状が改善したとしても色素沈着を残して周りの皮膚よりも色が濃くなっていく。この疾病を完全に治す治療法はなく、進行や症状の悪化を抑える治療法で対応する。できるだけ早い段階で的確な診断が下され、治療を開始することが望まれる。
カーニー複合(指定難病)
国内推定患者数:30〜40人(報告分であり、全容の解明には至っていない)
遺伝子異常が原因で発症することが示唆されている、複数の臓器にまたがる良性腫瘍が多発することで特徴付けられる疾患を指す。心臓における粘液腫は代表的な腫瘍であり、良性腫瘍とはいえ心不全や脳塞栓などを引き起こす危険性を伴う。種々の内分泌組織に腫瘍が生じることも多く、ホルモン分泌過剰にともなう症状をきたす。皮膚に色素沈着することも珍しくない。治療法は、発生部位によっては手術を行うこともあり、内分泌亢進症状に対しては内服薬を使用することもある。特に心臓に発生した腫瘍に起因して予後が規定されることが報告されており、注意を払うことが必要。
歌舞伎症候群(指定難病)
国内推定発症率:1人/3万2千人
発達の遅れや筋骨格系の異常をともなう疾病。顔貌の特徴が、歌舞伎の化粧法である隈取と似ていることから歌舞伎メーキャップ症候群とも呼ばれる。具体的には、眉毛の外側が薄く弓の形をしている、下まぶたの一部が外側に反っている、切れ長の目といった特徴である。
化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群(指定難病)
Pyogenic sterile arthritis, pyoderma gangrenosum and acne syndrome [PAPA症候群]
国内推定患者数:5名(全世界で40名程度)
PSTPIP1と呼ばれる遺伝子異常を原因として発症し、関節と皮膚に対しての症状が主要となる自己免疫性疾患。関節炎や皮膚症状と関連して、それぞれ関節の変形や皮膚の潰瘍が続発することもあります。 治療には、ステロイドを始めとした免疫抑制剤が使用される。薬剤の使用は長期間に渡るため、副作用の合併に注意しながら使用することで病勢のコントロールを行うことが重要になる。
ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症
母乳やミルクに含まれるガラクトースを、うまく処理することができないガラクトース血症の一病型。ガラクトース血症とは、ガラクトースを代謝する経路のいずれかの障害で血中のガラクトース濃度が上がった状態のことをいう。ガラクトースは、ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼの作用によりガラクトース-1-リン酸からグルコース-1-リン酸へと代謝される。ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症では、酵素欠損により、ガラクトース-1-リン酸が体内で蓄積し、無治療のまま放置することで、生後早い時期から活気不良、哺乳障害などの症状が見られ、最悪の場合は命にかかわる危険性もある疾病。そのため、いかに早期に疾病を察知して治療につなげるかが重要。疾病の早期診断・早期治療を行うために、ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症は新生児マススクリーニングの対象である。生後早くからの検査を通して、適切な治療につなげることが大切。
間質性膀胱炎
膀胱は、腎臓でつくられた尿をためておく役割をもつ臓器であり、ここに発生する炎症を膀胱炎という。その原因は多岐にわたり、もっとも頻度が高いものは感染性膀胱炎である。尿道から病原性細菌が侵入して発症し、症状の出現は急性で、通常は抗菌薬の内服治療を実施する。一方、間質性膀胱炎原因不明の膀胱の炎症であり、確立した治療法がない。中高齢の女性で多く発症するが、男性や子どもにもみられる。
眼皮膚白皮症(指定難病)
国内推定患者数:約5,000人
眼や皮膚、髪の毛の色素はメラニンと呼ばれるが、メラニン合成に関わる遺伝子異常が原因として発症し、眼や皮膚、髪の毛の色素が薄くなることを特徴とする疾病。皮膚や髪の毛などの色が薄くなる以外にも、感染症にかかりやすくなったり出血をしやすくなったりすることもある疾病。疾病の自然経過は、全身症状の有無にも応じて異なるが、眼皮膚白皮症の多くの患者では視力障害や、中高年以降の皮膚がんのリスクが伴う。根治的な治療方法が確立しているとは言えず、日常生活において日光を避ける工夫を行うことが大切になる
ギラン・バレー症候群
国内推定発症率:1~2人/10万人
末梢神経が障害されることによって脱力・しびれ・痛みなどの症状が引き起こす疾患。神経には、脳や脊髄といった中枢神経とそこから分岐して全身に分布していく末梢神経がある。末梢神経は、運動に関わる運動神経、感覚に関わる感覚神経、身体の機能を調節する自律神経に分類されるが、ギラン・バレー症候群ではこれらの末梢神経に異常が生じることによって発症すると考えられている。末梢神経に異常が生じる原因は、ウイルスや細菌による感染をきっかけに起こる免疫反応が自身の末梢神経を攻撃することによるものと考えられている。この疾病は特別な治療を行わなくても自然に症状が軽快していくケースが多い一方、重症化するケースもあるため発症した場合はできるだけ早い段階で治療を開始することが望ましい。小児から高齢者まで全ての年代で発症する可能性があるため注意が必要。
ギャロウェイ・モワト症候群(指定難病)
国内推定患者数:約200名
WDR73遺伝子異常が原因となり発症する先天性症候群であり、腎糸球体硬化症(ネフローゼ)と小頭症(てんかん、精神運動遅滞)を主な症状とし、顔面・四肢の形成異常を合併することがある。脳の形成異常に関連して運動面、精神発達面の遅れは著しく、けいれんや運動障害を示す。また、出生早期から腎障害も治療抵抗性のネフローゼ症候群が生じることもある。ネフローゼ症候群とは、尿中にタンパク質が多量に出てしまい、血液中のタンパク質が減ってしまう状態を示す症候群のこと。尿の泡立ちやむくみを主な症状とする。生命予後は厳しいものがあり、けいれんやネフローゼ症候群と関連して乳児期の命にかかわることもまれではない疾病である。
CANDLE症候群(Chronic Atypical Neutrophilic Dermatosis with Lipodystrophy and Elevated Temperature Syndrome)
中條・西村症候群と同じような遺伝子異常によって発症する疾病。
巨細胞性動脈炎
側頭部に存在する動脈を中心に炎症が生じるため、以前は「側頭動脈炎」と名付けられていたが、側頭動脈以外にも体内で一番太い動脈である大動脈およびその分岐した動脈にも炎症をきたすこともあり、「巨細胞性動脈炎」の名称に変更された。巨細胞性動脈炎は、全身のだるさや食欲低下、体重減少、発熱といった非特異的な症状が生じることがある。最悪の場合、目に栄養を送達している動脈が障害されて失明に至ることがある。治療は、動脈の炎症を抑えることを目的としてステロイドを中心とした過剰な免疫応答を抑える免疫抑制療法を用いる。
強直性脊椎炎
免疫作用が過剰にはたらいて自身の組織などを攻撃してしまう自己免疫疾患の一つで、脊椎や骨盤の仙腸関節に炎症が引き起こされる疾病。男性に発症しやすく、10歳代後半から20歳代で好発し、40歳以降の発症は少ないとされている。発症すると、炎症が生じた部位に痛みが生じるようになる。症状の現れ方は人によって異なるが、多くは腰やお尻の痛みから始まり、次第に背中や首、胸、四肢の大きな関節に症状が広がっていくとされている。進行すると背中を曲げることができなくなり、日常生活に大きな支障をきたすことも少なくない。そのほかにも発熱や体重減少、倦怠感などの症状やぶどう膜炎と呼ばれる目の疾病を併発することもある。
巨大リンパ管奇形(指定難病)
国内推定患者数:約600名
リンパ液で満たされた嚢胞と呼ばれる構造物が大きな塊を作って生じる病変のことを指す。全身どこにでも発症する可能性はあるが、首や脇の下に生じることが多い。特に首に生じた巨大リンパ管奇形では、美容的観点以外にも周辺に存在する構造物を圧迫することになり、呼吸困難や嚥下障害などの生命にかかわる症状を誘発する。治療法は、外科手術的に摘出することもあるが、薬剤を病変部位に注入することもある。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
国内推定患者数:1万人弱、推定発症率:5人程度/10万人
運動神経系(運動ニューロン)が選択的に障害される進行性の神経疾患。運動神経系は、脳から脊髄(あるいは延髄)につながる上位運動ニューロンと、脊髄(あるいは延髄)から末梢へつながる下位運動ニューロンに大別される。ALSではこの上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両方が障害されるという特徴がある。好発年齢は50~70歳くらいであるが、非常にまれながら若い年代で発症することもある。発症に関連する遺伝子異常がいくつか報告されているものの、その詳細な原因は不明なままで、研究が進められている状況である。
筋ジストロフィー
国内推定発症率:20人前後/10万人
時間経過と共に筋肉が徐々に壊れていき、進行性に筋力が衰える疾病。運動機能に問題が生じる他、心臓や呼吸等の内臓機能に症状をきたすこともある遺伝性の筋疾患。筋ジストロフィーにはさまざまな病型が含まれますが、最も頻度の高いものはデュシェンヌ型・ベッカー型筋ジストロフィーである。これらの病型は、いずれも筋肉に関連した遺伝子の異常によって発症する。症状は軽度のものから重度のものまで多種多様であることから、正確な頻度については不明な点もある。主に幼い男の子に発症する疾病である。
クッシング病
副腎皮質ステロイドホルモンの一つであるコルチゾールというホルモンが過剰に分泌され、全身にさまざまな症状を生じる疾患。コルチゾールの産生量は脳に存在する下垂体と呼ばれる組織から分泌されるACTHというホルモンで厳重に調整されているが、下垂体に腫瘍ができることからACTHが過剰に産生されることから発症する疾病がクッシング病と呼ばれている。 クッシング病では見た目の問題だけでなく、高血圧や糖尿病、骨粗鬆症、感染症、うつなど全身に影響が生じるようになる。未治療のまま放置することで、生命の危機に陥ることもあり得る疾患。適切な治療を受けることがとても重要な疾患。
クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群(指定難病)
遺伝子異常により発症し、四肢に血管腫が形成され、骨や筋肉などが大きくなる疾病。血管腫とは、血管が拡張したり増殖(血管内皮細胞の増殖)したりすることによってできる良性腫瘍のこと。根本的な治療方法は存在せず、手足のむくみを改善させる、といった対症療法が治療の中心になる。
くる病(ビタミンD依存性くる病・ビタミンD抵抗性くる病は、小児慢性特定疾患並びに指定難病)
カルシウムやリンなどの電解質が骨に沈着する量が少ないために発症し、骨が脆くなる疾病。子どもが発症する病気であり、骨が柔らかくなることで骨が正常に成長しなくなる。その結果、脚が曲がって成長したり、身長が伸びにくくなったりするといった症状が現れる。発症原因はさまざまだが、その一つは食生活の乱れなどによる骨を硬くするリンの吸収を促すビタミンDの不足である。また、ビタミンDは紫外線を浴びると皮膚で生成される性質がある。そのため、極端に紫外線を避けた生活を送るとくる病を発症しやすくなることが知られている。そのほか、遺伝的な原因により体内でビタミンDをうまく利用することができなくなる疾病でもくる病を発症することがある。このような疾病によって引き起こされるくる病をビタミンD依存性くる病と呼ぶ。また同じく遺伝的にリンが低下してしまい、活性型ビタミンD製剤で治療できないくる病を発症することがあり、この疾病はビタミンD抵抗性くる病と呼ばれる。日本ではくる病の原因としてこのビタミンD抵抗性くる病がもっとも多いと考えられている。
好ましくない生活習慣によるくる病の治療は、日光浴の推奨や食事療法が主体となるが、重度なくる病や生まれつきの病気によるくる病の場合には不足したリンやビタミンDなどを補うための薬物療法や、リンの低下をもたらすホルモンのはたらきを抑える薬物療法が必要となる。治療が遅れると脚の変形や低身長など将来的に大きな問題となる症状を引き起こすことになるため、くる病が疑われる場合は速やかな病院受診が必要。
クルーゾン症候群
国内推定発症数:20~30例程度/年
常染色体優性遺伝形式をとる遺伝性の疾病で、FGFR2もしくはFGFR3遺伝子が責任遺伝子として報告されている。頭蓋骨や顔面骨の縫合が早期に癒合し、頭蓋や顔面の形成異常が引き起こされる疾病。頭蓋骨はいくつかの骨から構成されており、それらのつなぎ目が縫合線と呼ばれる。脳が成長するにしたがい、縫合部分も広がることで頭蓋骨が拡大していくが、成人になるにつれて縫合部分は自然に癒合していく。クルーゾン症候群は、この縫合部分の癒合が早期に起こってしまう疾病の一つである。また、アペール症候群やファイファー症候群などと共に症候群性頭蓋縫合早期癒合症に分類され、頭蓋骨だけでなく顔面骨の癒合も認められ、さまざまな症状を現す。しかし、アペール症候群などとは違い、手足の先天異常は伴ない。
クロイツフェルド・ヤコブ病CJD
国内発症数:70~150名程度/年)
プリオン病の一種で、感染性を有する異常型プリオンが脳に沈着した結果、脳神経細胞の機能が障害される致死性の疾患。その発症機序から孤発性CJD 、家族性CJD 、医原性CJD、変異型CJDに分類される。孤発性CJDは全体の約8割を占め、その発症率は世界的にみてもほぼ一定で、地域分布に差はない。性差も認められていない。孤発性CJDの多くは50歳以上で発症し、60歳代~70歳代に多くみられる傾向がある。医原性および変異型CJDは、孤発性CJDに比べると若年で発症する傾向がある。
クローン病(指定難病)
国内推定発症率:27人程度/10万人
小腸や大腸などの粘膜に慢性的な炎症を引き起こす原因不明の疾病。男性のほうが女性より2倍程度発症しやすいことも特徴。クローン病は10~20歳代で発症するケースが多く、主に小腸や大腸に炎症が現れる。そのため、腹痛、血便、下痢、体重減少などが代表的な症状となるが、口の中から肛門までさまざまな部位に症状が現れる可能性がある。また、病変は1か所だけでなく、同時に複数の器官に炎症を伴う場合も少なくない。治療は、炎症や免疫のはたらきを抑える作用のある薬剤を用いた薬物療法が主体となるが、腸の壁に穴が開いたり、腸がたび重なる炎症で狭窄を引き起こしたりするようなケースでは手術が必要となる。
痙攣重積型(二相性)急性脳症(指定難病)
推定発症率:100〜200例程度/年
小児期(特に生後6ヶ月から1歳代)に好発する疾患であり、感染症が誘因となる急性脳症の中でも代表的な疾患。一つの感染症のエピソードの中に2回けいれんの発症があり、2回目のけいれんの後に意識障害が強く障害され、長期的な神経学的な後遺症を残すことが典型的な臨床経過である。インフルエンザや突発性発心といった小児にありふれた感染症をきっかけとして発症することが多く、感染初期には痙攣重積型(二相性)急性脳症を発症するかどうかを予測することは困難である。しかし、一度発症した場合の長期的な神経学的予後は不良であり、発症に際しては集学的な治療介入を行うことが重要になる。
劇症肝炎
肝臓の細胞が8週間以内のうちに急速かつ急激な障害を受け機能低下を起こした結果、黄疸、出血傾向、精神状態の悪化など肝不全症状が現れる疾患。肝機能障害が生じる原因には、B型肝炎ウイルスを代表とするウイルス、薬剤、自己免疫性肝炎などさまざまなものが含まれる。劇症肝炎では、短時間のうちに肝臓の細胞が壊死してしまい、正常な肝機能が保てなくなってしまうため様々な障害が引き起こされる。肝臓はさまざまな機能を持つ臓器であるが、たとえば血液を固めるために重要な凝固因子と呼ばれる物質もつくっているので、劇症肝炎では凝固因子の産生機能も障害をうけ、消化管や脳などでの出血リスクが高まるなどの障害が発生する。また、肝臓は身体にとって不要な物質を解毒する作用も有しており、アンモニアも肝臓で解毒を受ける必要のある物質のひとつである。劇症肝炎では解毒作用が低下しているので、アンモニアをはじめとした種々の物質が脳に対して悪影響を及ぼすことも知られており、意識障害を代表的な症状とする肝性脳症と呼ばれる状態を引き起こしたりする。
結節性硬化症
遺伝子に異常があることで、脳・腎臓・肺・皮膚・心臓などに良性の腫瘍や過誤腫と呼ばれる病変ができる疾病。 結節性硬化症では、生じた腫瘍がそれぞれの臓器に症状を引き起こす。また、臓器の症状だけでなく、てんかんや自閉症を引き起こすこともある。
結節性多発動脈炎(指定難病)
全身に分布する血管のなかでも中程度の太さの血管を中心に炎症が生じ、さまざまな症状が引き起こされる血管炎を指す。結節性多発動脈炎では全身各種臓器に分布する血管に病変が生じるため、障害を受けた血管に応じた臓器症状が出現する。男性に多く、40〜60歳で発症することが多い。結節性多発動脈炎は、放置すると脳梗塞や消化管出血、腎機能障害などの重篤な症状を惹起することもあるため、適切な治療を行うことが重要な疾患。治療の基本はステロイド投与であり、症状にあわせてその他の免疫抑制剤等も使用される。
血栓性血小板減少性紫斑病(指定難病)
推定発症率:毎年4人程度/100万人
ADAMTS13と呼ばれるタンパク質の働きが悪くなることで、血管の中に血の塊(血小板血栓)が生じ、結果的に血小板が減少して出血班をきたす疾病。発熱や皮膚のあざ、息苦しさ、疲れやすさ、精神症状、腎臓の機能障害などが見られる可能性がある疾病。血栓性血小板減少性紫斑病は、先天的原因で発症することもあれば、後天的原因で発症することもある。原因検索を行いつつ、血漿交換療法、ステロイド、抗血小板薬の使用などが行われる。病状が急速な経過で増悪することもあるため、疾病の存在が疑われ次第、早急に対応することが求められる疾病である。
原発性硬化性胆管炎(Primary Sclerosing Cholangitis:PSC)
国内推定患者数:約1,200人
何らかの免疫学的異常により引き起こされる、肝臓の内外の太い胆管が障害されて胆汁がうっ滞し、肝臓の働きが悪くなる疾病。男性にやや多く認められ、発症年齢は若年(20歳頃)と高齢(60歳頃)に2つのピークがみられるが、10代の子どもに発症することも珍しくない。自己免疫性肝炎(AIH)や原発性胆汁性肝硬変(PBC)といった他の自己免疫性肝疾患とは異なり、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患を合併することが多いという特徴がある。
原発性胆汁性胆管炎Primary Biliary Cholangitis: PBC
国内推定患者数:約5~6万人
肝臓内にある胆管が自己免疫学的機序によって破壊され、慢性的に肝臓内に胆汁がうっ滞してしまう疾病。うっ滞した胆汁により肝臓の肝細胞が破壊されていくと、徐々に肝硬変へと移行していく。女性に多く発症し、発症しやすい年齢は男性60歳、女性50歳といわれている。
顕微鏡的多発血管炎(指定難病)
国内推定発症率:約1,400名/年
好中球に含まれる物質に対しての自己抗体(抗好中球細胞質抗体: ANCA)が検出されることが多いため、ANCA関連血管炎の一つに含まれる疾患。全身に分布する血管の中でも、顕微鏡でなければ観察することができないほどの小さな血管に炎症が生じ、様々な症状が引き起こされることになる血管炎を指す。この疾病で障害を受ける臓器としては、腎臓や肺、皮膚、末梢神経などがある。発熱や体重減少などと共に数週間から数か月の経過で急速に腎臓の機能が低下することが懸念される。また急速な進行から肺出血や腎不全など生命に危険がおよぶ合併症を生じる可能性がある。そのため、早期に診断を行い、充分な治療介入を行うことが必要とされる疾患と言える。女性がよりかかりやすく、50歳以上の高齢者で発症が多い疾病。疫学的には、日本人に多い疾病であるとされている。
高IgD症候群(指定難病)
国内患者数:10名
脂質の一つであるコレステロール代謝に関わるメバロン酸キナーゼと呼ばれる酵素の働きが低下していることが原因とされる、周期的に繰り返す発熱で特徴付けられる自己炎症性疾患の一つ。高IgD症候群はより広い疾患概念である「メバロン酸キナーゼ欠損症」に含まれる疾患。メバロン酸キナーゼの働きがどの程度低下しているかに応じて症状は異なる。発熱性発作を繰り返す疾病であることから、発作時に解熱鎮痛剤やステロイドを使用することが治療の中心として行われることが多い。
高安動脈炎(指定難病)
国内患者数:約6,000人
大動脈やそこから分岐する太い血管(大血管)に慢性の炎症が生じる疾病。発症すると、持続する炎症によって血管の組織に異常が生じ、壁が厚くなったり血管が狭くなったりする。また、血栓ができやすくなるのも特徴。その結果、全身にさまざまな症状を引き起こし、脳梗塞や心臓弁膜症など命に関わるような疾病を引き起こすことも少なくない。患者の約9割は女性であり、15~35歳の若い世代に発症することが多い。
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(指定難病)
国内患者数:約2,000人
気管支喘息やアレルギー性鼻炎を有する患者おいて、白血球の一種である好酸球が異常に増殖することにより全身の細い血管に炎症が生じ、さまざまな臓器に障害がみられる疾病。全身の血管が障害されるため、肺炎、神経や胃腸の障害、心筋梗塞や脳卒中などの重篤な病態が引き起されることがある。そのため、血管の炎症を抑えるために治療では主にステロイドが用いられる。
好酸球性副鼻腔炎
好中球によるもの(細菌感染)が原因の通常の副鼻腔炎と異なり、アレルギー的な過敏症を呈するもので、好酸球による浸潤がみられたことから「好酸球性副鼻腔炎」と命名された。大人になってから喘息を発症した人に多くみられる。鎮痛剤の服用によって喘息を発症するアスピリン喘息を合併することも少なくない。
ゴーシェ病
ライソゾーム病の一つに分類される、グルコセレブロシダーゼをコードする遺伝子の異常を原因として発症する疾病。グルコセレプロシダーゼの活性の低下によって、グルコシルセラミドと呼ばれる糖脂質の代謝ができなくなり、それら物質が細胞内に蓄積されていく。その結果、特に肝臓や脳、骨などの各臓器に異常をきたす。具体的には、肝臓の腫れ、発達の遅れ、貧血や骨折などの病状がみられる。治療方法は、不足する酵素を定期的に補充したり、必要に応じて対症療法的に呼吸のサポート、抗けいれん薬の使用などが適宜行われる。
再発性多発軟骨炎(指定難病)
国内推定患者数:約500名
原因不明の自己免疫性疾患の一つ。軟骨組織やコラーゲンが多く存在する耳介、内耳、鼻、気道、目、関節、血管に繰り返し炎症を起こす疾病。そのため、こうした部位が障害を受け、耳介の変形、耳の聞こえの低下、めまい、鼻の変形、呼吸困難、目の炎症、関節痛などの症状が出現する。治療法は、主にステロイドを用いて炎症のコントロールを図るだけで根治療法はない。40~60歳代に多いと報告され、男女とも発症する。
後縦靭帯骨化症(指定難病)
脊椎を支える靭帯の一つである後縦靭帯が骨化し、近くに位置する脊髄が圧迫される疾患。症状は、脊髄の中でもどこが障害を受けているかによって大きく異なる。中年期以降の男性に多いことが報告されている。後縦靭帯が骨化することはまれではなく、その中でも症状を呈する場合に治療介入が検討される。脊髄が障害されて手足の動きに支障が出た場合は手術療法が必要になる。
広範脊柱管狭窄症(指定難病)
国内推定患者数:5,000人以上
首から腰の背骨によって構成される脊柱管が全体的に狭くなることで生じる疾病。脊柱管には神経が通っているため、この疾病では神経の圧迫症状が見られる。特に60歳代以降の男性に発症しやすい傾向がある。治療は主に保存療法や手術療法が選択される。神経症状が強くなりすぎると、手術を行っても回復が期待しにくいこともある。そのため、適切なタイミングで最適な治療方法を受けることが重要である。
コケイン症候群(Cockayne syndrome;CS)(指定難病)
国内推定患者数:約50名
年齢が若いうちから老化が現れる疾患・早老症の一種。原因は、DNA修復に関する遺伝子異常(劣性遺伝)。DNA修復の遺伝子が正常に働かないため、一般人の4~5倍の速度で老化が進む。
コステロ症候群
HRASと呼ばれる遺伝子に関連した疾患であり、全身各種臓器に症状をきたすようになる遺伝性疾患の一つ。症状としては、特徴的な顔つきや柔らかくて緩い皮膚、巻き毛などの外見的な症状以外に、成長発達面での遅れ、精神発達遅滞、心疾患(肥大性心筋症や不整脈など)、悪性腫瘍の合併などがみられる。運動精神面での遅滞や各種内臓合併症を伴う疾患であることから、長期的にフォローアップすることが必要不可欠な疾患。 コステロ症候群、ヌーナン症候群など、同系統の遺伝子異常に関連した病気を包括的に含めて「RAS/MAPK症候群」と呼ぶこともある。
骨形成不全症
推定発症頻度:骨変形をきたさない軽症例も含めて1人/2~3万人
全身の骨や歯が生まれつき弱く、些細な刺激で容易に骨折したり、骨が変形したり、虫歯ができやすくなる疾病。重症例では成長が遅れるばかりでなく、一生涯にわたる治療と管理の継続が必要となる。また、骨形成不全症は骨や歯のさだけでなく、皮膚や臓器を形成する組織にも異常を引き起こし、難聴や心臓弁膜症などを発症するケースも少なくない。一方で、目立った症状がないまま一生を終えるケースもあるとされており、症状の現れ方や重症度は人によって大きく異なることも特徴の一つ。
骨軟化症(指定難病)
骨や軟骨の石灰化障害により類骨の割合が増えることで起こる疾病。正常な硬い骨が形成されるためには、骨基質の石灰化が必要。石灰化とは、リン酸カルシウムや炭酸カルシウムなどが沈着すること。幼弱な未石灰化部分である類骨の割合が増えると、偽骨折による骨の痛みや骨折、筋力低下など、骨の弱さ(軟らかさ)に伴うさまざまな症状が生じる。くる病と発症原因は同じだと考えられているが、成長軟骨帯(成長期特有の軟骨組織のこと)が骨へと完全に置き換わるまえに発症するものはくる病、それ以降に発症するものは骨軟化症と呼ばれる。尚、骨密度が低下する疾病である骨粗鬆症とは異なり、骨軟化症は類骨の割合が増加する疾病であることから、両者は別の疾病である。
コフィン・シリス症候群(指定難病)
推定患者数:世界での報告例は200例未満
発達の遅れとともにさまざまな体の症状を持つ可能性がある生まれつきの疾病。原因となる遺伝子異常が報告されてからまだ日が浅いことから、今後はさらに報告例が増えてくるのではないかと考えられている。
コフィン・ローリー症候群(指定難病)
国内推定発症率:1人程度/出生4万人
性染色体のXにあるRPS6KA3と呼ばれる遺伝子の異常が原因とされている遺伝疾患の一つで、知的な遅れ、特徴的な顔貌、低身長、音や興奮などの刺激で誘発される脱力発作、骨の変形、先天性心疾患などを特徴とする疾病。根本治療法は確立されておらず、症状に合わせた対症療法が中心となる。
混合性結合組織病
リウマチ膠原病の一つ。この疾病の定義は次の2つの特徴をもつこととされている。
・全身性エリテマトーデスを思わせる臨床所見、全身性硬化症を思わせる臨床所見、多発性筋炎/皮膚筋炎を思わせる臨床所見が、同一患者に同時あるいは経過とともに認められる
・血液検査で抗U1-RNP抗体が高い抗体値で得られる
女性に多く発症し、発症年齢は30〜40歳代が多いといわれているが、小児から高齢者まであらゆる年齢に発症する。
再生不良性貧血
血液の細胞の源である造血幹細胞がなんらかの理由で減少することによって、血液中の白血球、赤血球、血小板のすべてが減少する疾病。血液の細胞は骨髄にある造血幹細胞からつくられるが、この疾病の患者の骨髄を調べると、骨髄の組織の多くが脂肪に置き換わっており、血球の産生が著明に減少している。
鰓耳腎症候群(指定難病)
国内推定患者数:約250人
EYA1SIX1などの遺伝子異常が原因の遺伝性疾患であり、耳介の異常や耳や首での瘻孔形成に加えて、聴力障害や腎臓の異常がみられるようになる疾病。常染色体優性遺伝形式をとる疾病であり、親が患者の場合、子どもも発症する可能性がある。根本的な治療方法は確立されていないので、聴力障害や腎障害に対する支持療法をもとに治療介入を試みる。
サルコイドーシス
何らかの原因によって全身のさまざまな臓器に炎症が生じ、肉芽腫という病的な組織がつくられ、正常な機能が損なわれる疾病。「サルコイド」とはラテン語で「肉のようなもの」という意味であり、肉のようなできものが全身にできる疾病という意味の名称。地域や人種、年齢によって発症に違いがあるといわれており、日本では、男女ともに20歳代と50歳代以降のふたつの年齢層に多く、男性は若年層、女性は高齢層に多いとされている。
三尖弁閉鎖症
右心房と右心室の間に存在する三尖弁が閉鎖してしまう先天性心疾患。肺への血流が阻害されることになるため、酸素が不十分な血液が全身へ巡ることになる。新生児早期からの治療が必要であり、内科的治療や複数回の手術が行われる。三尖弁閉鎖症では、肺動脈閉鎖、大血管転位、大動脈縮窄症など他の合併心奇形を有することがあり、治療はより複雑になる。最終的にはフォンタン手術と呼ばれる機能的根治手術を目指すが、治療経過は症例によってさまざまである。したがって、先天性心疾患の診断・治療経験が豊富な専門施設での治療が必要。
JMP症候群(Joint contractures, Muscle atrophy, Microcytic Anemia, and Panniculitis Induced Lipodystrophy Syndrome)
中條・西村症候群と同じような遺伝子異常によって発症する疾病。
シェーグレン症候群
自己免疫性疾患の一種であり、免疫のバランスが崩れることによって涙や唾液を産生する涙腺・唾液腺などの臓器を攻撃し、眼乾燥(ドライアイ)や口腔乾燥(ドライマウス)を主にきたす疾病。涙腺や唾液腺だけでなく全身の関節、肺、皮膚、消化管、腎臓などさまざまな部位にダメージが及ぶこともある。発症すると目や口の乾燥が目立つようになるが、多くの人は症状とうまく付き合いながら治療の必要なく生活していると考えられている。一方、一部の人には目や口の乾燥以外にもさまざまな症状が現れ、腎臓、肺、皮膚などにも病変が現れたり、まれに悪性リンパ腫の合併が見られたりすることもある。また、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどほかの自己免疫疾患を合併する二次性シェーグレン症候群もある。中年以降の女性が発症しやすいという特徴があるが、明確な発症メカニズムは解明されていないのが現状。
色素性乾皮症(指定難病)
国内推定発症率:1人/22,000人、国内推定患者数:約500人
遺伝子の傷を修復する仕組みに異常があることで発症し、日光に過敏に反応してしまうために、しみや皮膚の乾燥が起こる疾病。高い確率で皮膚がんを引き起こすようになる。皮膚症状のみならず、ときに転びやすいなどの神経系症状を呈することもある。男女差はないが、地域差は存在し、海外と比較すると日本での発症頻度が高い。A~G群およびV型の8群にタイプ分けがされているが、日本の色素性乾皮症はA群とV型が多く、約55%がA群、約25%がV型といわれている。根本的治療法はなく、日光を避けるなどの予防策や皮膚がんなどの病気が発症したときの治療が中心となる。
自己免疫性肝炎 (autoimmune hepatitis: AIH)
何らかの自己免疫が原因で発症し、そのほとんどが慢性肝炎を呈して肝細胞が障害されていく難治性の肝疾患。自覚症状がほとんどなく、適切な治療を行わずに肝炎が進行してしまうと、肝硬変や肝不全へと進展してしまう危険性がある。女性の患者数が男性の6~7倍にのぼるといわれており、女性に多い疾病。また、どの年齢においても発症しうるが、日本においては中年以降の女性に発症しやすく、50~60歳代で発症する例が多いといわれている。
自己免疫性出血病XⅢ(別名:自己免疫性後天性凝固因子欠乏症)
(指定難病)
止血するために働くタンパク質の一つである凝固因子XⅢが自分の免疫細胞によって壊され、止血できなくなることが原因で発症する、出血しやすくなる稀な疾病。子供に遺伝することはなく、他の原因となる基礎疾患や薬剤などの非遺伝的(後天的)な要因によって凝固因子が減ります。軽い打撲だけで出血しやすくなるだけでなく、稀に自然出血が起きることもある。突然出血することがあり、脳や心臓に出血が起きると致命的になる。治療は免疫反応を抑えることにより、凝固因子XⅢが破壊されるのを防ぎ、重篤な出血を防ぐことが主な目的になる。
自己免疫性溶血性貧血 AIHA(指定難病)
誤った免疫反応により自分自身の赤血球が攻撃され(自己免疫性)、溶血性貧血が発症する疾病。赤血球は全身に酸素を運ぶ役割をしているため、不足する(貧血になる)と酸素が不足して心臓に負担がかかり、最終的に心不全引き起こすことがある。特発性血小板減少性紫斑病と呼ばれる血小板が減る疾病を併発することもある。
視神経脊髄炎(難病指定)
自己抗体の一種類である抗アクアポリン4抗体が出現することを特徴とする、視神経と脊髄に炎症性の脱髄が生じることで視力低下や下半身不随を繰り返す疾病。女性に圧倒的に多いことが知られている。
シャイ・ドレーガー症候群
立ちくらみや尿失禁といった自律神経障害を代表的な症状とする進行性の神経疾患。病気が進行するとパーキンソン症状や小脳失調症状をみることになる。線条体黒質変性症やオリーブ橋小脳萎縮症といった疾病と比べて、中枢神経における病変部位の変化や症状が共通することも知られている。そのため、シャイ・ドレーガー症候群は、これら病気とともに多系統萎縮症と総称されている。発症後は緩やかに進行するが、根本的に治療する方法は確立されておらず、自律神経症状・パーキンソン症状などに対する対症療法が治療の中心となる。
若年性特発性関節炎 Juvenile Idiopathic Arthritis: JIA(指定難病) 国内推定発症率:約10〜15人/小児10万人
16歳未満で発症し、6週間以上持続する原因不明の慢性関節炎で、他の病因によるものを除外したものと定義されている。国際リウマチ学会の国際基準では7つの病型に分類されるが、その中でも全身型若年性特発性関節炎 (sJIA) が全体の約40%を占める。
全身型では発症に性差はないが、少関節炎型や多関節炎型では女児優位。発症年齢のピークは全身型で1~5歳と報告されている。
若年性特発性関節炎の根本的な原因は現在不明。体内の炎症の調節を司る免疫機能が適切に働かないために、炎症が治まらずに続いている状態であると考えられている。特に、免疫細胞であるT細胞やマクロファージや、炎症性サイトカインと呼ばれる炎症物質(TNF-α、IL-1β、IL-6 、IL-18など)が過剰に産生され、疾病に至ると考えられている。
シャルコー・マリー・トゥース病
国内推定発症率:約1人/1万人、
海外推定発症率:約1人/2,500人、全世界推定患者数:250万人以上
遺伝子異常による末梢神経疾患の総称。末梢神経には、筋肉を動かす運動神経と、温痛覚や触覚などを司る感覚神経があり、これらが進行性に障害されるために、感覚が鈍くなったり筋力が低下したりという症状が現れる。若年期に発症することが一般的であるが、どの年齢の方でも発症する可能性がある。電気生理学的検査所見に基づいて脱髄型、軸索型、中間型に大別される。
重症筋無力症
国内推定患者数:1,5000人強
神経から筋肉への指令が伝わらなくなるせいで、疲れやすくなり、また力が入らなくなる疾病。重症筋無力症には、目の症状が主体である眼筋型と、全身の筋力が影響を受ける全身型の2種類がある。発症は、やや女性に多い傾向がある。年齢別では5歳未満、男性では50~60歳台、女性では30~50歳台でそれぞれ発症のピークを迎える。
常染色体優性多発性嚢胞腎(多発性嚢胞腎)
遺伝性の腎疾患で、両方の腎臓に多くの嚢胞ができる原因不明の疾病。発症すると70歳までに約半数の患者が末期腎不全に陥るといわれている。さらに高血圧や肝嚢胞、脳動脈瘤を合併する。なかには、腎臓の機能が低下する前に嚢胞の細菌感染や脳動脈瘤の破裂などで亡くなる患者もいるので、早期発見・診断が重要。
進行性核上性麻痺(指定難病)
国内推定発症率:10〜20人/10万人
脳の中でも大脳基底核、脳幹、小脳といった部位に障害が生じることから、さまざまな神経症状を現すようになる疾病。転びやすい、しゃべりにくい、下のものを見にくいといった症状が特徴。障害部位の神経細胞が減少し、リン酸化タウタンパクと呼ばれる異常なタンパク質が脳内に異常に沈着することが知られており、40代以降で発症することが多い。初期にはパーキンソン病と似た動作の鈍さ、歩行障害などが見られるため、区別がつきにくいこともある。しかし、パーキンソン病より進行が早く、最終的には歩行ができなくなり寝たきりになる。寝たきりになる結果、誤嚥性肺炎をきたし、命にかかわることが多い。根本的治療法はなく、転倒しやすいため、それを予防するような生活スタイルを確立することが重要。
スタージ・ウェーバー症候群(指定難病)
国内推定発症率:年間10~20人程度、国内推定患者数:約1,000人
脳内の軟膜血管腫、顔面のポートワイン斑、眼の緑内障を三徴とする先天性疾患で、神経皮膚症候群の一つ。また、この疾患では、難治性てんかん、精神発達遅滞、運動麻痺などが問題となる。根本的な治療方法はなく、症状に応じた対症療法が中心となる。発達障害やてんかん、緑内障など出現する病状への継続的な治療が必要。
スティーブンス・ジョンソン症候群
薬を内服・注射することで生じるや薬疹が重症化することで発症する疾病。38度以上の発熱に加え、やけどの際にみられるような水ぶくれ、発赤、発疹などの症状が全身の皮膚や口粘膜に現れる。薬に伴う副作用としては非常に重く、失明や、時には命にかかわることもある。そのため、早期に診断を行い、薬剤が原因の場合には該当する薬剤の中止、ステロイドや免疫グロブリン療法、免疫抑制剤の使用、血漿交換療法などを組み合わせた治療が必要。また、急性期の治療を乗り越えた後も、ドライアイや視力障害などの慢性的な障害を残す可能性がある。
スミス・マギニス症候群(指定難病)
国内推定患者数:30〜50人
RAI1と呼ばれる遺伝子の異常が原因と考えられている、発達障害や言語獲得の障害、特徴的な顔立ち、睡眠障害や自傷行為などの行動異常などで特徴付けられる症候群。てんかんや先天性心疾患を合併することもある。てんかんや先天性心疾患への内科・外科的な治療が必要なだけでなく、発達面・行動面に対しての治療も必要な疾患。
スモン(SMON;subacute myelo-optico neuropathy)
スモンとは、SMON(subacute myelo-optico neuropathy、亜急性脊髄・視神経、末梢神経障害)という略語のアルファベットをカタカナ読みした疾患。有機化合物のキノホルムが原因の薬害である。
成人スティル病(指定難病)
16歳未満の小児に発症する全身型若年性特発性関節炎(スティル病)と呼ばれる疾病でみられる病像が、16歳以上の成人に生じる疾病を指す。成人スティル病では、発熱や発疹、関節症状が主要症状となり、発熱に伴って発疹と関節症状が出たり消えたりと変動することが特徴的である。女性にやや多く、発症平均年齢は47歳とされている。小児期のスティル病と類似した病態を呈する疾患であるが、小児期にスティル病を発症した患者は、成人スティル病全体のなかでは必ずしも多くはない。
性分化異常症 Disorder of Sex Development:DSD
ヒトの男性女性の性別は、染色体(X染色体とY染色体の組み合わせ)、性腺(精巣や卵巣)、肉体的な性(外性器や子宮の有無、二次性徴など)によって決定される。性別は胎児が子宮の中にいるときから、さまざまな過程を経て決定されるが、性分化疾患は、胎内での性分化が一般的な形と異なり、典型的に進まない状態を指す。その結果、生まれたときに外性器の特徴で性別を判別することが難しい、もしくは生まれるまでに何らかの理由で性分化の過程がうまくいかず治療を必要とする、または本来の性染色体の組み合わせ(核型)とは異なる性をもって生まれてくる、といった状況が起きることとなり、これらを性分化疾患と定義している。
脊髄空洞症(指定難病)
脊髄の中に脳脊髄液と呼ばれる液体が過剰に溜まり、脊髄が脳脊髄液によって内側から圧迫されてしまう疾病。脊髄を形成する神経が障害を受けることから、運動障害、感覚障害などのさまざまな神経症状が引き起こされるようになる。20〜30歳代の発症例が多いと報告されている。空洞の拡大は進行性であることが多く、手術療法により病状の進行を停止することが必要。
脊髄小脳変性症(指定難病)
国内推定患者数:3万人以上
主に小脳や脊髄の神経細胞が障害されることで発症する神経の変性性疾患を指す。小脳や脊髄が障害を受けることから、歩行時のふらつき、手の震え、ろれつが回らないなどの症状が出現。遺伝子変異に応じて発症することもあるが、原因が不明なまま発症する場合もある。原因に応じて分類されており、数十を含む病型が存在する。根本的治療法はない。症状の出現様式には個人差があり、病状は徐々に進行するので、症状にあわせた支持療法を行うことが非常に重要。
脊髄性筋萎縮症(SMA)(小児慢性特定疾患並びに指定難病)
国内推定発症率:1〜2人程度/10万人、国内推定患者数:約1,000人
運動神経系(運動ニューロン)が選択的に障害されることによって、必要な筋肉がだんだん痩せ細り、力がなくなっていく筋萎縮性の疾患。運動神経系は、脳から脊髄(あるいは延髄)につながる上位運動ニューロンと、脊髄(あるいは延髄)から先へつながる下位運動ニューロンに大別される。脊髄性筋萎縮症は、この下位運動ニューロンが障害されることで発症する。症状は体幹や上下肢の筋萎縮や筋力低下で、重症度や発症年齢、臨床経過によってⅠ型からⅣ型にまで分類される。早ければ母親の胎内にいる頃から症状が出現する患者もいる一方、成人になってから診断されることもある。治療は対象療法が中心となっていたが、新薬も登場している。
全身性エリテマトーデス (systemic lupus erythematosus:SLE)(指定難病)国内推定患者数:約6~10万人
自分の免疫システムが誤って自分の正常な細胞や組織を攻撃してしまう自己免疫性疾患の1つで、全身のさまざまな臓器に炎症や組織障害が生じる疾病。全身性エリテマトーデスでは、この疾病で特徴的に認められる検査異常に加えて全身に多様な症状が現れる。男女比は1:9で、妊娠可能な女性に発症しやすく、女性ホルモンが発症に関与すると考えられる。治療法の進歩により生命・機能予後がよくなっている。
全身性強皮症 SSc
国内推定患者数:2万人以上
膠原病の一つで、皮膚や内臓の硬化あるいは線維化が引き起こされる疾病。皮膚や肺、腎臓など全身にわたって症状があらわれる。限局性強皮症は、皮膚とその下部の筋肉が侵される疾病であり、全身性強皮症とは区別される。全身性強皮症は病型によって、びまん皮膚硬化型全身性強皮症と限局皮膚硬化型全身性強皮症に分類される。前者は皮膚硬化や臓器病変、逆流性食道炎などがおこり、発症から5~6年以内に進行することが多い。後者は比較的軽症で、皮膚硬化は進行するが、進行は非常に緩やかである。後者は、限局性強皮症と混同されやすいため、どのタイプの強皮症であるかを正確に理解することが重要。女性に圧倒的に多く発症し、特に30~50歳代の女性に多く発症する。
先天性魚鱗癬(指定難病)
国内推定患者数:約200名
生まれたときから皮膚が異常に分厚くなる様相が見られる疾病を指す。先天性魚鱗癬には、道化師様魚鱗癬やケラチン症性魚鱗癬などさまざまの疾病が含まれており、包括的な疾患名である。根治的な治療方法は確立されていない。皮膚の障害は一生涯持続するため、保湿剤やワセリンの使用などで対症療法を行うことが欠かせない。症状に合わせた公的サポートを受けながら、専門の医療機関において継続的な診療を受けることが重要。
先天性赤血球形成異常性貧血(Congenital dyserythropoietic anemia;CDA)(指定難病)
慢性的な貧血と黄疸を主な症状とする血液の疾病。赤芽球に生まれつきの形成異常がみられ、赤血球が壊れやすい、あるいは赤血球が作られないといった問題が引き起こされる。そのため、乳幼児期や小児期から貧血がみられ、定期的な輸血治療が必要となることもある。治療薬の進歩により輸血治療に関連して起こる続発性ヘモクロマトーシス(鉄過剰症)は防げるようになり、現在は予後のよい疾病になってきた。
先天性ミオパチー(小児慢性特定疾患並びに指定難病)
国内推定患者数:1,000〜3,000人、海外推定発症率:3.5〜5人/10万人
筋肉に先天的な異常があるために発症する疾病の一種。主に筋力低下がみられ、その他に筋力が弱い、お座りが遅い、歩行が遅いなどの症状を認める。筋肉の組織学的な分類に基づき、さらに細かく分類はされるが、臨床症状の出方にはほとんど差異はない。
ソトス症候群
国内推定発症率:1人/1〜2万人
先天的な遺伝子異常を原因とし発症する症候群の一つで、大頭、過成長、骨年齢促進、精神運動発達の遅れ、けいれんなどの症状を特徴とする。遺伝子異常に起因する疾病は、出生後もしくは出生前から診断されるものも多いですが、ソトス症候群の診断は生後数か月や幼児期になってから、過成長や発達の遅れ(首の座りや歩くのが遅い、発語が遅れるなど)をきっかけとして診断されることも多い。成長発達面以外にも、ADHDやかんしゃく、けいれんや心臓、腎臓、眼、骨格系などの合併症を併発することも知られており、多角的な側面を通してのアプローチが必要。過成長は年齢と共に落ち着く傾向があり、ゆっくりではあるが発達面も成長と共に認める。
大動脈炎症候群
主に大動脈などの太い血管に炎症が生じ、血管の狭窄や閉塞が起こることで、手足が疲れやすくなったり、脳・心臓・腎臓といった生命活動に重要な臓器に障害を与えたりする疾病。若い女性や東洋人にも多いことが知られている。大動脈炎症候群には、高安動脈炎や梅毒などの感染症による大型血管炎も含くまれるが、指定難病に認定されているのは高安動脈炎である。高安動脈炎(大動脈炎症候群)は、大動脈並びにその分岐動脈(腕頭動脈、鎖骨か動脈、椎骨動脈、腹腔動脈、腎動脈)、冠動脈、肺動脈に炎症が生じることから発症。全身には大動脈のような大きな血管もあれば、さらに小さい血管もあるが、特に大きな血管を中心に炎症が生じる疾患。動脈が炎症を起こすと、動脈が狭くなったり最終的には閉塞したりするようになるので、その先に位置する臓器に血液がうまく運ばれなくなり、臓器が活動するにあたり必要な酸素や栄養が充分供給されないようになる(虚血)。また、炎症により血管そのものが弱くなり、血圧の影響を受けることから血管が広がることもある(拡張)。心臓から大動脈に移り変わる部位が拡張すると、大動脈弁輪拡大に続発して大動脈弁閉鎖不全を発症することもある。
大脳皮質基底核変性症(指定難病)
国内推定発症率:2人程度/10万人
脳の前頭葉と頭頂葉に強い萎縮がみられる疾病で、原因は不明。顕微鏡で観察した結果、脳の神経細胞が脱落して、残っている神経細胞にも異常なタンパク質が蓄積することが分かっている。 発病は40~80歳代にみられ、最も発病しやすいのは60歳代で男女比に差はない。手がうまく使えない、指先の運動が困難になる、動きが遅くなるなどの大脳皮質に関連した症状とパーキンソン病に類似した症状が出現する。根本的治療法はなく、症状にあわせた対症療法が中心になる。
ダウン症候群(ダウン症)
国内推定発症率:1人/700人、国内推定患者数:約8万人、推定平均寿命:60歳前後
染色体異常の疾病。ヒトの正常の体細胞(デイプロイド)では、22対の常染色体と1対の性染色体があり、合わせて計46本の染色体を持っているが、ダウン症では21番の染色体が通常2本のところが3本になっているトリソミーを示し(標準型ダウン症)、それにより各種症状が発現するようになる。ダウン症では、筋肉の緊張低下、特徴的顔貌、成長障害などが見られ、全体的にゆっくり発達する。心疾患などを伴うことも多い。出産年齢が高くなるにつれ卵子の老化も重なり、ダウン症をはじめとした疾患が生じるリスクは上がると考えられている。ライフスタイルの変化、女性の社会進出の促進に関連して高齢出産をする女性も増えてきており、ダウン症に対しての認知度が高くなってきている。
多系統萎縮症
大脳、小脳、脳幹脊髄などの部位が障害を受けることで発症する疾病。脊髄小脳変性症と呼ばれる疾患の一部を構成しており、特に孤発性(遺伝性でないもの)脊髄小脳変性症の大部分を占めている。従来、線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、シャイドレーガー症候群の3つに分類されて考えられていたが、いずれも病理学的な特徴を共有することから現在では一つの疾患概念として捉えられている。根本的に治療する方法は確立されていない。さまざまな症状が現れるため、薬物や周囲の環境整備を含めて各種症状に応じた対症療法を行う。
多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)(指定難病)
自己抗体が関連して血管に炎症を起こす疾病。発熱や全身倦怠感、食欲低下、体重減少などの全身の炎症症状に加えて、上気道(耳・鼻・咽頭)、肺や腎臓が障害されることが多い。治療は、副腎皮質ステロイドや免疫抑薬を用いて各臓器に生じている異常な炎症反応を抑える。
多発性硬化症(Multiple Sclerosis:MS)(指定難病)
国内推定患者数:約12,000人
視力障害、感覚障害、運動麻痺などさまざまな神経症状の再発と寛解を繰り返す疾病。疾病の経過に応じて「再発寛解型」、「一次性進行型」、「二次性進行型」に分類され、再発寛解型は症状が現れては治ることを繰り返し、日本ではそのうちの約20%が数十年後に二次性進行型へと移行するといわれている。二次性進行型では、はじめは症状が現れたり、治ったりを繰り返す再発寛解型を示すが、次第に再発せずに、ゆっくりと体の障害が進行するようになる。一方、一次性進行型ははじめから障害が継続して進行するタイプである。詳細な原因は分かっていないものの、何らかの免疫異常によって中枢神経のさまざまな部位に脱髄が繰り返し引き起こされ、症状が現れると考えられている。平均発症年齢は30歳前後で、20歳代で発症する患者が最も多いといわれている。女性患者の割合が高く、男性の2~3倍程度と報告されている。治療薬の選択肢が広がると共に、日常生活を改善する治療法が確立されつつある。
多発性筋炎・皮膚筋炎(Polymyositis/Dermatomyositis;PM/DM)(指定難病)
自分の臓器に対して免疫反応を起こしてしまう膠原病の一種で、筋肉や皮膚、肺などに炎症が起こる疾病。日本では1対3で女性に多い。ステロイド治療によって多くの患者が日常生活に復帰が可能。ただし、長期にわたり治療やリハビリを継続する必要があり、長く付き合っていかなければいけない。
多脾症候群(指定難病)
人が発生する段階で異常が生じ、結果として内臓臓器に様々な構造異常を有することになった疾患。内臓の異常としては、心臓や腸に関連したものが問題となることが多い。心臓については、単心室や心内膜症欠損、両大血管右室起始症などといった重篤な先天性心疾患を合併することもあり、数多くの治療介入が必要とされることになる。多脾症候群に関連した奇形はものによっては短期間で治療が終了するというものではなく、長期的なフォローが必要不可欠となることもある。
タナトフォリック骨異形成症(指定難病)
国内推定患者数:約100人
FGFR3(線維芽細胞増殖因子レセプター3)と呼ばれる遺伝子の異常により発症する、全身の骨が短くなるため低身長や呼吸障害を引き起こす先天性骨系統疾患。肋骨の短縮に関連した呼吸障害が強く、呼吸管理が重要。出生後に亡くなることが多いが、呼吸管理により長期生存も可能であると報告されている。
タンジュール病(別名:アルファリポ蛋白欠乏症)(指定難病)
世界で100例程度の報告あり
HDLコレステロールの値が異常に低くなる疾病。発症すると血液中を流れるHDL(リポタンパク粒子)をつくることができない。そのため、生まれつきHDLコレステロールの値が異常に低くなり、さまざまな身体所見や症状が現れる。タンジール病は、あらゆる年代で発症する可能性があり、遺伝形式上、男女ともに発症する疾病。
弾性線維性仮性黄色腫(別名:弾力線維性仮性黄色腫)
推定発症率:1人/10万人、国内推定患者数:約300人
カルシウムやその他のミネラルが皮膚や眼、血管、消化管などの弾性線維に蓄積し、さまざまな組織が進行性に障害される遺伝性疾患。原因遺伝子はABCC6と同定されている。症状が軽微な患者や非典型例など診断されていない患者も多くいると考えられ、正確な患者数や性差、人種差などについては今後さらなる調査により明らかにされるものと考えられる。
胆道閉鎖症(⼩児慢性特定疾患並びに指定難病)
国内推定発症率:1人/約7000⼈の出生数
肝臓と⼗⼆指腸をつなぐ胆管という管が先天的に、または生後まもなくふさがってしまい、肝臓から腸へ胆汁を出せない難治性疾患。新⽣児期に好発し、男児よりも⼥児に多い原因不明の疾病である。できる限り早期(生後80日以内が望ましい)に手術を行わないと、治すことが困難な肝硬変へと進⾏してしまう。⽣後1か⽉には新⽣児健診が⾏われるので、このタイミングで病気を発⾒することが重要。⻩疸(皮膚や白目が黄色くなる)や⽩⾊便などから発症が疑われる。
致死性家族性不眠症 (Fatal familial insomnia, FFI)
国内患者数:数家系
遺伝性プリオン病の一つで、主に脳の中の視床と呼ばれる部位が侵される疾患。他のプリオン病と同様、異常型プリオン蛋白が蓄積することが発端となり、主に視床の神経細胞が進行性に障害される。視床はさまざまな重要な役割を果たす部位であるが、その機能の1つに睡眠と覚醒のコントロールが挙げられる。視床の神経細胞が障害される結果、進行性の不眠をはじめとした症状を呈し、数年で死に至る疾患。平均発症年齢は50歳前後だが、若い患者で18歳、高齢の患者で72歳と幅広い年齢での発症例が報告されている。
遅発性内リンパ水腫(指定難病)
国内推定患者数:4,000〜5,000人
高度感音難聴を発症した数年〜数十年後に、発作性のめまいを繰り返す疾病。高度感音難聴は、片耳あるいは両耳に起こる。あらゆる年代で発症する可能性があり、男女共に発症する可能性がある。
チャージ症候群(CHARGE)(指定難病)
国内推定発症率:1人程度/出生児20,000人、30~50名程度/年、性差なし
主にCHD7遺伝子の異常が原因である、体の様々な部分に特徴的な症状が認められる先天性の疾患。主症状であるC (coloboma: コロボーマ/網膜の部分欠損)、H (heart defects: 先天性心疾患)、A (atresia choanae: 後鼻腔閉鎖)、R (restricted growth and development: 成長障害・発達遅滞)、G(genital abnormality: 外陰部低形成)、E (ear abnormality: 耳奇形・難聴) の頭文字をとって命名されている。個人によって症状の程度はさまざまである。常染色体優性遺伝形式で遺伝しうる疾患であるが、突然変異により引き起こされる孤発例である場合がほとんどである。
中隔視神経形成異常症(指定難病)
国内推定患者数:135名
透明中隔(左右の側脳室前角を隔てる膜)欠損と視神経低形成による、下垂体機能低下症を伴う先天的異常が原因で発症する疾患。下垂体機能低下症では、分泌が障害されているホルモンに対応した症状が見られる。また、精神運動発達遅延を伴うこともある。発症には遺伝子や環境因子などの関与が疑われているが、完全に原因が解明されているわけではない。根本的な治療法はなく、対症療法が中心となっている。
中毒性表皮壊死症
38度以上の発熱に加え、やけどの際に見られるような水ぶくれ、発赤、発疹などの症状が、全身の皮膚や口粘膜に現れる疾病を指す。同じような症状を呈する病気にスティーブンス・ジョンソン症候群があるが、皮膚病変の広さによって両者は区別され、中毒性表皮壊死症はより重症な疾病。この疾病は薬剤に関連して発症することが多く、スティーブンス・ジョンソン症候群から移行することもまれではない。治療法は、薬剤が原因の場合には誘因となった薬剤の中止、ステロイドや免疫グロブリン療法、免疫抑制剤の使用、血漿交換療法などの集学的な治療が必要。しかし、こうした治療を行った場合であっても救命率が充分であるとは言い難く、死亡率は20~40%にも昇るとの報告がある。また、急性期の治療を乗り越えた後も、ドライアイや視力障害などの慢性的な障害を残す可能性もある疾病。
チェディアック・東症候群(小児慢性特定疾病)
国内推定患者数:約15人
CHS1/LYST遺伝子に異常が存在することが原因となり発症する、遺伝子異常に伴う先天的な免疫不全の一つ。細菌やウイルスに対しての抵抗力が弱いため小児期から感染症を繰り返し、皮膚や眼の色素が薄く、血症板という止血に関わる機能が悪いため出血傾向を示す。成長するにつれて、知能障害、けいれんなどの神経系の症状を呈することもある。根本治療として、造血幹細胞移植が行われることがあるが、色素低下に関連した症状や神経症状については、移植のみでは改善することはなく、症状に合わせた支持療法が行われることになる。
低ホスファターゼ症
推定発症率:1人程度/15万人(重症例)、1人程度/6,000人(軽症例)
骨や歯の正常な形成を促すアルカリホスファターゼと呼ばれる酵素に生まれつき異常があるため、骨や歯が弱くなる遺伝性の疾病。骨の形成がうまくできなくなることから、骨の変形や骨折、低身長などの症状を引き起こす。また、重症例ではビタミンBの代謝異常によるけいれんが見られることもある。そのほか、乳歯が3歳ごろまでに早期に抜け落ちる、順調に体重が増えないといった症状が見られることもある。
天疱瘡(指定難病)
国内患者数:約5,500人
皮膚や粘膜などに水疱やびらんを生じる自己免疫性疾患の一種。デスモグレインと呼ばれるタンパク質に対して自己抗体がつくられ、口のなかや皮膚に水ぶくれができる疾病。皮膚症状により細分類化されるが、尋常性天疱瘡落葉状天疱瘡の頻度が高く、両者で天疱瘡の約8割を占める。年層や高齢者など年齢をある程度重ねた方に好発する疾病で、やや女性に多い傾向がある。
特発性間質性肺炎(指定難病)
肺の構成成分である間質と呼ばれる部分に炎症が発症する疾病の一つ。原因を特定できずに発症に至る。疾病が進行すると普段から息切れを感じることもあり、通常の日常生活を送ることが難しくなる。
特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura;ITP)(指定難病)
血液中の血小板だけが減少する原因不明の疾病。血小板が不足しているので止血しにくくなり、肘や膝などをぶつけたときに紫斑ができやすい。自己免疫機序が関与するため、免疫性血小板減少症とも呼ばれる。
特発性門脈圧亢進症
国内推定患者数:9.2人/100万人、男女比は約1:3
肝臓内部の末梢門脈枝の閉塞や狭窄により門脈圧亢進に至る症候群。発症のピークは40~50歳代で、中年女性に多い疾患。
ドラべ症候群(別名:乳児重症ミオクロニーてんかん)(指定難病)
通常1歳までに発症し、全身あるいは半身のけいれんを繰り返す疾病の一つ。けいれんは、入浴や発熱など体温の上昇に伴い起こりやすいのが特徴。しかし、特にきっかけがなく突然けいれんが起こることもある。5分以上けいれんが持続し、けいれん重積となることも多い。1歳を過ぎると発達の遅れが現れるようになり、非常に高い確率で知的障害となる。知的障害の程度は患者によって異なる。
中條・西村症候群(指定難病)
国内推定患者数:約30名
PSMB8遺伝子の異常が原因で発症する、幼少時から皮膚の発疹や発熱を繰り返す症状が特徴的な自己炎症性疾患。炎症が繰り返される過程で脂肪や筋肉の萎縮、関節の拘縮もみられるようになる。発症地域に偏りがあることも知られており、和歌山や大阪南部地域に多い。治療方法は確立されていない。
那須・ハコラ病(指定難病)
国内推定患者数:約200人
遺伝子の異常によって発症する骨や神経系の遺伝性疾患。20歳頃までの無症状期を経て、成人以降に多発性骨嚢胞による病的骨折と白質脳症による若年性認知症を主徴として発症する。骨折を繰り返し、性格の変化なども来し、寝たきりとなる。根本的治療法は確立されていない。年齢と共に変化する症状に応じた対症療法で対応する。
ナルコレプシー Narcolepsy
国内推定患者数:1人/600人
過眠症の1つ。症状としては、居眠りの反復、情動脱力発作、睡眠麻痺(金縛り)、入眠時幻覚などが挙げらる。通常ならば寝てはいけない重要な場面でも我慢できないほどの強い眠気に襲われたり、突然眠ったりすることが特徴。疾病であるにもかかわらず、大事な場面でも眠ってしまうことについて「だらしない」「意欲が足りない」「真面目にやっていない」などと思われ、本人や周囲が疾病と認識しない場合が多く見られる。10歳代~20歳代前半に多い。治療が遅れると社会生活に支障をきたす恐れがあるため、早期に治療を開始することが重要。起き続けられずに眠り込んでしまうのは、脳の覚醒中枢のはたらきが悪くなっているためだと考えられている。脳内物質のオレキシンを産生する神経細胞の障害がその一因であることが報告されている。メカニズムについては現在も研究が進められている。また、白血球の血液型であるHLA型と発症の関連性も指摘されている。ナルコレプシーの患者は、HLA-DQB1*06:02という遺伝子型をもつ人が有意に多いことが分かっており、発症リスクに関係すると考えられている。
軟骨無形成症(小児慢性特定疾患及び指定難病)
推定発症率:1人/2万人、国内推定患者数:約6,000人
軟骨が正常に形成されないことを原因として、低身長になったり、手足が著明に短くなったりする特徴を有する骨疾患の一つ。身長が低い(最終身長は約130cm)、手足が短いと言った身体的な特徴から、日常生活に不備をきたすことも多い。根本的治療方法はなく、身体的特徴に関連した起こりうる合併症に対する対症療法で対応。
難治頻回部分発作重積型急性脳炎(小児慢性特定疾病並びに指定難病)
発熱に伴い、けいれん発作を繰り返す疾病の一つ。けいれん発作の頻度は1〜2週間程でピークに達し、数か月にわたって持続。抗てんかん薬を使用しても発作を止めることが難しい点が特徴。幼児期から学童期の子どもに起こりやすく、男女ともに発症。
二分脊椎(指定難病)
国内推定発症率:5件前後/分娩1万件
脊髄が納まる脊柱管に先天的な形成不全が生じ、神経の一部が脊柱管の外に出ている状態を指す。大半は腰椎仙椎などで脊柱管の形成に異常がみられる。外表から見てすぐにそれと指摘できる顕在性二分脊椎症と、皮膚で覆われているため、見た目ではわかりにくいこともある潜在性二分脊椎症に分類される。そのため、生後すぐに指摘されることもあれば、学童期以降になってから症状が現れることもある。
尿素サイクル異常症(指定難病)
国内推定発症率:1人/8,000~44,000人
尿素サイクルとは体内で生成された有害なアンモニアを肝臓で無害な尿素へと変換する過程を指し、このサイクルに異常が生じるとアンモニアなどが体にたまり、さまざまな症状を呈する。ときに生命に関わるような状況に陥ることもある。尿素サイクルにはいくつかの酵素が存在し、この酵素のいずれかに先天的な異常があるものを尿素サイクル異常症と呼ぶ。尿素サイクル異常症はそれらの病気の総称であり、下記の疾患が含まれる。
 ・古典型シトルリン血症
 ・アルギニノコハク酸尿症
 ・アルギニン血症
多くは乳幼児期に発症するが、なかには成人になって初めて診断されることもある。
ヌーナン症候群(指定難病)
国内推定発症率:1人程度/1万人、国内推定患者数:約600人
欧米における発症率:1人/1,000〜2,500人
先天的な遺伝子異常を原因として発症する症候群の一つ。身体の各部位における正常発達が妨げられている疾病。症状としては、特徴的な顔貌や低身長、先天性心疾患、骨格系の異常、血液系の異常、さまざまな程度の発達の遅れなど多くのものが含まれるが、すべての患者が同様の症状を呈するとは限らない。
膿疱性乾癬(指定難病)
国内推定発症率:1人以下/10万人
乾癬特有の皮膚症状に加えて、膿疱(中に膿を持つ水ぶくれ)が現れる疾病。膿疱の現れ方には汎発型(全身に現れること)と限局型(身体の一部分に限局すること)がある。発症の原因には、遺伝子的・体質的な素因が関係しており、関連性が深い遺伝子としてはIL36RN遺伝子が知られている。身体に炎症が生じるとその炎症を適切なタイミングでストップさせる必要があり、IL36RN遺伝子はそのための重要な役割を担っている。そのためIL36RN遺伝子に異常が生じると炎症をうまく抑制することができなくなり、膿疱性乾癬の発症につながると推定されている。膿疱性乾癬を発症すると、皮膚症状が現れることに加えて、膿疱が破れた部位から水分やタンパク質が喪失されて発熱や脱水などの全身症状につながることもある。
肺動脈性肺高血圧症(指定難病)
心臓から肺に血液を供給する動脈の一部が狭くなり、肺の血圧が正常よりも高くなる疾病。心臓から肺への血液は肺動脈と呼ばれる血管で供給されるが、肺動脈性肺高血圧症で細くなっている血管は、肺動脈がさらに分岐した先の小動脈と呼ばれる血管である。細くなった小動脈に血液を送る必要性が出てくるため、心臓には大きな負担がかかり、心不全症状が現れる。女性に多く発症することが特徴。
肺胞蛋白症(先天性肺胞蛋白症と自己免疫性肺胞蛋白症は指定難病)
肺の中にサーファクタント由来物質が過剰に蓄積してしまっている疾病。サーファクタントとは正常な肺にもある物質であるが、サーファクタントを適正に処理できなくなる結果、肺胞蛋白症が発症する。発症要因に応じて先天性肺胞蛋白症自己免疫性肺胞蛋白症などいくつかに分類されている。自己免疫性肺胞蛋白症は、肺胞蛋白症全体の9割を占めるほどの疾患であり、50歳代を発症ピークとする。
パーキンソン病
国内推定発症率:1~1.5人/1,000人
体のふるえ、動作がゆっくりになる、筋肉がこわばり手足が動かしにくくなる、転びやすくなるなどの症状を特徴とする疾病。脳の指令を伝えるドパミンと呼ばれる物質が減ることによって起こる。高齢になるほど発症しやすくなる。50歳以上で起こることが多いが、40歳以下の若い時でも発症することがあり、この場合は若年性パーキンソン病と呼ばれる。
バージャー病(別名:閉塞性血栓性血管炎;Thromboangiitis obliterans;TAO)
手足に栄養を供給するさまざまな動脈血管が炎症により狭くなり、血液の流れが悪くなる疾病。発症すると手足にしびれや痛みが生じる。重症例では、手足の壊死により手の指や足の指の切断を余儀なくされることもある。喫煙との関連性も深く、禁煙を含めた治療が重要となる。患者の大半は男性であり、30歳代以降に発症例が多い。
バッド・キアリ症候群(指定難病)
国内推定患者数:190人~360人
肝臓の肝静脈や下大静脈という血管が狭窄又は閉塞して肝臓に不具合が生じる疾病の一つ。無症状に発症して徐々に進行する慢性型の患者が多く、腹水や静脈瘤などの症状がしだいに現れるのが特徴。
ハンチントン病
海外(欧米)推定発症率:4~8人/10万人、国内推定発症率:約1人/10万人
遺伝性に発病し、運動機能や認知機能に影響を及ぼす進行性の神経変性疾患。症状の一つに舞踏運動がある。発症に男女差はなく、好発年齢は35~50歳の中年期。小児期から老齢期にわたり、いずれの年齢でも発症する可能性がある。成人前に発症する例は全体の10%程度で若年型ハンチントン病と呼ばれる。
肥厚性皮膚骨膜症(指定難病)
国内推定患者数:100名未満
指先が太鼓バチのように太くなるバチ指長管骨を中心とした骨膜性の骨肥厚、皮膚が厚くなる、といった症状で特徴付けられる疾患の一つ。SLCO2A1HPGDと呼ばれる遺伝子の異常によって、プロスタグランジンE2と呼ばれる物質が体内に多く蓄積することで発症すると考えられている。男性に多いことも疫学的な特徴。根本的治療方法はなく、症状に応じた対症療法で対応。
肥大型心筋症
心室の心筋が異常に厚くなってしまい、心臓の機能障害をきたす疾病。心室の壁が厚くなる原因には高血圧や弁膜症(たとえば大動脈弁狭窄症)などがあるが、肥大型心筋症ではこのような原因を特定できない。無症状のまま経過することも多いが、呼吸困難や胸の圧迫感などを自覚することもある。最悪の場合、突然死を起こす。治療は、薬物療法又は外科的治療(手術)。症状の悪化につながるリスクがあるため運動、飲酒、妊娠などに制限が必要な場合もある。
巨大結腸症
結腸の神経の異常や何らかの炎症性疾患などの疾病が原因となり、結腸の蠕動運動が正常に行われず、腸が大きく膨らむ疾病。結腸は、胃、十二指腸、小腸を通過して消化された食べ物から水分や電解質を吸収して便を作る働きをしている。約1.6mの管状構造で、腹部を囲むように、盲腸から上行結腸につながり、横行結腸、下行結腸、S状結腸となって、直腸へつながる。水分を吸収されて固形物となった便は、結腸の蠕動運動によって直腸に運ばれ、排便に至る。蠕動運動は結腸の大切な働きであるが、何らかの原因でこの蠕動運動が低下すると、結腸内に多くの内容物や空気が停滞した状態となる。結腸は通常、蠕動運動を行うことで狭く縮まった形状をしているが、非常に進展性のある臓器であるため、内容物や空気の停滞によって大きく膨らむことがある。
ファイファー症候群
国内推定発症率:6例程度/年
FGFR2遺伝子(時にFGFR1遺伝子)の異常により発症する先天的骨系統疾患。頭蓋骨や顔面骨(下顎を除く)の形成異常がおこり、脳の発達が妨げられたり、眼球が突出したり、呼吸が障害されたりする。頭蓋骨はいくつかの骨から構成され、それらのつなぎ目が縫合線と呼ばれる。脳が成長するにしたがって縫合部分が広がることで、頭蓋骨が拡大していく。縫合部分は成人になるにつれて自然に癒合するが、ファイファー症候群では、癒合が早期に起こる。ファイファー症候群では、手足の指にも一部癒合が認められる。
ファロー四徴症
心臓に下記の4つの特徴を伴い、皮膚や唇が青紫色になるチアノーゼが出現する疾病。
 - 大動脈騎乗(本来左心室から出ている大動脈が右心室と左心室の両方にまたがって出ている状態)
 - 心室中隔欠損(右心室と左心室の間の孔が開いている)
 - 肺動脈狭窄(右心室から血液を送り出す肺動脈が狭小化している)
 - 右心室肥大(右心室の壁が肥大化し、厚くなっている)
上記特徴それぞれが原因となり、各種の症状が出現。心臓超音波検査やチアノーゼの出現によって乳児期にほぼ診断がつく。生後早期における診断と治療介入が重要。手術による治療を行わなければ、年数を経るにつれて生存率が低下する。
ファンコニ貧血(指定難病)
国内推定発症率:5~10人/年、国内推定患者数:200名前後
遺伝子異常が原因で、染色体に傷が入りやすいことを背景として、白血球・赤血球・血小板の減少、がんのなりやすさ、内臓の形態異常などを呈する疾患。再生不良性貧血や骨髄異形成症候群、白血病などの血液疾患を発症することがあり、骨髄移植が行われることがある。臓器がんが発生した場合には、外科手術や化学療法が行われる。
封入体筋炎(指定難病)
国内推定患者数:1000~1500人程度
筋肉に慢性的な炎症・変性が生じる疾病。太ももや手先の筋力が低下し、階段が昇りにくい、手足に力が入らないなどの症状がみられる。疾病が進行すると、車いすを使用することになったり、誤嚥性肺炎をきたしたりすることもある。50歳以上での発症例が多い。根本的な治療方法はない。
フェニルケトン尿症(PKU)
国内推定発症率:1人/7万人、国内推定患者数:500人以上
先天性代謝疾患の一つであり、アミノ酸の一種類であるフェニルアラニンをうまく代謝できないことから発症。日本では、新生児が産院に入院している間に血液検査(新生児マススクリーニング)を行うので、この検査によってフェニルケトン尿症と診断されることも多い。フェニルケトン尿症に伴うさまざまな合併症が生じるので、合併症を未然に防ぐため、過剰なフェニルアラニンを摂取しないような食事療法が必要。適切な食事療法を行えば、健康人と遜色のない生活を送ることが十分期待できる。
副甲状腺機能低下症(指定難病)
副甲状腺における副甲状腺ホルモンの産生量が低くなってしまうことから引き起こされる疾病。副甲状腺ホルモンは体内のカルシウムバランスを適切に保つ重要な役割を担っており、この疾病を発症するとカルシウムバランスに異常をきたし、それに関連した症状が引き起こされる。
プラダー・ウィリ症候群
15番染色体の一部のインプリンティング領域の異常が原因で、過食に伴う肥満、低身長、性腺機能不全、糖尿病などの内分泌的異常と、知的障害、筋緊張低下、性格障害などの神経学的障害、小さな手足、アーモンド様の目、色素低下などの身体的特徴を有する症候群。根治的治療方法はなく、症状に対応した対症療法のみ。
プリオン病
推定発症率:約1人/100万人/年、国内推定発症率:100~200人/年
感染性を有する異常型プリオンが脳に沈着する結果、脳神経細胞の機能が進行性に障害される致死性の疾病。ヒトにも動物にもみられ、動物のプリオン病としては牛海綿状脳症(BSE)、いわゆる狂牛病がよく知られている。ヒトのプリオン病は、孤発性、遺伝性(家族性)、獲得性の3つに大別される。孤発性には孤発性クロイツフェルトフェルト・ヤコブ病(sCJD)、遺伝性には遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病 (GSS)、致死性家族性不眠症(FFI)、獲得性には医原性プリオン病、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病 (vCJD)、クールー病などが含まれる。地域差や男女差はなく、世界各国で孤発的に発生している。
ベーチェット病
全身のさまざまな部位に炎症が繰り返し生じることが特徴的な疾病。免疫のはたらきが過剰になって自身の体の組織を攻撃してしまう膠原病の一種と考えられているが、明確な発症メカニズムは解明されていない。症状の現れ方には大きな個人差があるが、主な症状には口腔内のアフタ性潰瘍、外陰部の潰瘍、皮疹などの皮膚症状、ぶどう膜炎(目の炎症)がある。このような症状が良くなったり悪くなったりしながら繰り返し現れるのがベーチェット病の特徴。重症の場合には内臓や神経、血管などにも炎症をもたらし、ときには命に関わることもある。治療には炎症を免疫の働きを抑えるステロイドの投与が行われるが、重症の場合は免疫抑制剤を使用しなければならないことも多く、さまざまな副作用に注意する必要がある。
ペルオキシソーム病(指定難病)
ペルオキシソームと呼ばれる細胞器官の機能障害により、中枢神経系を中心として全身各部位に様々な不調をきたすようになる疾患。ツェルベーガー症候群は、最も重症度の高いペルオキシソーム病。確立した治療方法がなく、乳幼児期に亡くなることもある。
POEMS症候群(別名:クロウ・深瀬症候群)
形質細胞の増殖によりVEGF(血管内皮増殖因子)が過剰に産生されることで、末梢神経障害をはじめ、胸水・腹水の貯留、皮膚の色素変化など全身に多彩な症状をもたらす疾患。 形質細胞とはリンパ球の一種であるB細胞が成熟してできた細胞である。発症年齢は40代後半に多い傾向にあるが、10〜80代までの幅広い年代での発症が報告されている。男性の方が女性よりも1.5倍多く罹患している。 従来は、平均生存期間が33か月と非常に予後不良な疾患であったが、近年はサリドマイドや骨髄移植など、各種の治療法が効果的であることも判明してきている。特に、薬害で有名なサリドマイドがPOEMS症候群の治療薬として有効性を示されていることは興味深い。
発作性夜間ヘモグロビン尿症
推定発症率:数人/100万人
後天的な遺伝子異常によって造血幹細胞に異常が生じ、血管内で赤血球が壊されやすくなる疾病である溶結性貧血の一種。赤血球には全身に酸素を運搬する働きのあるヘモグロビンが含まれているため、赤血球が破壊されることで貧血を引き起こす。赤血球の破壊は夜間就寝中に起こりやすいため、起床後の尿が破壊された赤血球の色素の影響で黒色になるのも特徴的な症状の一つ。破壊された赤血球によって腎臓などの臓器にダメージが生じることもあるため、早期発見・早期治療が望ましい。
ポルフィリン症
先天性代謝性疾患の一つで、赤血球の赤色の元となっているヘムと呼ばれる物質に関連した代謝異常。ポルフィリン症には多くの病型が含まれており、皮膚や神経、消化器系などにさまざまな症状を引き起こすことになる。原因としては遺伝子レベルでの異常であることもあれば、ウイルス感染などが発症に関与していることもある。病型に応じて症状の出方はさまざまであり、日常生活における注意点も異なる。根本的治療方法はなく、症状に応じた対症療法のみ。
ポンぺ病
グリコーゲン(糖原)を分解する酵素の機能が低下するため骨格筋や肝臓、心臓などにグリコーゲンが蓄積する遺伝性の疾病。グリコーゲンの分解に必要な酵素は細胞の中のライソゾームと呼ばれる細胞内の小器官の中に存在するので、ポンぺ病はライソゾーム病に分類されている。発症の時期や症状の現れ方には個人差がある。一般的には、発症時期によって「乳児型」、「小児型」、「成人型」に分類され、年齢が低い時期に発症するタイプほど重症化しやすく進行も早いのが一般的である。従来、「乳児型」は生後数か月以内に筋力の低下が現れ、心不全などを引き起こして早期に死に至っていたが、近年では不足しているグリコーゲンの分解を担う酵素を補充する治療方法が確立し、救命できるケースも多くなっている。
マルファン症候群
国内推定患者数:約2万人
遺伝子の異常によって、骨、血管、肺、目や皮膚などに存在する結合組織がくなり、これらの部位にさまざまな合併症をきたす疾病。無症状のまま進行し、20〜30歳代で命にかかわる大動脈解離などの疾病を発症することも少なくない。早期の治療介入で寿命を全うすることも可能なので、早期発見・早期治療介入が重要。
慢性炎症性脱髄性多発神経炎(指定難病)
国内推定患者数:数千人
2か月以上にわたる慢性的な経過で末梢神経の炎症が生じる疾病。発症すると、筋力の低下やしびれ、ピリピリ感などの神経症状を認める。やや男性に多く発症し、発症年齢も2〜70歳まで幅広い。治療法は、ステロイドや免疫グロブリン静脈内投与、血漿浄化療法、免疫抑制剤などの投与である。治療に対する反応性や病気の進行の仕方は人それぞれであり、長期的な経過観察をすることが重要な疾病。
慢性活動性EBウイルス感染症(小児慢性特定疾病に指定)
ヘルペスウイルスの仲間であるEBウイルスが関連してさまざまな症状を引き起こす疾病の一つ。子どもに発症することが多いが、成人でも発症。発症すると命にかかわることが懸念される場合もある。根治治療方法には化学療法と造血幹細胞移植がある。
ミオクロニー欠神てんかん(指定難病)
特徴的なミオクロニー欠神発作を主症状とする小児てんかんの一つで、希少な難治性てんかん。発症年齢は11か月から12歳6か月と幅があり、男女比では男児に多い傾向がみられる。ミオクロニー欠神発作とは、欠神(突然の意識の曇り)と同時に四肢(上肢下肢)の筋肉にリズミカルな収縮(ミオクロニー)が起こり、肩や上腕などが律動的に持ち上がる発作のことである。このとき、欠神のため、呼びかけなどに反応しない状態になる。ミオクロニー欠神発作以外の症状として精神発達遅滞や行動障害、全身けいれんなどの症状を伴うものもある。
ミトコンドリア脳筋症(別名:ミトコンドリア病)(指定難病)
エネルギー産生に重要な役割を担うミトコンドリアに異常をきたすことが原因で発症する疾患。特に、筋肉と脳に症状が現れることが多く、具体的には、筋力の低下や疲れやすさ、けいれん、発達の遅れ、脳卒中など全身各所に症状が現れる可能性がある。
メープルシロップ尿症(小児慢性特定疾患並びに指定難病)
国内推定発症率:1人/50万人、国内推定患者数:100名弱
先天性代謝疾患の一つで、分岐鎖アミノ酸と呼ばれるバリン・ロイシン・イソロイシンをうまく代謝できないことから発症する疾病。新生児マススクリーニングが実施されるようになって以降、発症前の新生児期に診断されることが多くなっている。重症度が高く、死亡率や神経学的な合併症の発症率も高い。
メビウス症候群(指定難病)
国内推定患者数:約1,000人
眼の運動や顔の表情形成に深く関係する外転神経顔面神経と呼ばれる脳神経に先天的な麻痺を認める疾病。顔が笑わない、泣いているのに表情が変わらない、瞬きをしない、眉毛が動かない、眼の動きがおかしいなどの症状を呈するが、進行することはない。神経麻痺が生じる原因は明らかになっていない。日常生活に支障をきたすこともあり、症状の程度に合わせたサポート体制が必要。
メンケス病
推定発症率:1人/12万人~14万人
銅の輸送を担う酵素ATPase(ATP7Aと呼ばれる酵素タンパク)の異常が原因で、銅の代謝障害をきたす先天性疾患。ATPaseに異常があると腸から銅を吸収できなくなるため、銅が腸の粘膜に蓄積し、体内に輸送されない。基本的には男児にしか発症しないが、まれに女児にも発症する。発症すると、多くの場合は2~3歳で死亡する。
網膜色素変性症(指定難病)
国内推定発症率:1人/4,000〜8,000人
網膜の光を感じる細胞に異常が生じる疾病。眼球に入った光は角膜、水晶体、硝子体を通って網膜に到達し、網膜に到達した光は網膜の細胞によって電気信号に変換されて視神経を通して脳へと情報伝逹される。網膜の細胞で、特に重要なものが視細胞や網膜色素上皮細胞などであり、これらの細胞は光刺激を電気信号に変換する際に重要な役割を果たしており、正しくものを見るためには必要不可欠である。これらの細胞に異常が生じることで発症すると考えられている。
モワット・ウイルソン症候群(指定難病)
国内推定患者数:約1,000人
ZEB2と呼ばれる転写遺伝子の異常によって引き起こされる先天異常症候群であり、特徴的な顔貌、重度から中等度の知的障害と小頭症が主な特徴である。根治的治療方法はなく、症状を患者ごとに評価し、それぞれに合わせた治療方法を決定することが求められる。長期にわたるフォローアップが必要不可欠な疾病であるため、専門の医療機関にいて継続的な診療を受けることが重要。
もやもや病(指定難病)
脳の主要な血管のひとつである内頚動脈が、頭蓋内で時間をかけて徐々に狭くなり、その結果閉塞してしまう原因不明の疾病。日本人に多い。発症初期では、内頸動脈から脳に供給される血液が足りなくなるため、手足のしびれや意識障害、麻痺、言語障害、けいれんなどの症状が現れることがある。進行すると、閉塞した内頸動脈の端近くから細い血管が数多く発生し、これらの血管は通常の血管よりも弱いため、脳出血を起こすことがある。
ヤング・シンプソン症候群
推定発症率:1人/10~20万出生
KAT6Bの遺伝子異常が原因で、特徴的な顔貌や精神遅滞、眼症状、甲状腺機能低下、骨格異常、停留精巣など多臓器にわたって異常が生じる先天異常症候群。常染色体優性遺伝形式をとる遺伝病ではあるが、家族例の報告はほとんどなく、突然変異により発症した孤発例が大部分を占める。
ライソゾーム病(指定難病)
推定発症率:1人/10〜20万人
先天性遺伝子異常により、ライソゾームの働きが悪くなることで、体内臓器にさまざまな程度で壊れない物質が蓄積して、種々の臓器障害を引き起こす疾病。ライソゾームとは、細胞内で不要となったタンパク質や老廃物を分解して掃除する役目を担っている細胞内小器官の一つである。障害される遺伝子の異常によりゴーシェ病、ニーマンピック病、クラッベ病などの疾病に分類されている。重篤な症状をもたらすことがあるライソゾーム病は、疾病のタイプに応じてさまざまな治療方法が選択される。疾病の経過は患者によってさまざまであり、診療には高い専門性が要求されるため専門の医療機関にて診療を受けることが重要。
ランドウ・クレフナー症候群(Landau-Kleffner syndrome ; LKS)(指定難病)
国内推定発症率:1人/100万人(5~15歳未満の子ども)
就学前後の子どもに発症する神経疾患。耳の機能には異常がないのに、発症前は発達が正常であった子どもに、言葉が聞き取れない、音の意味が理解できないといった症状が現れることが特徴。急性期には高度な脳波異常を伴い、てんかん発作が相前後して発症することが多く、行動異常がみられることもある。
リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis : LAM)(指定難病)
国内推定発症率:1.9~4.5人/100万人
肺に嚢胞と呼ばれる小さな穴がたくさんできてしまう疾患。LAM細胞と呼ばれる細胞が肺やリンパ節で大量に増殖してしまうことが原因と考えられており、肺以外にも腹部の腫瘍や胸水、腹水などを引き起こすことがある。妊娠可能な年齢の女性に発症することの多い。気胸や息切れで発見されることが多い。ゆっくりと進行することが多いが、根本的治療法はなく、治療の目的は症状を和らげる、あるいは進行を遅らせることになる。肺病変の進行が早い場合には、肺移植が行われることもある。
類天疱瘡
自己抗体が関連して発症し、体幹や上下肢の皮膚に水疱が多数形成される疾患。水疱が破れてびらんを形成することや、口腔粘膜や性器などの粘膜に病変が現れることもある。高齢者に多い疾病。発症に自己免疫が関与しているため、治療には主にステロイドが用いられる。
ルビンシュタイン・テイビ症候群(指定難病)
国内推定発症率:1人/1〜2万出生
CREBBP遺伝子やEP300遺伝子の異常により発症する遺伝性疾患の一つで、重度の精神運動発達遅滞、特徴的な顔立ち、手足の親指が幅広いといった特徴をもつ疾患。心臓や腎臓、歯科領域などに障害を認めることもある。 治療は支持療法が中心となり、成長発達の状況を注意深く観察しながら必要に応じて治療介入が適宜選択される。
レーベル遺伝性視神経症
国内推定発症率:1人/13,000人
視力低下や視野の欠損を起こす疾病の一つで、ミトコンドリア病の一種。ミトコンドリア病は、細胞の中でエネルギーを作る役割を持つミトコンドリアが、ミトコンドリア遺伝子の異常によって効率的にエネルギーを作れなくなることで起こる疾病であり、特にエネルギーをたくさん必要とする神経や筋肉の細胞の機能に異常が生じることから、全身に症状が起こることが多い。しかし、レーベル遺伝性視神経症では、主に目に症状がでてくる。まれに不整脈、てんかん、小脳萎縮、筋肉の変化などが出現することもある。
レット症候群
国内推定発症率:1人/1万人の女児、国内推定患者数:1,000人前後
遺伝子異常により、手揉み様の特異な常同運動、脳・頭囲発育の遅延、歩行障害、てんかん発作、精神遅滞を特徴とする症候群。出生後およそ半年頃から運動面の遅れが見られるようになる。その他、おもちゃに対しての興味が失われるなど、それまでにできていたことができなくなるといった退行と呼ばれる症状が出現する。典型的には女児に発症するが、極まれに男児にも発症する。自閉症と類似の症状や運動発達の遅れを見ることから、自閉症や脳性麻痺と誤診されることもある。
ロスムンド・トムソン症候群(指定難病)
国内推定患者数:約10人
RECQL4と呼ばれる遺伝子異常を原因として発症する、日光過敏に関連した皮膚の症状、幼少期からの白内障、皮膚の萎縮などを特徴とする疾病の一つ。経過中に骨肉腫や皮膚がん、白血病などの悪性腫瘍を発症することがある。日光を避けることが重要で、がんの発症リスクも高いため、早期発見・早期治療介入が必要。

あとがき

オーファンドラッグ(Orphan Drug)は、希少疾病用医薬品のことを指す用語である。対象患者数が本邦において5万人未満であること、医療上特にその必要性が高いものなどの条件に合致するものとして、厚生労働大臣が指定した医薬品である。

「Orphan」とは、元々「孤児」という意味の用語である。希少疾病用医薬品は、開発コストが回収できないことが多く、製薬企業は採算性の観点からこれまで積極的に開発してこなかった。つまり、製薬企業に見捨てられた「孤児」のような薬という意味で「Orphan Drug」と呼ばれるようになったとされる。

ところが、近年の薬事法のところが、近年の薬事法の改正により、Orphan Drugに指定されると、研究開発のための助成金が交付されるほか、開発費にかかる税金が控除されるようになった。さらに、できるだけ速やかに患者さんに提供できるよう、他の医薬品よりも優先して承認審査が行われるなど、各種の措置(特典)が受けられるようになった。そのため、希少疾病に対する治療薬の開発が活発化している。これは喜ばしいことである。

Orphan Drugの開発が今後も継続していけば、希少疾患や指定難病で苦しんでいる患者にも多くの製薬企業が現在、取り組んでいる「Unmet Medical Needs の充足」の恩恵を受けられる日が来ることでしょう。しかし、患者のためにはゆっくりと進めるわけにはいかない。新規治療薬の開発をもっと速く推進するために行政側の施策がもっと必要だと私は思う。


【参考資料】
難病情報センターHP 難病情報センター (nanbyou.or.jp)
Medical Notes HP メディカルノート (medicalnote.jp)
指定難病ペディア2019(診断と治療社)
指定難病の要件について プレゼンテーション (mhlw.go.jp)