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治験薬GMP基準に準拠した治験薬の製造、製造管理及び品質管理の考え方を解説

はじめに

人体に作用し、影響を与える医薬品は、その取り扱いに際して細心の注意が求められる。製造元である医薬品メーカーは、薬の候補物質の選定から始まり、開発、製造、販売、流通に至るまで、多くの規制を受けることになる。

医薬品メーカーが最も気をつけなくてならない規制に「医薬品の製造管理および品質に関する規則」と「薬局等構造設備規則」がある。これらの規則はGMP(Good Manufacturing Practice)とも呼ばれ、その順守が義務付けられている。

GMP基準に掲げられている基本要件は次の3つである。
①製造段階でのヒューマンエラーを最小限に抑えること、
②汚染および品質低下を防止すること、
③より高度な品質を保証するシステムを設計すること

品質管理体制は、品質管理部門を製造部門から独立させ、原料の受け入れ、医薬品の製造、包装、搬出に至るまで、あらゆる段階でチェック機能を設け、その全てをパスしなければ出荷できないシステムを構築する。

この各段階におけるチェック項目が「医薬品の製造管理および品質に関する規則」で、手順書として文書化されており、それはGMPソフトと呼ばれる。

GMPソフトの内容は「製造管理・品質管理の組織・責任体制の整備」「製造・試験検査手順の文書の整備」「バリデーション(製造手順等が適切であることの確認)の実施」などの5つとなっている。

また、文書化された手順だけではなく、医薬品を製造する設備や場所にも基準が設けられている。これが「薬局等構造設備規則」でGMPハードと呼ばれている。

GMP基準は1994年4月以降、メーカーの順守事項から、厚生労働省の許可要件に変更されており、製造や品質の管理に問題が生じれば、業務停止を命じられることもある。

治験薬GMPは、医薬品GMPとは違って開発の各段階に応じた柔軟な管理が必要であり、一律的に規定することは難しいとされている。

開発段階に応じた治験薬GMP要求事項について理解を深めたい。特に、治験薬GMP管理としては悩ましい変更管理や逸脱管理における記録の残し方、運用について学びたいと思う。

治験薬GMP要求事項に沿って何を準備し、どのような管理を行っていくかについて理解し、実際に運用できるようになることを目指したい。

本稿は、「治験薬の製造管理および品質管理に関する基準」(治験薬GMP)の解説をFQA(Frequently Questioned Answer)の形式でまとめようとするものである。私自身の理解と具体的事例ともにアップデートしていきたいと考えている。


<目次>
はじめに
総則
1.目的
2.適用範囲
3.基本的考え方
4.定義
5.治験薬製造部門及び治験薬品質部門
6.治験薬の出荷の管理
7.治験薬に関する文書
8.手順書等
9.治験薬の製造管理
10.治験薬の品質管理
11.外部試験検査機関等の利用
12.バリデーション及びベリフィケーション
13.変更の管理
14.逸脱の管理
15.品質等に関する情報及び品質不良等の処理
16.回収処理
17.自己点検
18.教育訓練
19.文書及び記録の管理
20.委託製造
21.治験薬の製造施設の構造設備
医薬品の製造輸入販売のためのGMP適合性調査資料
あとがき

総則

1.目的

本基準は、「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(平成9年厚生省令第28号。以下「GCP省令」という)第17条第1項及び第26条の3に規定される治験薬を製造する際に遵守すべき適切な製造管理及び品質管理の方法並びに必要な構造設備に係る事項を定めるものであり、その目的は次に掲げるものである。

1.1 
治験薬の品質を保証することで、不良な治験薬から被験者を保護すること。

「治験薬の品質を保証することで、不良な治験薬から被験者を保護すること」とあるが、具体的にはどのようなことが考えられるか。
被験者が被る可能性がある製造上の過誤(滅菌などの重要工程におけるミス、汚染又は交叉汚染、混同、誤表示等)に起因する危害や、不十分な品質の原料、成分に起因する品質劣化製品による危害を未然に防止すること等である。

1.2 
治験薬のロット内及びロット間の均質性を保証することで、臨床試験の信頼性を確保すること。

1.3 
治験薬が開発候補として絞り込まれた段階においては、当該治験薬と市販後製品の一貫性を、治験薬の製造方法及び試験方法が確立した段階においては、当該治験薬と市販後製品の同等性を保証することで、市販後製品の有効性及び安全性並びに臨床試験の適切性を確保すること。

一貫性」とあるが、具体的にはどのような意味なのか。
ここでいう「一貫性(consistency)」とは、治験薬と市販後製品の共通点並びに相違点及びその因果関係が明確にされていることである。
同等性」とあるが、具体的にはどのような意味なのか。
ここでいう「同等性(equivalency)」とは、治験薬と市販後製品が、品質、安全性及び有効性について科学的に有意差が認められず、同等と判断しうることである。
一貫性」と「同等性」の保証の内容に違いがあるとされる事例とは具体的にはどのようなものか。
例えば、第Ⅰ相試験でカプセル入り原薬などが使用され、第Ⅱ相試験以降の治験製剤と比較して、用量、剤形等が異なっている場合等が考えられる。このような場合、第Ⅰ相試験のカプセル入り原薬と第Ⅱ相試験以降の治験製剤とは一貫性は求められるものの同等である必要は必ずしもない。なお、一般に後期第Ⅱ相試験以降の治験製剤は市販製剤との同等性が求められる。
なお、バイオ医薬品の同等性の考え方については、「生物薬品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品)の製造工程の変更にともなう同等性/同質性評価について」(平成17年4月26日付け薬食審査発第0426001号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知)を参照のこと。

2.適用範囲

2.1 
本基準は、GCP省令第17条第1項の規定に基づき治験依頼者が実施すべき事項及び第26条の3の規定に基づき自ら治験を実施する者が実施すべき事項を定めたものであり、GCP省令に基づき実施される治験に用いる治験薬に適用されること。

治験依頼者とはどのような者をいうのか。
医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成9年厚生省令第28号。以下「GCP省令」という)第2条第16項に規定する「治験の依頼をした者」をいう。この場合において、治験依頼者とは、治験薬を開発する企業の社長や治験計画届書に記載される代表者等の特定の者に限定するものではない。
なお、2.4に示すように自ら治験を実施する場合については、治験薬GMP中「治験依頼者」を「自ら治験を実施する者」に読み替えて適用する。

2.2 
本基準は、治験薬を製造する施設(以下「治験薬製造施設」という)が海外にある場合においても適用されるものであること。

「治験薬製造施設」とは、医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(平成16年厚生労働省令第179号。以下「医薬品GMP」という)でいう「製造所」と違うのか。
医薬品GMPでいう「製造所」は、薬事法(昭和35年法律第145号。以下「法」という)に基づく製造業の許可等の規制の対象である一方、「治験薬製造施設」は、GCP省令第17条第1項及び治験薬GMP等の規制対象であり、両者を区別するために「治験薬製造施設」という用語を用いているところ。
医薬品製造業の許可施設で治験薬を製造してもよいか。
治験薬製造施設にかかる規制を遵守していれば、差し支えない。
なお、治験薬は、開発段階によって、その毒性、薬理作用、感作性等について十分な知見が得られていない場合があるため、他の医薬品等への交叉汚染防止等9.2に定める治験薬特有の必要事項に係る措置を講じること。
治験原薬についての取扱い如何。
医薬品GMPにおける原薬の取扱いと同様に、治験原薬については、治験薬GMPに従って、出発物質より段階的に管理し、治験薬の品質に重大な影響を与える工程以降から重点的に管理されるべきものである。
なお、治験原薬の具体的な取扱いに当たっては「原薬GMPのガイドラインについて」(平成13年11月2日付け医薬発第1200号厚生労働省医薬局長通知)の別添19を参照のこと。
治験原薬について、二以上の製造施設にわたって製造することは認められるか。
差し支えない。
ただし、それぞれの製造施設が治験薬GMPの適用対象となる。
対照薬(プラセボを含む)を、他社から購入する場合には、それらの製造施設も治験薬GMPの適用対象となるか。
適用対象となる。
GCP省令第2条において、「「治験薬」とは、被験薬及び対照薬(治験に係るものに限る)をいう」とされており、また「「対照薬」とは、治験又は製造販売後臨床試験において被験薬と比較する目的で用いられる医薬品又は薬物その他の物質をいう」とされている。
なお、市販されている製品を対照薬として使用する場合、治験薬の品質確保に支障を生じることがない限りにおいて、治験薬の製造工程(包装・表示など治験薬特有の品質確保が必要な製造工程を除く)に医薬品GMPを適用しても差し支えない。
海外で治験を行う予定であるが、使用する治験薬(製剤)については国内で製造し、輸出することを考えている。この場合、治験薬GMPに基づきGMP証明が発行されるのか。
治験薬GMPによるGMP証明については、「治験薬GMP証明書の発給について」(平成21年3月30日付け厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課事務連絡)に基づき証明書を発行することは可能である。

2.3 
本基準は、GCP省令第17条第1項又は第26条の3が適用となる治験に用いる治験薬の製造について適用されるものであり、当該治験薬が承認された後に「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」(平成16年厚生省令第179号。以下「GMP省令」という)が適用されるかどうかによるものではないこと。

2.4 
GCP省令に規定する自ら治験を実施する場合については、本基準の「治験依頼者」を「自ら治験を実施する者」に、「第24条第3項」を「第26条の10第3項」に読み替えて適用する。


3.基本的考え方

3.1 
治験薬の製造管理及び品質管理に求められる要件は、開発の進展に連動すべきものであり、また、同一の臨床段階においても、多岐に渡る臨床試験の目的や方法により求められる事項の程度に差異がありうる場合が想定されることから、一律的に規定することは困難である。

本基準は、臨床試験の各段階における要件を区別して規定するものではないが、臨床試験を有効かつ適正に実施するためにも、開発に伴う段階的な状況やリスクを考慮して、適切だと判断される要件については柔軟に運用すること。

また、本基準が医薬品開発の重要な期間に対して適用されることから、製品ライフサイクルを見据えた品質マネジメントの一環として活用することが望ましい。

「本基準が医薬品開発の重要な期間に対して適用されることから、製品ライフサイクルを見据えた品質マネジメントの一環として活用することが望ましい」とあるが、日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH) Q9(品質リスクマネジメント)やICH Q10(医薬品品質システム)に準拠する必要があるのか。
ICH Q9は、医薬品の品質の様々な側面に適用できる品質リスクマネジメントの原則及び手法の具体例を示したものであり、治験薬GMPにおいては、必ずしもICH Q9への準拠を義務付けするものではない。なお、ICH Q9に示される概念は重要であり、治験依頼者として必要に応じてICH Q9を活用することは、将来の市販製品の品質の保証の上で有意義なものであると考えられる。
また、ICH Q10についても、上記とほぼ同様の考え方が適用されるものと考えられる。

3.2 
被験者の保護及び臨床試験の信頼性の確保のために、治験薬の製造管理及び品質管理に係る全ての記録について、後日の確認が取れるように保存すること。

治験薬GMPを無視したような場合、あるいは治験薬GMPから大きく外れる状況である場合においては、何か罰則があるのか。
治験薬GMPは、臨床試験に用いられる治験薬の製造管理及び品質管理の方法や構造設備について、標準的な手法等を規定しているものであり、これと同等又はそれ以上であれば、この手法以外のものを採用することを否定するものではない。
ただし、適切な製造管理及び品質管理の方法や、必要な構造設備が担保されないと判断された場合については、GCP省令第17条(自ら治験を実施する場合は同令第26条の3)の規定に違反するものとして取り扱われる。その場合、法第80条の2において、厚生労働大臣が治験の中止又はその変更その他必要な指示を行うこと等が規定されており、また、治験依頼者に対しては、法第87条の規定に基づく罰則が適用される。さらに、当該臨床試験の試験成績を用いて承認申請を行った場合には、法第14条第3項違反となる。

3.3 
治験薬が開発候補として絞り込まれた段階においては、被験者の保護及び臨床試験の信頼性の確保に加えて、治験薬と市販後製品との一貫性・同等性を示す根拠として、また、治験薬の設計品質及び製品品質の確立の根拠として、開発段階における全ての変更を管理し、文書化し、記録として保存すること。

「治験薬の設計品質及び製品品質の確立の根拠」とあり、ICH Q8(製剤開発)を意図したと思われる記述があるが、ICH Q8に準拠する必要があるのか。
ICH Q8は、ICH M4(コモン・テクニカル・ドキュメント)モジュール3の適用範囲において定義されている製剤に対して、「製剤開発の経緯」の項における記載内容に関する指針を示すことを目的としており、治験薬GMPにおいては、必ずしもICH Q8への準拠が必要とされているものではない。なお、新薬開発における技術情報の集積という観点から、その原則を考慮することは重要である。
3.3の規定の趣旨は、治験薬の段階での技術情報について、変更管理を行うプロセスにおいてどのように将来の市販製品の段階まで繋いで行くか、そして当該情報に係る管理手法のあり方の重要性について述べたものである。
開発段階では「変更」は研究開発活動そのものであり、全ての変更を管理する必要はないと考えられる。従って、本条における変更規定は開発段階ではなく、治験薬の製造管理及び品質管理に限定して定めるべきものである。
本項目は、治験薬の段階での技術情報について、変更管理を行うプロセスにおいてどのように将来の市販製品まで繋いで行くか、そして当該情報に係る管理手法のあり方の重要性について述べたものであり、開発段階における全ての変更を管理することが必要であると考えます。
20080902治験薬GMPコメント回答.doc

3.4 
治験薬の製造施設の構造設備については、治験薬の製造スケール等、開発と共に大きく変更されることが必然である一方、開発に伴って製造方法や試験方法等のデータが蓄積されていくことから、開発段階に応じたより適切な管理が求められる。その観点から、治験薬の製造施設の構造設備として、開発段階を考慮しない一律的な要件は不適切であると考えられることから、開発の最終段階に相当する医薬品の製造販売承認の要件及び医薬品の製造業許可の要件として求められる製造所の構造設備を認識した上で、必要な対応を図ること。

構造設備の水準がわかりづらいため、具体的に示していただきたい。
3.4 に示したとおり、治験薬の製造施設の構造設備については、開発段階に応じたより適切な管理が求められることから、個々の事例により一般化して具体的事例を示すことは適切ではないと考えます。
20080902治験薬GMPコメント回答.doc

4.定義

4.1 
この基準で「被験薬」とは、GCP省令第2条第5項に定める被験薬をいう。

4.2 
この基準で「治験薬」とは、GCP省令第2条第7項に定める治験薬をいう。

4.3 
この基準で「治験薬の品目」とは、一つの承認申請のために行われる治験に使用される治験薬の品目をいう。

4.2 で「治験薬」が定義されている上に「治験薬の品目」を定義した意図は何か。
4.3 に示したとおり「一つの承認申請」のために行われる治験に使用される治験薬であり、例えば5mg錠、10mg錠を開発した場合、例えば「5mg錠と5mg錠のプラセボ」は一つの治験薬の品目ですが、10mg 錠はこれとは別の治験薬の品目となります。
20080902治験薬GMPコメント回答.doc

4.4 
この基準で「資材」とは、治験薬の容器、被包並びに容器及び被包に貼付するラベルをいう。

4.5 
この基準で「ロット」とは、一の製造期間内に一連の製造工程により均質性を有するように製造された治験薬(製造の中間工程で造られたものであって、以後の製造工程を経ることによって治験薬となるものを含む)及び原料の一群をいう。

4.6 
この基準で「管理単位」とは、同一性が確認された資材の一群をいう。

4.7 
この基準で「バリデーション」とは、治験薬製造施設の製造設備並びに手順、工程その他の治験薬の製造管理及び品質管理の方法(以下「製造手順等」という)が期待される結果を与えることを検証し、これを文書とすることをいう。通常、製造方法や試験方法が確立し、再現性も考慮した繰り返しが必要な場合に行う。

4.8 
この基準で「ベリフィケーション」とは、当該治験薬に期待される品質が得られたことを手順書、計画書、記録、報告書等から確認し、これを文書とすることをいう。通常、限定された状況、限定されたロットに対して、その妥当性や適切性の評価確認のために行う。

「限定された状況」とあるが、具体的にはどのようなものか。例えば、あるロットを製造したときの、製造条件と理解してよいか。
治験薬は、その製造条件等についても未確立な状態であり、必ずしも全ての段階を通じて恒常性が求められるものではない。ある一定の期間に必要な治験薬が、一定の状態であることが確認でき、結果として当該期間における治験薬の品質が保証できればよいことから、「限定された」という表現とした。例えば、1回限りの製造を行い治験に使用する場合や、繰り返し使用の可能性がほとんどない共用設備の洗浄時の残留性の確認などを想定している。

4.9 
この基準で「クオリフィケーション」とは、構造設備(例えば、設備・装置・機器・ユーティリティ等)について、計画・仕様・設計どおり適格であることを評価確認し、これを文書とすることをいう。

クオリフィケーションとしては、どのようなものが考えられるのか。また、開発段階においてはどの程度実施すべきか。
クオリフィケーションは、その状況により、
DQ(Design Qualification:設計時適格性評価)、
IQ(Installation Qualification:設備据付時適格性評価)、
OQ(Operational Qualification:運転時適格性評価)、
PQ(Performance Qualification:性能適格性評価)の4段階に分けられるが、治験薬の製造管理及び品質管理において、何をどの程度まで実施する必要があるかについては、当該治験薬の開発状況等から求められる品質及びデータの信頼性の程度に基づいて、治験薬を開発する者が、主体的にかつ適切に判断すべきものである。

治験薬の製造管理及び品質管理

5.治験薬製造部門及び治験薬品質部門

治験薬品質管理者を廃することで、医薬品GMPと比較すると、治験依頼者の責任の具体化、治験の全期間にわたる治験薬の品質保証、製造管理者の役割の観点から問題があるのではないか。
今回の改訂においては、GMPの基本要件である「品質部門の製造部門からの独立性」を確保するため、治験薬品質管理者、治験薬製造管理責任者及び治験薬品質管理責任者の設置規定に代えて、治験薬品質部門と治験薬製造部門による管理責任体制としたものであり、GMP省令との整合を図っております。
20080902治験薬GMPコメント回答.doc

5.1 
治験依頼者は、治験薬製造施設ごとに、治験薬の製造管理に係る部門(以下単に「治験薬製造部門」という)及び治験薬の品質管理に係る部門(以下単に「治験薬品質部門」という)をおかなければならない。

なお、治験依頼者は、治験薬の製造工程の全部を委託する場合でも、必要な機能を備えた部門をおかなければならない。

品質部門責務のうち「品質保証業務+品質管理業務」は個々の製造施設ではなく、むしろそれらを統括する全社的な機能として位置づける方がより適切と考えられる。また、試験検査業務は治験薬製造施設ごとにおくべきである。
原則として、治験薬製造施設ごとに治験薬GMP体制を構築する必要がありますが、例えば、同一法人で、治験薬製造部門と治験薬品質部門の機能に支障なく、連携が十分に図れる場合であり、それぞれの製造施設での運用に合理的根拠がある場合においては、その限りではないと考えます。
20080902治験薬GMPコメント回答.doc
全面委託を行った場合、意味が不明確になるので必要な部門について明確にすべき。
全面委託を行った場合、治験薬製造部門や治験薬品質部門のうちの品質管理業務(試験検査業務)に係る部門を設置する必要はありませんが、当該治験薬が治験薬受託製造業者により適切に製造管理及び品質管理がなされたかどうかを確認して、治験依頼者の臨床部門に出荷する必要があるため、当該治験薬の出荷判定に係る治験薬品質部門(品質保証業務に係る部門)を設置して適切な管理運営を行う必要があると考えます。ご指摘を踏まえ「必要な機能を備えた部門」に変更いたしました。

5.2 
治験薬品質部門は、治験薬製造部門から独立していなければならない。

治験薬製造施設ごとに、治験薬製造部門と治験薬品質部門をおかなければならないこととされているが、それぞれ一名ずつでもよいか。
各部門の人数については、治験薬製造施設の規模、製造品目数等により異なると考えられることから、業務に支障がなく、各部門がそれぞれ機能している場合にあっては、一名ずつでも差し支えない。ただし、その場合であっても、品質部門の担当者は製造部門が行う業務について、客観的に評価できることが必要である。

同一法人であるが、治験薬製造部門と治験薬品質部門が別製造施設に分散している。この場合においては、当該製造施設ごとにGMP体制を組む必要があるか。また、治験薬製造部門の要員が、同一法人の異なる研究施設で被験物質を合成するような場合、組織を二つの施設ごとに置くのではなく、同一の治験薬GMP体制での運用は可能となるか。
原則として、治験薬GMP体制は製造施設ごとに構築すること。ただし、同一法人で、各部門がそれぞれ支障なく機能し、連携が十分に図れる場合であって、複数の製造施設に組織を分けて運用することに合理的根拠がある場合においては、その限りではない。

同一法人で、一品目の製造を複数の製造施設の製造部門で行っている場合においては、一つの治験薬製造施設として管理しても差し支えないか。
原則として、治験薬GMP体制は製造施設ごとに構築すること。設問の場合においては、前工程の治験薬製造施設は、後工程の治験薬製造施設から社内委託を受けて製造していると解釈し、全体として一つの治験薬製造体制と見なすことも可能であるが、それぞれの工程における責任を果たせるように治験薬GMP体制を組む必要がある。

治験薬品質部門を設置する旨が規定されているが、医薬品GMPにおける「品質部門」(品質保証部門+試験検査部門)と同義であるのか、あるいは従前の「品質管理部門」を言い換えたものであるのか、どちらを意図しているのか。
医薬品GMPにおける「品質部門」(品質保証部門+試験検査部門)と同義であり、従前の「品質管理部門」のような試験検査部門だけをいうものではない。

マイクロドーズ臨床試験のように、研究施設で治験薬を製造する場合も治験薬製造部門及び治験薬品質部門の二部門の設置は必須なのか。
両部門を設置する必要がある。なお、マイクロドーズ臨床試験としてポジトロン放出核種のような極めて短半減期の放射性物質を用いる場合等は、その特殊性を考慮して、両部門の形態は柔軟に運用して差し支えない。

治験薬品質部門は、「原薬GMPのガイドラインについて」同様、品質保証部門及び品質管理部門に分離した形態をとることでもよいか。
治験薬製造部門から機能的に独立していれば、治験薬品質部門が、品質保証部門及び品質管理部門に分離した形態をとることは差し支えない。

治験薬の全面委託製造を行っているため、治験依頼者たる企業としては製造行為を行っていないが、この場合においても、治験薬製造部門を設置しなければならないか。
治験薬製造部門を設置する必要はない。ただし、設問の場合においても、当該治験薬が治験薬受託製造者により適切に製造管理及び品質管理がなされたかどうかを治験依頼者において確認する必要がある。そのため、当該治験薬の出荷判定に係わる治験薬品質部門を設置して適切な管理運営を行うこと
製品の出荷の責任を負う品質部門は製造部門から独立しているが、組織構造には柔軟性があると解釈してよいか。
各部門の責務が明確になっており、各責任者が異なる等、両部門の機能が十分に発揮できる組織構造であれば、差し支えないと考えます。
20080902治験薬GMPコメント回答.doc

6.治験薬の出荷の管理

6.1 
治験依頼者は、治験薬の品目ごとに、治験薬品質部門のあらかじめ指定した者に、製造管理及び品質管理の結果を適正に評価させ、治験薬の製造施設からの出荷の可否を決定させなければならない。

「治験薬の品目ごと」はロットごとの意味か。
ロットごとの意味ではありません。「治験薬の品目」については 4.3 において、「ロット」については 4.5において定義しております。なお、「治験薬の品目」については、4.3を参照。

6.2 
治験薬の出荷の可否を決定する治験薬品質部門のあらかじめ指定した者は、当該治験及び治験薬の製造管理及び品質管理について十分な教育訓練を受け、知識経験を有する者でなければならない。

出荷の可否を決定する者について、資格要件は必要か。
特別な資格要件は求めていないが、治験薬の製造全般について精通している必要があることから、治験並びに治験薬の製造管理及び品質管理について、十分な教育訓練を受け、知識経験を有する者であること。例えば、薬剤師又は旧制大学、旧専門学校、大学若しくは高等専門学校において薬学、医学、歯学、獣医学、農学、理学若しくは工学に関する専門の課程を修了した者等が考えられる。

「あらかじめ指定した者」は治験薬ごとに複数おいてもよいか。また、自社で規定した上で「治験薬品質管理者」という名称を用いてよいか。
差し支えないが、それぞれの者の業務の責任、権限等の体制をあらかじめ規定しておくこと。なお、この場合、自社で規定した「治験薬品質管理者」は「治験薬の製造管理及び品質管理基準及び治験薬の製造施設の構造設備基準(治験薬GMP)について」(平成9年3月31日付け薬発第480号厚生省薬務局長通知)で規定した治験薬品質管理者とは定義が異なることに留意すること。
「治験薬の品目ごとに、治験薬品質部門のあらかじめ指定した者」に出荷の可否の決定をさせなくとも治験薬品質部門にさせればよいのではないか。
治験薬の特殊性、出荷管理の重要性にかんがみ、当該治験薬の出荷の可否を適切に管理できる者をあらかじめ指定するため、このような規定としたものです。
20080902治験薬GMPコメント回答.doc
海外の治験薬受託製造施設において包装まで済ませ、製造作業が完了している治験薬を国内GCP部門が直接輸入することは可能か。また、その際に割付も終了した状態で輸入し、そのまま治験に供する場合、治験依頼者はあらかじめ指定した者に国内における出荷の可否の決定をさせなくともよいか。
海外の治験薬受託製造施設で包装を済ませた治験薬のうち、当該施設において治験薬GMPに規定する出荷の可否の決定が完了している場合にあっては、割付の有無にかかわらず、当該治験薬を国内GCP部門が直接輸入することは差し支えなく、また、重ねて出荷の可否を決定しなくともよい。ただし、GCP省令の規定にのっとり、当該治験薬製造に当たっての受託製造者の製造管理及び品質管理に問題のないことを治験依頼者の責任により確認しておく必要がある。

7.治験薬に関する文書

7.1 
治験依頼者は、治験薬の品目ごとに、成分、分量、規格及び試験方法、製造手順、治験の概要その他必要な事項について記載した治験薬に関する文書を作成し、治験薬品質部門の承認を受けるとともに、これを保管しなければならない。

7.2 
7.1に規定する治験薬に関する文書は、当該治験薬の開発の進捗や新たに得られた知見等を踏まえ、適時適切に改訂されなければならない。

従来「治験薬製品標準書」と称していた文書をそのまま使用することはできるか。また、「治験薬製品標準書」という名称で今後も引き続き設定してよいか。
開発段階は、治験薬に関する各種事項を標準化することを目的としている段階であることから、その時点で収集された当該治験薬の品質情報について取りまとめた文書の名称を「治験薬製品標準書」でなく「治験薬に関する文書」としたところである。よって、その内容は従来の治験薬製品標準書に相当するものであり、治験を実施するに当たって必要な文書が作成される限りにおいては、治験依頼者たる企業の内部において従来の治験薬製品標準書の名称をそのまま用いることについては差し支えない。

治験依頼者が、治験薬に関する文書において記載すべき製造工程・製造手順の記載範囲はどのように考えるべきか。
原則として、原薬から製剤包装までの一連の製造工程その手順を記載することが望ましいが、例えば、原薬等の提供業者から必要な情報を得られない場合は、元情報の所在と入手困難な理由を付けた上で、入手可能な情報に限定して記載を行っても差し支えない。
また、原薬等登録原簿に登録されている場合においては、その登録番号の記載をもって製造手順の記載とすることで差し支えない。
ただし、自らが行う製造工程又は自らの責任により製造工程の全部若しくは一部を委託製造する場合は、当該製造工程の手順を記載すること。なお、まだ開発候補として絞り込まれていない早期探索的段階における治験薬に関する文書については、実施される臨床試験の目的に見合った記載内容とすることで差し支えない。

対照薬を除く治験薬を製造しており、自らが治験依頼者とならない場合、治験薬製造者として、治験薬に関する文書に記載すべき製造工程・製造手順の記載範囲についてどのように考えればよいか。
治験依頼者からの委託の有無に関わらず、治験薬製造者が自ら行う製造工程に係る事項のみを記載することで差し支えない。なお、受託製造の場合は、20.3において、「治験薬受託製造者が自ら行う製造工程に係る事項のみを記載することをもって足りるものとする。」としている。

対照薬については、治験薬に関する文書に何を記載すべきか。
包装・表示工程に係る製造手順に加えて、成分、分量、規格及び試験方法、製造手順、その他必要な事項について、可能な範囲で入手した情報を記載すること。

対照薬について、他社又は市場から入手した場合、成分、分量、規格及び試験方法等の記載は困難であるが、何を行うべきか。
対照薬を他社又は市場等から入手する場合であっても、受入れ試験のための規格及び試験方法等に関する事項について記載することが必要である。また、入手元から可能な範囲で入手した情報を記載すること。

治験薬に関する文書には、記載すべき事項が数多くあるが、検索できるようになっていれば分冊管理してもよいか。
例えば、治験薬に関する文書にその索引や整理番号などが記入されており、容易に目的とする事項が検索できるようになっている場合においては、別冊にまとめて管理してもよい。

治験薬に関する文書に「治験の概要」を記載する必要があるか。
必ずしも記載する必要はないが、当該治験薬がどのような臨床試験に使用されるかの確認を行う場合などに活用可能であることから、可能であれば記載することが望ましい。当該事項の記載に当たっては、臨床試験の段階、治験のデザイン、対象疾患、用法・用量等、当該治験薬の使用目的を簡潔に記載することで差し支えない。なお、GCP省令第7条の治験実施計画書及び第8条の治験薬概要書を準用することも可能である。

治験薬に関する文書に記載する製造手順や規格及び試験方法について、治験の進行に伴い若干の変更がある場合は、その都度改訂せず、製品のロットごとの製造手順や規格及び試験方法についてそれぞれ変更点がわかるように記録し、その記録を保管しておくことでよいか。
製造手順や規格及び試験方法について変更する際には、事前に改訂が必要である。ただし、治験薬に関する文書に、当該治験薬の製造規模の変更等に伴い選択されうる複数の製造方法を事前に記載しておくことは差し支えない。この場合には、製造の記録に、実際に行った製造方法を記載しておくこと。

一つの治験で含量が異なる治験薬を用いる場合、治験薬に関する文書等は一冊の文書として管理してよいか。
各々について必要な事項が適切に記載されており、また、改訂等の作業に支障を生じない限りにおいては差し支えない。

8.手順書等

8.1 
治験依頼者は、治験薬製造施設ごとに、構造設備の衛生管理、職員の衛生管理その他必要な事項について記載した治験薬の衛生管理の手順に関する文書を作成し、これを保管しなければならない。

8.2 
治験依頼者は、治験薬製造施設ごとに、治験薬等の保管、製造工程の管理その他必要な事項について記載した治験薬の製造管理の手順に関する文書を作成し、これを保管しなければならない。

8.3 
治験依頼者は、治験薬製造施設ごとに、検体の採取方法、試験検査結果の判定方法その他必要な事項を記載した治験薬の品質管理の手順に関する文書を作成し、これを保管しなければならない。

8.4 
治験依頼者は、8.1から8.3に定めるもののほか、治験薬の製造管理及び品質管理を適正かつ円滑に実施するため、次に掲げる手順に関する文書(以下「手順書」という)を治験薬製造施設ごとに作成し、これを保管しなければならない。

8.4.1 
治験薬製造施設からの出荷の管理に関する手順

8.4.2 
バリデーション及びベリフィケーションに関する手順

8.4.3 
変更の管理に関する手順

8.4.4 
逸脱の管理に関する手順

8.4.5 
品質等に関する情報及び品質不良等の処理に関する手順

8.4.6 
回収処理に関する手順

8.4.7 
自己点検に関する手順

8.4.8 
教育訓練に関する手順

8.4.9 
文書及び記録の管理に関する手順

8.4.10 
その他製造管理及び品質管理を適正かつ円滑に実施するために必要な手順

8.5 
治験依頼者は、治験薬に関する文書、治験薬の衛生管理の手順に関する文書、治験薬の製造管理の手順に関する文書、治験薬の品質管理の手順に関する文書及び手順書(以下「手順書等」と総称する)を治験薬製造施設に備え付けなければならない。

海外で行う工程又は試験の手順に関する文書等は分冊とし、海外の製造施設に保管することでよいか。
分冊管理を行うことで差し支えない。ただし、必要な場合には、速やかに閲覧・確認できる体制をとること。

治験薬製造を短期に1回のみ外部機関へ委託する場合等において、治験薬の製造が終了した時点で手順書等を製造施設より回収又は廃棄してもよいか。
手順書等は、当該治験薬製造施設における品質管理及び製造管理で必要とされる期間、8.5の規定に基づき治験薬製造施設に備え付ける必要がある。また、文書及び記録の保管に係る業務については、20.1.7の規定に基づき治験依頼者と治験薬受託製造者との間で取り決めることとなる。設問のような場合についても、上記の点を踏まえつつ、手順書等の製造施設からの回収及びその保管について治験依頼者と治験薬受託製造者との間で適切に取決めを行うこと。なお、治験依頼者は手順書等を回収した場合であっても、19.の文書及び記録の管理の規定に基づき、回収した文書及び記録を適切に保管し、廃棄はしないこと。

9.治験薬の製造管理

9.1 
治験依頼者は、治験薬製造部門に、手順書等に基づき次に掲げる治験薬の製造管理に係る業務を適切に行わせなければならない。

9.1.1 
製造工程における指示事項、注意事項その他必要な事項を記載した治験薬の製造指図を示した文書を作成し、これを保管すること。

9.1.2 
治験薬の製造指図を示した文書に基づき治験薬を製造すること。

9.1.3 
治験薬の製造に関する記録をロットごと(ロットを構成しない治験薬については製造番号ごと。以下同じ)に作成し、これを保管すること。

9.1.4 
治験薬の表示及び包装についてロットごとにそれが適正である旨を確認し、その記録を作成し、これを保管すること。

9.1.5 
原料及び治験薬についてはロットごとに、資材については管理単位ごとに適正に保管し、及び出納を行うとともに、その記録を作成し、これを保管すること。

9.1.6 
構造設備の清浄を確認し、その記録を作成し、これを保管すること。

「構造設備の清浄を確認し」とあるが、その基準の設定に当たってはどのような点に注意すべきか。
基準を設定するに当たっては、製造施設において治験薬や他の医薬品等の品質に悪影響を与えないことを確認するため、当該製造施設の構造設備等を十分把握した上で、必ず洗浄等に係るベリフィケーションを実施するとともに、必要な場合にはバリデーションを実施する必要がある。特に新有効成分である原薬を取扱う場合においては、安全性の担保がなされていないこと、また、高活性を有する可能性があることについても十分留意する必要がある。

9.1.7 
職員の衛生管理を行うとともに、その記録を作成し、これを保管すること。

9.1.8 
構造設備のバリデーション又はクオリフィケーションを、必要に応じて計画し、適切に行うとともに、その記録を作成し、これを保管すること。

9.1.9 
構造設備を定期的に点検整備するとともに、その記録を作成し、これを保管すること。また、計器の校正を適切に行うとともに、その記録を作成し、これを保管すること。

9.1.10 
治験薬製造施設の構造設備のうち、一定の環境維持が必要な場合には、適切なモニタリングを行い、その記録を作成し、これを保管すること。

9.1.11 
製造、保管及び出納並びに衛生管理に関する記録により治験薬の製造管理が適切に行われていることを確認し、その結果を治験薬品質部門に対して文書により報告すること。

9.1.12 
その他必要な業務

9.2 
開発の段階によって治験薬の毒性等の知見が十分に得られていない場合があるため、治験依頼者は、治験薬製造部門に、交叉汚染の防止等、治験薬に特有の必要事項に係る措置を適切に講じさせること。


10.治験薬の品質管理

10.1 
治験依頼者は、治験薬品質部門に、手順書等に基づき、次に掲げる治験薬の品質管理に係る業務を計画的かつ適切に行わせなければならない。

10.1.1 
原料及び治験薬についてはロットごとに、資材については管理単位ごとに試験検査を行うのに必要な検体を採取し、その記録を作成し、これを保管すること。

原料及び治験薬についてはロットごとに、資材については管理単位ごとに試験検査を行うこととされているが、局方等の公定書に定められた原料及び資材の受入れ試験については、「外観検査及び製造業者の検査成績書の確認」のみでよいか。
公定書収載品に限らず、原料及び資材の試験検査については、治験薬に関する文書等に定めた全項目を実施する必要がある。ただし、「GMP/QMS事例集(2006年版)について」(平成18年10月13日付け厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課事務連絡)の別添中〔問〕GMP11―7においては、原料及び資材の試験検査について、一部の試験検査項目の試験検査を省略又は簡略化しても当該医薬品の品質確保に影響を及ぼさないことを示す合理的な根拠があり、その旨が製品標準書等に明記されている場合には、当該項目の試験検査を省略又は簡略化して差し支えないこととされており、治験薬GMPにおいても同様の取扱いをすることは差し支えない。

10.1.2 
採取した検体について、ロットごと又は管理単位ごとに試験検査を行い、その記録を作成し、これを保管すること。

委託製造の場合には、受託製造者の製造した中間品の受入れ検査は受託製造者の実施した試験検査の成績書の確認でよいか。
中間製品の試験検査については、委託者は治験薬に関する文書等に定めた全項目を実施する必要がある。ただし、受託製造者が実施した試験検査成績を利用しても、自らが製造しようとする治験薬の品質確保に影響を及ぼさないことを示す合理的な根拠があり、その旨が治験薬に関する文書等に明記されている場合には、委託者は受託製造者が実施した試験検査成績を、自らの製造における品質管理に係る試験検査の一部として自らの責任において利用して差し支えない。

市販製剤(対照薬)は、有効期限内であれば品質が保証されているのは当然であるため、受入試験としては有効期限の確認のみでよいか。
市販製剤(対照薬)であっても、市販の包装のまま使用することは想定しがたく、包装等を変更すれば、その安定性が変化する可能性があると考えられる。包装変更を行った場合の有効期限の根拠は必要であり、それに伴う規格及び試験方法を設定する必要がある。個々の事例に応じて、適切な規格及び試験方法を設定すること。

10.1.3 
試験検査結果の判定を行い、その結果を治験薬製造部門に対して文書により報告すること。

10.1.4 
9.1.11の規定により治験薬製造部門から報告された製造管理に係る確認の結果をロットごとに確認すること。

10.1.5 
治験薬の製造工程の全部又は一部を他の者(以下「治験薬受託製造者」という)に委託する場合は、当該治験薬受託製造者の治験薬製造施設の製造管理及び品質管理が適切に行われていることを確認すること。

製造工程の全部又は一部を他の者に委託する場合には、「当該治験薬受託製造者の治験薬製造施設の製造管理及び品質管理が適切に行われていることを確認すること」とされているが、この確認は立入により行わなければならないのか。
確認の方法としては立入のみではなく、受託者の治験薬品質部門から必要な記録類等を入手するなど、必要な事項が適切に確認できる方法でも行うことができる。ただし、どのような方法をとった場合であっても、確認の結果についての責任は委託者が負うこと。

海外の治験薬製造施設が我が国の治験薬GMPに準拠していることをどのように確認すればよいか。
治験依頼者の責任において、実地又は記録若しくは文書等の書面により確認すること。

10.1.6 
治験薬品質部門のあらかじめ指定された者は、製造管理及び品質管理の結果を適正に評価して治験薬の製造施設からの出荷の可否を決定すること。

10.1.7 
治験薬について、ロットごとに、その使用が計画されている臨床試験で投与が終了するまでの期間において、その品質を保証すること。なお、安定性が極めて悪い治験薬については、投与されるまでの時間を考慮し、再現性等、十分な検討を行い、治験の信頼性の確保に努めること。

「安定性が極めて悪い治験薬」とあるが、具体的にはどのようなものがあるのか。
例えば、ポジトロン放出核種放射性標識体のような放射性半減期が極めて短いものが考えられる。このようなマイクロドーズ臨床試験等に用いられる放射性治験薬等安定性が極めて悪い治験薬の品質保証については、その特性に合わせて科学的根拠に基づき実施すること。

「品質を保証する」には、治験薬として出荷可否判定後に治験実施施設に出荷された後(例えば、治験実施施設での保管等)も対象として含まれるのか。
含まれる。なお、治験依頼者は、GCP省令第16条に基づき管理に関する手順書や取扱方法を説明した文書を作成し、あらかじめ治験実施施設に交付するなどの対応をとる必要がある。

10.1.8 
治験薬について、ロットごとに、変更の際の比較評価試験に使用する量を勘案した上で、所定の試験に必要な量の二倍以上の量を参考品として、被験薬に係る医薬品についての製造販売承認を受ける日(GCP省令第24条第3項の規定により通知したときは、通知した日後三年を経過した日)又は治験の中止若しくは終了の後三年を経過した日のうちいずれか遅い日までの期間保存すること。ただし、ロットを構成しない治験薬及び治験薬の性質上その保存が著しく困難であるものについては、この限りでない。

参考品の保存について、保存条件等はどのようにすればよいか。
原則として出荷時の形態で、通常の治験薬における保存条件等と同じ条件で保存することでよい。

「治験薬の性質上その保存が著しく困難であるもの」とは、分解や変質等の経時的な変化により試験検査に供することができなくなるものをいうと考えてよいか。
差し支えない。

海外の製造施設で治験薬を製造する場合、参考品は、海外の製造施設で保管してもよいか。
差し支えない。ただし、海外の製造施設で参考品が適正に保管され、必要な場合には速やかに試験検査等に使用できるようにしておくこと。

10.1.9 
試験検査に関する設備及び器具のバリデーション又はクオリフィケーションを、必要に応じて計画し、適切に行うとともに、その記録を作成し、これを保管すること。

10.1.10 
試験検査に関する設備及び器具を定期的に点検整備するとともに、その記録を作成し、これを保管すること。また、試験検査に関する計器の校正を適切に行うとともに、その記録を作成し、これを保管すること。

10.1.11 
試験検査を他の試験検査設備又は試験検査機関(以下「外部試験検査機関等」という)を利用して実施する場合には、次の記録を作成し、これを保管すること。

「他の試験検査設備又は試験検査機関(以下「外部試験検査機関等」という)を利用して実施する」とは、自社の職員に、外部試験検査機関等を利用させ試験検査を行わせることを指すのか。
自社の職員に行わせる場合に加え、外部試験検査機関等の職員に行わせる場合も含む。なお、いずれの場合にあっても、記録の作成及び保管に加えて、試験検査が11.の規定に従い適切に行われることを確保すること。

10.1.11.1 
当該試験検査機関等の名称

10.1.11.2 
当該試験検査機関等を利用する試験検査の範囲

10.1.11.3 
当該試験検査機関等を利用する期間

10.1.12 
その他必要な業務


11.外部試験検査機関等の利用

11.1 
治験依頼者は、外部試験検査機関等を利用する場合には、治験薬品質部門のあらかじめ指定した者が、外部試験検査機関等で試験検査が適切に実施されることを確認できるよう、当該外部試験検査機関等との間で、次に掲げる事項を取り決めておかなければならない。

11.1.1 
外部試験検査機関等を利用する試験検査の範囲

11.1.2 
外部試験検査機関等を利用する試験検査に関する技術的条件

11.1.3 
外部試験検査機関等で適正に試験検査が実施されていることの治験依頼者による適切な確認

11.1.4 
検体の運搬及び受渡し時における信頼性確保の方法

11.1.5 
その他、外部試験検査機関等での試験検査の信頼性を確保するために必要な事項

11.2 
治験依頼者は、治験薬品質部門のあらかじめ指定した者に、11.1.3に規定する確認を行わせ、その結果の記録を作成させ、これを保管させなければならない。


12.バリデーション及びベリフィケーション

12.1 
治験依頼者は、あらかじめ指定した者に、手順書等に基づき、次に掲げる業務を行わせなければならない。

12.1.1 
製造管理及び品質管理を適切に行うため、開発に伴う段階的な状況、治験の目的、リスク等を考慮し、必要なバリデーション又はベリフィケーションを適切に実施すること。

12.1.2 
バリデーション及びベリフィケーションの結果を治験薬品質部門に対して文書により報告すること。

12.2 
治験依頼者は、あらかじめ指定した者に、12.1.1のバリデーション又はベリフィケーションの結果に基づき、製造管理又は品質管理に関し改善が必要な場合においては、所要の措置を講じるとともに、当該措置の記録を作成させ、これを保管させなければならない。

治験薬の製造において、バリデーションが必要とされた場合、実薬を用いた3ロットの確認が必要か。
開発段階であることから、製造ロット数が少ない場合や製造方法が確立していない場合等においては、通常、当該ロットのみを科学的に確認するベリフィケーションの実施が適切であると考えられる。また、バリデーションの実施が必要な場合においても、製造実態等を踏まえ、その目的が達せられる限りにおいて、必ずしも実薬を含み又は3ロットの確認を繰り返す必要はない。

治験薬のバリデーションの対象項目及びベリフィケーションの対象項目として、どのようなものがあるか。
バリデーションの対象項目としては、例えば、分析法、コンピュータシステム、無菌性保証等が、ベリフィケーションの対象項目としては、例えば、交叉汚染防止のための洗浄、使用する原材料の感染性因子を否定すること等が考えられる。

13.変更の管理

13.1 
治験依頼者は、開発段階であることから変更が頻繁に発生することを意識した上で、治験薬の製造管理及び品質管理に係る変更を行う場合においては、あらかじめ指定した者に、手順書等に基づき、次に掲げる業務を行わせなければならない。

13.1.1 
製造管理及び品質管理に関連する変更の提案を受け、起こり得る品質への影響を小スケールによる実験等、科学的・客観的な手法により評価し、その評価の結果をもとに変更を行うことについて治験薬品質部門の承認を受けるとともに、その記録を作成し、これを保管すること。

13.1.2 
評価した変更を行うときは、必要な文書の改訂を行い、適切な職員の教育訓練、その他所要の措置を講じること。

13.1.3 
変更に伴う一連の文書(資料・記録等)については、治験薬の一貫性・同等性等を裏付ける将来の市販製品との関連を確認する必要が生じた場合のためのトレーサビリティを確保すること。

治験薬の変更管理に際して、品質のほか、安全性や有効性についての評価が必要な場合はあるか。
例えば、製造手順の変更により未知の不純物が発生したような場合、溶媒を変更したことにより残留溶媒や結晶形に懸念が持たれるような場合等には、その品質について変更前後の同等性を評価するだけでなく、必要に応じて安全性や有効性への影響がないことを確認する必要がある。

14.逸脱の管理

14.1 
治験依頼者は、製造手順等からの逸脱(以下単に「逸脱」という)が生じた場合においては、あらかじめ指定した者に、手順書等に基づき、次に掲げる業務を行わせなければならない。

治験薬の逸脱管理は、承認後の医薬品における逸脱管理と違うのか。また、どの程度行えばよいか。
基本的に相違はないが、治験薬は、あくまで開発段階であることから、信頼できる規格や逸脱と判断するための基準が確立されているわけではなく、逸脱が品質に及ぼす影響の評価が困難である場合があると考えられる。したがって、原則として全ての逸脱に対して、その原因究明を行うと共に、それまでに集積した品質情報を基に、逸脱が品質に影響を及ぼす可能性を考慮した上で、可能な限り逸脱に係るロットの品質を評価する必要がある。
なお、こうした逸脱に関する一連の事実については全て文書により記録した上で、関連する安全性試験や臨床試験との関係を明確にすることが重要であり、また、逸脱管理を通じて行われた改善・改良については、適切に設計品質及び製品品質の確立に結び付けることが重要である。

「製造手順等からの逸脱」について、規格内異常値(out of trend)や期待値からの外れ(out of expectation)は逸脱の管理に含まれるのか。
規格内異常値は含まれない。期待値からの外れについては、当該期待値を管理値として設定しているのであれば含まれる。

14.1.1 
逸脱の内容を記録すること。

14.1.2 
重大な逸脱が生じた場合においては、次に掲げる業務を行うこと。

重大な逸脱とはなにか。
一義的には、品質に大きな影響を及ぼす事項と考えられるが、単に品質に対する影響のみならず、規制遵守の観点からの逸脱もあり得ることから、事前に治験依頼者として重大な逸脱に関する基準を作成し、それに鑑みて対応する必要がある。

14.1.2.1 
逸脱による治験薬の品質への影響を評価し、所要の措置を講じること。

14.1.2.2 
14.1.2.1に規定する評価の結果及び措置について記録を作成し、保管するとともに、治験薬品質部門に対して文書により報告すること。

14.1.2.3 
14.1.2.2の規定により報告された評価の結果及び措置について、治験薬品質部門の確認を受けること。

14.2 
治験依頼者は、治験薬品質部門に、手順書等に基づき、14.1.2.3により確認した記録を作成させ、保管させること。


15.品質等に関する情報及び品質不良等の処理

15.1 
治験依頼者は、治験薬に係る品質等に関する情報(以下「品質情報」という)を得たときは、その品質情報に係る事項が当該治験薬製造施設に起因するものでないことが明らかな場合を除き、あらかじめ指定した者に、手順書等に基づき、次に掲げる業務を行わせなければならない。

「治験薬に係る品質等に関する情報」とあるが、治験薬の品質不良以外にどのような品質に関する情報が想定されるか。
基本的には医薬品GMPにおける考え方と同じである。例えば、臨床試験実施施設、原料供給業者、製造委託先、外部試験検査機関などから入手した品質に係る情報、場合によっては品質に影響を及ぼすことが懸念される有効性や安全性に係る情報も含まれる。

15.1.1 
当該品質情報に係る事項の原因を究明し、製造管理又は品質管理に関し改善が必要な場合には、所要の措置を講じること。

15.1.2 
当該品質情報の内容、原因究明の結果及び改善措置を記載した記録を作成し、保管するとともに、治験薬品質部門に対して文書により速やかに報告すること。

15.1.3 
15.1.2の報告により、治験薬品質部門の確認を受けること。

15.2 
治験依頼者は、15.1.3の確認により品質不良又はそのおそれが判明した場合には、治験薬品質部門のあらかじめ指定した者に、速やかに、危害発生防止等のための回収等の所要の措置を決定させ、関係する部門に指示させること。


16.回収処理

16.1 
治験依頼者は、治験薬の品質等に関する理由により回収を行うときは、その回収に至った理由が当該治験薬製造施設に起因するものでないことが明らかな場合を除き、あらかじめ指定した者に、手順に関する文書に基づき、次に掲げる業務を行わせなければならない。

16.1.1 
回収に至った原因を究明し、製造管理又は品質管理に関し改善が必要な場合には、所要の措置を講じること。

16.1.2 
回収した治験薬を区分して一定期間保管した後、適切に処理すること。

「回収した治験薬を区分して一定期間保管した後、適切に処理すること」とあるが、ここでいう「一定期間保管」とは、回収の記録と同様に、承認を受ける日までの保管を意味しているのか。
回収した治験薬が治験の成績に影響を及ぼさないことが明らかな場合を除き、回収処理記録と同一の期間、保管することである。

16.1.3 回収の内容、原因究明の結果及び改善措置を記載した回収処理記録を作成し、保管するとともに、治験薬品質部門に対して文書により報告すること。


17.自己点検

17.1 
治験依頼者は、あらかじめ指定した者に、手順書等に基づき、次に掲げる業務を行わせなければならない。

17.1.1 
当該治験薬製造施設における治験薬の製造管理及び品質管理について適切な自己点検を行うこと。

「適切な自己点検を行うこと」とあるが、ここで言う「適切な」とはどういった内容を意味するのか。
治験薬の製造は、安全性試験や臨床試験に連動して行われるものである。このため、自己点検については開発の進捗等に連動した計画をあらかじめ策定し、実施すると共に、開発状況の変更に応じ、必要が生じた場合には適切に実施すること。

治験薬の自己点検としては、どのようなことを行えばよいか。
例えば、製造ロット毎の原料から最終品までの製造及び試験検査に関する計画書/報告書・記録等の照査、設備・機器・環境等の計画書/報告書・記録等の照査などが挙げられる。なお、形式的な点検にならないよう、実効性のある自己点検を行うことが重要である。

17.1.2 
自己点検の結果を治験薬品質部門に対して文書により報告すること。

17.1.3 
自己点検の結果の記録を作成し、これを保管すること。

17.2 
治験依頼者は、17.1.1の自己点検の結果に基づき、製造管理又は品質管理に関し改善が必要な場合においては、所要の措置を講じるとともに、当該措置の記録を作成し、これを保管すること。


18.教育訓練

18.1 
治験依頼者は、あらかじめ指定した者に、手順書等に基づき、次に掲げる業務を行わせなければならない。

18.1.1 
治験薬の製造管理及び品質管理に係る業務に従事する職員に対して、製造管理及び品質管理に関する必要な教育訓練を計画的に実施すること。

「計画的に実施すること」とあるが、ここで言う「計画的に」とは“定期的に”という意味か。
治験薬の製造は、医薬品の製造と異なり必ずしも定型的作業ではないことから、定期的な教育訓練だけで十分とは言い難い。ここで言う「計画的に」とは、例えば、あらかじめ体系的に構築された教育訓練を、作業開始前や製造工程の変更時等に適時適切に行うことと理解されたい。なお、治験薬GMPに関する一般的な教育等については、認識の徹底や共有化の意味合いもあることから、一定程度定期的に実施することが望ましい。

18.1.2 
教育訓練の実施状況を治験薬品質部門に対して文書により報告すること。

18.1.3 
教育訓練の実施の記録を作成し、これを保管すること。


19.文書及び記録の管理

19.1 
治験依頼者は、この基準に規定する文書及び記録について、あらかじめ指定した者に、手順書等に基づき、次に掲げる事項を行わせなければならない。

19.1.1 
文書を作成し、又は改訂する場合においては、手順書等に基づき、治験薬品質部門の承認を受けるとともに、配付、保管等を行うこと。

19.1.2 
手順書等を作成し、又は改訂するときは、当該手順書等にその日付を記載するとともに、それ以前の改訂に係る履歴を保管すること。

19.1.3 
この基準に規定する文書及び記録を、被験薬に係る医薬品についての製造販売承認を受ける日(GCP省令第24条第3項の規定により通知したときは、通知した日後三年を経過した日)又は治験の中止若しくは終了の後三年を経過した日のうちいずれか遅い日までの期間保管すること。

8.において、治験薬製造施設ごとに手順書等を作成し、これを保管しなければならないこととされているが、複数の製造施設(例えば治験用原薬と治験薬(製剤)の製造施設)を自社で有し、基本的な部分の手順の内容が社内で共通化されている場合(例えば、バリデーションの考え方、回収処理の手順等)、当該手順を各々の製造施設で作成するのは合理的でないと思われる。そのような手順については、いずれかの製造施設で手順書等を作成、保管し、他方の製造施設には手順書等の写しを配布して保管することで差し支えないか。
写しを使用することは差し支えないが、必ず治験薬製造施設ごとに手順書等を承認し、その記録を保管することが必要である。

生物由来製品であることが見込まれる治験薬に関する製造及び品質に関する記録は、医薬品GMPにおける生物由来医薬品等の規定に合わせて、相応の保存期間を設定してもよいか。
19.1.3は最低保管すべき期間を示したものである。生物由来製品であることが見込まれる治験薬については、生物由来製品に係る薬事法の規定を踏まえ、適切な期間保管されたい。

20.委託製造

20.1
治験依頼者は、治験薬の製造工程の全部又は一部を治験薬受託製造者の治験薬製造施設で行わせる場合、当該治験薬受託製造者と、当該製造工程における製造管理及び品質管理の適切な実施を確保するため、次に掲げる事項を取り決めなければならない。

20.1.1 
当該委託の範囲

20.1.2 
当該委託製造に関する技術的条件

20.1.3 
治験薬受託製造者の治験薬製造施設において当該委託製造が適切に行われていることの治験依頼者による適切な確認

20.1.4 
治験依頼者が当該委託製造に関し行い得る治験薬受託製造者に対する指示

20.1.5 
治験依頼者が当該委託製造の製造管理又は品質管理に関し改善の必要を認め、所要の措置を講じるよう20.1.4の指示を行った場合における当該措置の実施状況の確認

20.1.6 
運搬及び受け渡し時における品質管理の方法

20.1.7 
文書及び記録の保管

20.1.8 
その他当該委託製造の製造管理及び品質管理の適切な実施を確保するために必要な事項

20.2 
治験薬受託製造者には、この基準の2.から19.までを適用する。ただし、2.4を除き、「治験依頼者」を「治験薬受託製造者」と読み替えるものとする。なお、10.1.8及び19.1.3に規定された参考品の保存又は記録の保管に係る業務については除く。

20.3 
治験依頼者及び治験薬受託製造者は、20.1に規定する取決め事項について、治験薬に関する文書、治験薬の衛生管理の手順に関する文書、治験薬の製造管理の手順に関する文書、治験薬の品質管理の手順に関する文書又は手順書に記載しなければならない。ただし、この場合において、これらの文書については、7.及び8.の規定にかかわらず、治験薬受託製造者が自ら行う製造工程に係る事項のみを記載することをもって足りるものとする。

20.4 
治験依頼者が行う20.1.4に規定する指示は、文書により行わなければならない。

20.5 
治験薬受託製造者は、治験薬受託製造者の治験薬品質部門が当該委託製造に係る製造管理及び品質管理の結果を適正に評価して出荷した旨を治験依頼者に対して文書により報告しなければならない。

20.6 
治験依頼者は、あらかじめ指定した者に、次に掲げる業務を行わせなければならない。

20.6.1 
20.1.3及び20.1.5に規定する確認を行うこと。

20.6.2 
20.6.1の確認の結果の記録を作成し、治験依頼者の治験薬品質部門に対して文書により報告すること。

治験原薬製造業者は、自らが治験依頼者とならない場合には、受託製造者に該当すると考えてよいか。
貴見のとおり。なお、治験原薬製造業者が、自らが製造する治験原薬について他社に製剤化させたうえで治験の依頼をする場合には、当該原薬製造業者は治験依頼者となり、製剤化工程が本項でいう委託製造に当たる。

海外で製造された治験薬を用いて日本国内で治験を実施する場合、海外の治験薬製造施設は治験薬受託製造者となるか。
海外の治験薬製造施設も対象に含まれるため、設問のような場合は、海外の治験薬製造施設も治験薬受託製造者に含まれる。なお、海外の治験薬製造施設が我が国の治験薬GMPに準拠しているかどうかは、自らの責任において、実地又は記録や文書等の書面により確認する必要がある。

ポジトロン放出核種放射性標識体を治験実施機関に委託して製造する場合においても、治験薬GMP2.~19.が適用されるのか。特に、5.で規定している治験薬製造部門及び治験薬品質部門の二部門の設置は必須なのか。
半減期の極めて短いポジトロン放出核種放射性標識体を治験実施機関に委託して製造する場合も、可能な限り、治験薬GMP2.~19.を適用することとなる。なお、本Q&Aの質問21及びその回答にも示したように、自社内製造か外部委託製造かに関わらず、部門の形態については、その特殊性を考慮して柔軟に運用して差し支えない。

21.治験薬の製造施設の構造設備

21.1
治験依頼者及び治験薬受託製造者は、GMP省令及び「薬局等構造設備規則」(昭和36年厚生省令第2号)を参考に、当該治験薬の物性・特性に基づき、科学的観点から、適切に対応すること。

21.2
治験依頼者及び治験薬受託製造者は、治験薬の製造施設の構造設備について、他の法規制が係る場合(例えば、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97号)、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和32年法律第167号)など)においては、それらの法規制を遵守した上で、本基準の適切な運用を図ること。

21.3
開発段階の特殊な状況下において使用されるもの(例えば、開発の早期の段階における、特殊な構造設備や機器の使用、使い捨ての機器や器具の使用)については、必ずしも21.1及び21.2に参考として掲げた医薬品の構造設備の要件を求めるものではなく、それらの機能が効果的に発揮され、当該治験薬の品質が適切に確保されていることをベリフィケーション等により保証すること。

医薬品製造業の許可施設で治験薬を製造しても差し支えないとのことだが、この場合、医薬品の製造設備を用いて治験薬を製造してもよいか。
差し支えない。なお、治験薬は、開発段階によっては、その毒性、薬理作用、感作性等について十分な知見が得られていない場合が想定されるため、他の医薬品への交叉汚染防止等9.2に定める治験薬特有の必要事項に係る措置を講じること。
治験薬を、他社の製造施設を借りて自ら製造することは認められるか。
差し支えない。ただし、製造期間中の製造施設の管理を含め、治験薬GMPの各項目への遵守については、治験依頼者の責任の下適切に実施できる体制をとるとともに、他の医薬品等への交叉汚染防止等9.2に定める治験薬特有の必要事項に係る措置を講じること。

医薬品の製造輸入販売のためのGMP適合性調査資料

GMP適合性調査とは

GMP適合性調査とは、PMDAが医薬品を製造する国内外の製造所に対して、その製造設備や製造管理手法がGMP(Good Manufacturing Practice;医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理に関する基準)に適合し、適切な品質のものが製造される体制であるかどうかを実地や書面で調査することをいう。


GMP適合性調査の対象施設

GMP適合性調査の対象施設は次の3つに分類されている。

  • ①製造所(②以外)
  • ②保管製造所
  • ③外部試験検査機関

①製造所

製造所」とは、原薬中間体製造、原薬製造、原薬の粉砕、原薬の小分、製剤製造、錠剤のコーティング、製剤の一次包装(PTP 包装、ボトル充填等)、製剤の二次包装・表示、注射剤のキット製品の組み立て、WCB(ワーキングセルバンク)の維持管理などの工程及びそれに関連する試験を行う施設を指す。

②保管製造所

保管製造所」とは、製品の「保管工程」又は「保管工程及び試験」のみを行う施設を指す。

③外部試験検査機関

「外部試験検査機関」とは、承認書において「外部試験機関」として記載されている施設を指す。


適合性調査申請に必要な提出資料

申請者は、調査対象の施設が該当する施設分類を踏まえ、下表に示された資料を提出しなければならない。なお、複数の施設分類に該当する場合は、該当する全ての施設分類で求められる資料を提出することになる。

(1) MRA 対象国当局による MRA 対象品目に係る GMP 適合性証明書、EudraGMDP データベースに登録された証明内容の写し、その他当該証明内容を参照するための Certificate Numberが分かる資料、MOU 交換国当局による GMP 適合性証明書を添付することができる場合
引用:000249542.pdf (pmda.go.jp)

MRAとは、相互承認協定Mutual Recognition Agreement)のことで、政府-政府間は、適合性評価などの認定結果を複数の国が互いに承認しあう取り決めを指している。

調査・証明業務を行う機関を協定締結国間で相互に認定すると、海外機関が行った証明・認証が国内でも法的効力を発揮したり、逆に、国内機関が行った証明・認証が国外で法的効力を発揮するなどの効力があるので、業務を大幅に簡略化できるというメリットがある。品質管理MRAはその代表的なものの一つである。

(2) (1)に該当しない場合
引用:000249542.pdf (pmda.go.jp)

あとがき

初稿は、当局から発行されている資料をコピペするだけに終わってしまったが、次のアップデートには理解しやすいよう具体的事例を加えてみたいと思っている。


【参考資料】
治験薬の製造管理、品質管理等に関する基準(治験薬GMP)について(◆平成20年07月09日薬食発第709002号)
治験薬の製造管理、品質管理等に関する基準(治験薬GMP)に関するQ&Aについて(◆平成21年07月02日事務連絡)
治験薬GMPの概要(mhlw.go.jp)
医薬品 GMP・新旧治験薬 GMP 対比表.pdf (jbpma.gr.jp)
原薬GMPのガイドラインについて.pdf (pmda.go.jp)
PIC/S GMP ガイドラインannex13.pdf (kagawa.lg.jp)
医薬品の製造・管理方法を定めたGMP基準 (cro-japan.com)