はじめに
肥満は、体に必要以上の脂肪が蓄積されている状態を指す用語である。BMI値(=体重 [kg] / 身長 [m]2)が25以上の場合が該当する。しかし、肥満自体は疾病に該当するわけではない。
ところが、肥満に伴い糖尿病や脂肪肝、あるいは高血圧などの病気が発症している場合は、「肥満症」という疾病に該当する。
一方、メタボリックシンドローム(一般には「メタボ」と呼ばれることが多い)は、内臓肥満(内臓脂肪過多)に加え、高血圧、脂質異常症、高血糖のうち2つ以上に該当している状態を指す。
だからBMI値が25未満でも、腹囲が大きく内臓脂肪型肥満である場合には、メタボの可能性がある。ただし、「メタボ=病気」ではなく、「病気の予備軍」いう取り扱いである。
どのような「病気の予備軍」かというと、下記のような健康上のリスクを増大させると言われている。
- 2型糖尿病のリスク
- メタボになると、2型糖尿病の発症リスクが約3倍に増大
- 心血管疾患のリスク
- 心血管疾患を発症し、死亡するリスクが約3倍に増大
- その他の疾患のリスク
- 非アルコール性脂肪肝
- 高尿酸血症
- 腎臓病
- 睡眠時無呼吸症候群
このような健康上のリスクを目にすると、メタボは避けるべきであることがよく理解できる。
メタボリックシンドロームとは
メタボリックシンドロームは、肥満に加えて、糖尿病、高血圧、脂質異常症のうちいずれか2つ以上を発症している状態を指す。
メタボリックシンドローム自体に特有の症状はないが、それに伴う動脈硬化による脳梗塞や心筋梗塞などのリスクが高まるので要注意の病態と言える。
原因
メタボリックシンドロームの主な原因は、食べ過ぎや運動不足などの生活習慣の乱れが原因となっていることが多い。
症状
メタボリックシンドローム自体には特有の症状はない。しかしながら、それに伴う動脈硬化による脳梗塞や心筋梗塞などのリスクが高まる。
検査・診断
メタボリックシンドロームの検査は、腹囲と血圧の計測と、血液検査である。
そして診断基準は、腹囲が基準値(男性は85cm以上、女性は90cm以上)を超えていることに加えて、血圧、血糖、脂質の三つのうち二つ以上が基準値を外れていることである。
- 血圧:
最高血圧(収縮期血圧)が130mmHg以上、または
最低血圧(拡張期血圧)が85mmHg以上 - 血糖:
空腹時血糖が110mg/dL以上 - 脂質:
中性脂肪が150mg/dL以上、または
HDLコレステロールが40mg/dL未満
治療
メタボリックシンドロームの治療は、主に生活習慣の改善により行われる。具体的には、次の5つのポイントに焦点を当てられている。
- 運動習慣の徹底
- 適度な運動
- 体重の管理
- 血圧、血糖、脂質の管理
- 有酸素運動
- ウォーキング
- ストレッチ
- 水泳
- ジョギング
- サイクリング
- 適度な運動
- 食生活の改善
- バランスの良い食事を摂る
- 1日3食のバランスのよい食事
- 体重の管理
- 血圧、血糖、脂質の管理
- 食べ過ぎや間食を控える
- バランスの良い食事を摂る
- 禁煙
- 減量
- 食事の見直し
- 食事の量を減らす
- 低糖質・高タンパク質の食事を摂る
- バランスの良い食事を摂る
- 食べ過ぎや間食を控える
- 適度な運動
- 有酸素運動
- カロリー計算
- 1日の摂取カロリーに基づくに食事や運動の計画
- 持続可能なライフスタイルの確立
- 短期間で大幅に摂取エネルギー量を減らすのは危険
- 健康的なダイエット(1ヵ月で体重の5%以内)
- 食事の見直し
- 薬物療法
- 食事療法・運動療法で改善が見られない場合
- BMI値が35以上の場合
- 治療薬:
- サノレックス(抗肥満薬)
- 漢方薬
- 防風通聖散【ボウフウツウショウサン】
- 防己黄耆湯【ボウイオウギトウ】
予防
メタボリックシンドロームの予防には、週2日以上の30分程度の運動や生活の中で身体活動を増やすことが有効である。
メタボリックシンドロームの予防には次のような3つのポイントがある。
- 食生活の見直し
- バランスの良い食事
- 1日3食をきちんと食べる
- よく噛んで食べる
- 就寝前2時間以内には食べない
- 運動習慣を身につける
- 有酸素運動(ウォーキングなど)
- しっかり睡眠時間をとる
- 寝不足を避ける
- 十分な睡眠時間を確保する
- ストレスの管理
- 自分に合った適切な方法でストレスを解消
あとがき
ストレスは、メタボリックシンドローム(メタボ)にも関与しているという。ストレスによる交感神経系の活性化は、血糖値やインスリン抵抗性に影響を与え、メタボのリスクを高めるらしい。
ストレスによる交感神経系の活性化により、肝臓でのグルコース産生が増加し、血糖値が上昇し、インスリン抵抗性が増加することが明らかになっている。つまり、ストレスは血糖値やインスリン抵抗性に影響している。
ストレスは脂質代謝にも影響を与え、脂肪組織から遊離脂肪酸が放出されやすくなる。これにより、血中のトリグリセリド濃度が上昇し、メタボのリスクが高まるとされている。
ストレスは食欲やエネルギー代謝にも影響を与えるようだ。ストレスによる交感神経系の活性化により、脳内のホルモンや神経伝達物質が変化し、食欲が増加し、エネルギー代謝が低下する。その結果として、メタボのリスクが高まるとされている。
以上のことから、ストレスを適切に管理し、ストレスを解消することがメタボの予防や改善にもつながると考えられる。