はじめに
日本での不安障害の患者数は、有病率として約1.2%と言われている。一方で、新型コロナ禍以前(パンデミック前)の不安障害の患者数は人口10万人当たり3,824.9人であったのに対し、新型コロナ禍以後(パンデミック後)には4,802.4人に上昇したという調査報告もある。現代社会は、ストレス社会であり、不安障害に悩む患者の数は確実に増加傾向にあるのかも知れない。それに拍車をかけたのが、新型コロナ禍であると言えよう。
不安障害とは
不安障害とは、精神的な不安から、心と体に様々な不快な変化が起きるもので、日常生活に影響が出ていたら、それは不安障害かも知れない。
特定の対象や状況に対する不安や恐怖が過度に心を占めて精神的に苦しみ、不安や恐怖を感じる状況を避けようとする回避行動により日常生活に支障が出ている状態を指す。不安障害は、近年では「不安症」と呼ぶことが推奨されているという。
不安障害は、パニック障害、全般性不安障害、社交不安障害など、さまざまなものが含んだ不安症の総称である。
原因
不安障害の原因は、まだ解明されていない。しかしながら、精神的な気質、環境的なストレス、不安障害の家族歴や脳機能異常など複数の因子が複雑に影響しあい、不安障害が発症するのではないかと考えられている。
尚、環境的なストレスとは、人間関係の破綻、生命を脅かすような体験などを指している。
症状
不安障害の症状としては、強い不安、イライラ感、恐怖感、緊張感が現れるほか、発汗、動悸、頻脈、胸痛、頭痛、下痢などといった身体症状として現れることがある。また、落ち着きのなさ、緊張感、神経の高ぶり、疲れやすさ、集中力の低下、怒りっぽさ、筋肉の緊張、睡眠障害なども挙げられている。
不安障害の症状は、基本的に払拭【ふっしょく】しきることができない過剰な不安を感じることであり、不安が持続すること、さらに自分が不安と思う対象や状況を回避してしまうことから、仕事に対してのパフォーマンスや学業、人間関係などに支障が生じることである。
検査・診断
不安障害は、不安を生じる状況や症状の出現様式に関連した詳細な情報を得ることで診断を行う。不安障害の診断に際して心理検査を行うこともある。
不安障害の診断は、9項目の質問(心理検査)に対して、0~3の4段階で点数をつけて、27点満点のうち8点以上であれば不安障害が疑われるとされる。
治療
不安障害の治療は、根本的に不安障害をなくすというわけではなく、日常に支障をきたす苦悩となるような症状を緩和して日常生活を送れるようにすることを目標としている。
不安障害の治療には、薬物療法と精神療法(行動療法など)があり、通常はこれらを併用した治療を行う。これらの治療を行うことで、大半の患者で苦痛と日常生活の支障がかなり軽減される。
精神療法の一種である認知行動療法とは、不安を感じる状況において、それまでとは異なった捉え方・考え方をし、行動を修正するように方向付ける方法である。
尚、薬物療法では抗うつ薬、抗不安薬や睡眠薬が用いられる。
予防
不安障害の予防策としては、下記のような方法が知られている。
- 適切な食事療法で体質を改善する
- 日光浴をする
- 適度な運動をする
- 誰かに話をして心を楽にする
- 物事の捉え方を変える
- 深呼吸する
- 早寝早起きを心掛け、バランスの良い食事を摂る
- リラックスする方法を見つけ、ストレスを溜め込まない
- 十分な睡眠時間(7~8時間)を確保する
- ウォーキング等の軽い運動を1日30分前後行う
- 暴飲暴食しない
- アルコールやコーヒーを過剰摂取しない.
あとがき
不安障害は、生活習慣病ではないが、ストレスや休養不足などの生活習慣が不安障害の発症や症状の悪化に影響を与えることはある。また、不安障害は糖尿病などの生活習慣病と共存することがあり、その管理に影響を与えることもある。
したがって、生活習慣の改善は不安障害の管理にも有効であるかも知れない。