はじめに
いくつかの研究によって円形脱毛症とストレスの関係が指摘されている。ストレスが長期化すると、自律神経のバランスが乱れ、血行が悪くなると、髪の毛に必要な栄養が適切に供給されず、抜け毛の原因になるとされる。
また、ストレスは免疫系に影響を及ぼし、免疫異常を引き起こす可能性がある。円形脱毛症は自己免疫疾患の一つと考えられており、免疫系が正常な毛根を攻撃してしまう可能性が指摘されている。
さらに、円形脱毛症は再発することが多く、ストレスが長期化すると、症状がさらに悪化する可能性もある。一方で、ストレスが軽減されると症状の改善が見られることもある。このようにストレスが円形脱毛症の一因となる可能性を示しているのは確かなようだ。
しかしながら、ストレスが円形脱毛症の直接的な原因であるとは断言できないという。その理由は、円形脱毛症の原因は複数あり、ストレスはその一部であると考えられているからである。
円形脱毛症とは
円形脱毛症は、コインのように円い脱毛した部位が現れる病気である。通常は脱毛箇所は1箇所から2箇所で、自然治癒することが多いが、時に複数箇所が脱毛することもある。
原因
円形脱毛症の原因は、頭髪の産生に関わる「毛包」と呼ばれる部位がリンパ球という血液中の細胞の一種に攻撃されるためと考えられている。
しかしながら、どのようなメカニズムでリンパ球が毛包を攻撃するのかについては明確に解明されていない部分もあるという。
症状
円形脱毛症の症状は、不規則な丸い斑状の脱毛が突然起こることである。脱毛部分の縁周辺の毛は短く、折れた状態が特徴的で、びっくりマークに似ているという。
初期症状としては何の兆候もなく突然脱毛(抜け毛)が始まったり、頭部に地肌が見えるところが目立つようになるようだ。また、ごくまれではあるが、毛が抜ける前にかゆみやむくみ、赤い湿疹ができる場合もあるという。
検査・診断
円形脱毛症の診断は、医師による視診で行われる。特徴的な脱毛パターンや症状から診断が下されるようだ。
治療
円形脱毛症の治療法には下記のようなさまざまな方法が知られている。
- ステロイド療法
- 局所免疫療法
- 抗ヒスタミン薬の内服療法
- セファランチン内服療法
- グリチルリチン・グリシン・メチオニン配合錠の内服療法
- カルプロニウム塩化物の外用療法
- ミノキシジル外用療法
- 冷却療法
- 紫外線療法
- 直線偏光近赤外線照射療法
それぞれの治療法には特徴や副作用があるので、医師の指導下で自分に適したものを選択してもらうことである。また、保険適用の有無もあるので、経済的な面からも相談すると良い。
予防
円形脱毛症の予防策としては下記のような方法が知られている。
- ストレスを溜め込まない
- 別の疾患に罹患している場合は、その治療を受ける
- 専門医に相談する
- 生活習慣の改善
- 食生活で髪の毛を作る栄養を摂る
- 運動をすることで全身の血流を良くする
- 頭皮まで十分な酸素と栄養が送られるようになる
- しっかりと睡眠をとる
- 睡眠中に髪の毛を作るタンパク質の結合と毛母細胞が活性化される
あとがき
円形脱毛症の国内患者数は約200万人と推定されているようだ。つまり約60人に1人が発症していることになる。率直に言って、かなり高い有病率と言えるのではないかと思う。
さらにその患者数は新型コロナ禍の影響で増加傾向にあると言われている。新型コロナウイルス感染の後遺症として発症する人も増えているらしい。
円形脱毛症の発症メカニズムは、自己免疫であることが判明しつつある。本来、私たちの体を守るはずの免疫が、誤って自分の体を攻撃しているのだという。免疫細胞が頭部の毛根にある細胞を攻撃し、ダメージを受けた毛根の毛髪が抜けてしまう。
また、免疫機構はストレスとの関連性も大きいため、ストレスが引き金となって発症することは容易に理解できる。現代社会は、ストレス社会でもあるため、私たちシニア世代よりも現役世代の方が円形脱毛症に悩んでいる人が多いに違いない。