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肺NTM症とは結核菌でない抗酸菌による肺の感染症!

はじめに

肺NTM症と聞いてピンとこない方も多いかも知れない。実は、恥ずかしながら、私もつい最近までよく知らなかった。

肺NTM症(非結核性抗酸菌症)は、結核とは異なる抗酸菌が肺に感染することで起きる病気である。抗酸菌は環境中に広く存在し、感染の多くは肺を通じて吸入される。この結核とは異なる抗酸菌による肺の感染症は、近年患者数が増加しており、臨床の現場では注目されている疾患であるという。

目次
はじめに
肺NTM症とは
原因
症状
検査・診断
治療
予防
あとがき

肺NTM症とは

NTMとは非結核性抗酸菌Non-Tuberculous Mycobacteria)の略号である。名前の通り、結核菌ではない抗酸菌のグループで、現在200種類以上が確認されているという。

この細菌たちは、水や土壌など自然界に普通に存在しており、私たちは知らないうちに吸い込んでしまうこともある。人から人へと感染しないのが結核との大きな違いである!

肺NTM症(肺非結核性抗酸菌症)とは、結核菌以外の環境中に広く分布している抗酸菌(NTM)が原因で、肺に感染・定着することで発症する慢性疾患のことである。


原因

NTMは、水や土壌、エアロゾル(微小な飛沫)中に自然に存在しており、通常の生活環境で吸引することで肺に侵入する。

主に環境中の水や土壌、動物との接触などが感染源となり得る。また、免疫機能が弱っている場合に発症リスクが高まるとされている。

肺NTM症の約90%は、次の2つの細菌によって引き起こされるらしい。

  • マイコバクテリウム・アビウム
  • マイコバクテリウム・イントラセルラー

これらの細菌は、総称としてMycobacterium Avium Complex;MACと呼ばれることがある。MACに次いで多いのがマイコバクテリウム・カンサシー(Mycobacterium kansasii )と呼ばれる抗酸菌であるという。


症状

肺NTM症は、進行がゆっくりで、初期には無症状のこともあるらしい。

  • 呼吸器症状
    • 持続性の咳や痰の産生(長引く咳や痰)
    • 時には血痰
  • 全身症状
    • 長期間にわたる微熱や倦怠感
    • 体重減少
    • 夜間の発汗など
  • 進行した場合
    • 肺の炎症や構造変化
    • 呼吸困難や胸部の不快感

検査・診断

早期発見は難しく、健康診断で偶然見つかることもあるという。

  • 喀痰検査:菌の検出
  • 胸部CT:肺の影響を確認
  • 気管支鏡:直接観察

診断は複数の要素を総合して行う。以下の点が重視される。

  • 臨床評価
    • 患者さんの症状の経過、既往歴、リスク因子の確認
  • 画像診断(胸部CT検査など)
    • 胸部X線やCTスキャンで、肺結節、気管支拡張、空洞病変など、NTM感染に特徴的な所見を確認
  • 微生物学的検査(喀痰培養検査)
    • 喀痰検査による抗酸菌の培養、PCR検査などでNTMが同定されるかを確認

単回の陽性検査だけではなく、複数回の検査結果と臨床症状・画像所見を総合して、真の感染症かどうかを評価する。


治療

治療は、複数の抗菌薬を長期間服用する必要があり、完治は難しいけれど進行を抑えることは可能です[1][4]。

治療は長期的で、3種類以上の抗菌薬を用いることが一般的である。つまり、治療には複数の抗菌薬を長期間服用しなければならない。完治は難しいが、進行を抑えることは可能である。

多剤併用療法

一般にはマクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシンやアジスロマイシン)を中心に、リファンピシンやエタンブトールなど数種類の薬剤を併用し、長期(通常は菌学的陰性が確認されるまで、概ね12か月以上)に渡る治療が行われる。

場合により外科的治療

重度の場合は外科的治療が必要となることもある。局所的な病変が明確で、薬物治療のみでは改善が見込めない場合は、外科的切除が検討されることもある。

管理とフォローアップ

治療中は定期的に画像検査や喀痰培養を実施し、治療効果・副作用の管理が必要である。


予防

肺NTM症は、人から人へは感染しないので、社会生活に制限はない。しかしながら、浴室土いじりなどで菌を吸い込む可能性があるので注意が必要である。

発症リスクが高まるリスク因子としては以下のようなものが知られている。

  • 既往の肺疾患(例:気管支拡張症、慢性閉塞性肺疾患など)
  • 免疫機能が低下している場合(高齢者、免疫抑制状態の人)

したがって、肺疾患がある人免疫力が低下している人はNTMが定着しやすく、発症リスクが高まるために、特に気をつける必要がある。

完全な予防は難しいものの、感染リスクの低減に繋がる予防対策としては次のような方法が推奨されている。

  • 生活習慣の管理
    • 感受性の高い人(基礎疾患がある人や免疫機能が低下している人)は、禁煙、適度な運動、栄養管理など、全体的な健康状態の維持が推奨される
  • 環境管理
    • 公共施設(温泉、プールなど)の水質管理
    • 家庭内での適切な換気
    • 定期的な清掃(清潔な環境の維持)
  • 早期診断と管理
    • 既存の肺疾患を持っている方は、定期的な検診
    • 早期にNTM感染を捉え、適切な対処をすることが重要!

あとがき

肺NTM症は、環境中に広く存在する抗酸菌による感染症であるため、完全な予防は難しい。しかし、リスクファクターの管理と早期発見、適切な治療によって進行を抑えることが可能である。

肺NTM症は、静かに進行するけれど、早期発見と治療で波を穏やかにできる病気であると言えよう。気になる症状があれば、呼吸器内科で相談することから始めよう。


【参考資料】

肺NTM症とは?症状・診断・肺MAC症との違い・最新治療・予防法を徹底解説 | からだマガジン
肺非結核性抗酸菌症 – A. 感染性呼吸器疾患|一般社団法人日本呼吸器学会
非結核性抗酸菌症(NTM感染症) – 基礎知識(症状・原因・治療など) | MEDLEY(メドレー)
川崎医科大学附属病院|メディカルインフォメーション|肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)とは
肺非結核性抗酸菌症 | KOMPAS – 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト