はじめに
小児用製剤の剤形としてミニタブレットは、従来の液剤や顆粒剤に比べて服用のしやすさや用量調整の柔軟性という点で大きなメリットが認められている。
ミニタブレットは、一度に与える用量をタブレットの数で調整できるため、医薬品ごとに精密な投与量の設定が必要な小児用製剤として非常に有用である。
また、必要に応じて味付けやコーティング技術を施すことで、苦味などの不快な味をマスキングすれば、小さな子供でも抵抗なく服用できるようになる。
このように小児用製剤としてミニタブレットは、その服用の容易性、正確な用量調整、苦味マスキングなどの製剤学的工夫が実現されており、今後さらなる展開が期待されている。
さらに、ミニタブレットは高齢者用製剤としても応用が進んでおり、服用困難な患者のQOL向上にも貢献する可能性があるため、今後の研究動向や実用化事例にも大いに関心が集まっている。
ミニタブレットの優れた服薬受容性
小児用製剤としてのミニタブレットの有用性は、過去の実証研究から明確に示されている。例えば、直径2~4 mm程度のミニタブレットは、乳幼児や小児でも嚥下しやすく、服薬受容性(飲み込み易さ)が従来の液剤や大きな錠剤と比べても良好であることが報告されている。

月齢6か月〜23か月の乳幼児を含む小児(2歳~8歳)を対象にミニタブレット(有効成分を含まないプラセボ製剤)を用いて、服薬受容性(飲み込み易さ)や安全性を評価した実証実験の結果では、ミニタブレットは液剤と同等もしくはそれ以上の服薬の容易さが示された事例が報告されている[1]。
特に、6か月以上1歳未満でミニタブレットが細粒分散液やシロップよりも高い服用受容性を示したことは興味深い。その理由は、乳児は歯がないので乳児型嚥下(吸啜運動)によりいつのまにか飲み込んでいるということである[1]。

また、ミニタブレットの服用受容性が年齢で差があることも興味深い[1]。ミニタブレットの服用受容性が最も低くなるのが1歳~3歳の小児である理由の一つは、乳児型嚥下(吸啜運動)は離乳に伴い消失してしまい、口に入ったもの(異物)は嚙み砕こうとする反射運動が嚥下をじゃましているのかも知れない。

ミニタブレットの用量調整の正確さ
ミニタブレットは、正確な用量調整が可能であるという点でも優れている。特に用量の微調整や個別化医療の観点からは、タブレットの個数で投与量を調整できるため、患者ごとの最適な治療が実現しやい。
この用量調整の正確さを品質保証するためには、含量均一性が十分に良好でなければならない。しかしながら、ミニタブレットはその錠剤サイズが小さいことから含量均一性や打錠障害が技術的課題となることがある。
この技術的課題を解決するための一つの対策になるのが、打錠時に使用するツール(杵と臼)の改善であるという。材質や表面処理に工夫を施したミニタブレット用杵臼を開発し、使用したところ、市販杵臼と比べて、打錠時(打錠速度:30 rpm)における重量バラツキの改善に有効であり、打錠障害の発生を防止できることを確認したという[2]。

ミニタブレットの今後の展望
製剤設計の段階において、均一なサイズや溶出速度の調節、苦味マスキング技術などの製剤学的工夫を施せば、服薬アドヒアランスの向上に寄与できる。
世界各国での規制承認も積極的に進展し、ミニタブレットが小児用製剤のみならず嚥下困難な高齢者向け製剤としても普及が期待されている[3]。
今後の研究動向として、実際の臨床現場での服薬アドヒアランス改善効果や、患者のQOL向上に関する長期的なアウトカム評価が進むことにより、ミニタブレットはより多くの治療領域で採用されることが見込まれているという[3]。
あとがき
小児用製剤の剤形としてミニタブレットを採用することは、小児医療における服薬環境の改善に寄与する重要なアプローチであると私は考えている。
従来の液剤では安定性に難があったり、保管や投与量の管理に課題があった薬剤でも、固形製剤であるミニタブレットならばその安定性の問題も克服できる可能性がある。
今後、製薬企業や大学などの研究機関で、ミニタブレットの含量均一性や安全性、さらには製造技術の信頼性の向上が進められれば、医療現場での採用実績が着実に増えていくと期待できる。
Quality by Design(QbD)アプローチでの製剤処方や製造工程の最適化と再現性の向上が進めば、より多くの医薬品で小児用製剤としてミニタブレットの採用が進むと予想する。