はじめに
子どもに薬を飲ませるのって、意外と大変である。自分の子どもが薬を嫌がる、そんな経験は保護者なら一度はあるはずである。
シロップは甘すぎたり、顆粒はむせたり…。味が苦い、錠剤が大きい、飲み込みにくい——小児の服薬にはたくさんのハードルがある。そんな悩みを解決してくれるかもしれない新しい選択肢として、ミニタブレットという新しい剤形が注目されている。
これまで小児用の薬といえば、シロップや顆粒が主流であった。しかしながら、これらの剤形にはそれぞれに課題があった。
- シロップ:
- 甘味料や保存料が必要で、味や保存性に課題あり
- 顆粒
- 量が多く、飲みづらい。むせやすいこともあり
本稿では、シロップや顆粒の代替品として登場してきたミニタブレットの実装化の可能性について取り上げてみたい。
ミニタブレットとは?
ミニタブレット(mini-tablets)とは、直径2〜4mmほどの超小型の錠剤のことである。見た目は小さな粒のようで、粉薬(散剤・顆粒剤)やシロップとは違い、正確な用量が確保できるのが特徴である。
しかも、口に入れても違和感が少なく、飲み込みやすいのが特長とされ、特に嚥下が未熟な小児や、高齢者にも適していると注目されている。飲みやすくて、持ち運びにも便利な点が、ミニタブレットが小児や高齢者向けの剤形として注目される所以である。
小児用製剤としての利点
✅ 飲みやすさ
小さなサイズで喉に引っかかりにくい、つまり嚥下しやすい。しかも、苦味を感じにくいようにする製剤設計も容易である。
水やジュースと一緒に飲めば、服薬ストレスがぐっと少なくなるはずである。
✅用量調整が簡単
1錠あたりの薬効成分量が少ないため、複数錠で細かく用量を調整できるのが大きな利点である。患者の体重や年齢に応じた個別化投与がしやいということである。
✅携帯性と安定性
液体と違って持ち運びやすく、液剤に比べれば保存性も高い。何よりも、持ち運びにも便利なため、外出先でもサッと服薬できるのが嬉しいポイントとなるはずである!
✅ 製剤設計および製造の柔軟性
基本的には錠剤であるため、苦味のマスキングや崩壊性の調整も自在である。苦味などの味のマスキングは、コーティング技術で容易に達成できる。また、打錠技術の進化により、均一性の高い製剤の製造が可能となって来た。
実装化に向けた課題と挑戦
ミニタブレットには多くの利点があるとはいえ、ミニタブレットの製造には高い技術が必要である。例えば、以下のような技術的な課題をクリアしなければならない。
- 含量均一性の確保:
- 錠剤サイズが小さい分、重量バラツキが出やすいので、有効成分のばらつきが出やすくなる
- 製造設備の高度化:
- 専用の打錠機や精密な制御が求められる
現在、国内外の製薬企業や研究機関が連携し、製造技術の確立や臨床評価に取り組んでいる。特に日本では、富山県薬事総合研究開発センター(薬総研)などが中心となって、大学機関や企業で実装化に向けたプロジェクトが進行中であるらしい。
このプロジェクトでは、高機能杵臼の開発や製造条件の検討が行われていることから、実装化(実用化・普及)の可能性は十分にあると考えられる。
高精度のマルチチップ杵臼の開発や専用打錠機の改良によって製造技術が進展し、「含量均一性の確保」という技術的課題が解決すれば、技術な観点からはミニタブレットの実装化は可能だ!
開発状況と課題
ミニタブレットは、欧米ではすでに小児用製剤の有力な選択肢として普及しているという。特に、欧州では小児用医薬品の開発が法制化されており、成人用医薬品の開発時に小児用の検討も義務付けられている。これにより、ミニタブレットのような年齢に応じた剤形の開発が加速し、実際に多くの製薬企業が小児向けにミニタブレットを導入している。
日本ではまだ普及途上であるが、製薬企業や研究機関が積極的に開発を進めている。特に、小児適応加算(小児加算の拡充;薬価制度改革)やPMDAの支援などの制度的支援が後押しとなり、製剤技術や包装設計の革新が進行中であるので期待できそうだ。ただし、課題も残っている:
- 臨床試験の負担が大きい
- 小児用製剤市場の規模が限られている
- 保護者や医療従事者への認知がまだ低い
これらを乗り越えるには、教育・啓発活動や国際的な事例の共有がカギになりそうである。
服薬アドヒアランス向上効果
欧米の研究グループは、ミニタブレット(直径2〜4mm)の受容性に関する臨床試験を実施し、液剤や細粒よりも高い服用性と受容性を示す結果を報告している。特に、2歳以上の小児においては、ミニタブレットの方が飲みやすいと感じるケースが多く、服薬アドヒアランスの向上にもつながると結論づけている。
ミニタブレットの「服薬アドヒアランス向上効果」については、富山県のアンケート調査結果(令和2年・薬総研調べ)で、小児で83%、高齢者で91%が「有用」と回答したとの報告がある。この調査は、富山県内の病院薬剤師を対象に行われたもので、実際の調剤現場での評価に基づいている点が大いに評価できる。顆粒剤やシロップと比べても、飲みやすさや用量調整のしやすさが高く評価されていて、患者さんの服薬意欲にも良い影響を与えていることが分かって良い。ミニタブレットの開発を後押しする結果となっているのは嬉しい!
未来のスタンダードになるかも?
ミニタブレットは単なる「小さい錠剤」ではなく、患者中心の医療を実現するためのキーアイテムにきっとなるはずである。
ミニタブレットは、小児だけでなく高齢者や嚥下障害のある方にも有用な剤形となり得る。服薬コンプライアンスの向上や、患者中心の医療に貢献する可能性を秘めている。今後の技術革新と制度整備によって、もっと身近な存在になるかも知れない。
欧米の製薬業界では、複数の有効成分を含むミニタブレットを1つのカプセルに充填する技術も進んでいて、個別化医療(テーラーメイド投与)への応用も進んでいるらしい。これにより、患者ごとに最適な用量を柔軟に調整できるようになっている。
これからの医薬品開発において、「飲みやすさ」や「使いやすさ」がますます重要になる中、ミニタブレットはまさに“未来のスタンダード”になるかもしれないポテンシャルを有する。ミニタブレットに対する私の買いかぶりすぎであろうか・・・