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消化器系疾患 疾病

逆流とは? 原因と症状は?診断・治療法と予防策は?

はじめに

私は、朝、歯磨きをする際によく「吐き気」をもよおす。食後にコーヒーを飲んでいた際は、汚い話だけれど、必ずと言ってよいほど胃からの「逆流」が起きる。

こんな私であるから、人間ドックで胃の内視鏡検査をする際は大変である。恥ずかしながら悲しくもないのに涙を流してしまう(勿論、よだれも。汚いなあ。本当に担当の医師や看護師さんに申し訳ないと思う)。

しかし、「吐き気」と「逆流」の原因は、本来は異なるものであるようだ。「逆流」とは何か。何故、起きるのかについて調べてみたので、関心のある方は、一読してほしい。

目次
はじめに
逆流とは
原因
症状
検査・診断
治療
予防
あとがき

逆流とは

逆流(reflux)とは、吐き気がなく、腹部の筋肉も強く収縮させていないのに、胃や食道から食物や液体が逆方向に流れる現象(吐き戻すこと)を指す用語である。一般的には胃の内容物(食物や液体)が食道に逆流する現象を指す。

この逆流が頻繁に起こると、胃食道逆流症(GERD)という病状を示す疾病である可能性が高まる。

ちなみに、吐き気は、嘔吐【おうと】(胃の内容物を口から吐き出す行為、またはその症状を指す)を引き起こす可能性のある不快な感覚で、通常は胃や脳に関連する問題によって引き起こされる。

嘔吐は、多くの場合、胃の中に異物や刺激物、毒物などが入ったときにそれを吐き出す防御反応として起こる。一般には、過度の飲酒(飲み過ぎ)や摂食(食べ過ぎ)、腐敗・変質した食品の摂取(食中毒)、過度の運動、体調不良などの際にまず脳内の「嘔吐中枢」が刺激され、「吐き気」を催し、それに続いて「嘔吐」するというプロセスがある。

このように「逆流」は、「吐き気」や「嘔吐」とは根本的に異なる現象であることを理解したい。


原因

逆流の原因としては、下記のようなことが指摘されている。

  1. 食道と胃の締まりが悪くなる
  2. 胃に圧がかかる
  3. 胃酸が多く出る
  4. 食道裂孔ヘルニア

食道と胃の締まりが悪くなるとは、食道と胃のつなぎ目の役割を果たしている「下部食道括約筋」という筋肉が緩んでいる可能性を指している。

下部食道括約筋は、食道と胃の境目にある輪状の筋肉であり、正常であれば食物が通過するとき以外は胃の入り口(噴門)を締めて胃の内容物が食道に逆流しないように働いている。しかし、このバルブのような筋肉が緩むと胃から食道への逆流が起こるようになる。

食道は正常では陰圧であるのに対し、胃は陽圧である。逆流を防止するには、下部食道括約筋圧がこの圧較差を上回っていなければならないが、圧較差を強める因子または下部食道括約筋圧を低下させる因子があると、逆流が起こりやすくなる。

暴飲暴食や、肥満でお腹が押されたり、お腹に力を入れたり、前かがみの姿勢などによって、お腹に圧がかかりやすくなる(胃に圧がかかる)と、上向きの力が強くなり、食道への逆流が起こりやすくなる。

アルコール、高タンパク食、高脂肪食、コーヒーなどは胃酸分泌を亢進する(胃酸が多く出る)と言われている。

食道裂孔ヘルニアは、胃の一部が横隔膜の穴を通って食道側にはみ出してしまうことを指す。

胃酸の逆流は、食道、喉頭、および気道を刺激するので、逆流が頻繁に起きるようなことは避けたい。


症状

胃から胃酸が湧き上がってくることにより、酸っぱい味や苦い味がする物質の逆流が起こることがある。

食道の狭窄部や閉塞部から、あるいはツェンカー憩室と呼ばれる食道内にできる異常な袋状の構造物から、粘液や未消化の食べものを含んだ、味のしない液体の逆流が起こることもある。


検査・診断

逆流性食道炎ではない、単なる「逆流」についても検査や診断の方法は存在する。例えば、下記のような一般的な方法である。

  1. 問診
    問診で具体的な症状、症状の程度、症状が出るタイミングなどについて詳しく聞き取りをし、逆流性食道炎などの胃食道逆流症(GERD)ではないか大まかな判断を行う。
  2. 内視鏡検査
    問診後、内視鏡検査で病態を詳しく調べる。内視鏡検査では、まず食道の粘膜に炎症が起きているかを確認する。
  3. X線検査
    X線検査を行うこともあり、粘膜の不整像、壁の肥厚、びらんなどの有無を確認する。
  4. pHモニタリング
    逆流性食道炎が軽度の場合には、内視鏡検査やX線検査では異常として現れないこともあり、補助的な検査方法として、pHモニタリングがある。これは微小電極を食道内に入れ、24時間の動きを測定する検査である。

これらの検査結果と症状を総合的にみて診断される。逆流で苦しい思いをされている方は、早めに医師に相談した方がよい。単なる「逆流」ではなく、逆流性食道炎など胃食道逆流症(GERD)に進行している場合もあるからである。


治療

逆流の治療法は、その原因や症状の程度によって異なるが、一般的な対策としては、下記のようなものが推奨されている。

  1. 食事
    胃酸を多く分泌させるような食べ物を避け、食事の量を減らし、ゆっくり食べる。
  2. 体重管理
    肥満は胃酸の逆流を引き起こしやすくするので、適切な体重を維持すること。
  3. 生活習慣の改善
    ストレスの管理や十分な睡眠を取ること。
  4. 薬物療法
    頻繁に起こり、症状がひどい場合には、逆流の症状を和らげるために、医師の指示に従い、一部の薬剤を使用することがある。

予防

逆流は、生活習慣病ではないが、予防や改善には、以下の生活習慣の見直しが有効であるとされている。

  1. 食事
  2. 飲酒と喫煙
  3. 体重管理
  4. 睡眠時の姿勢
  5. 適度な運動

食事に関しては、食べ過ぎや早食いを避け、消化に良く胃への負担が少ないものや胃への刺激が少ない食べ物を選ぶ。逆流を誘発するような食品(例:アルコール、コーヒー、チョコレート、炭酸飲料、香辛料などの刺激物、高脂肪食、油もの、甘いもの、酸味の強い食べもの)は控えることが推奨される。

飲酒と喫煙に関しては、適量の飲酒にとどめ、禁煙することは、生活習慣改善の基本中の基本である。

体重管理に関しては、肥満は胃酸の逆流を引き起こしやすくするため、適切な体重を維持することが重要である。

睡眠時の姿勢に関しては、就寝中に逆流が起こらないよう、就寝前の習慣と就寝時の姿勢に注意する。具体的には、寝る2時間前までに食事を終え、横になる時は上半身が少し高くなるようにすることが推奨される。

適度な運動に関しては、中~高強度の身体活動を1日30分以上行うことが推奨される。

尚、食事に関しては、胃酸の分泌を促すような食べ物は可能な限りは控えた方がよいかも知れない。

胃酸の分泌を促す食べ物には以下のようなものが知られている。

  1. 香辛料(こしょう・とうがらし・わさび・からし等)
  2. 甘味の強いもの(煮豆、まんじゅうなどの洋菓子や和菓子)
  3. 塩味の多いもの(漬物、塩辛など)
  4. 酸味の強いもの(酢の物、みかん、レモンなどの柑橘類)
  5. 嗜好飲料(アルコール全般、炭酸飲料、コーヒー、紅茶)
  6. 脂肪分の多い食品(鶏皮、脂身の多い肉、揚げ物など)

あとがき

私が、朝、歯ブラシを口に入れたときに吐き気や逆流を感じる原因は、「嘔吐反射」と呼ばれる反射的な反応が関与している可能性が高い。

嘔吐反射は、舌や喉に何かが触れると自動的に起こる反射で、これが強い、私のような者は歯ブラシを口に入れただけで吐き気を感じることがある。

しかしながら、「逆流」を頻繁に経験している場合には、逆流性食道炎や胃炎などの病気の可能性もある。これらの病気は、食道や胃の粘膜が炎症を起こし、それが刺激となって逆流や吐き気を引き起こすことがあるからである。

私の場合は、内視鏡検査で食道に異常が認められなかったので、前者の「嘔吐反射」が強いのであろう。

私のような「嘔吐反射」が強い人にも、歯磨き中の吐き気や逆流を軽減するためのいくつかの対策があるので、共有したい。

  • 舌に触れないようにする
    舌に触れると嘔吐反射が引き起こされやすいため、舌に触れないように注意する。
  • 下向きに歯磨きをする
    喉奥にものが近づく感覚が強いと嘔吐反射が引き起こされやすいため、少し顎を引いて下向きに歯磨きをする。
  • 歯磨き粉をつけない
    歯磨き粉の香りや味が刺激となって嘔吐反射を引き起こすことがあるため、歯磨き粉をつけずに歯磨きを試してみる。私の体験では、歯磨き粉には嘔吐反射を起こしやすい製品とそうでないものがある。
  • 小さいヘッドの歯ブラシを使用する
    大きな歯ブラシは舌に触れやすく、嘔吐反射を引き起こしやすいため、ヘッドの小さい歯ブラシを使用する。私の体験では、ブラウンの電動歯ブラシに換えたら嘔吐反射を引き起こす頻度が激減した。ヘッドブラシが小さいからであろうか。

私の経験上、睡眠不足の翌朝の歯磨きの際が最悪であったケースが多い。ひどいときには朝食で食べたものをすべて吐き出すこともあった。サラリーマン生活をリタイアしてからは、そのようなことは一度もない。生活習慣は健康状態のあらゆるところに影響しているということだろう。生活習慣の改善は、健康な生活を続けていく上で、とても重要なことだと実感している。

何度も繰り返して恐縮であるが、上述したような対策にもかかわらず、吐き気や逆流が頻繁に続く場合には、早めに医師に相談した方が良いでしょう。


【参考資料】

MSDマニュアル 家庭版・プロフェッショナル版
逆流性食道炎を調べる検査――どんなときに受診すればよい? | メディカルノート (medicalnote.jp)
胃食道逆流症(逆流性食道炎) – 基礎知識(症状・原因・治療など) | MEDLEY(メドレー)
歯磨き時の吐き気は病気?えずきの原因と対処法が知りたい! Doctors Me(ドクターズミー) (doctors-me.com)