はじめに
消化管間質腫瘍(GIST)は、胃や腸を含む消化管で始まるまれなタイプのがんで、特定の遺伝子変異(KITやPDGFRA遺伝子など)によって特徴付けられている。
GISTは、しばしば症状を引き起こさないため、自覚症状で発見されることは稀であり、定期的な健康診断などによって偶然、発見されることが多いがんであることにも注意が必要である。
GISTに気付かず、治療せずに放置すると、腫瘍が成長し続け、症状が悪化し、最終的には生命を脅かす可能性があるという。したがって、私たちにできることは、定期的に健康診断を受け、早期発見・早期診断・早期治療に努めることしかない。
消化管間質腫瘍(GIST)とは
消化管間質腫瘍(Gastrointestinal stromal tumor;GIST)とは、消化管壁の間葉系前駆細胞に由来する消化管の腫瘍である。
胃や小腸(大腸、食道は稀)など、消化管の壁にできる転移、再発を起こす悪性腫瘍の一種(肉腫という)で、粘膜から発生する胃がんや大腸がんとは異なる性質を示す(図1参照)。消化管の壁の筋肉の層にある、特殊な細胞(カハール介在細胞)が異常に増殖し腫瘍となったものである。
原因
GISTは増殖が遅く、悪性の可能性は最小限から顕著なものまで様々である。大半(60~70%)が胃に発生し、20~25%が小腸に、少数が食道、結腸、および直腸に発生する。発症時の平均年齢は50~60歳である。
GISTは腫瘍細胞の細胞膜にあるKIT、またはPDGFRαというタンパク質の異常が主な原因であることが明らかになっている。 増殖因子受容体遺伝子のc-kitの変異から生じる。
KITタンパク質は、通常は特定の物質の刺激を受けたときにのみ細胞の増殖を促すが、異常が起こると常に増殖の合図を出してしまうので細胞が異常に増殖し続けてしまう。これを放置しておくと、腫瘍がどんどん大きくなってしまう。
症状
GISTの症状は部位により異なるが、出血、消化不良、閉塞などがある。GISTは、胃がんや大腸がんに比べて症状が現れにくく、また症状があっても軽度であることが多いため、診断が遅れ病気が進んでから発見されることも少なくない。
検査・診断
GISTの診断は、通常、内視鏡検査により行う。病期分類のためには生検および超音波内視鏡検査を行う。GISTの診断は、病理組織で実施する。内視鏡などで病変の組織を採取し、その組織を顕微鏡で確認し最終的な診断となる。
治療
GISTの治療では、 基本的に外科的切除による治療が第一選択となる。 手術は腫瘍の大きさ、症状の有無、増大傾向、リスク分類に応じて判定する。 日本では、2cm以上5cm以下のGISTに対して腹腔鏡手術が実施されることがある。最大のメリットは開腹手術に比べて患者の体にやさしいということである。
GISTがKITタンパク質のCD117について陽性であればチロシンキナーゼ阻害薬(分子標的薬)であるイマチニブが使用できる。これは悪性GISTの切除不能例および/または転移例に対して効果的であり、また成人における切除後のアジュバント療法としても効果的である。
あとがき
消化管間質腫瘍(GIST)は、新たに診断される人が10万人あたり1~2人であると言われている、非常にまれな腫瘍である。日本では、発生部位としては胃の割合が約40~60%と高く、次いで小腸で約30~40%、大腸で約5%となっているらしい。
GISTは、初期段階ではほとんど症状がないため、診断が遅れることが多いがんであると言える。そのため、GISTは検診のために受けた内視鏡検査やCT検査などの画像検査で偶然に見つかることが多いと言われている。
また、他の病気を調べるために行ったCTやMRIなどでたまたま診断されることもあるという。
GISTは、非常にまれながんであるため、GISTの検査のために医療機関で検診を受けることは少ないと思われる。したがって、定期的な健康診断だけが、GISTの早期発見に繋がる唯一の対策と言えよう。定期的検診の重要性を再認識させられる話である。
【参考資料】
KOMPAS 慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト |
MSDマニュアル 家庭版・プロフェッショナル版 |