はじめに
前立腺がんは、男性だけに存在する、生殖に関連する臓器である前立腺の悪性腫瘍(がん)であることはよく知られている。前立腺がんは、高齢男性に多く発生し、特に65歳以上になると発症する人が増えると言われている。シニア時代を向かている私も油断できない年齢になってしまった。
前立腺がんは、早期の段階では自覚症状がほとんどないのがやっかいである。早期発見が難しくなるからである。排尿困難や血尿などの症状が出ることもあるらしいが、健康診断で見つかる場合がほとんどである。幸い、医療の進歩のおかげで、前立腺がんは主にPSAという血液検査項目(PSA検査)の上昇をきっかけとして発見されやすくなってきている。
治療においてもがんの状態に応じて手術、放射線療法、ホルモン療法などが選択できるようになってきており、早期に治療を行えば、5年生存率は90%を超え、完治が望めるという。つまり、前立腺がんは、予後の経過が良いがんであると言えなくもない。
しかしながら、その一方で、骨に転移をした状態で見つかる人もおり、進行した状態での生存率は決して高くないらしい。したがって、前立腺がんに関しても、他のがんと同様に早期発見・早期治療が必要である。できることなら発症しないままで寿命を全うしたいものである。
前立腺がんとは
前立腺がん(Prostate cancer)は、前立腺の細胞が正常な細胞増殖機能を失い、無秩序に自己増殖することにより発生する。多くの場合比較的ゆっくり進行し、早期に発見すれば治癒することができる。近くのリンパ節や骨に転移することが多いが、肺、肝臓などに転移することもある。
前立腺は男性のみが持っている臓器で、精液の一部分を作り、射精や排尿の調節に関わる機能を有する。
前立腺がんは、アメリカでは男性に発生するがんの第1位であるが、日本でも近年増加傾向にある。以前は、進行がんの状態で見つかることが多かったが、最近では 優れた腫瘍マーカー(前立腺特異抗原;prostate specific antigen;PSA)の普及もあり、 より早期に発見されるようになってきている。
前立腺がんの進行は緩慢なため、寿命に影響しない場合もある。がん以外の原因で死亡した男性を調べた結果、前立腺がんであったことが判明する場合もある。生前にはがんが見つからず、死後の解剖によってはじめて見つかるがんをラテントがんと呼ぶ。
原因
前立腺がんの原因は、完全には解明されていないが、いくつかの要因が関与していると考えられてる。主な要因としては、下記のようなものが列挙されている。
- 年齢
- 年齢が高い人に多く見られる
- 特に60歳以上の男性に発症率が高い
- 遺伝
- 家族に前立腺がん者がいる場合、そのリスクが高まる
- ライフスタイル
- リスクを増加させる生活習慣
- 高脂肪・高糖質の食事
- 肥満、運動不足など
- リスクを増加させる生活習慣
- ホルモン
- 男性ホルモン(テストステロン)の影響が関与か(?)
- 環境要因
- 一部の研究では、化学物質や農薬などの環境要因がリスクを高めることが示唆されている
これらの要因が組み合わさることで、前立腺がんのリスクが増加することがあるとされる。
症状
早期の前立腺がんは、多くの場合自覚症状がない。しかし、尿が出にくい、排尿の回数が多いなどの症状が出ることもある。進行すると、排尿の症状に加えて、血尿や、腰痛などの骨への転移による痛みがみられることがある。
初期症状 |
ほとんどが無症状。 |
排尿に関する症状(進行した場合) |
残尿感、頻尿、尿意切迫感等の症状が起こることがある。 |
局所浸潤症状 (さらに進行した場合) |
尿道に浸潤すれば血尿、排尿困難が生じ、さらに尿管まで浸潤すると、尿管の拡張、腎盂、腎杯が拡張する水腎症、ついには腎不全に至ることもある。 |
転移がんの症状 (さらに進行した場合) |
腰痛などで骨の検査をうけたことで前立腺がんが発見されることもある。また胸部レントゲン等で肺転移が偶然発見されることもある。 |
検査・診断
主な検査は、PSA検査、直腸診である。これらの検査で前立腺がんが疑われる場合には、経直腸エコー、前立腺生検などを行う。がんの広がりや転移の有無は画像検査で調べる。
PSA検査 |
血液検査で、腫瘍マーカー(前立腺特異抗原;prostate specific antigen;PSA)を検知する検査であり、前立腺がんを早期発見するために最も有用である。がんや炎症により前立腺組織が壊れると、PSAが血液中に漏れ出し、増加するが、他の臓器にがんがあってもPSAは上昇しない。したがって、PSAの血液中濃度が高いと前立腺がんが疑われる。PSAの基準値は、0~4.0 ng/mLとされている。但し、年齢によって基準値を下げる場合もある。PSA値が4.1~10.0 ng/mLをいわゆる「グレーゾーン」という。PSA値が4.1~10.0 ng/mlでは25~40%に、10.1 ng/ml以上では40%以上にがんがみつかるといわれている。PSA値が100 ng/mLを超える場合には前立腺がんが強く疑われ、転移も疑われる。また、PSAには、遊離型PSA(free PSA)と結合型PSA(complexed PSA)があり、総PSA(total PSA)に対する遊離型PSAの割合(F/T比)は前立腺のほかの疾病(前立腺肥大症など)との鑑別に用いられる。F/T比が低い場合は前立腺がんの可能性が高くなる。 別の報告では、無症状患者での癌の陽性適中率は、PSA値が10ng/mL超で67%、PSA値4~10ng/mLで25%であり,PSA値4ng/mL未満で15%,PSA値0.6~1.0ng/mLで10%であることが示唆されている。PSA低値の患者で認められるがんは小型(しばしば1mL未満)で悪性度も低い傾向にある。しかし、悪性度の高いがん(Gleasonスコア7~10)はPSA値にかかわらず存在する可能性があり、PSA値4ng/mL未満で発生するがんのうち悪性度の高いがんはおそらく15%であると推察されている。 |
直腸診 |
肛門から指を入れて、前立腺の表面を触り、前立腺の状態を確認する検査。 前立腺に硬い部分があり、前立腺の表面に凹凸があったり、左右非対称であったりした場合には前立腺がんを疑う。 |
経直腸的前立腺超音波検査(経直腸エコー検査) |
肛門から超音波検査プローブを挿入し、前立腺の内部の状態(大きさや形 )を観察する検査。 |
前立腺針生検 |
自覚症状、PSA値、直腸診、経直腸エコー検査などから前立腺がんの疑いがある場合、最終的な診断のために前立腺生検を行う。前立腺生検では、超音波による画像で前立腺の状態をみながら、細い針で前立腺を刺して組織を採取する。初回の生検では10~12カ所の組織採取を行う。採取した組織は病理医が顕微鏡で見て、がんの有無を判断する。 前立腺生検でがんが発見されなかった場合にも、PSA検査を継続し、PSA値が上昇する場合には再生検が必要になることがある。 |
CT 検査 |
前立腺がんの診断が針生検で確定した場合に、前立腺がんによるリンパ節転移の有無や肺転移の有無を確認するために行う。 |
MRI検査 |
前立腺がんが前立腺内のどこにあるのか(前立腺内にとどまっているか)、前立腺の外へ浸潤がないか、リンパ節へ転移がないかなどを調べるために行う。 |
骨シンチグラフィー検査 |
前立腺がんは骨に転移しやすいので、骨に転移していないかどうか(骨転移)を評価するために行う。 |
治療
治療方針は、がんの進行の程度や患者の体の状態などから検討する。がんの進行の程度は、病期(ステージ)として分類する。
病期(ステージ)
一般的に、病期分類にはTNM分類が用いられている。 病期(ステージ)は、身体所見、画像診断などから、TNM分類に基づいて診断する。T、N、Mはさらに数種類に分けられる。 (表1参照)
T:がんが前立腺の中にとどまっているか、周辺の組織・臓器にまで及んでいるか。
N:前立腺からのリンパ液が流れている近くのリンパ節(所属リンパ節)へ転移しているか。
M:離れた臓器への転移(遠隔転移)があるか。
T1 | 直腸診で明らかにならず、偶然に発見されたがん |
---|---|
T1a | 前立腺肥大症などの手術で切り取った組織の5%以下に発見されたがん |
T1b | 前立腺肥大症などの手術で切り取った組織の5%を超えて発見されたがん |
T1c | PSAの上昇などのため、針生検によって発見されたがん |
T2 | 直腸診で異常がみられ、前立腺内にとどまるがん |
T2a | 左右どちらかの1/2までにとどまるがん |
T2b | 左右どちらかだけ1/2を超えるがん |
T2c | 左右の両方に及ぶがん |
T3 | 前立腺をおおう膜(被膜)を越えて広がったがん |
T3a | 被膜の外に広がっているがん(片方または左右両方、顕微鏡的な膀胱への浸潤) |
T3b | 精のうまで及んだがん |
T4 | 前立腺に隣接する組織(膀胱、直腸、骨盤壁など)に及んだがん |
N0 | 所属リンパ節への転移はない |
N1 | 所属リンパ節への転移がある |
M0 | 遠隔転移はない |
M1 | 遠隔転移がある |
UICC TNM Classification of Malignant Tumours, 8th Edn, Wiley-Blackwell:2017, 191-192より作成 前立腺がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス]
T1は、直腸診でがんが明らかにならず、偶然に発見された場合の分類である。例えば、PSA値が基準値を超えたが、直腸診で異常の指摘がなく、生検によってがんが検出された場合はT1cと分類される。T2以上は直腸診や画像診断により分類される。T2は、がんが前立腺の中でとどまっているものであり、T3は前立腺をおおう膜(被膜)を越えて広がっているものである。T4は隣接している臓器(膀胱など)へ浸潤があるものである。(図1参照)
転移のない前立腺がんは、3つの因子(T-病期、グリーソンスコア、PSA値)を用いて低リスク群、中間リスク群、高リスク群に分けられる。リスク評価には、NCCNのリスク分類が用いられる。(表2参照)
グリーソンスコア(Gleasonスコア)は、前立腺がんの悪性度を表す病理学上の分類である。グリーソンスコアが6以下は性質のおとなしいがん、7は中くらいの悪性度、8~10は悪性度の高いがんとされている。
リスク度 | 基準値 |
---|---|
低リスク | 病期T1~T2a、グリーソンスコア6以下、PSA値10ng/mL未満 |
中リスク | 病期T2b~T2c、グリーソンスコア7、または PSA値10~20ng/mL |
高リスク | 病期T3a、グリーソンスコア8~10、または PSA値20ng/mL以上 |
日本泌尿器科学会編「前立腺癌診療ガイドライン2016年版」(メディカルレビュー社)より改変 前立腺がん 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス]
前立腺がん治療の選択
治療方針は、標準治療に基づいて、体の状態や年齢、患者の希望なども含め検討し、決定される。
前立腺がんの主な治療法は、監視療法、手術(外科治療)、放射線治療、内分泌療法(ホルモン療法)、化学療法である。複数の治療法が選択可能な場合がある。
PSA値、腫瘍の悪性度(グリーソンスコア)、リスク分類、年齢、期待余命、患者の治療に対する考え方などを基に治療法を選択する。(図2参照)
監視療法および組織内照射療法は、低リスク群では選択が可能である。
手術や放射線治療は低リスク・中間リスク・高リスク群のいずれでも選択可能である。
高リスク群に対して放射線治療を実施する場合には長期間の内分泌療法を併用することが推奨されている。
近くの臓器に及んだがんは、放射線治療、内分泌療法などを行うが、手術を行うこともある。
転移があるがんは内分泌療法や化学療法などを行う。
尚、がん治療が、生殖能力に影響することがあるので、将来子どもをもつことを希望している場合には、妊孕性温存治療法が可能か、治療開始前に担当医に相談する必要がある。
監視療法 |
前立腺がんと診断されても非常に早期でさらにがんも穏やかであると判断した場合には、PSA監視療法という方法がある。これは無治療のまま、PSAの結果や定期的針生検によってがんの進行の有無を観察するというものである(経過観察)。治療をしなくても余命に影響がないと判断される場合に過剰な治療を防ぐための方法である。 監視療法では、3~6カ月ごとの直腸診とPSA検査、および1~3年ごとの前立腺生検を行い、病状悪化の兆しがみられた時点で、治療の開始を検討する。手術などの治療に伴う患者の苦痛やQOL低下を防ぐため監視療法は広く普及し、重要視されている。 監視療法が適している状態とは、PSA値が10ng/mL以下、病期がT2以下、グリーソンスコアが6以下で、その他の指標も含めて総合的に判断する。PSA値が倍になる時間(PSA倍加時間)が2年以上と考えられる場合には経過観察を続ける。PSAの数値や生検で得られた前立腺組織からがんの増悪が疑われる場合は、手術・放射線治療・内分泌療法などの他の治療法を検討する。 |
フォーカルセラピー(Focal therapy) |
フォーカルセラピーは、監視療法と手術などの根治的治療の中間に位置する治療概念で、がんを治療しながら正常組織を可能な限り残し、治療と身体機能の維持の両立を目的とする。前立腺内にとどまるがんでは、治療の選択肢の1つとなる。高密度焦点超音波療法(HIFU)、凍結療法、小線源療法などを用いることがある。フォーカルセラピーにはさまざまな治療が含まれるため、治療後の評価が難しく、十分な根拠がないのが現状であり、担当医とよく相談して決めていくことが重要となる。 |
手術(外科治療) |
手術では、前立腺と精のうを摘出し、その後、膀胱と尿道をつなぐ前立腺全摘除術を行う。手術の際に前立腺の周囲のリンパ節も取り除くこともある(リンパ節郭清)。手術は、がんが前立腺内にとどまっており、期待余命が10年以上と判断される場合に行うことが最も推奨されているが、前立腺の被膜を越えて広がっている場合でも対象となる。手術の方法には、開腹手術、腹腔鏡手術(腹腔鏡下前立腺全摘術)、ロボット支援手術がある。手術後の合併症として、尿失禁や勃起不全があげられるが、がんの場所によっては、勃起神経を温存して手術を行うこともある。 |
放射線治療 |
放射線治療は、高エネルギーのX線や電子線を照射してがん細胞を傷害し、がんを小さくする療法である。外照射療法と、組織内照射療法がある。海外の研究では、組織内照射療法と外照射療法の組み合わせが、外照射療法を単独で行うよりも有効性が上回っていたという臨床試験の結果が発表されている。ただし、有効性は上回っていても副作用が多かったという報告もされている。密封小線源療法(シード治療)とは、放射線を放出するヨウ素125線源を前立腺内に挿入し、内部から前立腺全体に放射線をあてる治療法である。麻酔をかけた上で、超音波画像を見ながら会陰部から前立腺内に線源を留置するので、数日間の入院が必要である。リスクが高い症例では、小線源療法に外部照射を組み合わせることが推奨される。 |
薬物療法/内分泌療法 (ホルモン療法) |
前立腺がんには、精巣や副腎から分泌されるアンドロゲン(男性ホルモン)の刺激で疾病が進行する性質がある。内分泌療法は、アンドロゲンの分泌や働きを妨げる薬剤によって前立腺がんの勢いを抑える治療である。内分泌療法は手術や放射線治療を行うことが難しい場合や、放射線治療の前あるいは後、がんがほかの臓器に転移した場合などに行われる。 |
薬物療法/化学療法 |
抗がん剤の投与による治療である。内分泌療法が効かなくなった前立腺がんに対して行われる治療である。ドセタキセルという薬剤を中心に使用する。副作用として脱毛、嘔気、嘔吐、骨髄抑制等がある。骨髄は血液の製造所であり、赤血球が少なくなれば貧血、白血球が少なくなれば易感染性、血小板が少なくなれば易出血性という副作用をきたすことがある。 |
リハビリテーション |
前立腺がんの治療中に運動を行うことで、患者のQOLが保たれ、もとの生活により近い生活を送ることができる。そのため、治療法を問わずに、運動を行うことが推奨されている。 |
緩和ケア |
緩和ケアとは、がんと診断されたときから、患者のQOLを維持するために、がんに伴う体と心のさまざまな苦痛に対する症状を和らげ、自分らしく過ごせるようにする治療法である。緩和ケアは、がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて行われるものである。患者のニーズに応じて幅広い対応をする。 |
薬物療法/
内分泌療法(ホルモン療法)に用いる治療薬
LH-RH(黄体形成ホルモン放出ホルモン)アゴニスト |
リュープロレリン酢酸塩(リュープリン®) ゴセレリン酢酸塩(ゾラデックス®) トリプトレリン、ヒストレリン、ブセレリン |
LH-RH (黄体形成ホルモン放出ホルモン)アンタゴニスト |
デガレリクス酢酸塩(ゴナックス®) |
抗アンドロゲン剤 |
クロルマジノン酢酸エステル(プロスタール®) フルタミド(オダイン®) ビカルタミド(カソデックス®) エンザルタミド(イクスタンジ®) アビラテロン酢酸エステル(ザイティガ®) ニルタミド、酢酸シプロテロン |
エストロゲン(女性ホルモン) |
エチニルエストラジオール(プロセキソール®) |
薬物療法/化学療法に用いる治療薬
薬剤名 | 投与経路 |
---|---|
ドセタキセル水和物 (タキソテール®、ワンタキソテール®) | 静注 |
カバジタキセル(ジェブタナ®) | 静注 |
エストラムスチンリン酸エステルNa水和物 (エストラサイト®) | 経口 |
予防
前立腺がんは、生活習慣病的な側面が強いとされている。その理由は、前立腺がんの主な原因が喫煙や過度の飲酒、肥満、食生活などの生活習慣に関連しているためである。だから生活習慣の改善が前立腺がんの予防にも非常に重要となってくる。
高脂肪・高コレステロールの食事は、前立腺がんの発症リスクを高める可能性があると言われている。逆に、野菜や果物、大豆食品、キノコなどを含んだ食事は、前立腺がんの発症リスクを低下させるらしい。
また、肥満は前立腺がんの発症リスクを高めることが知られている。喫煙と過度の飲酒も前立腺がんのリスクを高める可能性があり、禁煙と節酒は前立腺がんの予防に非常に役立つとされる。
適度な運動は、前立腺がんのリスクを低下させる可能性があり、予防策の一つとして推奨されている。
前立腺がんは、治療や予後の観点から早期発見が非常に重要ながんであるので、定期的な健康診断を受診するようにした方がよいのは言うまでもない。
したがって、前立腺がんの予防策としては、下記のような対策が知られており、推奨される。
- 食生活の改善
- 高脂肪・高コレステロールの食事は避ける
- 野菜や果物、大豆食品、キノコなどを含んだ食事を摂る
- 肥満の解消
- 適切な体重を維持する
- 禁煙・節酒
- 適度な運動
- 定期的な医療チェック
- 早期発見
- 早期治療
これらの予防策はあくまで一般的なものであり、個々人の健康状態により適切な対策は異なる場合がある。したがって、自分に合った予防策を構築することが肝要である。
あとがき
嬉しい話であることに、前立腺がんの予後は、他のがんに比べて良いことが知られている。前立腺がんの予後は、がんの進行度や治療の成果により異なるのは当然のことではあるが、下記のような目安がある。
前立腺がんの5年生存率は、ステージIからIIIで、90%を超えており、ステージIVでも50%を超えている(51.2%)。ステージIVの前立腺がんの患者の平均余命は、転移した部位によって異なるらしい。リンパ節転移のみで他の臓器への転移がない場合の生存期間の中央値は最も長く、約32ヶ月である。一方、骨転移がある場合の生存期間の中央値は約21ヶ月で、肺転移がある場合は約19ヶ月である。そして、肝臓転移がある場合の生存期間の中央値が最も短く、約14ヶ月となっている。
このように、治療方法や治療のタイミングにより、予後は大きく変わるようだ。例えば、手術を受けた患者の5年生存率は、ステージIVでも82.1%となり、全ての患者で統計をとった場合の生存率(65.9%)よりも高い結果になった場合も知られている。
このように、前立腺がんの予後(生存率の向上;5年生存率の90%超)が他のがんに比べて良い理由としては、早期発見が可能になったことと治療法が進歩したことが挙げられている。
前立腺がんは、PSA(前立腺特異抗原)という血液検査によって早期に発見できるようになった。その早期発見は治療成功率を大幅に向上させることに貢献していると思う。
前立腺がんの治療法は大きく進歩し、手術や放射線療法、ホルモン療法など選択肢の多様性は、予後の大幅な改善に寄与しているのは想像に難くない。
他のがんでも前立腺がんの予後と同等に早くなってもらいたいものである。医学や薬学は医療の進歩に貢献し続けているので、そうゆう時代も決して夢ではないだろう。たとえ私たちの時代は無理であったとしても次世代はもっと明るい未来であるはずだ。
【参考資料】
国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターHP |
KOMPAS 慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト |
MSDマニュアル 家庭版・プロフェッショナル版 |