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泌尿器系疾患

蛋白尿とは? 原因は何? 症状は?検査・診断と治療法は?予防は?

はじめに

人間ドックなどの検診で、採尿した尿からタンパクが検出されることがある。若い頃ならちょっとスポーツのやり過ぎ程度で済む場合もあるが、スポーツもほとんどしなくなったシニア世代ともなれば、無視するわけにはいかない。再検診をして詳しく原因を究明しておく必要があるといえよう。

何故なら、タンパク尿の原因は腎臓の病気である可能性があるからである。腎臓病の症状は顕著に表面に現れずに進行し、症状に気づいたときはもう透析が必要になる一歩手前、ということもあり得るからだ。タンパク尿は数少ないサインの一つである。

一方で、タンパク尿が出ていても病気でない場合もある。例えば、長時間の起立や運動したあと、または熱が出たときだけにタンパク尿が現れる場合がある。そんな場合は、腎臓の病気を心配する必要はない。原因もはっきりしている。

原因に心当たりがないにも関わらずに、タンパク尿を指摘されたら、おっくうがらずに再検診を受けてタンパク尿の原因を究明しておくべきだと思う。


<目次>
はじめに
蛋白尿とは
原因
症状
検査・診断
治療
予防
腎臓のしくみと働き
  • タンパク尿が出るということは
  • 血圧が上がり始めたら
  • 血圧が高くなりタンパク尿も出るなら
  • むくみが現れ始めたら
  • 自己診断用チェックリスト
罹患したくない腎臓疾患
あとがき

蛋白尿とは

蛋白尿とは、尿中に含まれるタンパク質のことで、腎臓の機能が低下すると尿に混ざってしまうことを指す。


原因

蛋白尿の原因としては、急性腎炎慢性腎炎などの腎臓に限局した病気と、糖尿病膠原病高血圧など全身の病気の一部として腎臓に障害が起きる場合があると言われている。


症状

蛋白尿に伴う症状としては、尿が泡立つ、尿に細かい泡が見える、尿の泡が1分たっても消えないなどの症状が見られることが知られている。また、むくみ、からだのだるさ、食欲不振、はきけ、呼吸困難、不眠、頭痛、しびれなども報告されている。


検査・診断

蛋白尿の診断は、尿検査により行われる。再検査で再び尿蛋白が確認された場合は、その結果によって対応が決まる。

尿蛋白と尿潜血(肉眼では分からないが顕微鏡で見ると血の成分が尿中にある状態)という項目がともに1+以上、もしくは尿蛋白のみでも2+以上であれば、腎臓内科という専門の診療科で精査することが推奨されている。


治療

蛋白尿の治療方法には薬物療法と食事療法がある。

薬物療法では、高血圧が腎臓病に悪影響を及ぼすため、血圧が高い場合は、降圧薬を使用する。また、ステロイド薬や免疫抑制薬、利尿薬を使用するなど、症状に応じた処方がなされる。

一方、食事療法では、蛋白質と塩分を制限することになる。


予防

蛋白尿の予防には以下のような対策が有効であるとされ、推奨されているらしい。

  1. 健康的な生活習慣
    適度な運動とバランスの良い食事を心掛け、肥満や高血圧を避けること。
  2. 適切な飲食
    タンパク質を必要以上に摂らないようにし、腎臓への負担を減らすために疲労を溜めないようにすること。
    また、しょっぱいもの、化学調味料が多く含まれるもの、味が濃いものは極力避けるようにすること。
  3. 感染症の予防
    感染症にかからないようにすること。

腎臓のしくみと働き

腎臓は、「そらまめ」のような形をした握りこぶしくらいの大きさの臓器で、腰のあたりに左右対称に2個あり、次のような働きをする。

  • 体液量とイオンバランスを調節する
  • 血液をろ過して老廃物を排出する
  • 血圧を調節する
  • 赤血球を作るホルモンを分泌する
  • ビタミンDを活性化する
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体液量とイオンバランスを調節する

腎臓は体内の体液量やイオンバランスを調節したり、体に必要なミネラルを体内に取り込む役割を担っている。この働きは、腎臓の最も重要な役割の一つかも知れない。体の中の水分の量と濃度を調節して、からだの細胞を働きやすくしているからである。

血液をろ過して老廃物を排出する

腎臓は血液をろ過し、血液中の不要な老廃物や余分な塩分を尿として体外に排出する。また、体に必要なものは再吸収し、体内に留める働きをしている。腎臓の働きが低下してくると、血液中に不要なものが溜まったり、逆に必要なものが尿に混ざって出ていってしまう。

血圧を調節する

腎臓は塩分と水分の排出量をコントロールすることによって血圧を調整している。血圧が高いときは、塩分と水分の排出量を増加させることで血圧を下げ、血圧が低いときは、塩分と水分の排出量を減少させることで血圧を上げる。

腎臓は血圧を調節するホルモンも分泌している。血液をいつもきれいな状態にしておくには、常に一定量以上の血液が、血液の浄化器官である腎臓を通過していなければならない。そのため腎臓の血流量が少なくなると、腎臓自身が血圧を上げるホルモンを分泌して、血流量を増やす。

赤血球を作るホルモンを分泌する

赤血球は骨髄の中にある細胞が、腎臓から出るホルモン(エリスロポエチン)の刺激を受けて作られる。

ビタミンDを活性化する

骨の強度を保つにはカルシウムを体内に吸収させる必要がある。そのためにはビタミンDを活性化する必要がある。腎臓にはビタミンDを活性化する働きがあり、その働きによってビタミンDは活性型ビタミンDとなる。

このように腎臓は私たちの体にとって非常に重要な臓器である。もし、これらの機能が正常に働かないと、体液量やイオンバランスが乱れたり、体内に老廃物が蓄積したり、血圧が不安定になったり、貧血を起こったり、骨が弱くなったりする可能性がある。そのため、腎臓の健康を維持することは非常に重要である。


タンパク尿が出るということは

タンパク質は、私たちの体にとって大切な構成成分であるから、健康であればほとんど尿に混ざることはない。

しかし、腎臓に病気が起き、その機能が低下すると、ろ過機能をもつ糸球体をタンパク質が通過して尿に出るようになる。

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本来は糸球体を通過しないはずのタンパク質成分が通過してしまう状態は、糸球体そのものにとっても負担となる。そのため、病気によって尿にタンパクが出ること自体が、病気の進行を早めることにもなる。


血圧が上がり始めたら

腎臓に病気があると腎臓内部の血管が細くなったりして、腎臓の血流量が減る。また糸球体も目づまりの状態になる。そうなると腎臓は、血流量を保つために血圧を上げるホルモンを分泌して血圧を上げ、ろ過量を増やして尿量を保とうとする。

このような仕組みは一見合理的なように思えるが、血圧が高いと糸球体内部の細い血管が傷めつけられ、結果的に腎臓の機能はより早く低下してしまう。そして腎臓の機能低下が進行し、さらに血圧を上昇させるという悪循環が起こる。結果的に、腎臓の病気の進行を早めてしまうことになる。


血圧が高くなりタンパク尿も出るなら

高血圧とタンパク尿は、腎臓の病気で引き起こされるが、同時に腎臓の病気を進行させてしまう原因にもなる。どちらも自覚症状がほとんどないため、早期に発見することは難しい。

しかしながら、治療の必要性を理解し、しっかりと管理することは、腎臓病の進行を抑えるために非常に重要なことである。


むくみが現れ始めたら

むくみは腎臓の病気の症状の一つである。そして、むくみが現れるのは病気がかなり進行してからのことである。その頃には、ひどい貧血に悩まされるなどの生活する上で不都合なことが重なって起きているはずである。だるくて、眠くなったりすることもある。尿毒症を防ぐため、人工透析などの治療法も視野に入ってくる。尿毒症とは、尿として排泄されるべき不純物が血液中に溜まりすぎた状態を指す。


自己診断用チェックリスト

下記のような自己診断用チェックリストが知られているが、腎臓の機能低下が気になる方は、早めに医療機関で検査をしてもらった方が良い。

□尿の泡立ちがなかなか消えない
□朝起きたとき、足や顔のむくんでいる感じがする
□無理をしていないのになんとなくだるい
□夜中2回以上トイレに立つ
□めまいや立ちくらみが多くなった
□動悸・息切れがする
□のどが渇く
□食欲がない
□血圧が高くなってきた
□頭痛を感じることが増えた
□顔色の悪さが気になる


罹患したくない腎臓疾患

糖尿病性腎症

糖尿病の治療が不十分な状態が続いていると、血管が傷みやすくなる。それによって腎臓の働きが低下してくる病気である。患者数の増加が著しく、透析療法が必要になる原因の第一位にあげられている。

透析患者数(総数)の推移

慢性糸球体腎炎

血液をろ過し尿を作る機能を担っている糸球体に炎症が起き、その働きが徐々に低下する慢性の病気である。発病の原因として、免疫の異常が関係しているといわれているが、詳しくはまだ解明されていない。比較的若い人にも多発している。

腎硬化症

主として高血圧による動脈硬化の影響が腎臓に現れるもので、高齢者に多い病気である。病気の進行は比較的遅いようだ。

ネフローゼ症候群

多量のタンパクが尿中に排泄されてしまう状態を指す。このため血液中のタンパク質が少なくなる。むくみや脂質異常症(高脂血症)を伴い、糖尿病性腎症や慢性糸球体腎炎でも起こる。


あとがき

一時的なタンパク尿は発熱やストレス、運動などでも引き起こされることがある。しかしながら、運動量の少なくなったシニア世代にとっては、タンパク尿は腎臓病のサインとなることが多いはずである。

タンパク尿が見つかると、腎臓に何らかの問題がある可能性を示している。例えば、腎炎や腎臓病などが考えられる。

タンパク尿が3カ月間も続けば、慢性腎臓病と診断されるかも知れない。また、タンパク尿が多いほど、腎臓の傷害の程度が大きいことが疑われ、人工透析が必要になることがある。人工透析の治療が必要になる割合は、3+以上の人で16%、2+の人で約7%という報告もある。

腎臓は、私たちが健康的に生活するために重要な臓器である。だから腎臓病の発症は避けたいものである。もし、タンパク尿が見つかった場合には、その原因を調べるために医療機関での検査が推奨される。とにかく早期発見と早期治療が重要である。


【参考資料】
タンパク尿の意味と対策 – 日本臨床内科医会 (japha.jp)
タンパク尿の意味と対策;byoki022.pdf (japha.jp)
腎臓病とは -蛋白尿・血尿–一般社団法人 日本腎臓学会
「尿蛋白(タンパク尿)」について医師が徹底解説! | メディカルドック