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先天性筋ジストロフィーとは?原因と症状は?治療法

はじめに

先天性筋ジストロフィーの有病率については、正確な統計データが存在せず、詳しいことは分かっていない。

しかしながら、筋ジストロフィー全体の有病率が人口10万人当たり17~20人程度と推測されているのに対し、先天性筋ジストロフィーの有病率は人口100万人当たり4~8人程度と推測されている。これらの推定値を参考にするならば、先天性筋ジストロフィーは、筋ジストロフィーの中でも非常に稀な疾患であると言える。研究開発が遅れているのも無理からぬ理由が存在する。

目次
はじめに
先天性筋ジストロフィーとは
原因
症状
検査・診断
治療
あとがき

先天性筋ジストロフィーとは

先天性筋ジストロフィーは、出生時期から筋力・筋緊張が低下している筋ジストロフィーである。この病気は、遺伝性で、筋肉の機能に不可欠なタンパク質の設計図となる遺伝子に変異が生じたために発症する。


原因

筋ジストロフィーは、筋肉の機能に関与している遺伝子の異常によって発生し、小児期や青年期に筋力低下を引き起こす。男児に発生する場合がほとんどである。

先天性筋ジストロフィーは、単一の疾患ではなく、出生時から顕在する筋ジストロフィーを意味し、筋ジストロフィーのいくつかのまれな型のいずれからでも発生する。そのようなジストロフィーは全て遺伝的に劣性であり、骨格筋線維の基底膜または細胞外基質の構造タンパク質をコードする遺伝子など様々な遺伝子における突然変異により起こる。


病状

症状は、出生時または乳児期早期から、筋肉の緊張がなく「だらりとした状態(フロッピーインファント)」になっており、運動発達遅滞や進行性の筋力低下を特徴としている。

知的障害、てんかん(けいれん発作)などの中枢神経症状が現れるほか、小眼球症・網膜異常などの眼症状、心不全や呼吸不全などの合併症、嚥下障害や関節拘縮も起きやすくなるらしい。


検査・診断

検査としては、筋生検や免疫染色、頭部MRIなどが行われる。必要に応じて、遺伝子検査も行われる。

診断は全ての筋緊張低下新生児で疑われるが、筋生検で先天性ミオパチーと鑑別する必要がある。


治療

治療は、機能維持に有効となることがある理学療法など支持療法で構成される。定期的な心エコー評価が欠かせない。

患者の発達促進をはじめ、症状に合わせて装具や車いす、拘縮予防を行う。

呼吸に関しては非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)を第一選択とするが、嚥下機能なども踏まえて適切な方法が選択される。


あとがき

先天性筋ジストロフィーの治療薬の研究開発については、下記のような興味深い情報がある。

愛媛大学、東京大学および神戸大学の研究グループは、糖鎖異常型の筋ジストロフィーモデルマウスの治療に成功したらしい。

この研究では、糖鎖の生合成に必要な物質の一つであるCDP-リビトールの合成酵素ISPDの異常によって発症する筋ジストロフィーのモデルとして、ISPDが欠損したマウスを作出し、CDP-リビトールの合成不全と糖鎖異常が発症の原因になることを解明したという。

次いで、モデルマウスに対するISPD遺伝子治療によって病気の進行を抑制できることを発見した。更に、細胞内への送達効率を高めたCDP-リビトールを創出し、モデルマウスのプロドラッグ治療に世界で初めて成功したとも報告している。

この研究成果は、糖鎖異常を発症要因とする疾患の治療法開発にむけて画期的な成果となり、筋ジストロフィーや先天性糖鎖不全症などの希少難治性疾患の治療法開発にむけて大きな貢献が期待できるとされている。さらなる研究の進捗が待たれる。


【参考情報】
MSDマニュアル 家庭版・プロフェッショナル版
新しいタイプの筋ジストロフィー治療薬の開発―発症原因を解消するプロドラッグを創出し、疾患モデルマウスの治療に成功― | 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 (amed.go.jp)

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