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中耳炎とは? 原因と症状?診断・治療法と予防策は?

はじめに

中耳炎は、中耳(鼓膜より内側の部分)に起こる感染症である。細菌やウイルスが喉の奥と中耳をつなぐ管(耳管)を通って中耳に侵入し、炎症を引き起こすと言われている。

中耳炎の主な症状には、耳痛、発熱、耳閉感(耳が詰まった感じ)、耳漏(耳の穴から膿が出ること)や難聴が知られている。また、中耳炎は鼓膜穿孔(鼓膜に穴が開いた状態)を引き起こすことがある。

さらに、中耳炎が聴覚障害(難聴)を引き起こすことがある。その主な理由としては次の2つが挙げられている。

  • 膿や滲出液が中耳の空間内に溜まる
    • 鼓膜が上手く振動できず、音が内耳に伝わりにくくなる
  • 鼓膜に穴が開く
    • 鼓膜穿孔を伴う慢性中耳炎に移行することがある
    • 鼓膜穿孔は難聴や認知症などのリスクにつながる

したがって、中耳炎の早期発見と適切な治療を行うことが、聴覚障害(難聴)の予防に重要となることは明白である。

目次
はじめに
中耳炎とは
急性中耳炎
原因
症状
検査・診断
治療
予防
あとがき

中耳炎とは

中耳炎(tympanitis)は、中耳腔(鼓膜の奥にある空間)の細菌感染症またはウイルス感染症であり、通常は上気道感染に併発する。

その臨床経過によって中耳炎はいくつかに分類されている。代表的な4疾患は、急性中耳炎滲出性中耳炎慢性中耳炎および真珠腫性中耳炎である。

症状としては耳痛があり、しばしば全身症状(発熱、悪心、嘔吐、下痢)を伴い、特に非常に若年の患者でその傾向が強い。


急性中耳炎

急性中耳炎(acute otitis media;AOM)は、 中耳の疾病の中で最も頻度が高く、特に小児に多いのが特徴である。

感冒などの上気道炎に続いて発熱、耳痛などが生じる。特に乳幼児の場合は50%以上が上気道炎に続いて発症する。中耳炎が進行すると鼓膜穿孔を生じ、耳漏(耳だれ)がみられることもある。耳漏が生じると耳痛が軽快するのが一般的である。


原因

急性中耳炎の病因は、ウイルス性または細菌性の感染症である。ウイルス感染は、しばしば二次的な細菌感染を併発する。

新生児ではグラム陰性腸内桿菌、特に大腸菌および黄色ブドウ球菌が 急性中耳炎の原因となる。年長の乳児および小児(14歳未満)では、最も一般的な起因菌は肺炎球菌、および無莢膜型インフルエンザ菌である。14歳以上の患者では、肺炎球菌、A群β溶血性レンサ球菌、および黄色ブドウ球菌が最も一般的であり、インフルエンザ菌が続く。

上気道炎によって鼻腔や咽頭に炎症が生じると、鼻咽頭粘膜が腫脹し細菌感染が生じる。一般には肺炎球菌インフルエンザ桿菌ブランハメラ・カタラーシスが原因菌となることが多い。それら原因菌が鼻腔や咽頭から耳管を通じて中耳腔内に侵入することによって、中耳炎が発症する(経耳管感染)。

また、鼓膜に穿孔がある場合は、洗髪や水泳の後に外耳道側から細菌が侵入して中耳炎を生じる可能性がある(経外耳道感染)。


症状

初期症状は、通常、風邪または上気道炎の症状(鼻閉、鼻汁、咽頭痛や咳嗽 )に続いて中耳炎の症状(耳痛)が生じ、しばしば難聴を伴う。この際、特に乳幼児では39℃以上の発熱を呈することもある。

中耳炎が激化すると鼓膜が炎症によって脆弱化し、中耳内の膿汁の貯留圧によって鼓膜穿孔を生じ、膿性耳漏(耳だれ)となる。耳漏が生じて中耳圧が軽減すると激しい耳痛も軽快し、泣きじゃくっていた乳幼児も急に静かになることがある。


検査・診断

急性中耳炎の診断は、通常は臨床的に行う。急性(48時間以内)の疼痛発症、鼓膜の膨隆および気密耳鏡検査(特に小児)において中耳滲出液の徴候がみられることに基づく。


治療

肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、ブランハメラ・カタラーシスが原因菌となることが多く、これらに感受性のある抗菌薬を投与する必要がある。最初はペニシリン系抗菌薬が用いられる。痛みが激しく、鼓膜所見から中耳内に膿汁が貯留し、鼓膜が膨隆している場合は、中耳の減圧のため鼓膜切開を行う。

鼓膜切開はイオントフォレーゼという方法で鼓膜麻酔後に比較的容易に外来で行えるが、鼓膜の炎症が強い場合は既に鼓膜の知覚神経が麻痺しているため無麻酔でも鼓膜切開が可能である。鼓膜切開の孔は炎症が治まったあとに自然に塞がる。

中耳炎を反復する場合(反復性中耳炎)はアデノイドなど鼻咽腔に細菌が常在し、耳管を経て中耳腔に細菌が逆行性に感染する場合と、滲出性中耳炎のように中耳腔に慢性的に滲出液が貯留している場合が考えられ、鼻咽腔の感染巣に対する治療や鼓膜チューブの留置を行う場合もある。


予防

中耳炎の予防策としては、下記のような対策が知られている。これらの予防策を実践することで、中耳炎の発症リスクを低減できるということで、その実践が推奨されている。

  • 風邪の予防
    • 中耳炎は風邪をきっかけに発症することが多い
    • 風邪にかからないように手洗いやうがいを行う
  • 鼻水の管理
    • 風邪をひいた場合、こまめに鼻水を拭き取る
    • 鼻水を溜め込まないようにする
  • 鼻の病気の治療
    • 副鼻腔炎患者は中耳炎にかかりやすい
  • 鼓膜の管理
    • 鼓膜に穴がある人
      • 中耳炎を予防するために閉鎖する手術が必要

あとがき

日本での中耳炎の有病率は、年齢により異なる。急性中耳炎は子供に多いが、それ以外の中耳炎については下記のような報告が知られている。

滲出性中耳炎は、幼少児の難聴の原因として最も多い疾患であるとされる。言語の発達する4~5歳から小学校の低学年(6~8歳:3~9%、9歳:0~6%)に多く見られるという。

滲出性中耳炎は、高齢者でも多く見られるらしい。滲出性中耳炎は、中耳で作られた分泌液が耳管から排出されず、中耳にたまってしまう病気である。高齢者では耳管の開け閉めの機能が悪くなるために滲出性中耳炎になりやすいと考えられる。

また、慢性中耳炎も高齢者に多く発症することが知られている。慢性中耳炎は、急性中耳炎や滲出性中耳炎を繰り返しているうちに持続的に中耳に炎症が起こってしまった状態である。高齢者の慢性中耳炎では免疫力の低下や抗生剤の使用に伴って、通常の抗生剤の効きにくい多剤耐性菌や真菌などが感染する頻度が増え、難治化することがあると言われている。

したがって、中耳炎の症状がある場合、特に高齢者の場合は、早期に耳鼻咽喉科を受診することが推奨されている。シニア世代は加齢によって視力の衰えが進み視覚が障害を受けている上に、中耳炎が原因で聴覚障害を引き起こしてしまっては、人生(余生)が楽しくなくなってしまう。それは何としても阻止したいものである。


【参考資料】
KOMPAS 慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト
MSDマニュアル 家庭版・プロフェッショナル版

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