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肢帯型筋ジストロフィーとは?原因と症状は?治療法

はじめに

肢帯型筋ジストロフィーは、主に体幹に近い部分の筋肉(近位筋)の筋力低下を引き起こすを特徴とする筋ジストロフィーの一種である。肢帯型筋ジストロフィーの有病率は、日本では人口10万人あたり約1.5~2.0人と推定されている。

目次
はじめに
肢帯型筋ジストロフィーとは
原因
症状
検査・診断
治療
あとがき

肢帯型筋ジストロフィーとは

肢帯型筋ジストロフィーは、筋ジストロフィーの一種で、主に体幹に近い部分の筋肉(近位筋)の筋力低下を引き起こす。原因は、遺伝性の筋疾患で、筋肉を作る働きをもつ遺伝子の異常であるとされる。遺伝子に変異が生じると、タンパク質の機能が障害されるため、細胞の正常な機能を維持できなくなり、筋肉の変性・壊死が生じる。

症状は、筋肉が収縮するとすぐに緩めることができない筋強直現象(ミオトニー)と、進行性の筋力低下・筋萎縮(筋ジストロフィー)である。また、全身にさまざまな合併症を併発する。


原因

筋ジストロフィーは、筋肉の機能に関与している遺伝子の異常によって発生し、小児期や青年期に筋力低下を引き起こす。男児に発生する場合がほとんどである。

肢帯型筋ジストロフィーには、少なくとも31の既知の亜型があり、常染色体劣性は23型、常染色体優性は8型である。全体の発生率は百万人当たり約20~40人と推定されている。男女とも等しく罹患すると言われている。

分子生物学的見地から、これらの病型の分類法が再度規定されている。常染色体優性型はLGMD 1A、-1B、-1Cなど、劣性型はLGMD 2A、-2B、-2Cなどに分類される。

いくつかの染色体座位が、常染色体優性型(5q)および劣性型(2q,4q[βサルコグリカン]、13q[γサルコグリカン]、15q[カルシウム依存性プロテアーゼであるカルパイン]、および17q[αサルコグリカン])のものに対して同定されている。

構造タンパク質(例:ジストロフィン関連糖タンパク質)又は非構造タンパク質(例:プロテアーゼ)が障害されることがある。


病状

典型的には、緩徐進行性で対称性の近位筋の筋力低下を呈し、単独の場合も顔面の病変を伴う場合があり、腱反射低下または消失がみられる。

骨盤帯または肩甲帯の筋肉群が最初に障害されることがある。常染色体優性型の発症時期は幼児期から成人期まで様々である。

常染色体劣性型の発症時期は、小児期となる傾向があり、そのような型は主として骨盤帯に分布する。


検査・診断

検査としては、血液検査、針筋電図、遺伝子検査などが行われる。筋肉に針をさして、電気の流れを調べる針筋電図や、血液を使って、遺伝子に異常がないか調べる遺伝子検査が行われる。

診断は、特徴的臨床所見、発症年齢、および家族歴により示唆され、第一の確定検査として末梢血リンパ球から採取したDNAの変異解析(遺伝子検査)が必要となる。

筋肉の組織学的検査、免疫細胞化学検査、ウェスタンブロット法による分析も実施されることがある。


治療

現在の医療技術では、肢帯型筋ジストロフィーの根治療法は残念ながら存在しない。治療は、機能維持および拘縮予防が中心となる。リハビリテーションなどで病気の進行を遅らせるのが目的になっている。

American Academy of Neurologyが発表したガイドラインでは、心合併症リスクの高い新規診断の患者は心症状がなくとも心臓の評価を受けさせるために紹介するよう推奨している。

呼吸不全リスクの高い症例では肺機能検査を受けさせるべきとされている。理想的には全例を、神経筋疾患の専門知識をもつ総合クリニックに紹介すべきであるとされる。

現在、研究として行われている治療以外では、遺伝子治療、筋芽細胞移植、ミオスタチンに対する中和抗体、および成長ホルモンのどれも治療方法としては残念ながら確立されていない。


あとがき

肢帯型筋ジストロフィーの治療薬の研究開発については、下記のような興味深い情報がある。

原因遺伝子カルパイン3の変異によって発症する肢帯型筋ジストロフィーLGMD 2A(常染色体劣勢型の1つ)の治療薬開発は、アメリカのサレプタ社などが手がけており、日本でも発症メカニズム解明の研究が始まっている。

また、米国の小児国立病院を中心とした研究グループは、肢帯型筋ジストロフィーLGMD 2B(常染色体劣勢型の1つ)に対する新しい遺伝子治療法を開発したらしい。まだマウスの研究の段階であるが、開発した遺伝子治療ベクターを低用量で1回注射することで、筋肉の変性が減り、損傷した筋線維の修復能力が回復したということだ。

これらの研究開発が進み、治療薬が医療の現場に早く届けられることを期待したい。


【参考情報】
MSDマニュアル 家庭版・プロフェッショナル版
肢帯型(LGMD)2Aの研究 日本でも | 一般社団法人 日本筋ジストロフィー協会 (jmda.or.jp)
肢帯型筋ジストロフィー2Bに対する新しい遺伝子治療法を開発、マウスで効果を確認 – 遺伝性疾患プラス (qlife.jp)

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