はじめに
人工知能(AI)に奪われる可能性の高い職業があるなら、AIに仕事を奪われにくい職業もあるはずである。AIによって奪われる可能性が低い職業について考えてみたい。
人工知能(AI)とは?
人工知能(AI)とは、コンピューターやそのシステムが私たち人間の知能を模倣した技術のことである。具体的には、主として下記のような4つの能力を重ね持つコンピューターシステムのことを指しているようである。
- 学習能力
- データからパターンを学び、経験をもとに新しい情報を理解する能力を指す
- 推論能力
- 複雑な問題を解決するための論理的な考え方や判断を行う能力を指す
- 理解能力
- 自然言語や画像などの情報を認識し、解釈する能力を指す
- 適応能力
- 新しい状況や環境に応じて、自らの行動や判断を変える能力を指す
AIは、医療、金融、教育、エンターテイメントなど、さまざまな分野で活用され、私たちの生活を便利で豊かにすることが期待されている。
人工知能(AI)の進化とは?
AIの進化は、コンピューター技術の向上とその新しい応用分野の広がりを指した用語である。AIの進化には、具体的に下記のような技術的な向上・進化と、産業への応用が含まれている。
学習能力の向上
- 深層学習(Deep Learning)
- 複数のレイヤーを持つニューラルネットワークが、より複雑なデータパターンを学習する
- 強化学習(Reinforcement Learning)
- 環境からのフィードバックを基に行動を最適化する
認識能力の進化
- 自然言語処理(NLP)
- 人間の言葉を理解し、生成する能力が向上する
- チャットボットや翻訳アプリがより自然な会話を実現する
- 画像認識
- 写真やビデオからの情報を解析し、特定の物体や人を認識する技術が進化する
推論能力と意思決定の進化
- 意思決定支援システム
- 医療や金融などの分野において、より正確な予測と助言(提案)を提供できるようになる
- 自律システム
- 自動運転車やドローンが、周囲の状況をリアルタイムで判断し、自動で安全に動作できるようになる
応用分野の拡大
- 医療
- 診断や治療法の提案
- 手術支援など
- エンターテインメント
- ゲーム開発
- 映画制作
- 音楽生成など
- 日常生活
- スマートホーム
- パーソナルアシスタント
- 健康管理アプリなど
これらの進化が組み合わさることで、AIはますます人間の生活を便利で豊かにするツールになっていくと期待されている。
AIに代替される可能性の低い職業とは?
AIの進化の影響をあまり受けない可能性があるとされる職業は、一般的に複雑で、単純な繰り返しがほとんどない非定型的な仕事が大部分を占めているような業種が多いようである。具体的にどのような職業であるのか、既にメディアで取り上げられて職業を中心に考察していきたいと思う。
創造的な職業
アーティスト、作家、ミュージシャンなどの創造的な職業は、AIが模倣するのが難しい独自の創造力を必要としている。
確かに創造的な職業においては、個々の人間が持つ独自の視点や経験、感情が重要となっている。AIが生成するコンテンツはデータに基づいているが、人間が持つ感性や独創性はまだ追随できない領域であると思う。
しかしながら、創造的な職業と言えども、AIの進化によってある程度の影響を少なからず受けるはずである。例えば、AIが絵画や音楽、文章を生成することができるようになっている。クリエイターにとっては、AIをツールとして活用し、より高い次元での創作活動を行うことが求められる時代になっているのではないだろうか。
ケア職
看護師や介護福祉士など、人間の感情や共感を必要とする職業は、AIでは代替できないとされている。
確かにケア職の根幹にある人間的な要素、例えば患者とのコミュニケーションや感情的なサポートはAIでは代替できない。
しかしながら、看護師や介護福祉士の仕事は、AI技術を活用してより高いレベルのケアを提供することに集中できるようになるのではないだろうか。
例えば、下記ような場面ではAIの活用が期待されている。
- 患者データの管理
- AIシステムが患者データを管理し、効率的に処理する
- そのため、看護師や介護福祉士が時間を節約できる
- 健康モニタリング
- 患者のバイタルサインをAIがリアルタイムでモニタリング
- 異常があればすぐに通知する
- ロボティックアシスト
- 介護ロボットが日常のサポートを提供する
- 介護福祉士の重労働を軽減することができる
教育職
小・中・高の学校の教師や大学の教授など、学生との対話や指導が重要な職業は、人間の知識とコミュニケーションが不可欠であるとされている。
確かに、教師や教授の役割には、学生との対話や感情的なサポート、クリエイティブな教育方法の実施などがある。これらの役割には、人間ならではの要素が欠かせないとされている。
しかしながら、教育職もAIの進化による影響を受ける分野の一つであることには変わらないはずである。例えば、AIは個別学習プランを作成したり、学生の進捗をリアルタイムでモニタリングすることで、教師のサポートを行うことができるであろう。また、AIを活用した教育アプリやプラットフォームは、学習資源を提供し、学生が自分のペースで学習できる環境を整えることができる。このようにAIが補助的な役割を果たし、教師がより効果的に学生の指導やサポートを行うためのツールとして活用できるようになるのではないだろうか。
専門職
弁護士や医師など、専門知識と判断力が求められる専門職である職業は、AIに完全に置き換えることが難しいとされる。
確かに専門職に求められる人間的な判断や感情的なサポートは依然として重要であり、AIはこれらの専門職を完全に置き換わることはできないかも知れない。
しかしながら、AIが補助的な役割を果たすことで、より効果的な業務遂行ができるようになると期待されている。
事実、弁護士や医師などの専門職もAIの進化によって影響を受ける場面が既に増えているという。例えば、弁護士の場合では、AIが法律リサーチや法律文書のレビュー、契約書の作成を効率化するなどのサポートを提供している。これにより、弁護士がより戦略的な業務に集中できるようになっている。
一方、医師の場合には、AIによる診断支援システムの提供などで画像解析や診断の補助、予後予測に役立つため、より迅速かつ正確な診断が可能となりつつある。
他の専門職であっても似たり寄ったりであり、専門職と言えどもAIがさまざまな領域でサポートを提供していることには変わりがない。要は如何にしてAIを賢く使いこなすかである。
カスタマーサービス
高度な問題解決や個別対応が求められるカスタマーサービスは、人間の柔軟性と共感力が重要であるので、AIに置き換わることは困難とされている。
しかしながら、カスタマーサービスもAIの進化によって大きな影響を受けるはずである。例えば、既に企業に導入されているAIを活用したチャットボットや自動応答システムでは、24時間体制で顧客の質問や問題に対応できるようになっているため、企業の運営効率を大幅に向上させているという。
とはいえ、複雑な問題や感情的なサポートが必要な場合には、人間のカスタマーサービス担当者が不可欠である。AIはルーチン業務を処理する一方で、人間のスタッフがより高度な対応に専念できるような人間とAIの共存が図られるべきである。つまり、AIの進化によって、カスタマーサービスの質が向上し、顧客満足度が高まることが期待されるわけである。
あとがき
AIにとってかわられるリスクの低い職業というのは、AIが進化しても人間の特有の能力や感情を必要とする職業であることが多いと思われる。AIが進化する未来においても職業の需要が続くと考えられている。
では、かつて私が長らく従事していた製剤研究技術者はどうであろうか? 実は、製剤研究技術者もAIの進化によって影響を受ける分野の一つと考えられる。AI技術は、データ解析やシミュレーションにおいて特に役立つので、試行錯誤の時間が短縮され、より効率的に新しい製剤の開発に割ける時間が増大するはずである。
少なくとも大量のデータを迅速に解析できるのでデータ解析時間が短縮し、最適な製剤の組成(製剤処方)や製造方法(製造プロセス)を迅速に見つけ出すことができるであろう。
製剤の物理学的特性や化学的安定性をシミュレーションすることができ、今までのような実験の手間を省き、リスクを減らすことができるようになるかも知れない。
ただし、AIがすべての研究プロセスを置き換えるわけではなく、製剤研究技術者の専門知識や創造力が引き続き重要となるはずである。AIはあくまで研究者をサポートするツールとして活用されるにすぎない。後輩たちには、自分の仕事に誇りをもって研鑽を続けて行って貰いたい。
では、今現在の私の仕事、コンサルタントはどうであろうか? 実は、コンサルタント業務もAIの進化によって影響を受ける可能性はある。例えば、データ分析や報告書作成などの業務は、AIによって効率化されるであろう。しかし、戦略やアイデアの立案やクライアントとのコミュニケーションなど、人間の判断や創造性が求められる部分については、引き続き重要な役割を果たすことができると思われる。
AIはコンサルタントにとっては脅威ではない。むしろAIを補助として積極的に活用し、より高度な問題解決や戦略的思考が求められる仕事に集中できるようにすべきであると思う。
最後に、私が近い将来目指したいトラベルフォトライターという職業はどうであろうか?
実は、トラベルフォトライターもAIの進化の影響を受けると思われる。AI技術が進化することで、写真編集や記事作成の一部を自動化できるようになる。例えば、AIは画像認識や自動補正機能で写真を簡単に編集でき、記事の一部を生成することも可能であるからだ。しかし、そんな画像や記事に読者は魅力を果たして感じるだろうか。
トラベルフォトライターの独自性や創造力、人間の視点からの旅の経験を伝える能力は、AIでは再現できない部分である。確かにAIがサポートすることで、仕事をより効率的に進めることで、トラベルフォトライターは人間らしい視点やストーリーテリングの部分に集中できるのではないだろうか。