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決して侮ってはいけない頭痛のサインとその原因の重篤疾病とは?

はじめに

頭痛(headache)は、誰でも一生に一度は経験する症状だと思う。脳に病気があるのではないか、このまま治まらなかったらどうしようといった不安をかき立てられる症状ともいえる。比較的軽ければ、我慢して耐えることもできる。しかし、いきなり頭をバットで殴られたような突発的な頭痛は、くも膜下出血の症状であったり、発熱と共に頭全体が耐え難く痛いときには髄膜炎が疑われたりと、致命的になるような病気が背後に隠れていることもある。したがって、決して油断をしてはいけない。

頭痛の発作が繰り返される場合には、日常生活と社会生活が大きく損なわれてしまう。家族関係や交友関係にひびが入ったり、仕事がうまくいかずに経済的な損失を引き起こしたりすることもある。したがって、頭痛は個人の問題にとどまらず社会的な問題であるかも知れない。慢性の頭痛の場合には、適切な診断のもとに薬物治療を受ければ、症状が大幅に軽減することも期待できる。


<目次>
はじめに
頭痛とは
頭痛を伴う重篤疾患
  • くも膜下出血
  • 髄膜炎
  • 脳腫瘍
  • 副鼻腔炎
  • 慢性硬膜下血腫
  • 動脈解離
コントロールできる頭痛疾患
  • 片頭痛
  • 緊張型頭痛
  • 群発頭痛
検査・診断
治療
あとがき

頭痛とは

頭痛は、頭部の一部あるいは全体の痛みの総称で、慢性的に発作する場合は「頭痛症」と呼ばれことがある。頭痛の種類には、一次性頭痛と二次性頭痛がある。

一次性頭痛は、病気であり、頭痛(発作)を繰り返す(持続する)ことが問題である慢性頭痛症を指す。例えば、片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛などが該当する。

一方、二次性頭痛は、脳や他の疾患が原因となる頭痛で、その原因となる疾患が治療されると、頭痛も改善する。例えば、脳腫瘍や脳炎などの病気の症状が該当する。

ここで注意すべきは、一次性頭痛だと思って、二次性頭痛の原因(しばしば重篤な疾患である場合が多い)を見逃してしまうことである。


頭痛を伴う重篤疾患

原因を見逃すと大変な結果になる頭痛は下記のとおりである。


くも膜下出血

動脈に出来た瘤 (動脈瘤)が破裂してくも膜下腔という場所に出血が引き起こされる。非常に突発的な頭痛で、発症の時間をはっきり記憶している患者もいるくらいである。頭痛は、「バットで殴られたよう」と形容されるぐらいの突然の激痛である。意識を失ったりすることもある。動脈瘤が再度破裂したり、血管が縮んで脳への血流が悪くなったりすると、病状が急激に悪化することもある。


髄膜炎

脳を囲む髄液腔や髄膜という膜に炎症が起こる疾病で、多くの場合ウイルスや細菌などの病原体が引き起こす。激しい頭痛を引き起こし、発熱や寒けなどの症状も伴う。診断が遅れると、重症化して脳自体に障害が及ぶこともある。


脳腫瘍

脳に腫瘍ができた場合に、大きくなると脳を囲む髄膜が引き延ばされたりして頭痛を引き起こす。脳腫瘍は段々大きくなるので、頭痛も時間と共に増強する傾向がある。朝起きたときに、頭痛がするといった訴えが起こることもある。腫瘍内に出血すると急激に頭痛が引き起こされることがある。


副鼻腔炎

副鼻腔とは、鼻腔に連なる空洞で、鼻の奥や上あごの奥などに広がっている。ここに、細菌感染が起こって、急激に炎症が起こると激しい痛みが起こる (急性副鼻腔炎)。髄膜炎を合併することもある。また、慢性的に副鼻腔炎が生じていることもあり、これが慢性の頭痛の原因になっていることもある。


慢性硬膜下血腫

老人やアルコール多飲者によく見られる。知らないうちに転んで頭を打ち、脳と頭蓋骨の間のスペースに少しずつ出血して、やがては脳を圧迫するようになる。慢性の頭痛だけでなく、麻痺や歩行の障害などの運動の症状や、物忘れをすることもある。


動脈解離

大動脈解離は、大動脈内膜の裂口を介して壁内に血液が急激に流入することで、内膜と中膜が分離して偽腔(チャネル)が生じる病態である。

症状と徴候には、胸部または背部に突然生じる引き裂かれるような痛みがあるほか、解離により大動脈弁逆流や分枝動脈の循環障害を来すこともある。 血管が裂けて頭痛が生じることがある。

一番多いケースは、椎骨動脈という血管が裂けて首のうしろから後頭部にかけて激痛が生じるものである。脳梗塞を合併して、しびれ・めまい・飲み込みの異常・呂律のまわりが悪いといった症状がよく見られる。このような場合、出来るだけ早く病院で治療を開始しないといけない。


コントロールできる頭痛疾患

見逃されても致死的になるわけではないが、うまく治療薬を使うと症状がコントロールできる頭痛疾患には下記に示すような頭痛疾患がある。


片頭痛

慢性の頭痛というとすべて片頭痛と考えてしまうほど有名で、頭痛の代表選手のような疾患である。片頭痛は発作性の一次性頭痛である。症状は、典型的には4~72時間持続し、重症例もあり得る。

片頭痛の正確な原因は解明されていないが、セロトニンという神経系や血管で重要な役割をする物質がうまく働いていないと考えられている。

疼痛はしばしば一側性、拍動性で、労作により増悪し、悪心、光、音、または匂いに対する過敏などの症状を伴う。前兆は約25%の患者に起こり、通常頭痛の直前に生じるが、ときに頭痛の後にも同様の症状が起こる。頭痛の発作を繰り返すのが片頭痛の大きな特徴であるが、典型的な発作というのは次のようなものである。

片頭痛の典型的な発作
予兆(発作の前触れ)とよばれる症状(何となく変な感じがする、気分がすぐれないなど )が起こる
前兆と呼ばれる症状 (視野の一部がキラキラと光ったり、半身がしびれたり)が見られる
頭の片側がズキンズキンと脈が打つように痛み始める。 同時に、気分が悪くなり、吐き気がする。 さらに、周りの光や音がうっとうしくなる
頭痛と共に、上述の症状も次第に悪化していく。通常、患者は暗い部屋でじっとしていたいと思う。
このような状況に至るので、日常生活や社会生活は相当な影響を受ける。発作は数時間から数日続くが、やがては治まる。
発作は繰り返されるので頭痛再発に対する恐怖感を抱くようになる。発作は、月経、寝不足あるいは過眠、ストレスからの解放などが引き金になる。また、低気圧が近づいてくると発作が起きるという患者もいる。

緊張型頭痛

慢性頭痛の原因として多いものである。典型的には、頭の両側が締め付けられるように痛くなり、片頭痛と異なり吐き気はあっても軽度である。頭を動かしても頭痛が増強しないのが、片頭痛と異なる。

肩こりが同時に見られることが多く、筋肉を圧迫すると普通の人より痛み (圧痛)を強く感じる人が多い。この現象は僧帽筋などによく見られる。

ストレスや、長く同じ姿勢をとって特定の筋肉に負担がかかっていることが悪い影響を与えているようである。しばしば、うつ状態にある患者もいて、うつ状態が頭痛を増悪させ、さらに頭痛があることがうつを増悪させるといった悪循環が見られる。


群発頭痛

片頭痛や緊張型頭痛に比較して稀な疾病である。しかし、若年から中年の男性に好発する。

典型的には、深夜に片目の奥がえぐられるような激痛がして目が覚める。痛みのある側に、鼻水や涙が出たりする。また、片頭痛と異なるのは、頭痛を起こしている際に、じっとしているときよりは痛みがつらくて、いてもたってもいられない状態にあることである。

頭痛は、連日のように起こり、その期間を群発期と呼ぶ。余りにつらい症状であるため、この時期には医療機関を自発的に受診することがほとんどである。


検査・診断

くも膜下出血
頭部のCTや髄液検査
髄膜炎
髄液検査
脳腫瘍
頭部のCTやMRIなどの画像診断
副鼻腔炎
CTやMRIで診断可能
慢性硬膜下血腫
CTで診断
動脈解離
画像検査(経食道心エコー検査,CT血管造影,MRI,大動脈造影)
片頭痛
臨床的評価。片頭痛の診断は,特徴的な症状の存在と系統的な神経学的診察を含めた身体所見が正常であることに基づく。
緊張型頭痛
緊張型頭痛は、検査で診断されるものではない。緊張型頭痛に似ている他の二次性頭痛が疑われる場合、画像検査や血液検査を行う。
群発頭痛
群発頭痛は、脳などの疾病が原因で引き起こされるわけではないため、画像検査や血液検査などをしても明らかな異常が発見されることはない。そのため、頭痛の頻度、強さ、部位、随伴する症状などの要因を総合的に判断して診断が下す。

治療

くも膜下出血
治療は、多くの場合は脳神経外科医が担当する。最近、同じような突発する頭痛 (雷鳴頭痛と呼ばれる)が繰り返し起こる疾病として可逆性脳血管攣縮症候群が注目されている。入浴やいきみなどが引き金になって、頭痛発作が見られる。特別な検査や治療法が必要なので、この疾病が疑われる場合には神経内科専門医を受診した方がよい。
髄膜炎
細菌性の髄膜炎の場合には、原因となった細菌の同定と適切な抗菌薬の選択が治療の鍵になる。
脳腫瘍
悪性脳腫瘍の場合は、無症状であっても摘出が可能な場所であれば手術による摘出が治療の第一選択となる。そのうえで、腫瘍の組織型に合わせて放射線治療や化学療法を組み合わせた治療を行う。
副鼻腔炎
薬物療法やネブライザー療法などの保存的治療によって改善する。急性の場合には、抗菌剤や鼻の炎症を抑える点鼻薬などが使用する。
慢性硬膜下血腫
手術による血腫の除去が基本となる。局所麻酔でチューブを脳表面へと挿入して血腫を除去する。
動脈解離
出来るだけ早く病院で治療を開始しないといけない。 治療では常に、積極的な血圧コントロールに加えて、解離の進行をモニタリングする画像検査を繰り返し行う。上行大動脈解離と特定の下行大動脈解離には、大動脈の外科的修復および人工血管の留置が必要である。特定の患者では血管内ステントグラフト内挿術が可能であり、特に解離が下行大動脈に及んでいる場合によく用いられる。5分の1の患者が病院到着前に死亡し、最大で3分の1が術中または周術期の合併症により死亡する。
片頭痛
トリプタン製剤、ジヒドロエルゴタミン、制吐薬および鎮痛薬による。予防的措置としては、生活習慣の改善指導(睡眠習慣や食生活など)および薬物療法(β遮断薬、アミトリプチリン、トピラマート、ジバルプロエクス)がある。
緊張型頭痛
治療は、首や肩周辺の筋肉をほぐす体操などを励行し、抗不安薬 (同時に筋弛緩作用あり)や筋肉の緊張を軽減する薬を処方します。うつが合併している場合には、抗うつ薬も用いられる。
群発頭痛
治療は、発作の最中であれば100%酸素吸入やスマトリプタンの皮下注射を行う。前述のように、スマトリプタンの自己注射キットがあるので、うまく利用すれば自宅でも満足な治療が可能である。発作の予防に、カルシウム拮抗薬などが使用される。また、飲酒が引き金になるので、群発期には禁酒する必要がある。

あとがき

頭痛は、頭部の一部あるいは全体の痛みの総称で、頭痛の種類には一次性頭痛と二次性頭痛があることを理解した。

特に一次性頭痛であると自己判断して、二次性頭痛であるより重篤な疾患のサインである頭痛を見落とさないことである。普段と違う頭痛は要注意である。そのためには一般的な頭痛と重篤な疾患のサインである頭痛を見誤らないことが重要となる。

私たちが、よく体験することがある頭痛の種類には下記のような頭痛が知られている。

  • 緊張性頭痛
    • ストレスや姿勢の悪さによる頭痛
    • 頭頚部の筋肉の緊張による頭痛
  • 片頭痛
    • 頭の片側に激しいズキズキする痛みが特徴
    • 吐き気、嘔吐
    • 光と音に対する過敏症を伴う場合がある
    • 視覚障害などの他の症状を伴うこともある
  • 群発性頭痛
    • 非常に痛みを伴うタイプの頭痛
    • サイクルまたはクラスターで発生する
  • 副鼻腔頭痛
    • 副鼻腔の炎症または感染によって起こる頭痛
  • リバウンド頭痛
    • 鎮痛剤の乱用によって引き起こされる頭痛
  • ホルモン頭痛
    • ホルモンレベルの変動に関連する頭痛
  • 運動頭痛
    • 身体活動中または身体活動後に感じる頭痛

いずれにせよ過去に経験したことのないような頭痛を感じた場合や、原因不明の頭痛が続くような場合には、早めに医療機関を訪ねて、検査・診断をしてもらい、治療を開始した方が良い。


【参考資料】
KOMPAS 慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト
MSDマニュアル 家庭版・プロフェッショナル版