はじめに
小児にとって「薬を服用する」という行為は、時に大きなストレスになることがある。特に錠剤は小児にとってはサイズが大きくて、味やにおいが不快であることもあり、服薬拒否につながる場合が多い。そんな中、直径2〜4mmのミニタブレットが注目を集めている。飲みやすく、用量調整がしやすいため、この剤形は小児用製剤の未来を切り拓く存在である。
しかしながら、小さな錠剤を安全かつ確実に保管・服用するためには、一次包装容器の工夫が不可欠である。そのため、包装設計には多くの配慮、例えば、誤飲防止、湿気からの保護、取り出しやすさ、服用時の安全性などが求められている。
このように、ミニタブレットは飲みやすさや用量調整のしやすさから、小児用製剤の新たな選択肢として注目を集めているが、実は「包装設計」もその普及を左右する重要なカギとなる!
本稿では、ミニタブレットの特性に合わせた包装の工夫に着目してみたいと思う。
| <目次> はじめに ミニタブレットの特性と包装の課題 誤飲防止と安全性 分包性と投与管理 湿気・光・酸素からの保護 視認性と識別性 包装設計に求められる創意工夫 ユニットドーズ包装(1回量ごとに分包) 押し出しやすいPTPシート 防湿対策の強化 チャイルドフレンドリーなデザイン 包装も“服薬アドヒアランス”の一部! あとがき |
ミニタブレットの特性と包装の課題
ミニタブレット(mini-tablets)はその名の通り、直径2〜4mmの極小サイズの錠剤である。この小ささが飲みやすさの秘訣であるが、包装設計にはいくつかの課題もある。例えば、以下のようなリスクや問題点である。
- 誤飲・誤用のリスク:
- 小さすぎて見落としやすい
- 誤って大量に摂取してしまう可能性もある
- 取り出しにくさ:
- 小児や高齢者にとって、シートからの取り出しが難しいこともある
- 湿気や破損への弱さ:
- 小さい分、単位表面積が大きくなり、外部環境(湿度、光、酸素など)の影響を受けやすい
医薬品の一次包装(製品に直接接触する包装)は、GMPなどの厳しい規制基準に準拠して設計される必要がある。製品のトレーサビリティやラベル表示、さらに改ざん防止やチャイルドロック機能の組み込みなど、安全性だけでなく、使用者保護を意識した設計が求められる。
より具体的な話をすれば、ミニタブレットの一次包装容器には、以下のような設計課題がある:
誤飲防止と安全性
小児が誤って大量に摂取しないよう、チャイルドレジスタンス機能を持つ容器が求められる。開封に一定の力や手順が必要な設計が理想的である。
分包性と投与管理
1回分ずつ分包されたPTP包装やスティック包装は、保護者が投与量を管理しやすく、外出時にも便利である。
湿気・光・酸素からの保護
ミニタブレットは表面積が大きいため、吸湿性や光劣化のリスクが高まる。アルミラミネート材や遮光性フィルムの使用が有効であるとされる。原薬が酸化されやすい場合には、酸素からの保護も必要になるかも知れない。
視認性と識別性
小児や保護者が誤って他の薬と混同しないよう、色分けやピクトグラム表示などの工夫が必要である。
包装設計に求められる創意工夫
ミニタブレットの特性を活かしつつ、安全かつ使いやすい包装を実現するために、さまざまな工夫が進められている。例えば、以下のような包装設計上の工夫である:
ユニットドーズ包装(1回量ごとに分包)
服用回数や用量に応じて1回分ずつ個包装することで、誤飲や過量服用を防止できる。保護者や医療従事者にとっても管理がしやすくなるはずである。
使いやすさと患者ニーズへの配慮としても、小さいミニタブレットをユーザーが容易に取り出せることが重要となる。個包装によって、1回分ずつの供給が可能となり、誤服用や取り扱いの難しさが軽減されるはずである。
押し出しやすいPTPシート
従来の錠剤用PTPシートでは取り出しにくいこともある。そこで、柔らかくて押し出しやすい素材や、大きめのブリスター設計が検討されている。
開封しやすい設計とは、高齢者や指先が不自由な方でも安心して使用できるような工夫を指す。プッシュプル式や簡単に剥がせるようなデザインの採用は、高齢者や小児が無理なく取り出せる工夫になっているはずである。
ミニタブレットが素錠である場合、ブリスターパックは1錠ごとに専用のキャビティ(穴)に入れることで、他錠との接触や摩擦による破損リスクを軽減させることができるかも知れない。キャビティはミニタブレットの寸法に合わせて精密に設計され、形状や深さが最適化される必要がある。
防湿対策の強化
ミニタブレットは比較的湿気に弱いため、防湿対策として高バリア性フィルムや乾燥剤入りパッケージの採用が進んでいる。
ブリスターパックでは、内側にプラスチックフィルム、外側にアルミ箔といった多層構造になることが一般的である。この構造により、湿度、光、酸素などの外部環境からの影響を最小限に抑え、薬剤の安定性を保持できるようになる。しかしながら、防湿対策を強化すればするほど、開封しにくくなるという不便さが顕在化するのは困ったものである。
そこで、製品特性に合わせた包装材の選定が重要となる。つまりは、有効成分の安定性や錠剤自体のコーティング、吸湿性などの特性に応じて、使用する包装材(例えば、高バリア性のアルミ箔、特定の樹脂フィルムなど)が選ぶことになる。これにより、製品の寿命や品質維持が図られるとともに、輸送・保管時のリスクを最小限に抑えることが可能となる。
チャイルドフレンドリーなデザイン
パッケージにキャラクターや色分けを取り入れることで、子どもが自分で薬を認識しやすくなり、服薬意欲の向上にもつながるかも知れない。
包装も“服薬アドヒアランス”の一部!
包装は単なる「入れ物・容器」ではなく、服薬アドヒアランスを支える重要な要素と考えるべきである。特に小児用製剤の場合には、薬を「飲みたくなる」かどうかは、見た目や使いやすさにも大きく左右される。
包装は単なる保護手段ではなく、服薬体験を支えるインターフェースであるべきだと思う。開けやすさ、持ち運びやすさ、視覚的な安心感など、ユーザー視点で設計することが、服薬アドヒアランスの向上につながる。そうは言っても、すべてを満たす包装設計は容易ではない。実装化のためには、何を優先し、何を我慢するかの選択がきっとあるはずだと思う。
製剤と包装が一体となって、子どもたちの健康を支える。そんな未来が、ミニタブレットには詰まっていると考えると、現役を離れた私でもワクワクしてしまう。
大成化工(株)が開発した「ペン型ミニタブレット計数取り出し容器」は、アジア包装連盟(APF)主催の「アジアスターコンテスト2024」において「AsiaStar 2024」、日本包装技術協会主催の「日本パッケージングコンテスト 2024」において「テクニカル包装賞」をを受賞したらしい。

この「ペン型ミニタブレット計数取り出し容器」の特徴は:
- 計数機能付き
- 透明な樹脂で中身が見えるから、必要な錠数を目視で確認できる
- 簡単取り出し機構
- 小児でも使いやすいように、押し出しやすい設計
- コンパクトで携帯性◎
- ペン型だから持ち運びもラクラク!
この容器は、まるで「魔法の杖」のように、必要な錠剤数をぴったり出してくれるという。この容器が日本市場でも活躍する日が待ち遠しいものである。
あとがき
ミニタブレットは、そのサイズがもたらす特有のリスクに対処するため、従来の医薬品とは異なる、より微細で個別対応型の包装設計が求められている。他の医薬品包装は、製剤の性状や使用環境に応じて一括管理や大量包装が可能である場合が多いのに対して、ミニタブレットはそれぞれの単位を厳重に保護するための専用の製品設計がなされる点が大きな違いであろう。
日本ではまだミニタブレットの普及が海外に比べて遅れている。しかしながら、薬価制度改革や製剤技術の進化により、今後の展開が期待されている。
包装設計もまた、製剤の価値を最大限に引き出す重要な要素である。小児の笑顔につながる薬づくりの一環として、さらなる工夫が求められることだろう。