はじめに
風邪は治ったはずなのに、咳だけがずっと続いている、あるいは夜になると咳がひどくて眠れない… そんな経験、皆さんはありませんか?
咳が長引くと「もしかして喘息?」と思いがちであるが、実は気管支喘息とよく似た症状をもつ病気がいくつも存在することが知られている。
本稿では、咳が止まらない原因として考えられる“喘息以外”の病気について、分かりやすく解説したいと思う。
| <目次> はじめに 気管支喘息とは? 喘息と間違えやすい病気 咳喘息 アスピリン喘息 百日咳 後鼻漏症候群 逆流性食道炎(GERD) 慢性閉塞性肺疾患(COPD) 感染後咳嗽 咳が続く際のチェックポイント 問診時に医師に伝えるべきこと あとがき |
気管支喘息とは?
まずは基本から! 気管支喘息は、気道が慢性的に炎症を起こし、咳・息苦しさ・喘鳴(ゼーゼー音)などの症状が繰り返し現れる病気である。詳しくは、「気管支喘息を悪化させる見えない敵――ストレスと喘息の意外な関係に要注目!」をご覧ください。
しかし、気管支喘息でみられる特徴的な咳の症状は、他の病気でも起こることがあるので、注意する必要がある!何故なら、治療法が異なり、誤った治療法では完治しないからである。
喘息と間違えやすい病気
気管支喘息に似た症状が現れる疾病として下記のようなものが知らせている。
咳喘息
咳喘息【せきぜんそく】は、気管支喘息と同じく気道の狭窄や気道の過敏性によって起こる疾病である。しかし、激しい咳は出るものの呼吸機能は正常であり、気管支喘息のように呼吸困難や喘鳴などは伴わないので気管支喘息とは区別される。
- 特徴:
- 咳だけが続くタイプの喘息
- ゼーゼー音や息苦しさはなし
- ポイント:
- 夜間や早朝に咳が悪化しやすい
- 気管支拡張薬が効くことが多い
しかしながら、咳喘息患者の3人に1人は気管支喘息に移行すると言われており、適切な治療が必要となる。
アスピリン喘息
アスピリン喘息は、アスピリンなどの酸性非ステロイド薬などの服用によって喘息様発作を主体とする症状が現れる疾病である。
アスピリン喘息は成人喘息の10%を占めており、治療薬により重度の呼吸困難などの症状が現れる可能性があるため、投薬には注意が必要である。
発症の原因物質として非ステロイド性抗炎症薬以外にも食品の着色剤、コハク酸エステル化合物の添加物などが知られている。
百日咳
百日咳は、主に百日咳菌やパラ百日咳菌により引き起こされる、激しい咳を特徴とした感染症である。
乳幼児期に百日咳の予防接種を行うため発症することは多くはない。しかし、気管支喘息と区別すべき疾病(感染症)である。
後鼻漏症候群
後鼻漏【こうびろう】症候群とは、鼻水が前に出てこずに、喉の奥に流れ落ちていく状態のことを指す。 この鼻水が喉を刺激して、咳や痰、喉のイガイガ感を引き起こすのが「後鼻漏症候群」である。
- 特徴:
- 鼻水が喉に流れ込み、咳や痰の原因に
- ポイント:
- 風邪やアレルギー性鼻炎のあとに起こりやすい
- 喉の違和感がヒント!
主な症状には以下のようなものがある:
- のどの奥にネバネバしたものが流れてくる感じ
- 痰がからむような咳
- しかし、で痰は出にくい
- 喉の違和感やイガイガ
- 咳払いが増える
- 朝起きたときに咳が出やすい
風邪が治った後も咳が続くとき、実はこの後鼻漏が原因であることも多い。
逆流性食道炎(GERD)
胃食道逆流症(GERD)は、胃酸を多く含む内容物が食道内に逆流する疾病である。胃酸の逆流が刺激となり、慢性的に咳がでることがあるため、気管支喘息と見分けづらい場合がある。
- 特徴:
- 胃酸が食道に逆流し、咳や胸やけを引き起こす
- ポイント:
- 食後や横になると咳が出やすい
- 喉のイガイガ感もある
詳しくは、「胸焼け・喉の痛み・吐き気は逆流が原因かも?胃食道逆流症に気づくサインか?」をご覧ください。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
- 特徴:
- 主に喫煙者に多く、咳・痰・息切れが続く
- ポイント:
- 喘息と似ているが、進行性で治療法が異なる
詳しくは、「慢性閉塞性肺疾患(COPD)は予防できる病気である!禁煙が未来を変える第一歩」をご覧ください。
感染後咳嗽
感染後咳嗽【かんせんごがいそう】は、ウイルスや細菌などの感染症にかかり、感染症が治癒したあとも咳が長引くことで発症し、気管支喘息と似たような症状であるため診断の際には鑑別が必要となる。
- 特徴:
- 風邪やインフルエンザのあと、咳だけが数週間続く
- ポイント:
- 自然に治ることもあるが、長引く場合は受診を!
咳が続く際のチェックポイント
- 咳が3週間以上続いている
- 夜間や早朝に咳がひどくなる
- 痰が少ないのに咳が止まらない
- 市販薬が効かない
- 喫煙歴がある、または胃もたれ・胸やけがある
これらに当てはまる場合は、自己判断せずに早めに医療機関を受診するのが大切である!
問診時に医師に伝えるべきこと
- 咳が始まったのはいつ頃からか?
- どんなときに咳が出やすいか
- 例:夜間、運動後、食後など
- 痰の有無
- 運動後、食後など
- 色、量は?
- 喘鳴(ゼーゼー音)はあるか?
- 息苦しさはあるか?
- 風邪やインフルエンザの後か?
- 喫煙歴やアレルギー歴はあるか?
- 市販薬や処方薬を使ったか?
- 効果はあったか?
あとがき
とにかく、咳の正体を知って、正しく対処することが重要である!
咳が長引くと不安になるが、原因はひとつではない。 「喘息かも?」と思っていたら、実は別の病気だった…なんてこともよくある話である。
だからこそ、咳のパターンやタイミングに注目して、必要なら専門医に相談することが大切である! 正しい診断とケアで、毎日をもっとラクに、元気に過ごして行きたいと思いませんか。
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