はじめに
尿路結石の患者数は世界的に増えており、食生活の変化や生活習慣の乱れが影響していると考えられている。男女を問わず、肥満や生活習慣病を発症している人が尿路結石になりやすいと言われている。
また、尿路結石の発症は、加齢とも関連があるようだ。男性は40代での発症が最も多く、女性は閉経を迎えた後、50~70代になってから発症しやすくなると言われている。加齢に伴い、腎臓に血液を送り込む動脈が狭くなる。糸球体につながる細い動脈の壁が厚くなるため、残っている糸球体の機能も低下していく。これらの変化は、尿路結石の発症に影響を及ぼす可能性があるとされる。
尿路結石は、尿の流れの停滞、尿路の感染、内分泌や代謝の異常などが影響しているとされる。また、尿が濃縮されると結石ができやすくなると言われている。
尿路結石は非常に痛いとされ、特に、尿管結石は尿路結石の中で最も激しい痛みを伴うらしい。結石が尿管に挟まった結石が尿の流れをせき止めて、腎臓内の圧力が上昇することで引き起こされれる痛みは、結石が挟まった側の側腹部から下腹部にかけて刺すような痛みであるとされる。
通常、痛みは突然現れて、身体を動かしても、じっとしていても改善しないらしい。2~3時間程度も痛みが続くことが多いらしいから、できることなら体験はしたくないものである。痛みが激しすぎて、吐き気や冷や汗を伴うこともあると言われている。そんな痛みは想像だにしたくない。予防対策があるなら、私は素直にそれに従うだろう。
尿路結石とは
尿路結石(urinary escones)は、泌尿器系内に存在する固形の粒子のことである。結石は疼痛、悪心、嘔吐、および血尿を引き起こすことがあるほか、続発性の感染から悪寒および発熱がみられることもある。
尿路結石は、その位置により、腎結石、尿管結石、膀胱結石と呼ばれている。
結石の約80%はカルシウム結石で、残りは尿酸、シスチン、ストロバイト等、様々な物質で構成されている。
ストロバイト結石は、マグネシウム、アンモニウム、リン酸の混合物で、感染のある場合にのみ尿中で形成されるため、感染結石とも呼ばれる。
国内の年間有病率は人口10万人に対し121.3人であり、生涯罹患率は男性9.4%、女性4.1%である。これは、日本人男性の10.6人に1人、女性の24.4人に1人が一生の間に1度はかかってしまう疾病であることを意味する。
原因
尿路結石の原因は、非常に複雑である。尿路の通過障害、感染、寝たきりまたは骨折、食事(動物性蛋白質や脂肪など)、内分泌・代謝異常などの様々な要因が考えられている。
一般的な危険因子は,カルシウムもしくは尿酸塩の排泄量増加または尿中クエン酸の排泄量減少により尿中塩濃度の上昇をもたらす疾患などである。
カルシウム結石 |
危険因子は集団によって異なる。米国での主要危険因子は高カルシウム尿症であり、カルシウム結石を呈する男性の50%および女性の75%でみられる遺伝的状態であることから、結石の家族歴を有する患者では結石の再発リスクが上昇している。低クエン酸尿症は、カルシウム結石形成患者の40~50%にみられ、クエン酸が正常では尿中カルシウムと結合してカルシウム塩の結晶化を阻害することから、低クエン酸尿症によりカルシウム結石の形成が促進される。 |
尿酸結石 |
一般的には尿の酸性度上昇により発生し(尿pH 5.5未満)、またはまれに重度の高尿酸尿症によってもたらされ、これにより非解離の尿酸が結晶化する。尿酸結晶は結石全体を構成している場合もあるが、より一般的には結晶核を構成し、この上からカルシウム結石またはカルシウムと尿酸の混合結石が形成される。 |
シスチン結石 |
シスチン尿症の存在下でのみ発生する。 |
リン酸マグネシウムアンモニウム結石(ストルバイト、感染結石) |
尿素分解細菌(Proteus属、Klebsiella属)に起因するUTIの存在を示唆する。結石は感染した異物として取り扱い、完全に除去されなければならない。その他の型の結石とは異なり、リン酸マグネシウムアンモニウム結石は発生率が女性で3倍高い。 |
症状
結石のサイズは、非常に小さく肉眼では見えないものから、腎盂全体をふさぐサンゴ状結石と呼ばれるものまで様々である。
結石があっても無症状の場合もあり、特にごく小さいものはあまり症状が出現しない。
しかしながら、腎盂や尿管など尿の流れるスペースが結石で塞がれると、背中や脇腹、下腹部に痛みが生じる。痛みは2~3時間続くことが多く、その間は数分おきに痛みが強くなるというように、痛みの強弱に波があるのが特徴である。
尿の流れが悪くなることで腎臓からの尿の出口である腎盂・腎杯が腫れて水腎症を呈することがあり、腎機能を悪化させる場合がある。また、結石による刺激に伴って血尿や頻尿の症状を自覚する場合もある。
検査・診断
腹部レントゲン検査が尿路結石の診断に有用で、補助的な検査として尿検査や腹部超音波検査を施行する。
結石の構成成分によってはレントゲンに写らない場合もある。その際はCT検査や静脈性尿路造影など更なる検査で診断が可能となる。静脈性尿路造影では、造影剤が腎臓を経由し排泄されるに伴い、結石の輪郭が確認できる。
治療
結石のサイズが7mm未満の場合 |
飲水、運動などの日常生活指導のみで自然排石が期待できるので、無治療で経過観察する。排石促進を目的とする薬剤を投与することもある。ただし、繰り返す痛みの発作、尿路感染の合併、上部尿路閉塞で腎機能低下が懸念される場合には、積極的な治療を行う。 |
結石のサイズが7mm以上の場合 |
結石を体外に出すために積極的な治療を行う。積極的治療法として下記の治療から選択する。どの治療も入院が必要となります。 (1) 体外衝撃波結石破砕術(ESWL) (2) 経尿道的尿管砕石術(TUL) (3) 経皮的腎砕石術(PNL) |
体外衝撃波結石破砕術(ESWL) |
体外で発生した衝撃波を体内の結石に収束させ破砕する。切開や麻酔の必要がなく、鎮痛剤の使用のみで出来るため尿路結石治療の第一選択となっている。ほとんどの結石はこのESWL単独で治療可能であるが珊瑚状結石や大きい結石の場合はPNLを併用することがある。また下部尿管結石では骨盤の影響で上部尿管と比較し衝撃波を当てにくく、また外尿道口からの距離も近いことからTULを施行した方がよい。 |
経尿道的尿管砕石術(TUL) |
細い内視鏡を、尿道・膀胱を経由し尿管に挿入し、レーザーなどによって結石を砕きく。軟性尿管鏡の導入により、硬性尿管鏡で到達困難であった腎結石の治療も可能となった。全身麻酔または下半身麻酔が必要となる。 |
経皮的腎砕石術(PNL) |
背中から皮膚を経由して直接腎臓に約1cmの穴をあけて筒を挿入し、内視鏡を挿入できるようにした上でレーザーなどで結石を砕く。全身麻酔が必要となる。腎結結石のうちESWLで砕けないような固い結石や大きい結石が対象になる。 |
予防
尿路結石の予防策としては、下記のような対策が知られている。これらの対策を実践することで、尿路結石の再発率が60%にまで低下すると言われているので、試みる価値はありそうだ。
- 積極的に水を飲む
- 1日に2リットル以上の水分を摂取
- 汗をかいた場合はさらに補給する
- シュウ酸の摂取を控える
- 体内に入ると血液中のカルシウムと強く結合(結晶化)して、シュウ酸カルシウム結石を形成
- 食事からのシュウ酸の摂取を控えめにする
- 尿酸値を下げる
- 食事や生活習慣を見直し、尿酸値を適正な範囲に保つ
- 一定量のカルシウムは摂取する
- カルシウムは適量を摂取する
- クエン酸を摂取する
- クエン酸を含む食品を摂取する
- 生活習慣病にならない
- 健康的な生活習慣を心掛け、生活習慣病を予防する
- 肥満や高血圧など
- 健康的な飲食
- 適度な運動
- 健康的な生活習慣を心掛け、生活習慣病を予防する
- 定期的な健康診断
シュウ酸を多く含む食品でも適切に調理したり、カルシウムを多く含む食品と一緒に食べることで、シュウ酸の摂取を最小限に抑えることができるらしい。例えば、ホウレンソウはしっかりと湯がいたり、コーヒーや紅茶にはミルクを加えたりすることで、シュウ酸の摂取を抑えることができると言われている。
あとがき
尿路結石は、生活習慣病の一つに数えられている。その理由は、尿路結石は食生活との関連が深く、結石ができる人の多くが糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病予備軍であるとも言われているからである。特に糖尿病患者では、尿路結石の症状がなくても結石を持っている可能性が高いらしい。
また、尿路結石は「食の欧米化」とも関連があり、尿路結石を発症する人は、やがて動脈硬化などの生活習慣病にもかかっていく傾向があると言われている。したがって、尿路結石の予防には、生活習慣を改善し、健康的な生活習慣を維持することが重要となる。
【参考資料】
KOMPAS 慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト |
MSDマニュアル 家庭版・プロフェッショナル版 |
尿路結石とはどのような病気か。生活習慣病のひとつともいわれる | メディカルノート (medicalnote.jp) |