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睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?原因と症状?治療法

はじめに

いびきは、自分では全く気付かないものであるが、自分以外の人のいびきは非常に気になる。隣にいびきをかく人がいれば、こちらはなかなか眠れないもので困ったものである。実は、私もいびきをかくらしいので、その「困ったもの」の一人である。

いびきは、睡眠中に鼻やのどの空間が狭くなり、呼吸にともなって発生する異常音のことを指す。寝ている間は全身の筋肉が緩むので、舌やのどの筋肉も緊張が低下し沈下する。舌やのどの沈下により狭くなった気道に無理やり息を通すため、鼻やのどの奥が振動していびきになるらしい。

大きないびきをかく人は「睡眠時無呼吸症候群」に注意する必要がある。睡眠時無呼吸症候群は、気道の狭窄が強く、10秒以上の呼吸停止(無呼吸)が次のような回数で認められる場合と定義されている。

  • 7時間の睡眠中に無呼吸を30回以上認める場合
  • 1時間に5回以上の無呼吸がある場合

睡眠時無呼吸症候群では、睡眠の質が低下するため、日中の眠気から仕事や学業に支障をきたすほか、眠気による交通事故や労働災害なども指摘されている。血液中の酸素濃度の低下と炭酸ガス濃度の上昇から循環器系などへの負担が増加し、血管が詰まったり、高血圧になったりする場合もあるという。

目次
はじめに
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
原因
症状
検査・診断
治療
予防
あとがき

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは

睡眠時無呼吸症候群Sleep Apnea Syndrome; SAS)は、睡眠中に長い呼吸停止が繰り返し起こって眠りが妨げられる重篤な疾病である。SASには次の3つの種類がある。

  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)
  • 中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)
  • 混合型睡眠時無呼吸症候群

閉塞性睡眠時無呼吸症候群OSA)は、睡眠時に呼吸停止を引き起こす部分的または完全な上気道閉塞エピソードから成る。

一方、中枢性睡眠時無呼吸症候群CSA)は、気道閉塞を伴わない換気ドライブの変化を特徴とする多様な病態の集合である。これらの病態のほとんどは、症状を伴わない呼吸パターンの変化を睡眠中に引き起こす。診断は臨床所見に基づき、必要に応じて睡眠ポリグラフ検査で確定する。治療は支持療法である。

混合型睡眠時無呼吸症候群は、OSAとCSAの両方の要因が複合的にみられる睡眠時無呼吸症候群である。混合型睡眠時無呼吸症候群は、たいていの場合、OSAと同じように始まり、OSAと同様の治療が行われる。

本稿では中枢性睡眠時無呼吸症候群CSA)について書く。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)については、別稿に書いたので参照して頂ければ嬉しい。


原因

中枢性睡眠時無呼吸症候群CSA)は、まれなタイプの睡眠時無呼吸症候群SAS)で、脳幹と呼ばれる部分が担っている呼吸制御機能の異常により発生する。

正常なら血液中の二酸化炭素(代謝の副産物)の濃度変化に対して、脳幹は極めて敏感に反応する。二酸化炭素の濃度が高い場合は、もっと深く速く呼吸して二酸化炭素を外へ吐き出すように脳幹から呼吸筋に信号が送られ、逆に二酸化炭素の濃度が低い場合は、呼吸を抑えるような信号が送られる。

ところが、 CSA では、二酸化炭素の濃度変化に対する脳幹の感受性が鈍くなっているため、 CSA 患者では、呼吸が正常より浅く遅くなっている。肥満がCSAの原因となることはない。

また、CSAは、高地では低圧低酸素状態のため健康な人にも発生する。

CSAは、二酸化炭素レベルおよび換気ドライブの程度に基づいて2群に分類される。高炭酸ガス血症と換気ドライブの低下を伴う原因には、甲状腺機能低下症および中枢性病変などがある。

  • 高炭酸ガス血症と換気ドライブの低下を伴う群
  • 血中炭酸ガス正常値または低炭酸ガス血症を呈するとともに換気ドライブが増加するが,無呼吸エピソード,周期性呼吸,またはその両方を伴う群

チェーン-ストークス呼吸は、 CSA の2つ目の病型に固有のパターンであり、呼吸調節中枢の固有の性質により、低酸素症およびアシドーシスに対する反応として過呼吸が生じ、その結果、再酸素化およびアルカローシスが起こり、低呼吸および無呼吸による低換気へとつながることに起因すると考えられている。


先天性中枢性肺胞低換気症候群は、新生児における特発性CSAのまれな形態であり、ヒルシュスプルング病(先天性巨大結腸症)と関連している可能性がある。症例の80~90%はPHOX2遺伝子の変異が原因である。この変異は多様な表現型をとり、臨床的に明らかなレベルの症例は優性形式で遺伝する。


症状

SAS患者は、日中でも強い眠気を催し、睡眠中には大きないびきをかいて、あえぎや息詰まり、呼吸停止などを起こし、荒い鼻息とともに突然目を覚ますことがよくある。

睡眠中の患者の症状に最初に気づくのは、通常、側に寝ている人、ルームメイト、同居人などである。いずれのタイプのSASでも、呼吸が異常に遅く浅くなることもあれば、呼吸が突然止まって(ときには最大で1分間)、また再開することもある。

いずれのタイプのSASでも、睡眠が妨害されるため、日中の眠気、疲労、易怒性、朝の頭痛、思考力の低下、集中力の低下などが生じることがある。血液中の酸素レベルが著しく低下するため、心房細動が現れ、血圧が上昇することがある。

CSAは通常は無症状であり、長い呼吸休止、浅い呼吸、または不十分な睡眠に気づいた介護者またはベッドパートナーにより発見される。高炭酸ガス血症型の患者は、日中の傾眠(ときに覚醒中の眠気と呼ばれる)、嗜眠、および朝の頭痛を経験することがある。

CSA患者では、いびきはそれほど強くはない。しかし、呼吸のリズムは不規則で、停止することがある。チェーン-ストークス呼吸(周期性呼吸)は、中枢性無呼吸の一種である。チェーン-ストークス呼吸では、呼吸が徐々に速くなった後、次第に遅くなり、短時間止まってから再び呼吸が始まる。このような呼吸のサイクルが繰り返され、各サイクルは、30秒から2分間続く。


検査・診断

中枢性睡眠時無呼吸症候群の診断は病歴に基づいて疑われ、 睡眠ポリグラフ検査 で確定される。ただし、症状がなく、SASを引き起こす可能性のある治療可能な病態(例:心不全)に対処できる場合、検査は不要な場合がある。CSAを引き起こす中枢神経系の原因を診断するため、脳または脳幹の画像検査が適応となることがある。


治療

CSAの一次治療は、基礎疾患の至適管理、ならびにオピオイドおよびその他の鎮静薬の回避である。症状のある患者の二次治療として、試験的な酸素投与または、他の治療を行っても症状がある高炭酸ガス血症型CSA患者では、非侵襲的な持続陽圧呼吸または二相性陽圧換気が可能である。


予防

中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)の予防対策としては、下記のような対策が知られている。

  • 基礎疾患の管理
    • 基礎疾患の適切な管理
    • オピオイド、その他の鎮静薬の回避
    • アルコールの回避(禁酒)
  • 適応補助換気(ASV)
    • CSAの最も有効な治療法
  • 酸素投与
    • 試験的な酸素投与(二次治療)
  • 非侵襲的な持続陽圧呼吸
    • 高炭酸ガス血症型CSA患者で他の治療で効果がない場合
  • 二相性陽圧換気
    • 高炭酸ガス血症型CSA患者で他の治療で効果がない場合
  • アセタゾラミド
    • 高地滞在が原因のCSAに効果があるとされる
  • 生活習慣の改善
    • 適正体重の管理
    • 適度な運動

あとがき

日本における中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)の有病率については、統計データがないので詳しいことは分からない。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)全体の有病率については、30~70歳の成人のうち、男性では34%、女性では17%というかなり高い割合で睡眠呼吸障害が認められたという報告もあるようだ。

CSAの発症頻度は低いとされているが、CSAは男性および心臓疾患を持つ人に比較的多く発症するとされている。

加齢に心臓の機能が低下傾向にあるシニア世代の男性は、特に気をつけたいものである。


【参考資料】
MSDマニュアル 家庭版・プロフェッショナル版
睡眠時無呼吸の種類 | レスメド (resmed.jp)