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2025年薬機法改正で何が変わる? GMP・GQP強化のポイントと実務対応まとめ

はじめに

2025年5月に公布された「令和7年法律第37号」により、薬機法が大きく改正された。この改正薬機法では、医薬品の品質・安全性の確保と安定供給体制の強化を目的に、製造販売業者や製造業者に対する法的義務を大幅に強化されている。

特に、GMP(適正製造基準)及びGQP(品質保証業務)に関する改正は、製薬企業の実務に直接的に影響を与える重要なポイントであると思われる。

本稿では、製造部門および品質部門に関わる実務者向けに、改正の要点と実務への影響をわかりやすく整理して解説を試みたい。

目次
はじめに
改正の背景と目的
主な改正ポイント(GMP・GQP関連)
1. 品質保証責任者・安全管理責任者の法定義務化
2. GMP適合性調査の合理化と監督強化
3. 安定供給体制の整備義務
4. 安定供給の強化
5. 安全対策の充実・効率化
実務対応のポイント(GMP・GQP関連)
施行スケジュールと経過措置
あとがき

改正の背景と目的

近年、後発医薬品を中心に不適切製造や供給停止が相次ぎ、国民の医薬品への信頼が揺らいだ。これを受けて、厚生労働省は薬事監視の質的向上と、企業のガバナンス強化を目的とした法改正を実施した。

✅ 主な改正ポイント(GMP・GQP関連)

1. 品質保証責任者・安全管理責任者の法定義務化

  • 従来:
    • GQP省令・GVP省令に基づく設置義務
  • 改正後:
    • 薬機法第17条第6項により、法令上の設置義務に格上げ
  • 実務影響:
    • 責任者の役割・権限を社内規程で明文化
    • 違反時には厚労大臣による「変更命令」も可能
    • 組織的な品質保証体制の構築が必須になる

2. GMP適合性調査の合理化と監督強化

  • リスクベース査察の導入強化
    • 調査頻度は5年→3年に短縮
    • 高リスク製造所には頻度を上げて実地調査
    • 調査免除の条件やリスク評価基準の整備が進行中
  • 不適切事案への迅速対応体制の整備
  • 製造所の変更・逸脱時の報告義務の厳格化
  • 基準確認証制度の拡大
    • 国際整合性の向上と手続きの簡素化が目的
    • 輸出用医薬品にも適用
    • 中等度変更申請ではGMP調査免除可能

3. 安定供給体制の整備義務

  • 特定医薬品の製造販売業者に対し、供給計画・バックアップ体制の整備が求められる
  • 供給停止時の報告義務も法令で明文化

4. 安定供給の強化

① 海外代替品の迅速導入(法第14条等)

  • 優先審査制度の導入
  • 外国語表示の特例も認められる
  • 緊急時のアクセス確保策として、医療現場の即応性向上

② 日本薬局方の規定見直し(法第56条)

  • 柔軟な改訂運用
  • 日局不適合品目も個別承認可能
  • 品質確保と供給安定の両立を目指す

③ 中等度一変申請の導入

  • 中リスク変更に対する簡易申請制度
  • 審査期間:原則3ヶ月以内
  • 変更分類の明確化と申請様式の整備が進行中

④ 年次報告制度の導入

  • 軽微変更は年度毎に報告(通知による試行中)
  • 変更管理の効率化と行政負担の軽減を目的

⑤ 外国製造業者の登録制への変更(法第13条の3)

  • 認定制から登録制へ移行
  • 保管のみの製造所も対象
  • 国際整合性と手続きの合理化を図る

5. 安全対策の充実・効率化

  • RMP(リスク管理計画)の法定化(法第68条の2)
    • GVP省令から薬機法上の義務へ格上げ
  • 指定医薬品に対して計画作成・報告義務
  • RMPの内容と提出様式の標準化が進行中

実務対応のポイント(GMP・GQP関連)

項目対応内容
品質保証責任者法令に基づく職務記述書の整備
教育訓練の強化
GMP調査対応リスク評価に基づく査察準備
逸脱・変更管理の文書化
GQP体制出荷判定プロセスの見直し
記録保存体制の強化
安定供給製造委託先との品質協定見直し
供給リスク評価の実施

施行スケジュールと経過措置

  • 公布日
    • 2025年5月21日
  • 施行日
    • 公布から2年以内(2027年5月まで)に政令で定める日
  • 経過措置期間中に、体制整備・文書改訂・教育訓練を完了させる必要がある。

あとがき

2025年公布の改正薬機法は、単なる制度変更ではなく、企業の品質文化とガバナンスを根本から問い直す改革であると言えよう。

ガバナンスの強化で言えば、改正薬機法では、製造販売業者による製造所の監督・監査の法定化(法第18条)と製造業者のGMP基準遵守義務の法定化(法第18条第7項)が明記されている。具体的には、下記のような責任と義務を負うことになる。

GQP体制の実効性向上を目的として、製造販売業者に対しては:

  • GMP遵守状況の定期確認、記録保存、情報収集が義務化
  • 委託先製造所も調査対象
  • 実務では、監査頻度や記録様式の標準化が求められる

一方、製造業者に対しては:

  • GMP省令に基づく管理が法的拘束力を持つようになる
  • 違反時の行政処分の根拠が明確化される
  • GMP教育訓練の強化と内部監査体制の整備が求められる

GMP体制およびGQP体制の強化は、製品の信頼性だけでなく、企業の持続可能性にも直結する。

この薬機法の改正を機に、品質保証の本質に立ち返り、組織全体での対応を進めるようにしたい。つまり、品質文化の再構築が求められる時代になったと考えたい。


【参考資料】

令和7年の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)等の一部改正について
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の
一部を改正する法律の公布について
薬機法等制度改正に関するとりまとめ
報告:薬機法等一部改正法案の概要(安定供給関係)
改正薬機法の成立を受けて
改正医薬品医療機器等法について

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