はじめに
医薬品の品質管理において欠かせないのが「確認試験」である。確認試験は、原薬や製剤が正しい成分であるかを識別するための試験であり、製造や受け入れの各段階で実施される。
医薬品の品質保証では、原薬や製剤が規定通りの物質であることを証明する、つまり同一性の確認するための品質試験である確認試験はが欠かせない試験になっている。
本稿では、確認試験に使われる代表的な分析技術とその特徴について取り上げたいと思う。
<目次> はじめに 確認試験とは 薄層クロマトグラフィー(TLC) 分光分析法 赤外分光法(IR) 紫外可視吸光光度法(UV-Vis) 高速液体クロマトグラフィー(HPLC) 質量分析法(MS) 核磁気共鳴分光法(NMR) 技術選定のポイント あとがき |
確認試験とは
確認試験は、医薬品の成分が規定された化合物であることを証明するための試験である。間違った成分が混入していないか、製造ミスがないかをチェックすることで、安全性と信頼性を確保することができる。
薄層クロマトグラフィー(TLC)
薄層クロマトグラフィー(TLC)は、簡便かつ低コストな初期スクリーニング法として広く用いられている。
- 試料と標準品を同一プレート上で展開し、スポット位置(Rf値)を比較
- 検出試薬スプレーやUVランプ照射で視覚的に同一性を確認
- 測定時間は数分〜十数分で完了する
分光分析法
赤外分光法(IR)
赤外分光法(IR)は、原薬の分子構造に基づくスペクトルを測定する試験法である。参照物質とのスペクトル比較で、成分の同定ができる。医薬品原料の確認試験に広く使われている。
赤外分光法は官能基の振動吸収を指紋スペクトルとして利用し、同定試験(確認試験)で高い信頼性を持つ。
- KBrペレット法やATR法で試料形態に応じて選択
- 主要吸収波数の一致を確認(例:C=O伸縮や–OH伸縮)
- 定性的評価だけでなく、マルチバンドの一致率比較も可能
紫外可視吸光光度法(UV-Vis)
紫外可視分光法(UV法)は、特定波長での吸光度を用いて同一性を確認する。
- 標準品と試験品の吸収スペクトルを重ね合わせ、ピーク波長と比率を比較
- 有機環構造や共役系化合物の同定に有効
- 測定時間は数秒〜数分と極めて高速
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、成分を分離して保持時間やピーク形状を確認する試験法である。標準品との比較で、成分の識別ができる。含量試験(定量試験)や純度試験と同時に実施されることも多い。
HPLCは保持時間比較を用いた同定試験法として、製剤中の原薬確認にも多用される。
- 標準品と試験品試料を同条件で注入し、保持時間の一致を確認
- 検出器はUV/DADやRIを用いることが多い
- 複数のピークがある場合はスペクトルライブラリ機能でピークを同定
質量分析法(MS)
質量分析(MS)は、成分の分子量や構造情報が取得できる試験法である。GC-MSやLC-MSとして、クロマトグラフィーと組み合わせて使われることも多い。微量成分の確認試験にも強い分析法である。
質量分析法は、分子量およびフラグメントパターンによる高度な同定を可能にする。
- LC–MS
- HPLC分離後に質量電荷比を測定
- 分子構造レベルで同定
- GC–MS
- 揮発性成分の同定に適する
- 残存溶媒や分解生成物確認にも活用
- 同一性の確証度が最も高い技術の一つ
核磁気共鳴分光法(NMR)
NMRは原子レベルの構造情報を提供し、同定試験で究極の信頼性を提供する。
- ¹H-NMRや¹³C-NMRスペクトルを標準品と比較
- 化学シフト、カップリング定数の一致を確認
- 定量NMRにより含量試験にも応用可能
技術選定のポイント
- 試料形態
- 固体・ペースト・溶液による最適手法
- 検出レベル
- 微量成分の同定が必要かどうか
- 所要時間
- QCフローに合わせたスループット
- 装置・コスト
- ラボ戦略や運用体制とのバランス
複数手法を組み合わせるオルソゴナル分析で、同定試験(確認試験)の信頼性をさらに高める。
あとがき
確認試験は、医薬品の「正体」を見極めるための大切な品質試験である。分析技術の進化によって、より精密で信頼性の高い識別が可能になっている。
確認試験に用いる分析法は、日本薬局方(JP)、米国薬局方(USP)やヨーロッパ薬局方(EP)などの公定法にも準拠することが多い。
また、分析法バリデーションは試験法の妥当性を確認するために重要で、正確性・再現性・特異性が求められている。
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