医薬品の製剤開発において、有効成分の吸収改善は非常に重要な役割を果たします。その理由を以下に簡単に説明します。
治療効果の向上
有効成分が体内で適切に吸収されることで、薬効を最大限に発揮することができます。薬物吸収が不十分だと、目標とする治療効果が得られません。特に、難溶性薬剤の場合は、治療効果が得られないばかりか、肝臓での代謝によっては患者の健康状態に悪影響を及ぼす可能性すらあります。
バイオアベイラビリティの改善
バイオアベイラビリティ(Bioavailability; BA)は、「生物学的利用能」とも呼ばれ、経口投与された有効成分が胃腸管から吸収されて血流に到達する割合を示します。
製剤技術によって吸収改善が達成されると、バイオアベイラビリティが向上し、薬剤の効率的な利用が可能になります。
副作用の軽減
薬物吸収が改善されることで、必要な量の薬剤を投与するだけで十分な効果が得られるため、過剰投与による副作用のリスクを軽減できます。
患者の服薬コンプライアンス向上
吸収が改善された薬剤は、服用回数を減らすことができる場合があります。これにより、患者が薬を正しく服用する可能性が高まり、治療の成功率が向上します。
最近では、「服薬コンプライアンス」の用語の代わりに、「服薬アドヒアランス」という用語が使用される頻度が増えてきたように思います。その理由は、患者の治療への積極的な参加を促す考え方が主流となっているからだと思います。
新薬開発の効率化
吸収改善技術を活用することで、難溶性の有効成分や吸収性が低い成分を含む薬剤の開発が可能になります。つまり、この吸収改善技術により、従来技術では医薬品として製剤開発できなかった化合物が新薬開発の土台に乗るようになり、患者にとっては治療の選択肢が広がることに繋がります。
例えば、DDSやナノテクノロジーを活用した製剤技術は、有効成分の吸収改善に大きく寄与していると言えるでしょう。また、新しい吸収促進剤の登場にも注目すべきでしょう。