カプセル剤には硬カプセル剤(Hard Capsule)と軟カプセル剤(Soft Capsule)がある。
日本薬局方/製剤総則によると、硬カプセル剤は、有効成分をそのまま若しくは有効成分に賦形剤などの適切な添加剤を加えて混和して均質としたもの、又は適切な方法で粒状、若しくは成形物としたものを、カプセルにそのまま又は軽く成形して充てんして製造すると記載されている。
一方、軟カプセル剤は、有効成分をそのまま又は有効成分に適切な添加剤を加えたものを、グリセリン又はソルビトールなどを加えて塑性を増したゼラチンなどの適切なカプセル基剤で、一定の形状に被包成形して製造すると記載されている。
硬カプセル剤の内容物が通常は固形(粉体や造粒物など)であるのに対し、軟カプセル剤の内容物は液体(溶液又は懸濁液)です。硬カプセル殻のサイズには規格(0号~5号)があるため、硬カプセル剤を製剤設計する際は内容物のカサ密度をよく検討した上で充填量とカプセルサイズを決定しなければならない。
一方、軟カプセル剤は形状と大きさについて柔軟性がある。金型の選択によって種々の形状と大きさが可能である。
軟カプセル剤を自社で製造している製薬会社は皆無に近いのではないだろうか。たいていは軟カプセル剤の製造を専門とする受託会社に委託して製造していると思う。軟カプセル剤は、硬カプセル剤よりも製造ノウハウの部分が多く、製造設備を準備したからと言って容易に商業用には製造することはできないからである。
自社で製造設備を有しない製薬会社では、当然ながら軟カプセル剤の製剤開発を優先的に進めることはない。たいていは他の固形製剤のアプローチを試した後にどうしても軟カプセル剤として製剤化した方が良いと判断した場合にのみ軟カプセル剤が製剤設計される。
軟カプセル剤は、難溶性の有効成分の吸収を改善するための切り札になる場合が多い。自己乳化型製剤の開発では硬カプセル剤を選択するよりも軟カプセル剤を選択する場合が多いと思う。また、有効成分が低融点で打錠圧縮することが困難である場合や有効成分が酸化分解されやすい場合にも優れた剤形として選択される。
軟カプセル剤の製造方法
軟カプセル剤の製造方法は、「打ち抜き法」と「滴下法」に大別される。
打ち抜き法は、ロータリーダイ法が主流であり、ロータリー式充填機を用いて製造される。
一方、滴下法は、二重ノズルの内側のノズルからカプセル内容液が、外側からカプセル皮膜液が流れるよう設計された軟カプセルの製造法で、シームレスカプセル法とも呼ばれている。
軟カプセルの製造法では、上記のいずれの製造法でも、内用液(薬液)の充てんとカプセル皮膜の形成が同時に行われるのが特徴である。この同時に進行するプロセスゆえに製造ノウハウが必要となり、かつ、経口固形製剤の中では比較的生産数の少ない剤形であることが相まって自社技術として所有する製薬会社がないのだと思う。
打ち抜き法(ロータリーダイ法)
使用機器及び設備:
ロータリー式充填機、タンブラ乾燥機、低湿度乾燥室
Step 1
適切な温度(例えば、約60℃)に加温されてゾル状態にあるゼラチン被膜液を充填機のキャスティングドラム表面で冷却ゲル化させ、約1 mmの厚さのゼラチンシートを形成させる。
Step 2
左右2枚のゼラチンシートが2個のダイロールの間にあるくさび状のセグメントに沿って送り込まれ、加温圧着により下部を閉じたカプセルの中に、ポンプによりセグメントの先端から内用液が圧入されると同時に上部のゼラチンシートが圧着され、軟カプセルが成形される。
Step 3
ダイロールで打ち抜かれた直後の軟カプセルは、被膜中に約35~40%の水分を含有しているため、形状が固定するまで回転するタンブラ乾燥機の中で低湿度空気を送風して乾燥する。
Step 4
さらに、低湿度乾燥室内で目的とする製品水分まで長時間かけて乾燥する。
滴下法(シームレスカプセル法)
使用機器及び設備:
シームレスカプセル製造装置、送風乾燥機
Step 1
二重ノズルの先端からは芯液と皮膜液が吐出され、硬化用液中に放出される。
Step 2
硬化用液中に放出された芯液と皮膜液は、ノズルに付加された振動により液滴に分離される。
Step 3
硬化用液中に分離・放出された液滴は、その表面張力によって球形となる。この球形の液滴を、硬化用液が一定速度で還流するカプセル形成管内にて冷却し、凝固させることにより、球形のシームレスカプセルが形成される。
Step 4
シームレスカプセルを回収し、皮膜の水分を風で乾燥させる。