経口投与の際、BAに影響する因子
大半のファクター(因子)は、消化管に関するものである。それは当然のことで、薬物が経口投与された場合、消化管粘膜上皮から吸収されるからである。
消化管内(胃、小腸、大腸)の pH |
消化管内(胃、小腸、大腸)の 蠕動運動 |
消化管内で分泌される消化酵素、胆汁、ムチンなどの分泌液 |
消化管内に残留(滞留)する内容物(食物) |
腸内細菌叢 |
消化管の部位によって異なる上皮細胞の形態、機能、有効吸収面積 |
特殊輸送機構(能動輸送かかわるトランスポーターの種類や機能) |
消化管上皮細胞における代謝(初回通過効果) |
血流・リンパ流 |
門脈・静脈 |
サーカディアンリズムによるホルモンの分泌のタイミングや分泌量 |
消化管の特徴
消化管は、口腔から直腸(肛門管)までのつづく「管」であるが、その形態と機能は各部によって異なっている。この消化管の特徴を理解することが製剤化研究、特に徐放性製剤を製剤開発する上で重要となる。
口腔 |
口から咽頭までの長さは15 cm、唾液の分泌量は約1~1.5 L 存在する酵素:アミラーゼ、リゾチーム 電解質濃度は血漿より低いが、バイカーボネート濃度は約2倍。 |
食道 |
全長は25 cm、通過時間は数秒、粘液が分泌される 弾力性に富む構造、食物通過時には直径約3 cmまで拡張する |
胃 |
通過時間は約1~5時間、 炭水化物<タンパク質<脂肪 空腹時の胃酸の分泌量: 8 ~ 15 mL/hr、pH 0.5 ~ 1.5、 塩酸濃度は約150 mM 存在する酵素:ペプシノーゲン |
小腸 |
通過時間は4 ~ 5時間 |
十二指腸(duodenum) |
全長は20 ~ 30 cm、膵液を分泌(0.5 – 1.5 L/day) 存在する酵素:エンテロキナーゼ 膵臓からアミラーゼ、トリプシノーゲンなどが分泌 膵液には酵素だけでなく、バイカーボネートも含まれる |
空腸(jejunum) |
全長は2 m、粘液を分泌、腸内細菌叢あり 輪状ヒダが発達 |
回腸(ileum) |
全長は3 m、粘液を分泌、腸内細菌叢あり パイエル板が存在 |
大腸 |
S状結腸までの全長は約1.5 ~2 m、通過時間は7 ~ 22時間 |
盲腸(cecum)・上行結腸(ascendimg colon) |
通過時間は1 時間、粘液を分泌、腸内細菌叢あり |
横行結腸(transverse colon) |
通過時間は3 時間、粘液を分泌、腸内細菌叢あり |
下行結腸(descending colon)・S状結腸(sigmoid colon) |
通過時間は3 ~15 時間、粘液を分泌、腸内細菌叢あり |
直腸(rectum) |
全長は12 cm、通常は内容物なし |
肛門管(anus) |
全長は4 cm、門脈回避ルートが存在 |
絶食時におけるヒト消化管内要因 | 変動範囲 |
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胃液のpH | 1.2 ~ 7.6 |
胃液の分泌速度 | 5 ~ 180 mL/h |
胃液の表面張力 | 35 ~ 50 dyne/cm2 |
十二指腸内のpH | 3.1 ~ 6.7 |
十二指腸部の胆汁酸濃度 | 5.7 ± 1.2 mM |
十二指腸の収縮圧 | < 3 ~ 30 mmHg |
空腸内の粘液の流速 | 0.73 ± 0.11 mL/min |
回腸内の粘液の流速 | 1.8 ± 0.4 mL/min |