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DDS 核酸医薬

診断や新規治療法の開発に期待がかかるエクソソーム

はじめに

エクソソーム(Exosome)は、細胞外に放出される小さな膜小胞体で、細胞間のコミュニケーションや情報伝達に重要な役割を果たしている。

エクソソームの研究には、細胞間コミュニケーションの理解、病気の診断と治療、および新しい治療法の開発など有意義が研究開発に直結している。つまり、エクソソームの研究は、医学や生物学の分野で大きな進展をもたらす可能性があるということです。

私たちは、この新しいエクソソームの研究に関心を寄せるべきではないでしょうか? 私はかなり興味があります!

目次
はじめに
エクソソームとは
細胞間コミュニケーションの理解
病気の診断と治療
新しい治療法の開発
DDS用キャリアとしての利用
あとがき

エクソソームとは

エクソソーム(exosome)は、生体の細胞から分泌される膜小胞体(直径40 – 100 nm)で、細胞間の情報伝達の役割を担っており、細胞に対し様々なはたらきを促す機能を持つことが知られている。

様々な細胞から分泌されたエクソソームは、近接する細胞のエンドサイトーシスによって直接取り込まれることや血流にのって遠方の細胞にも影響を及ぼすことができる。

エクソソームは、脂質二重膜に囲まれているので、多くの消化酵素が存在する体液中でも安定して存在することができる。実際にエクソソームは、血清、尿、唾液、母乳など様々な体液に存在しており、全身を循環している。

エクソソーム内にはmiRNAやmRNAなどの核酸やタンパク質などが内包されていることが分かっており、そしてエクソソームに内包される構成成分は放出される細胞によって異なることも知られている。

具体的な事例として、エクソソーム内に機能性miRNA が内包されていること(エクソソームmiRNA)や、様々な細胞から分泌されたエクソソームが生体内を循環し、他の細胞/臓器にエクソソーム miRNA を受け渡すことで、エクソソームが細胞/臓器連関の担い手として働くことが示されている[1]。

また、骨髄移植という非生理的な条件下ではあるが、骨髄細胞が放出するエクソソームmiRNAは膵β細胞の増殖を促すことが発見されている[2]。

脂肪細胞は生体内を循環する miRNA の主要な分泌源であり、脂肪細胞から放出されたエクソソーム miRNA が肝臓に取り込まれ、遺伝子発現を調節していることが示されている[3]。


細胞間コミュニケーションの理解

脂質二重膜で包まれた小胞であるエクソソームは、細胞同士の比較的新しい情報伝達ツールとして注目を集めるようになった。

エクソソームに含まれる脂質成分は、エクソソームの中身と外界の境界線を形作るのに必要不可欠であるとともに、最近の研究ではエクソソームの形成過程や取り込み、細胞間シグナル伝達にも関わることが分かってきた。

エクソソームは、細胞間での情報伝達のメカニズムを解明する手がかりとなる。これにより、細胞の相互作用や組織の機能を深く理解することができるようになる。


病気の診断と治療

体液から回収したエクソソームに内包されたmRNAやタンパク質は、様々な疾患に特異的なバイオマーカーとしての役割が注目されている。

そのため、エクソソームはがんや心血管疾患、神経変性疾患などの病気の診断に役立つバイオマーカーとなる可能性がある。

具体的には、アルツハイマー型認知病パーキンソン病などの神経変性疾患は、脳内の疾患原因タンパク質の凝集と蓄積によって引き起こされる。この疾患に関連したタンパク質は、細胞外小胞の一つであるエクソームを介して細胞から分泌され、他の細胞に伝播する可能性があり、脳内のタンパク質の凝集体の細胞間伝播につながることが示唆されている。

また、エクソソームを利用した治療法の開発も進められている。多細胞の臓器レベルでタンパク質の恒常性を維持する生理的役割を持つエクソームも報告されており、その結果、疾患関連タンパク質の凝集や異常蓄積を防止することで疾患の進行を抑制する可能性がある[4]。


新しい治療法の開発

エクソソームを利用した新しい治療法の開発が進められており、特にがん治療や再生医療において期待されている。

最近の研究では、次ような治療法の開発が報告されている。

  • 腫瘍治療
    • エクソソームは腫瘍細胞の増殖を抑制する効果がある
    • エクソソームを利用した抗がん治療が研究されている
    • 前立腺がんに対して効果があることが示された[5]
  • 骨再生治療
    • エクソソームは骨の修復に役立つ成分を含んでいる
    • そのため、骨折の治療に利用されている
    • エクソソームを含む組み合わせ療法が、骨の再生を促進することが示されている[6]
  • 皮膚治癒
    • エクソソームは皮膚の再生にも効果がある
    • 熱傷や潰瘍の治療にエクソソームを使用すると皮膚の再生が促進されることが報告されている[7]

これらの治療法の試みは、エクソソームの特性を活かしたものであり、様々な疾患や障害の治療に役立つ可能性を期待させるものばかりである。しかしながら、副作用も報告されているので、臨床試験を含む研究開発は慎重に行って貰いたい。


DDS用キャリアとしての利用

エクソソームは、核酸やタンパク質などの内因性キャリアであることから、エクソソームを用いたDDSの開発が注目されている。

エクソソームに含まれる脂質成分は、基本的に細胞膜と似ているが一部組成が異なり、目的をもって選択的にエクソソームに搭載されていると考えられる。しかし、脂質分析やメカニズムの解明には技術的な課題も多く、理解も進んでいない。

エクソソームを用いたDDSの開発にはエクソソーム体内動態の制御法を開発することが必須であり、そのためにはエクソソームの体内動態に関する情報の蓄積が必要不可欠である。


あとがき

エクソソームの研究は、医学や生物学の分野で非常に期待されている。特に、エクソソームが病気の診断や治療にどのように役立つかが注目されている。例えば、エクソソームはがん細胞の検出や、神経変性疾患の診断に利用される可能性がある。

また、エクソソームを利用した治療法も研究されており、特定の病気に対する新しい治療手段として期待されている。

エクソソームの研究が進むことで、より正確で早期の診断が可能になり、治療の効果が向上することが期待されている。エクソソームの研究が進展を願わずにはいられない。しかし、副作用の発現もあるらしいので、臨床試験を含む研究開発は慎重に進めて貰いたい。


【参考文献】

1H. Valadi, K. Ekström, A. Bossios, M. Sjöstrand, J. J. Lee and J. O. Lötvall. Exosome-mediated transfer of mRNAs and microRNAs is a novel mechanism of genetic exchange between cells. Nat Cell Biol 9, 6 (2007) 54-59.
2Tsukita S, Yamada T, Takahashi K, Munakata Y, Hosaka S, Takahashi H, Gao J, Shirai Y, Kodama S, Asai Y, Sugisawa T, Chiba Y, Kaneko K, Uno K, Sawada S, Imai J, Katagiri H. MicroRNAs 106b and 222 Improve Hyperglycemia in a Mouse Model of Insulin-Deficient Diabetes via Pancreatic beta-Cell Proliferation. EBioMedicine. 15 (2017) 163–172.
3Thomou T, Mori MA, Dreyfuss JM, Konishi M, Sakaguchi M, Wolfrum C, Rao TN, Winnay JN, Garcia-Martin R, Grinspoon SK, Gorden P, Kahn CR. Adipose-derived circulating miRNAs regulate gene expression in other tissues. Nature. 542 (2017) 450–455.
4武内 敏秀, エクソソーム研究の最前線; 神経変性疾患におけるエクソソームの関与, 膜, 45, 2 (2020) 54-61
5前立腺癌における新たなエクソソーム分泌機構を解明―エクソソームを標的とした新たな前立腺癌治療法への期待― | 国立研究開発法人日本医療研究開発機構
6エクソソーム治療に関する規制整備の必要性を指摘した論文が発表されました|国立がん研究センター
7エクソソームについて | メディカルノート