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“Nose-to-Brain”経路を開拓する経鼻投与システム

経鼻投与システムに着目する理由は?

BBBとは

血液と脳組織との間には血液脳関門Blood-brain barrier, BBB)が存在しており、薬物の脳移行を制限している。

BBBの解剖学的実体は脳毛細血管であり、内皮細胞同士が密着して結合しているという。BBBは脳に必要な物質を血液中から選択して脳へ供給し、逆に脳内で産生された不要物質を血中に排出する機能を有しているらしい。

BBBには、多様なトランスポーターや受容体が内皮細胞の脳血液側と脳側の細胞膜に極性をもって発現し、協奏的に働くことによって、循環血液と脳実質間での輸送を厳密に制御している。

BBBがこのような機能を有していることから、中枢に作用し、かつ、良好な脳移行性を持った薬剤がなかなか開発できないのが現状である。


鼻粘膜から脳への薬物移行経路

そこで、鼻腔から鼻粘膜を通じて脳に直接つながる薬物移行経路が着目され、脳への効率的かつ非侵襲的な薬物送達ルートとして盛んに研究されているわけである。

鼻腔と脳組織との間には血液を介することなく、直接、脳組織に通じる薬物移行経路が存在することが確認されている。このルートを使えばBBBを迂回して脳への直接送達が可能になるというわけである。もし、これが実現すれば、水溶性が高く、分子量が大きいペプチド医薬品も有効な量を脳へ送達させることができるかも知れない。なんと素晴らしい!


経鼻投与システムの技術的課題

製剤の鼻腔内滞留性と製剤からの薬物溶出バランスが経鼻吸収率を決定する重要な因子であることが知られている。鼻腔内の水分量は消化管に比べて少なく、粉末状製剤の投与では、製剤からの薬物の溶出性がその後の吸収に大きく影響を与えるらしい。

このバランスを最適化するにはどうすればよいのだろうか? 

粉末製剤では鼻腔内滞留性は達成できそうだけれども溶出性の問題が残る。一方、液体製剤では溶出性の問題は解決できそうだけれども鼻腔内滞留性をどうやって持続させようか? ちょっと考えただけでもなかなか興味深い。是非、開発の機会を得たいものである。