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打錠用末の製造方法(造粒法の種類と特徴)

打錠用末に求められる品質特性

打錠用末は、通常、高速のロータリー型打錠機を用いて錠剤に圧縮成形されるので、流動性が良く、偏析を起こさずに均質なまま、短時間で臼へ充填されなければならない。

また、成形性が良い打錠用末であるためには打錠機の臼や杵に付着せずに、圧縮時に上杵から下杵への圧縮伝達が良好でなければならない。

さらには得られた錠剤において、重量偏差、含量均一性、硬度、崩壊性、溶出性、含量などの品質特性に問題がないことが求められている。

これらの錠剤の品質特性には打錠用末の品質特性(例えば、粒度・粒度分布、かさ密度、空隙率など)が大きく影響しているので、これらの品質特性を最適なものにするよう打錠用末を製造しなければならない。

打錠用末には、直打法に用いる単に原料を混合しただけの打錠用末と、湿式顆粒圧縮法と乾式顆粒圧縮法で用いるような顆粒状の打錠用末がある。


湿式顆粒圧縮法で用いる造粒法の種類

湿式顆粒圧縮法で用いる打錠用末の造粒法の特徴(長所と短所)を下記の表にまとめてみた。

転動攪拌流動層造粒法は、造粒機の普及度が影響し、攪拌造粒法流動層造粒法に比べて選らばれるケースが一般的に少ないように思う。


乾式顆粒圧縮法で用いる造粒法

乾式顆粒圧縮法で用いる打錠用末の造粒法には、主としてローラーコンパクターと呼ばれる乾式造粒機を用いる。

ローラーコンパクターのタイプは3種類あり、2本の圧縮ローラーの配置と原料の移動方向が異なる。

米国Fitzpatrick社のローラーコンパクターは、2本の圧縮ローラーが水平(左右)に配置されて、原料がホッパーから直下の圧縮ローラーに対して垂直方向から供給されるタイプである。

ドイツ・Alexanderwerk社のローラーコンパクターは、2本の圧縮ローラーが垂直(上下)に配置されて、原料が水平方向から移動(水平フィーダー式)して圧縮ローラーに供給される。

スイス・Gerteis社のローラーコンパクターは、FitzpatrickタイプとAlexanderwerkタイプの中間のタイプというべきもので、2本の圧縮ローラーが45度に傾斜させた位置に配置されたものである。原料が水平方向から移動して圧縮ローラーに供給される水平フィーダー式を採用している。


乾式顆粒圧縮法の長所と短所

ローラーコンパクターを用いた乾式造粒法は、造粒工程に水を使用しないので乾燥工程も必要ない。したがって、水分や熱に対して不安定な有効成分の打錠用末を製造するのに適している。

乾式造粒法の欠点は、結合剤溶液を使用していないので微粉量が湿式造粒法に比べて多いことである。この乾式造粒法で生じやすい微粉量を減らすにはローラーコンパクターで圧縮成形したフレークまたはリボンと呼ばれるシート状の圧縮成形物の解砕方法や条件を検討しなければ、折角、強度のある圧縮成形物を製造しても「元の木阿弥」になってしまう。

ローラーコンパクターには、通常、ハンマーミル型の解砕機(整粒機)がセットされているが、圧縮成形物をこのミルで解砕すると微粉が生じやすい。この問題の解決法の一つとして、私はロールグラニュレーター(ロールミル型)を整粒機として使用を勧めたい。


打錠用末に含まれる微粉量の目安

以上、打錠用末の一般的な製造方法について述べたが、打錠用末の製品品質はロータリー型打錠機を用いて実際に打錠してみないと評価できない。

造粒工程でしっかりと造粒し、造粒されていない微粉(63 μm以下)の量はできるだけ少ない方がよいが、少なくしようとして全体の粒度が粗くなってはダメである(250 μm以下が望ましい)。微粉量の目安は、15%以下、望ましくは10%以下にしたいところである。しかしながら、微粉量が多くても打錠に支障がなければ問題ない。粒度はあくまでも目安である。