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DDS 徐放化 持続性注射剤 製剤技術

非経口投与製剤(注射剤)における徐放化技術

一般に注射剤を静脈投与すると有効成分が直接、血流に注入されることになるので血中濃度の持続化はまず不可能である。

そこで、注射剤の場合は製剤からの有効成分の放出(遊離)を遅らせるために皮下注射または筋肉注射で対応する。皮下注射または筋肉注射であれば、静脈注射と違って有効成分が血流に乗るまでに時間を要するので持続化のチャンスが生まれる。


注射剤の徐放化は皮下注射や筋肉注射で

皮下や筋肉内に投与された有効成分が血流まで移動する時間は、有効成分自身の分子量に依存する。

分子量が小さい有効成分であれば皮下や筋肉内で拡散されやすく、血管壁を容易に透過して血流に乗る(すなわち吸収されたことになる)。

一方、分子量の大きい有効成分ほど拡散されにくく血管壁を透過して血流に乗ることは容易ではない。

上述のような性質を利用することで注射剤の持続化が製剤設計される。正確に言うと、分子量の小さな有効成分であっても製剤学的工夫により注射剤の持続化が可能となる場合がある。注射剤の持続化に利用される製剤技術、すなわち製剤の種類としては、水系懸濁液、油性溶液、油性懸濁液、マイクロスフィアエマルションリポソームなどが知られている。


マイクロスフィアによる徐放化:「リュープリン

マイクロスフィアというのは、高分子マトリックスに有効成分を封入させた、粒子径が数μm程度の球状の微粒子製剤のことである。

持続性注射剤として「リュープリン」という製剤が有名である。この製剤は、有効成分であるリュープロレリン酢酸塩を乳酸―グリコール酸共重合体(PLGA)で構成されるマイクロスフィアに封入させたもので、皮下注射すると生体内でPLGAが徐々に分解されるのに伴い有効成分が放出される。

PLGAの分解速度は調節されており、ほぼ0次に近い速度で有効成分を約1か月にわたり持続的に放出するよう設計されている。

リュープロレリン酢酸塩は、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)の誘導体であり、前立せんがんの治療薬として臨床使用されている薬剤であり、「リュープリン」という持続性注射剤の開発は製剤技術における一つのブレークスルーだと思う。


植え込み注射剤

上述したような持続性注射剤(Prolonged Release Injections)以外にも、注射剤の徐放化技術としては植え込み注射剤 (Implants / Pellets)が知られている。

日本薬局方/製剤総則によると、植え込み注射剤は長期にわたる有効成分の放出を目的として、高分子ゲル、針状成形物などからなる皮下、筋肉内などに適用する注射剤であると明記されている。

植え込み注射剤を製造するには、生分解性ポリマー(biodegradable polymer)、例えば、ポリ乳酸とその共重合体(ポリ乳酸系高分子)が使用される。