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「タンパク質製剤・抗体医薬品」のための凍結乾燥技術

凍結乾燥注射剤の製造は、抗体医薬品が急増する現在の医薬品市場において重要な役割を担っている。画期的な抗体医薬品を開発しても抗体(タンパク質)の三次元構造を保持し、薬理活性や品質特性が失わないように製剤化しなければ、医薬品として臨床の場に提供することはできない。


凍結乾燥とは

日本薬局方/製剤総則には、「凍結乾燥注射剤は、通例、有効成分及び賦形剤などの添加剤を注射用水に溶解し、無菌ろ過し、直接の容器に充てんした後に凍結乾燥するか、又は専用容器で凍結乾燥した後に直接の容器に充てんするなどして製する」と記載されている。

不安定な医薬品(特に抗体医薬品やペプチド医薬品などタンパク質を有効成分とする注射剤)を安定的に保持するための方法として、従来から凍結乾燥Lyophilization or freeze-drying)の技術が使用されている。

凍結乾燥によって得られた薬剤(凍結乾燥製剤)の利点は、物質の原形を保ち復元性が良いことであって、液剤と比較して長期保存できることである(適切な保存下では2〜3年間の安定性を保持可能)。製品にもよるが、常温での保存も可能である。このように凍結乾燥技術は、溶液状態では不安定な有効成分を注射剤として製剤化するためには不可欠な技術である。その一方で最適操作条件の設定は難易度が高い製剤化技術と言える。


凍結乾燥は、凍結・一次乾燥・二次乾燥の3ステップ

凍結乾燥は、通常、試料溶液の凍結freezing)、一次乾燥primary drying)、二次乾燥secondary drying)の3ステップで行われる。

凍結工程は、凍結乾燥機の乾燥庫内に収納された液状の被乾燥物(被乾燥材料、例えばバイアル内に充填された液状の薬剤)を凍結固化する工程である。具体的には、溶解した薬剤(例えば、タンパク質溶液)をバイアル等の最終包装(シリンジ又はカートリッジを含む)に充填し、低温(例えば、−60℃~−40℃)で凍結させる。

一次乾燥工程(氷晶昇華/昇華による乾燥)は、この凍結工程で凍結された被乾燥物の水分を除去する工程である。この一次乾燥工程では、減圧下で、凍結物から凍結した水(自由水)及び/又は溶媒を昇華させて除去する。この工程によって、多孔性の乾燥した「凍結乾燥ケーク」が得られる。

二次乾燥工程(残存水の除去/脱水による乾燥)は、一次乾燥工程を経て「凍結乾燥ケーク」となった被乾燥物中に含まれる微量の不凍水(結合水)及び/又は溶媒を除去して、被乾燥物を所定の含水率になるまで乾燥する工程である。水又はその他の溶媒の除去によって有効成分の分解速度を大幅に低下させ、 製剤を安定化させる。


凍結工程が凍結乾燥の品質を決める!

凍結乾燥全工程の中で凍結工程は、凍結乾燥の成否を左右する重要な前処理工程であると認識されており、首尾よく行われないと凍結乾燥物に水分が残存して凍結乾燥物の保存安定性が担保されずに外観不良が生じ、凍結乾燥物を生理食塩水や5%ブドウ糖等張液へ溶解させようとした際にその溶解性が損なわれるなどの問題が生じる。

凍結工程時に各バイアル内の被乾燥物において、より浅い過冷却の状態で均一な氷晶を形成し、これにより加熱工程時に被乾燥物の既乾燥層水蒸気移動抵抗を低減するようにすることは、凍結乾燥の凍結工程における課題である。既乾燥層水蒸気移動抵抗とは、被乾燥物のうち既に乾燥している層内を通る水蒸気の移動抵抗のことをいう。

凍結工程の目的には、次のようなものがあると言われている。

  • 内部水分を固定する(被乾燥物の完全固化)
  • 主に氷結晶構造である被乾燥物のミクロ構造の調節
  • 溶質の物理化学態様の調節
  • 被乾燥物のマクロ形状の調節

一次乾燥工程が全工程のなかで最も時間を要する!

凍結乾燥の全工程には、通常、2日ほどを要するが、一次乾燥は凍結乾燥工程の大半を占める、すなわち非常に時間を要する。しかも、乾燥に要する時間や品温は実際に実施してみないとよくわからないことが大きな課題である。

試料の温度が高いほど氷の昇華は速くなるため一次乾燥時間は短縮されるが、高温では凍結濃縮相の分子運動性が上昇するために非晶質では「コラプス」と呼ばれる構造変化を誘発しやすいという問題がある。コラプスとは、凍結不足が原因で蒸発乾燥が起こる発砲収縮現象のことである。

コラプスによる外観変化は製品として好ましくなく、凍結乾燥中に昇華の障害となる。その結果、乾燥固体中の水分含量上昇や再溶解時間の延長といった支障の原因となる。コラプスの現象を避けつつ一次乾燥を効率的に進めるには、各製剤でこれらの現象が起こる最低温度(臨界温度)を的確にとらえ、その温度より工程中のバイアル内温度(品温)をわずかに低温に保持することが望ましいとされている。この臨界温度は溶質の組成に依存する。

凍結乾燥工程とは、言うなれば凍結時に形成された被乾燥物のマクロ形状とミクロ構造を変えずに凍結時に固定された諸成分をそのままの状態に維持し、水分のみを気化(昇華)させて除去することである。したがって、凍結乾燥製品の品質の相当部分は一次乾燥工程の適否により決定されるというのには説得力がある。


高品質の「凍結乾燥品」を得るため

凍結乾燥を成功させるためには、製剤処方の設計に始まり、凍結乾燥装置の選択や凍結乾燥条件の最適化が必要である。凍結乾燥工程 の操作条件(冷却速度、アニーリング処理など)およびタンパク質の溶液処方に関する要因(濃度、共存物質、溶液量など)が凍結乾燥固体(凍結乾燥ケーク)の結晶化度や結晶形に与える影響を検討することも必要だとされている。


処方設計

タンパク質の凍結乾燥製剤は、タンパク質(有効成分)とともに安定化剤や pH 調整剤など各種の添加剤を含む多成分系である。タンパク質の高次構造は、凍結乾燥工程における次のような現象により変化を引き起こし、活性が低下することが知られている。

  • タンパク質溶液の凍結による氷晶表面との接触
  • 共存物質の濃縮および乾燥による周辺の水分子の離脱
  • 凍結乾燥製剤中の添加剤の物性変化

また、製剤中の添加剤は、凍結乾燥固体(凍結乾燥ケーク)の結晶化度や結晶形にも影響を与えることが知られている。したがって、凍結乾燥製剤の処方設計においては、添加剤の選択、特に安定化剤と賦形剤の選択は非常に重要である。


安定化剤の選択

タンパク質の凍結乾燥注射剤では、凍結乾燥工程中の凍結と乾燥ストレスからタンパク質を保護(タンパク質の高次構造の安定化)するためには、凍結保護剤cryoprotectant)や 凍結乾燥保護剤lyoprotectant)と呼ばれる安定化剤を製剤処方に加える必要がある。安定化剤は、製剤の長期保存安定性を確保するためにも役立つ。

このような安定化剤としては、スクロースsucrose)やトレハロースtrehalose)などの二糖類が知られている。これら二糖類による安定化の機構については、次の二つの仮説が知られている。

  • 水分子置換説:凍結及び乾燥により奪われる水分子の代わりに糖類がタンパク質と水素結合することで高次構造を安定化させるという仮説
  • ガラス状態説:分子運動性の低いガラス状態の非晶質固体に埋め込むことにより化学反応や構造変化を抑制させるという仮説

賦形剤の選択

タンパク質(有効成分)は結晶化しにくいので、タンパク質製剤において有効成分含有相は、通常、非晶質相である。

安定化剤として使用されるスクローストレハロースでは高次構造の保護作用を有するものの非晶質固体が形成されてしまい、高温や高湿度下での保存安定性が課題となることが多いようである。

そこで保存安定性に優れた結晶性固体を比較的短い乾燥時間で得ることができる添加剤(結晶化しやすい賦形剤)が製剤に添加される。結晶性賦形剤を添加する目的をまとめると次のようになる。

  • 凍結乾燥工程中の構造崩壊(コラプス)の回避
  • 凍結乾燥工程中のケーク形成が容易
  • 多孔質なケークの物理強度の確保(乾燥後におけるケーク構造の強化/保持)
  • 高温でのケークの乾燥が可能
  • 最終的な残留水分レベルが低くなり、安定性が向上
  • 完全な結晶化により、 保存中の結晶化/結晶多形転移などを制御/防止
  • 工程や臨床使用時に有効成分が少ない場合の飛散防止

上述のような機能を有する結晶性の賦形剤として、マンニトールmannitol )などのポリオールグリシンglycine )などのアミノ酸が知られている。

しかしながら、マンニトールグリシンは一般に物理安定性に優れるが、凍結乾燥工程の操作条件によって水和物結晶を含む結晶多形を生じ、保存安定性など製品品質のばらつきの原因となるなどの課題(懸念)も残されているようである。

凍結乾燥後に完全に結晶化していない場合には、 その賦形剤はタンパク質と同じ非晶質相内に残る可能性があり、 その結果として非晶相中のタンパク質の分子運動性を高め、 タンパク質を不安定にする可能性がある。

尚、高濃度のタンパク質製剤の場合は、多量のタンパク質自体がケーク構造を支えるため、賦形剤の添加が不要になる場合がある。一方で、低濃度の場合ではケーク構造を支えることができないために結晶性賦形剤を添加が必須となる。


緩衝液と pH の選択

緩衝液成分と溶液の pH は、タンパク質の特性と使用目的を考慮して、残基の化学安定性に優れる弱酸性から中性域を中心に選択する。精製に用いた緩衝液をそのまま用いる場合も多い。凍結溶液中で成分の一つが結晶化または揮発する緩衝液は、pH変動によりタンパク質を不安定化させるため避ける必要がある。

凍結濃縮によるタンパク質の高次構造変化や凍結溶液の臨界温度低下を避けるため、その他の緩衝液成分や NaCl など無機塩の多くについても低濃度に抑えることが望ましい。塩の比率が高い試料では、あらかじめ脱塩やタンパク質濃縮操作を行なう必要がある。


タンパク質濃度

添加剤の選択とは別の観点からであるが、タンパク質の高次構造を保持しつつ効率的な乾燥を進めるために高濃度溶液が望ましいとされている。タンパク質のみを含む凍結溶液の Tg´は-10℃付近とされ、高濃度のタンパク質は pH 変化や氷晶との接触による高次構造変化を抑制させると共に、凍結溶液の臨界温度Tg´)を上昇させる。


凍結乾燥の操作条件

凍結

タンパク質溶液の凍結による氷晶表面との接触や共存物質の濃縮および乾燥による周辺の水分子の離脱は、多くのタンパク質で高次構造の変化を引き起こす。複雑な構造や広い疎水部を持つタンパク質では、再溶解液でのミスフォールディングによる失活や露出した疎水部間の結合による凝集が起こりやすい。ミスフォールディング(misfolding)とは、タンパク質が折り畳まれる過程で特定の立体構造をとらないことをいう。

水溶液の凍結によるタンパク質の活性低下や、乾燥開始までの温度上昇による融解を避けるため、-40℃以下の超低温フリーザーを用いた凍結が望ましいとされている。氷晶の形状は凍結によって異なり、緩速凍結で形成する大きな氷晶は一次乾燥時間の短縮に有効とされる。

凍結により溶質は氷晶間に氷がそれ以上成長しない段階まで濃縮される(70~80 %w/w)。凍結乾燥製剤の水溶液に含まれる複数の溶質は成分の構成や比率によって、凍結過程において氷晶間に分子レベルの混合状態で存在する場合と、複数の相に分離して存在する場合があり、凍結乾燥過程の挙動や固体の品質に影響を与える主な因子となる。

タンパク質など生体高分子の凍結乾燥において高分子添加剤は、オリゴマータンパク質の失活を抑制することが知られている。

一方でそのような多成分溶液は、主薬と添加剤など構成成分が凍結溶液中の濃縮相で複雑な物性挙動を示し、相分離するものがあることが示唆されている。このように濃縮相が組成の異なる複数相に分離した凍結溶液では、一次乾燥の臨界温度の指標となる最大濃縮相ガラス転移温度(Tg′)(溶質が結晶化する場合は 共晶融解温度(Teu))が複数現れることから、乾燥を効率的に進めるための温度制御が課題となる。


凍結乾燥工程における「凍結プログラム」とは

凍結プログラムは、凍結乾燥機の棚板の到達温度だけでなく、棚板の冷却速度、ときには昇温過程と一定の中間温度による熱処理(アニーリング処理)を含む。この棚温の制御の正確な再現性は、一様な品質のための必要条件となる。しかしながら、凍結は確率過程を含むため、凍結温度プログラムの正確さと一様性だけによって、被凍結物のマクロ形状とミクロ構造の均等性や再現性が保証されるわけではない。凍結工程において、全てのバイアルの被乾燥物は、均等に凍結されることは無く、ランダム性が存在する。したがって、確率過程で不可避である凍結状態のバラツキの幅が十分に狭く抑えられていることを確かめる必要がある。

氷結晶の析出は過冷却に伴い、溶質結晶の析出は過冷却・過飽和を伴う。次のような現象には氷結晶となる核晶の生成確率が関与するとされている。

  • 過冷却がいつどこで破られるか
  • 溶質結晶がいつ析出するか
  • 非晶質のままで固化するか

この確率過程を製品に必要な許容範囲のバラツキ内に収めるには、最適な温度条件を探し出す必要があるが、それだけでは制御しきれないこともある。このことから、凍結過程における氷晶核形成温度の制御が要求されている 。

濃度及び温度において初期状態の被乾燥物を冷却すると、凍結点-融点曲線と交わっても、溶液が氷結晶に接していなければ過冷却のままである。バイアルの冷却面(底面)に接する溶液温度が氷核形成曲線との交点(氷核形成温度)に達すると、その部分に氷核が形成され、凍結点以下に冷却した溶液部全域に、微細な樹枝状結晶が瞬時に形成される。そして氷結晶析出の潜熱で蓄冷が消費され、凍結点曲線に昇温する。

異物を懸濁しない均質溶液の過冷却度は、容器内面の接触角(親水性)に影響される。 凍結工程の第一段階で形成される氷結晶の寸法と配列は、続く凍結過程での溶質側の挙動やそのミクロ構造に強い影響をもち、乾燥過程の挙動や復水溶解過程にも影響すると言われている。


凍結工程において「アニーリング処理」が必要な理由とは

凍結工程においてバイアル内の被乾燥物が一様な氷結晶構造を有していれば問題がないが、そうでない場合には一度凍結させたバイアルを昇温し、不揃いな氷結晶の相当部分を融解させた後、再度の冷却過程で一様な氷結晶構造を得る方法、いわゆる「アニーリング処理」が必要となる。具体的には、アニーリング処理(熱処理)では凍結溶液の品温を減圧開始前にいったん最大濃縮相ガラス転移温度 (Tg’) 以上に加温し保持する。

アニーリング処理は、 溶質の結晶化を促進すると共に氷晶をオストワルド成長させて、 一次乾燥の律速となる水蒸気流路を増加させる。 その結果、 凍結乾燥の所要時間が短縮され、 エネルギー消費が抑制される。オストワルド成長とは、小さな粒子が収縮、消滅し、大きな粒子に成長する現象のことである。

凍結工程前には、通常、被乾燥物毎にアニーリングサイクル(annealing cycle)と称される正確な温度勾配を測定する。そして凍結の際には、そのプロセスが厳密に管理される。凍結溶液のアニーリング処理(熱処理)は非晶質成分の混合性と製剤特性に影響を与えることが知られているからである。最大濃縮相ガラス転移温度(Tg′)と 共晶融解温度(Teu)の間の温度でアニーリング処理をすると一部の溶質は結晶化する。

急速な凍結や過冷却で生じる氷結晶は小さいため、乾燥層の小孔サイズが小さくなり、その結果昇華界面からの水蒸気移動が妨げられるために一次乾燥に必要な時間が長くなる。

それに対し、アニーリング処理を実施すると氷結晶がオストワルド成長により大きくなり昇華の速度が速くなる。また、非晶質固体は高い吸湿性や分子運動性を持つため、結晶固体に部分的な非晶質が存在すると、化学反応が誘発され品質劣化の原因となる。

アニーリング処理は、結晶の核形成や成長速度の遅い物質の結晶化を促進し、結晶性や結晶多形のバラツキの制御に有用である。しかしながらアニーリング処理により非晶質状態の保持が望まれる添加剤が結晶化し、タンパク質の安定性を低下させることもあるので凍結時の条件設定が重要となる。


一次乾燥

水溶液の凍結によりタンパク質は他の溶質とともに氷晶周囲に高度に濃縮され、結晶または高粘度の液体(非晶質)となる。氷を昇華させる一次乾燥には長時間を要し、その間の試料温度は昇華により奪われる熱と、外部から伝導と輻射により供給される熱のバランスにより決まる。

昇華は高温ほど速くなるが、濃縮相の粘度低下による乾燥界面からの発泡や収縮など構造崩壊を避けるため、各凍結溶液の臨界温度以下一次乾燥を進めることが求められる。凍結溶液中で結晶化する溶質では共晶融解温度(Teu)が臨界温度となる。

一方、非晶質状態を保持する溶質では最大濃縮相ガラス転移温度(Tg´)が臨界温度となる。あらかじめ臨界温度を把握し、容器形状や溶液量に応じて熱の流入が最適となる様に棚温度を設定して乾燥を進める。


コラプス現象の抑制

コラプス現象の許容度は、最終製品となる凍結乾燥品の使用目的によって異なると思う。もし機能解析やバイアル間での均一性を重視する場合であるならば、一次乾燥中の品温制御による構造崩壊の抑制が求められる。

試料の品温制御なしに固体構造崩壊現象とそれに伴うタンパク質の安定性低下を防ぐためには、添加剤の選択や脱塩によって臨界温度を上げるか、または凍結溶液の表面積および水蒸気流路の確保による昇華促進、凍結工程からの速やかな乾燥開始などが有効な手段となるようである。


凍結乾燥品」の品質評価に役立つ分析技術

示差走査熱量計(DSC;Differential scanning calorimetry)は、製剤化における非晶質状態での臨界温度の測定に最も広く用いられている。最大濃縮相ガラス転移温度(Tg′)の測定には欠かせない。

粉末X 線回折測定は、凍結乾燥製剤および凍結乾燥プロセス中の添加剤の物性変化を評価するのに使用し、DSCデータと一緒に活用することが一般的である。

凍結乾燥顕微鏡(FDM)を用いれば、凍結溶液の乾燥過程を観察することができる。コラプス温度(Tc)を決定するのに役立つ。

結晶化する試料では共晶融解温度(Teu)が製剤化の臨界温度となるため凍結乾燥の条件設定が比較的容易であるとされている。

一方、非晶質状態での製剤化の臨界温度は 、最大濃縮相ガラス転移温度(Tg′)とコラプス温度(Tc)により決定する。溶質の組成によって Tg′と Tc間に開きがあることが知られている。より効率的な乾燥には Tc測定が不可欠とされている。

しかしながら、実際には、Tg′は相が動き始める固有の相転移温度であり、凍結乾燥ケークがコラプスを起こす温度と強く関連性があるため、測定が容易な Tg′を コラプス温度(Tc)の代わりに用いることも多い。Tg′以下では、非晶質相は「ガラス」として存在し、硬くてもろい性質をもつ。


凍結乾燥について学べるサイト

タンパク質と添加剤の相分離は、安定化に必要な分子間相互作用を消失させるとともに、相分離界面におけるストレスがタンパク質構造変化を引き起こす可能性がある。したがって、多成分凍結溶液の物性把握が処方設計と凍結乾燥工程の最適化には不可欠である。

末筆ながら、「凍結乾燥」について学ぶのに際し、下記の凍結乾燥機メーカー、商社並びに技術サービス提供会社の各社がインターネット上で公開している技術情報を参考にさせて頂いた。大変勉強になった。情報提供に心より感謝します。

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参考文献

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